城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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長男の登場により兄弟対決勃発!

勝負の行方はーー



第37話【兄の実力】

「兄ちゃん登場!」

 

…ふ、きまったな。

 

俺を見上げる兄弟達。

 

どうだ?兄ちゃんかっこいいだろ!

 

 

「…って、ぺっ!ぺっ!うわ、羽根口に入った!」

「「「(…だせえ)」」」

 

「…」

「「「…」」」

 

「…兄ちゃん登場!」

「「「(…うわあ)」」」

「やめろ!引くな!」

 

 

冷ややかな目で見てくる兄弟達。

 

やばい、俺の兄としての威厳が…!

 

「お、おほん!ところで、だ!」

 

咳払いをして、話を戻す。

 

「俺がいることを忘れてもらっちゃ困るなー。そう簡単にはこの勝負は終わらさせないぞ?」

 

ま、どちらにしろ鷹捕まえても終わらないし、俺も時間稼ぎに過ぎないんけどね。

 

 

「茜、修!どうだ?体育祭のリベンジでもしてみるか?」

「「!?」」

 

「そうだなー、なんなら2チーム全員でかかってきなよ」

「そんな勝負のるわけないですよ兄さん」

「そうだよ!さすがの翔ちゃんでもこれだけの人数相手は無理だよ!」

 

「うわー言ってくれるねー!…はっきり言おうか?お前達なら俺一人で十分だぞ?」

「へーそっちこそ言ってくれるじゃん翔ちゃん!」

「そうだよ!いくら翔兄でもいまの言葉は聞き捨てなんないよ!」

 

「なら、試してみるか?」

「ーー!?」

 

俺の挑発にまんまと乗ってきた茜と岬をさらにあおる。

 

「こうなったら、やるよ遥!」

「はぁ…本気?正直勝てる気しないんだけど」

「「遥はどっちの見方なの!?」」

「落ち着いて茜姉さん、岬。確かに勝てる気はしないけど…翔兄さんには勝ちたいとは思ってる」

 

そう言って敵意をむき出す遥。

 

いつもボードゲームとかで負かしてるからなー。

 

「よし!ならいくよ!…修ちゃんと!輝も!」

「えぇ!?僕もですか!?」

「…はぁ」

 

気にせずちゃっかり鷹の確保に向かおうとしていた修と輝の腕を掴む茜。

 

「仕方ない…俺達もやるか輝」

「は、はい兄上!」

 

「来なよ!ま、今回もお前達の敗けだけどな!」

 

そう言って笑うことで茜の怒りは最高潮に達し、

 

「ーー!?泣いても絶対許さないよ翔ちゃん!!」

 

一気に能力で俺の元まで飛んでくる。

 

 

しかし、

 

「そんなんじゃ届かないよーー」

 

盾を呼び出し構える。

 

「ーー!?姉さん!その盾に触れちゃだめだ!!」

「!?」

 

それを見た遥の言葉に、咄嗟に反射でブレーキをかける茜。

 

遥の奴、勉強熱心なのは良い事だけど、敵にまわすとなると考えものだな…。

 

けど、

 

「もう遅い…墜ちな、茜」

「え?ーー!?」

 

茜が盾に触れた瞬間、能力が切れ重力を制御できなくなり、重力に従い地面に落下する。

 

だが、間一髪の所で能力をかけ直し、なんとか持ちこたえる。

 

「…慈王の盾」

「ご名答!」

 

苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見る遥に、笑いながら答える。

 

「え?なに!?どういうこと遥!」

「翔兄さんの持つ歴代王達の武器はただの武器じゃない。それぞれの王が持っていた特殊能力をそのまま宿してるんだ。あれは、慈王と謳われた7代目の女王の盾。その慈王が持っていた能力はーー」

「…能力を無効にする能力、能力消去(アビリティキャンセル)か」

 

遥の説明に続ける修。

 

「能力を無効って!?そんなことあるの!?」

「現に茜がいま能力を消されたのを見ただろ?」

 

「…それだけじゃない…翔兄さんは歴代王のほぼ全ての武器を持ってる…。つまり実質10以上の能力者って事だーー」

「「「ーーな!?」」」

 

遥の言葉に驚愕する茜、岬、輝。

 

ま、武器は1つずつしか出せないから、使える能力も実際は1つずつなんだけどな。

 

「そんなのチートじゃんか!翔兄のばか!」

 

そんなこと言われてもなー…。

 

素で傷つくわー。

 

「茜姉さん!とりあえずあの盾は触れたものにしか能力が発動しないはずだから、触れなければ大丈夫!」

「わ、わかった!」

「岬、お前は分裂して他方向から攻撃して!盾は1つだ、必ず付け入る隙はある!」

「わかった!」

「輝、俺達もいくぞ!」 

「はい、兄上!」

 

 

茜、修は空から、輝と岬の分身の中でも運動神経が良いライオとユニコの3人は俺を囲み迫ってくる。

 

ふむ、これは盾じゃ防ぎきれないか…

 

なら、

 

「…俺も少し本気だすか、なっ!!」

「「「ーー!?」」」

 

