城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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すいませんお待たせしました!


第46話【祖王】

慈王の墓から約8ヶ月ほど経ち、俺も13になった頃ーー

 

電車の中、

 

「翔様、もう少しで次の町につきますよ」

 

森の中、

 

「翔様、少し休憩されてはどうです?」

 

「「「…」」」

 

「翔様ーー「うるせえよ!」…なんだ?」

「なんだじゃねぇよ!だから誰なんだよお前は!?」

「またそれか?この8ヶ月、しつこい奴だ…」

 

そう言い合うイフと羽原、バハ。

 

「だから言ってるだろ?翔様からいただいたバハと言う愛称があると…」

「そうじゃねえよ!その翔に対する態度だよ!」

 

そう、あの一件以降仲間になったバハ。

 

バハの母親の治療費はとりあえず俺が肩代わりすることになり、俺の元で働きながら、その給料で返していくということになったのだが、

 

「なにがおかしい?主を立てるのは部下の役目だろう」

 

それからというもの、ずっとこの調子なのである。

 

ずっと1人ではいたが、根はまじめで忠誠心の高かったバハの性格が出てしまったのだ。

 

確かに当初はやりずらくて仕方なかったが、俺はもうなれた。

 

「犬っころが猫かぶってんじゃねえよ!」

「あ?そんなわけないだろ。山猿は黙ってろ」

「んだとこら!上等だ!今日こそけりつけるか?」

「望むところだ」

 

そう言って銃をか構えるイフと、俺が渡した刃の潰れた切れない剣を構えるバハ。

 

これも最近ではいつもの事だ。

 

何かあればこうやって喧嘩し合う。

 

狂犬と山猿だけに、すっかり犬猿の仲だ。

 

「やめないか、2人とも!もう少しで祖王様の墓なんだぞ」

 

2人の仲裁にはいるラム。

 

「「…」」

「…な、なんだ?」

「「…ラム(おっさん)って強いの?」」

「失礼なやつらだな!これでも昔は神槍と呼ばれたほどだぞ!」

「「…へー」」

「んな!?信じてないなお前達!」

「ラムさんはお強いですよ。翔様も能力を使わなかったら勝てないほどです」

「…いまは、な」

 

曽和さんめ、一言余計だ。

 

「「な!?本当か!なら俺と戦ってみてくれ!」」

 

戦闘狂どもに囲まれるラムさん。

 

力を求めるところは2人ともそっくりだよな。

 

「けど、それはまた今度にしてくれ…どうやらついたみたいだよ」

 

遠くの方に建物が見えてきた。

 

 

「よし!ついた!…てあれ?みんな?どこいった?」

 

建物の前に到着して振り向くと、誰もいなかった。

 

「…あれ?ーー」

 

ーーーーーーー

 

その頃、

 

「おい!翔様はどこいった!?いままで目の前にいただろ!?」

「わかってる!少し落ち着け!!」

 

バハとイフはまた喧嘩していた。

 

「…ラムさん、いまのって…」

「うむ。恐らく祖王様の能力、三位一体の残像だろうな…」

「まさか、翔様の残像を出してくるとは…」

 

「なんで2人はそんなに落ち着いてるんだ!」

「落ち着いてくださいバハさん」

「主はあの若さでしっかりしている、すぐにどうこうと言うことは無かろう。が、心配なのは事実、早く合流しよう」

『その必要はないよ。みんな、探したよ!』

 

翔が現れた。

 

「翔様!?心配しましーー「まてバハ!」!?」

 

駆け寄ろうとするバハをラムが止める。

 

「貴様、何者だ?」

『…なんだ、つまらんな。こんなすぐばれるとは思わなかったな…』

 

するとその翔は少し成長し、歳は二十歳かそこら、髪は白髪になった。

 

『はじめまして。王の器の従者達よ。俺は祖王、この国を創始者だ』

「「「ーー!?」」」

 

ーーーーーーー

 

『お前はなぜ力を求める?』

 

建物内で祖王と対峙していた。

 

「…大切なものを守るため」

『それがーーでもか?』

 

!?

 

『王の剣、確かに強大な力だ。真の王として選ばれた者にのみ宿る力。最初は俺、そして夜叉王、そして…』

「…俺。…けど俺は王に…」

『…わかってる。お前が嫌なら別になる必要はないさ』

「え?」

『なにも王とは限らないんだ。ただの王の器だけならそこら中にいるからな…』

 

『しかし、この力はその中でも強い意思とその時代の指針となる者に宿る力』

「…俺が、時代の指針?」

『ああ。お前はいずれこの時代に大きく名を残す偉業を成すだろうな』

「…」

『まあ、いまは実感はないだろう。俺もなかったしな…』

 

そう言って困った顔をする祖王。

 

『俺も最初は6人の眷属だけを連れて旅をするただの旅人だった。それがいまじゃ大国となった…びっくりだよねまじで』

 

あれ?軽くねこの人…。

 

『いまの王都は昔、2つの村が戦争の末に出来た場所だ。それはお前も知ってるな?』

「…ああ」

 

歴史の本にも載ってることだし。

 

『まあ本当は、俺がその戦争を止めて、2つの国に立てられて統制したんだけどねー』

 

さらりと話す祖王。

 

この人いまさらっと重要なこと言った!?

 

『いやー当時は焦ったけどやってみるもんだよな…ま、いい部下に恵まれた証拠だよね!…お前にもいるんだろ?そう思える奴らが…ほら噂をすればーー』

 

「翔様!ご無事でしたか!?」

「翔!やっと見つけたぞ!」

「主よ。お待たせいたしました」

「翔様!もう心配しましたよ!」

「お前ら!無事だったか!」

 

祖王の言葉に合わせるように、みんなが扉を開けて入ってくる。

 

『お前もいい仲間を持っているな…。心配は無さそうだ…』

「え?」

『お前になら、俺の意思を理解して継いでくれそうだ…』 

「なんの話を…?」

『お前を王の器として認める、俺の武器を持っていけ。…それからラム、と言ったか?お前を祖王の眷属に任命、王の器の力になりな』

「え?あ、は!」

 

そう言って礼をとるラムさん。

 

え?ちょっと話の流れが理解できないんだけど…。

 

ここに来る前になにかあったのか?

 

『んじゃあとは頼むわ!頑張れよーー』

 

そう言って笑顔で消えていく祖王。

 

は?え?ちょっと!?

 

「気持ちの良い方でしたね…」

「翔も将来あんなんなんのかね?」

「見た目だけでなく、性格までそっくりだったな…」

「翔様!俺はどこまでもついていきます!」

 

曽和さん、イフ、ラムさん、バハの順で話す。

 

は?なんでお前らだけ理解して終わってんの?

 

「ここに来る前なんかあったの?」

「主よ。申し訳ありませんが、祖王様との約束ゆえ、いずれ時が来たら話します」

「…なんでだよ!?」

 

くそぅ!

 

なんなんだよお前ら!

 

俺だけ仲間はずれか!?

 

それからしばらくその話が繰り返されたが、教えてくれる気配がないから諦めた…。

 

まあ、祖王の武器も回収できたし、なんか悪い気もしないから、よしとするかーー




今回はたくさん謎を残しましたが、いずれなにがあったかちゃんと出します

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