城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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第24話【お祭りへ行こう】

今日は年に一度の夏祭り

 

毎年城門の前の石橋にずらりと屋台が並ぶ。

 

城の前で行われるだけあり、国が主催のその祭りには、もちろん俺達兄弟もそれぞれ浴衣を着て参加する。

 

 

「にしても、賑わってんなー。」

「そっか、翔ちゃん6年ぶりになるもんね。」

「…茜はずっといるのに馴れないのな…。」

「うっ…。」

 

俺の背中に隠れながら歩く茜

 

「修の方が身長あるし隠れるなら修のがいいんじゃないの?」

「…修ちゃんは…やだ…。」

「うぉい!」

「ぷ…どんまい修。」

 

一緒に横を歩いていた修がツッコむ。

 

茜大好きな修への茜の無慈悲な発言。

 

思わず笑ってしまった。

 

「それに翔ちゃんの方が背中大きく感じるし、安心するんだもん!」

「そうか?」

「翔兄さん鍛えてる分、体格が良いからね。」

「あー、そういうことね!」

 

 

それから、

 

「相変わらず何着ても美しいな葵。」

「ふふ、そう?ありがとう。」

 

当然のように褒めて褒められの俺と葵の会話。

 

そこには何の裏もなく、相変わらず素同士の会話が流れていく。

 

 

「あ、修!ほらあこ!浴衣姿の佐藤さんだ!」

「え!?」

「ごめーん冗談!」

「兄さん!!」

 

修をからかって怒られる。

 

反応早かっなー…。

 

その後、本当に現れた佐藤さんの浴衣姿にデレデレしていたのは言うまでもない。

 

 

「奏、ヨーヨーあるよ!昔好きだったじゃん?」

「む、昔の話です!」

「…え、やらないの…!?」

「やりません!」

「…そっか…まあ、そうだよな…奏でももう大人だもんな…」

「…い、1回だけだからね!/////」

 

無意識か?素のしゃべり方に戻ってるよ奏ちゃん!

 

結局、俺達はやるなら全種類集めようと5回した。

 

 

「茜、いつまでも隠れてないで、せっかくの可愛い浴衣が台無しだろ?」

「だ、だってー!」

「欲しいの買ってあげるから!」

「じゃ、じゃあ…あれ…。」

 

背中に引っ付いて離れない茜の指定でかき氷の列に並ぶ。

 

 

「翔兄!次は焼きそば食べよ!」

「いいねー!お!焼き鳥もあるじゃん!」

 

そういう俺と岬の腕の中には色々な食べ物が。

 

 

「プリンといい、ベビーカステラといい…遥は卵が入ってればなんでも好きなの?それとも牛乳?」

「いや、別にそういう問題ではないよ。」

 

遥と休憩がてら椅子に座ってベビーカステラを食べる。

 

 

「しょうちゃん金魚すくいしよー!」

「金魚か…いや、ダメだな。家にはボルがいる…食べられでもしたら栞が泣いてしまう。」

「…あ、そうだった!」

 

光と金魚すくいの屋台の前で二人して頭を抱える。

 

ちなみに、ボルというのはこの間、光が助けた猫であのまま家で飼うことにしたのだ。名前はボルシチ。

 

 

「兄様!僕はこのお面にします!」

「なら俺はこれにしようかな、おじさん、この2つください。」

 

輝と互いに戦隊もののお面をつけて笑う。

 

 

「栞、どうだ?美味しい?」

「うん!お兄さま!」

 

栞にわたあめを買ってあげて一緒に食べる。

 

 

一通り屋台を満喫した俺達は城のバルコニーへと来ていた。

 

しばらくすると、城を取り囲むように花火が打ち上がる。

 

城の周りの湖から打ち上げ花火が上がったのだ。

 

国民の人達には悪いけど、ここが一番の絶景ポイントだろうな。

 

 

「いやー天気良くてよかったなー。良い感じに風もあるし、綺麗に見えるじゃん!」

「うん!私もこんなに綺麗に見たのは初めてかも!」

「そうなの?なら今年はラッキーだったな!」

 

花火を見てはしゃぐ他の兄弟達を、少し離れた場所で見ながら葵と並んで話す。

 

「…ねえ、いつまで続くかな…。」

 

ふと、葵が不安そうに呟く。

 

それだけで言いたいことはわかる。

 

「そうだなー、ずっとってわけにもいかないだろうな。」

「…そう、だよね。」

「でもな、葵。俺が言いたいのは減る、じゃなく増える、ってことだ。」

「え?」

「今後俺達にも新しい家族が増えるかもしれない…それをどう捉えれるかじゃないかな。」

「うん。」

 

「そうだな、もしもの話な?修が結婚でもしたら俺達に妹が一人増えるわけだ…葵はどう思う?」

「うーん、それは嬉しいかな。」

「そうだな、俺も嬉しい。葵が環境の変化が苦手なことは知ってる、けどだからと言って深く考えすぎなんだよ。こんな風に良い様に考えれば良い。そもそも、これから先どうなるかなんて誰にもわかんないんだから、もう少し今を楽しみな!」

「…うん、そうだね。」

 

「仮に何かあったとしても俺がいる。もうこの町を離れる予定も理由もないしな。」

「うん、ありがとう!なんだか話したらすっきりした!」

「葵はなんでも一人で抱えすぎなんだよ、なんかあったら俺だけでもいいし話しな。相談ぐらいのる。」

「ありがとう!けど、それは翔君も同じ事言えるからね?」

「…わかってるよ。」

 

 

「翔ちゃーん!葵お姉ちゃん!花火やるよー!!」

 

打ち上げ花火も終わり、どこから持ってきたのか手持ち花火を持つ茜が俺達を呼ぶ。

 

「うん!さ、行こ!お兄ちゃん!」

「!?…あぁ、そうだな!」

 

 

俺も葵と同じ、兄弟と過ごすこの時間がたまらなく好きだ。

 

旅から帰ってきて改めて実感させられる。

 

だから葵の気持ちはわからなくもない。

 

けど、だからこそ逆に、今を楽んだ者勝ちだろ。

 

 

「ふぅ…今日もたくさん良い写真が撮れたなーー」

 

 

こうして夏休みは過ぎていったーー

 




次回は明日です!

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