盾から鉾に持ち変え、振るうと2人残像が現れ、それぞれ修と茜、ライオとユニコ、そして俺は輝を払い除ける。

 

「あの残像は…!?初代、祖王の逆鉾、三位一体(トリニティ)か!?」

 

三位一体(トリニティ)

本来1つだけのはずの能力を2つ持っていたとされる、この国の最初の王、祖王のもう1つの能力。2人の残像を作り出し共に戦うことが出来る。

 

もう1つは俺と同じ、王の剣だ。

 

ちなみに2つ持ちだったという事については、ほぼ一般常識として世に知れ渡っているから兄弟達の反応は薄いな。

 

ちょっとつまらなくもあるな…。

 

 

「…対峙すると改めてチートですわね」

「だぁあ、ムカつく!」

 

おもむろに怒りを露にするライオとユニコ。

 

「ど、どうしよう修ちゃん、遥!」

「落ち着けお前達…」

 

「さすがにこれだけの数に囲まれたら、俺も少し本気ださないときついわ」

 

鉾を戻しながら笑っていると、

 

「!?」

 

ズドンッ

 

「「「!?」」」

 

急に巨大な岩が降ってきたので、籠手を出し受け止める。

 

咄嗟すぎて片手で受け止めてしまったけど、籠手の能力でなんとか回避できたな。

 

「私を忘れてもらっちゃ困りますよ、お兄様!」

 

そう言って遥達の後ろから現れる奏。

 

「…まさか、奏までこの勝負に乗ってくるとはなー」

「実際、お兄様を残して鷹を捕まえるのも難しいですからね…」

「なるほど…最善策か。…しかし、人の頭上に岩を生成するなんて…殺す気かよ?」

「これぐらいこちらも本気でいかないと、お兄様には勝てないじゃないですか」

「…ま、そうかもな」

 

そう言って受け止めた片手で岩を握りつぶす。

 

「あ、あれって僕と同じ…!?」

「ああ、8代目、闘王の豪拳、怪力超人(リミットオーバー)

「輝と同じ能力まで!さっきからなんなのさ!翔兄ずるすぎ!」

「ここまできたらさすがに、な…」

「もはや化け物ね…」

 

「そんな言い方なくない!?」

 

ちょっと大人げなかった気もするけどさー…。

 

「わかったよ、ならもういつも通りこいつだけでいいよ!」

 

半ば拗ねながら普段から使いなれている夜叉王の刀剣を6本呼び寄せる。

 

「あーあ、翔ちゃん拗ねちゃったー」

「拗ねたお兄ちゃんもなかなか…(ボソッ」

「かなちゃん…?」

 

「いいんですか?兄さん、今回は体育祭の時とは人数が違いますよ?」

「もういいよ、別に…。そのかわり今回は6本全部使ってやるからな!文句言うなよな!」

 

「「「(あーあ、長男拗ねたー)」」」

「(きゃーお兄ちゃん可愛い!)」

 

 

「なんでもいいから、ほら!来いよ!!」

 

 

そして戦闘が再開される。

 

奏が生成対価の無い石ころを生成し、輝が能力を使いそれを高速で投げつけてくる。

 

それを能力でかわした先には、ライオとユニコが待ち構えているが、さらにそれを能力でかわす。

 

しかし、奏が生成した巨大な岩を能力で持ち上げ、逃げ道を段々と縮めていく茜。

 

そして、やむを得ず上に逃げた先には修がーー

 

「!?」

 

修が俺の持つ短刀に触れる。

 

やばい、このままだと飛ばされる!!

 

咄嗟に短刀から手を離し、修と短刀だけがどこかへ瞬間移動する。

 

「やっば!危なかったぁ!!」

「…ちっ!」

 

そしてそんな俺を見て悔しそうに舌打ちをする、俺の逃げ道を全員に確率予知で指示していた遥。

 

「すまん!逃した!」

 

そして修も戻ってくる。

 

「やるなぁお前達…でもまだまだこれからーー」

「ーーいいえ!私達の勝ちです!!」

「は?なに言ってーー!?」

 

奏に言われてはじめて気づいた。

 

修、奏、茜、遥、岬、輝の6人がそれぞれ俺の短刀を1本ずつ持っていた。

 

俺を追い詰めつつ、投げた短刀を回収してたのか…!?

 

「ぷ、はは、ははははは!本当の狙いはそれだったか!」

 

兄弟達の成長に嬉しくて、思わず笑いが込み上げる。

 

「いやー嬉しいよ!みんな立派に成長したなー!兄ちゃん一本とられたわ!」

 

本当に嬉しいな…小さい頃はいつも俺に引っ付いて離れなかったこいつらが…!

