慈王の墓から約8ヶ月ほど経ち、俺も13になった頃ーー
電車の中、
「翔様、もう少しで次の町につきますよ」
森の中、
「翔様、少し休憩されてはどうです?」
「「「…」」」
「翔様ーー「うるせえよ!」…なんだ?」
「なんだじゃねぇよ!だから誰なんだよお前は!?」
「またそれか?この8ヶ月、しつこい奴だ…」
そう言い合うイフと羽原、バハ。
「だから言ってるだろ?翔様からいただいたバハと言う愛称があると…」
「そうじゃねえよ!その翔に対する態度だよ!」
そう、あの一件以降仲間になったバハ。
バハの母親の治療費はとりあえず俺が肩代わりすることになり、俺の元で働きながら、その給料で返していくということになったのだが、
「なにがおかしい?主を立てるのは部下の役目だろう」
それからというもの、ずっとこの調子なのである。
ずっと1人ではいたが、根はまじめで忠誠心の高かったバハの性格が出てしまったのだ。
確かに当初はやりずらくて仕方なかったが、俺はもうなれた。
「犬っころが猫かぶってんじゃねえよ!」
「あ?そんなわけないだろ。山猿は黙ってろ」
「んだとこら!上等だ!今日こそけりつけるか?」
「望むところだ」
そう言って銃をか構えるイフと、俺が渡した刃の潰れた切れない剣を構えるバハ。
これも最近ではいつもの事だ。
何かあればこうやって喧嘩し合う。
狂犬と山猿だけに、すっかり犬猿の仲だ。
「やめないか、2人とも!もう少しで祖王様の墓なんだぞ」
2人の仲裁にはいるラム。
「「…」」
「…な、なんだ?」
「「…ラム(おっさん)って強いの?」」
「失礼なやつらだな!これでも昔は神槍と呼ばれたほどだぞ!」
「「…へー」」
「んな!?信じてないなお前達!」
「ラムさんはお強いですよ。翔様も能力を使わなかったら勝てないほどです」
「…いまは、な」
曽和さんめ、一言余計だ。
「「な!?本当か!なら俺と戦ってみてくれ!」」
戦闘狂どもに囲まれるラムさん。
力を求めるところは2人ともそっくりだよな。
「けど、それはまた今度にしてくれ…どうやらついたみたいだよ」
遠くの方に建物が見えてきた。
「よし!ついた!…てあれ?みんな?どこいった?」
建物の前に到着して振り向くと、誰もいなかった。
「…あれ?ーー」
ーーーーーーー
その頃、
「おい!翔様はどこいった!?いままで目の前にいただろ!?」
「わかってる!少し落ち着け!!」
バハとイフはまた喧嘩していた。
「…ラムさん、いまのって…」
「うむ。恐らく祖王様の能力、三位一体の残像だろうな…」
「まさか、翔様の残像を出してくるとは…」
「なんで2人はそんなに落ち着いてるんだ!」
「落ち着いてくださいバハさん」
「主はあの若さでしっかりしている、すぐにどうこうと言うことは無かろう。が、心配なのは事実、早く合流しよう」
『その必要はないよ。みんな、探したよ!』
翔が現れた。
「翔様!?心配しましーー「まてバハ!」!?」
駆け寄ろうとするバハをラムが止める。
「貴様、何者だ?」
『…なんだ、つまらんな。こんなすぐばれるとは思わなかったな…』
するとその翔は少し成長し、歳は二十歳かそこら、髪は白髪になった。
『はじめまして。王の器の従者達よ。俺は祖王、この国を創始者だ』
「「「ーー!?」」」
ーーーーーーー
『お前はなぜ力を求める?』
建物内で祖王と対峙していた。
「…大切なものを守るため」
『それがーーでもか?』
!?
『王の剣、確かに強大な力だ。真の王として選ばれた者にのみ宿る力。最初は俺、そして夜叉王、そして…』
「…俺。…けど俺は王に…」
『…わかってる。お前が嫌なら別になる必要はないさ』
「え?」
『なにも王とは限らないんだ。ただの王の器だけならそこら中にいるからな…』
『しかし、この力はその中でも強い意思とその時代の指針となる者に宿る力』
「…俺が、時代の指針?」
『ああ。お前はいずれこの時代に大きく名を残す偉業を成すだろうな』
「…」
『まあ、いまは実感はないだろう。俺もなかったしな…』
そう言って困った顔をする祖王。
『俺も最初は6人の眷属だけを連れて旅をするただの旅人だった。それがいまじゃ大国となった…びっくりだよねまじで』
あれ?軽くねこの人…。
『いまの王都は昔、2つの村が戦争の末に出来た場所だ。それはお前も知ってるな?』
「…ああ」
歴史の本にも載ってることだし。
『まあ本当は、俺がその戦争を止めて、2つの国に立てられて統制したんだけどねー』
さらりと話す祖王。
この人いまさらっと重要なこと言った!?
『いやー当時は焦ったけどやってみるもんだよな…ま、いい部下に恵まれた証拠だよね!…お前にもいるんだろ?そう思える奴らが…ほら噂をすればーー』
「翔様!ご無事でしたか!?」
「翔!やっと見つけたぞ!」
「主よ。お待たせいたしました」
「翔様!もう心配しましたよ!」
「お前ら!無事だったか!」
祖王の言葉に合わせるように、みんなが扉を開けて入ってくる。
『お前もいい仲間を持っているな…。心配は無さそうだ…』
「え?」
『お前になら、俺の意思を理解して継いでくれそうだ…』
「なんの話を…?」
『お前を王の器として認める、俺の武器を持っていけ。…それからラム、と言ったか?お前を祖王の眷属に任命、王の器の力になりな』
「え?あ、は!」
そう言って礼をとるラムさん。
え?ちょっと話の流れが理解できないんだけど…。
ここに来る前になにかあったのか?
『んじゃあとは頼むわ!頑張れよーー』
そう言って笑顔で消えていく祖王。
は?え?ちょっと!?
「気持ちの良い方でしたね…」
「翔も将来あんなんなんのかね?」
「見た目だけでなく、性格までそっくりだったな…」
「翔様!俺はどこまでもついていきます!」
曽和さん、イフ、ラムさん、バハの順で話す。
は?なんでお前らだけ理解して終わってんの?
「ここに来る前なんかあったの?」
「主よ。申し訳ありませんが、祖王様との約束ゆえ、いずれ時が来たら話します」
「…なんでだよ!?」
くそぅ!
なんなんだよお前ら!
俺だけ仲間はずれか!?
それからしばらくその話が繰り返されたが、教えてくれる気配がないから諦めた…。
まあ、祖王の武器も回収できたし、なんか悪い気もしないから、よしとするかーー
今回はたくさん謎を残しましたが、いずれなにがあったかちゃんと出します