 

「…けど、忘れてないか?それは俺の所有物だぞ?」

 

そう、俺に所有権がある限り、どこにあろうと自由に呼び戻せる。

 

すなわち、

 

「俺から奪ったところで何も意味はない…さ、返してもらうぞ!」

 

そう言って手を前にかざす。

 

が、しかし、

 

 

「ーー!?な!?」

 

 

目眩がして思わず膝をつく。

 

「時間切れだよ翔兄さん」

「まったく…能力の使いすぎですよお兄様」

 

「え?なに?どういうこと!?」

 

「歴代王達の力は確かに強大だ…けど、もちろんリスクが生じる。使えば使うほど体力が持ってかれるんだよ」

 

俺の能力を知る遥、奏、修が、わけがわからないといった感じの茜、岬、輝に説明する。

 

「いやー、はは…ここまで計算の内とはな…」

 

本当、少し見ない間に立派になりやがって…。

 

なんか、嬉しくもあり、寂しくもあるなー。

 

「…はあ。この勝負、俺の敗けだ!鷹ならあこだ、好きにしな」

 

そう言って地面に座り込み、ビルの上の鷹を指差す。

 

 

「もう!お兄様はいつも無茶しすぎです!」

「はは、今回はちょっと新年明けましてってことで、はりきっちゃった!」

 

呆れながらも心配そうに介抱してくれる奏に笑いながら答える。

 

 

「え!?待って!鷹、2羽になってるんだけどぉぉ!?」

 

いつの間にか鷹が2羽に増えていた。

 

「どっち遥!早く予知して!」

「いまやってる!(どっちだ!?どっちが捕まえるべき鷹だ)…!?翔兄さん、いったい何したの!?」

 

予知が終わったのか、勢い良くこちらに振り向く遥。

 

「なにって、遥の結果通りだけど?」

「なに!?どうしたの遥!」

「…どっちも0%だ」

「え!?どういうこと!?」

 

 

 

『今回のサクラダゲームは翔様・葵様・光様・栞様のチームの勝利となりました!』

 

ゲームが終了し、家に戻りテレビに結果が映し出される。

 

無事、“猫”のミケを捕まえれたようだな…。

 

「まんまと兄さんにしてやられたな…」

「僕達の意識を葵姉さん達に向けさせないように時間稼ぎしてたのか…」

「勝負に勝って、試合には負けたって感じね…」

 

「目標が猫とか聞いてないんだけど…」

「鷹を捕まえろとも言ってないぞ」

 

そう言って拗ねる茜の頭を撫でる父さん。

 

「でもお父さん、なんでこんな引っ掻けるような真似を…?」

「その方が面白いと思ってなーテレビ的に!なのに翔も葵もすぐ気づいちゃうんだもんなー…翔に至っては始まる前から気づくし…もう、空気読め!」

 

そう言ってウィンクをしながらこちらを指差す父さん。

 

「まあいいだろ?結果、ちゃんと盛り上げてやったんだし?」

「おーう!翔のおかげで視聴率も過去最高だ!」

 

力を使いすぎて疲れたからソファで横になりながら父さんと会話をする。

 

そして今回は奏の膝枕だ!

 

ゲーム終了後からずっと介抱してくれている。

 

良いことでもあったのか、さっきからやけにご機嫌だし。

 

いつもこんなならいいのに…。

 

それにしても…

 

上を向けば目の前に2つの国宝が!

 

うむ、これも悪くない!

 

思わず手が伸びそうになる衝動にかられているとーー

 

 

!?

 

な、なんだ!?このただならぬ程の殺気は!?

 

3方向から殺気を感じる。

 

なに!?囲まれた!?そんなバカな!

 

冷や汗が止まらない。

 

いや、待て!落ち着け俺!

 

こんなときこそ冷静に、クールダウンだ!

 

きっと気のせいに違いない!

 

「お兄さま、凄い汗!お水どうぞ!」

 

そう言って横でずっと待機していた栞が、水を渡してくれる。

 

起き上がり、お礼をして一気に水を飲み干す。

 

「大変!顔色も悪い!もう一杯どうぞ!」

 

そしてコップに水を注ぎ直してくれる栞。

 

ああ…こんな殺気の中だってのに、なんなんだこの天使は!?

 

「ありがとう!兄ちゃん栞が注いでくれるなら何杯でも飲めそうだ!」

「本当!?」

 

嬉しそうに目を輝かせる栞。

 

 

おお!なんて眩しいんだ!天使か!

 

産まれてきてくれて、ありがとう栞!

 

こんな素晴らしい栞を産み出してくれて、ありがとう世界!

 

 

現実逃避しながら栞の頭を撫でていると、しばらくして殺気は消えていった。

 

ほんと、なんだったの?怖かったんだけど!

 

 

「さて、そろそろパーティーに行く準備をするぞー」

「あ、その前にお父さん。早速だけど、ポイント譲渡してもいいかな?」

「いいぞ、誰にするんだ?」

「えーと……奏に」

 

その言葉に喜ぶ奏と茜。

 

なんで茜も喜んでんだよ…。

 

どんだけポイントいらないんだよ…どこまでも必死か!

 

 

そんな中、

        

「んじゃ俺は修に…」

「…え?」

 

不意打ちに驚く修。

 

そしてーー

 

「「「えぇぇぇえ!?」」」

 

茜、奏、岬、光の4人から1人反感を買う俺だったーー

 




兄弟達に圧倒的力の差を見せつけた翔

しかし、主人公をチートキャラにはしたくはないので、強大な力を使う代わりにもちろんリスクが生じます。

残りの武器の能力については今後その都度紹介し、主人公設定に更新していきます。

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