城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

26 / 75
すいません
物語の段取りミスでまたも岬回になります


第21話【適材適所】

ある日

 

「ただいまー…って臭っ!なにこれ納豆か!?」

 

学校から帰ると玄関が納豆臭かった

 

こんなことってある!?

 

そう思いながらリビングに入ると

 

「…茜、お前の仕業か…」

「え?なにが?」

 

茜が納豆をひたすらかき混ぜていた

 

「玄関納豆臭かったんだけど、そんなもんもって動くなよ」

「嘘!?ごめん!消してくる!」

 

そう言って納豆を置いてリビングから茜は出てった

 

「ん?」

 

と入れ替わりに岬の分身が入ってきた

 

暴食の化身 ブブだ

 

 

ちなみに分身は全員で7人で

 

傲慢の化身 ライオ

憤怒の化身 ユニコ

嫉妬の化身 レヴィ

色欲の化身 シャウラ

暴食の化身 ブブ

怠惰の化身 ベル

強欲の化身 イナリ

 

それぞれに特技や性格、名前があり、岬と分身達の間ではテレパシーで会話出来るらしい

 

 

「ブブ、何で出てきてんだ?」

「お腹すいた…」

「あ…」

 

そしてそのまま俺の横に座り、先程茜が置いていった納豆をご飯にかけて食べ出すブブ

 

「ふーこれでひと安心!…て、あ、あの、それ真島さんの…」

 

戻ってきた茜が慌てる

 

いま聞き捨てならない発言したなこの子!

 

真島さんが来ることは聞いてたけど…

 

インタビュー中にこれ出すつもりだったのか?

 

むしろここでブブが食べてくれてよかった気もするな

 

まあ、とりあえずだ

 

「ブブ、俺の部屋にあるお菓子やるから岬のとこ戻るぞー」

「!?…ほんと?」

「あぁ好きなの持ってっていいぞ」

 

俺は甘い物やお菓子好きだから、常に机の引き出しにストックしてある

 

「…これにする…!」

「ポテチか?いいよー」

 

基本チョコばっか食べてるしな、ポテチは気が向いたときにしか食べないし、俺的にもそのチョイスは嬉しい

 

「んじゃ戻るぞー」

「…ん」

「岬ーブブ来てたぞー…ってなんだみんな出てたのか」

 

ブブを連れて岬と遥の部屋を開けると

 

ベッドにうつ伏せになりなにやらふてくされている岬と、それを囲むように分身が全員出ていた

 

「…なに?これどういう状況?」

 

一番近くにいたイナリの横にブブと座りこっそり耳打ちする

 

「あ、翔兄…自分ばかり面倒事を押し付けられるのが嫌だって、自分じゃなく私達ばかり必要とされてるのが嫌だって…それで…」

「…なるほど、ね…」

「翔ちゃんなんとかしてよぉう」

「俺にふるなよシャウラ…あと胸当たってますよ?」

「わ・ざ・と」

 

俺の首に手を回し背中から抱きつくシャウラ

 

「どうせ私は誰からも必要とされてないんだ!」

「は?唐突になんだよ…今日も学校でモテモテだったじゃん」

「それは私じゃなくてあんた達でしょ!私はあんたらのオマケかっつぅーのー!」

 

荒れてんなー

 

けど下の妹である岬にここまでストレス抱え込ませた俺達上の責任でもあるんだよな…

 

と、そこへ

 

「岬ー真島さん来たんだけだインタビューお願いできる?」

 

茜がやってきた

 

「やだ」

「うん!じゃあ下で待ってーーっえ?…は、反抗期きたぁぁぁぁあ!?」

 

いまの状況的にちょっとこいつは邪魔だな…話がややこしくなる

 

「私じゃなくてもいいじゃん、あか姉やってきてよ」

「む、無理だよ…こういうのは岬が…あ、じゃあ翔ちゃんやって!」

 

 

まあ別にやるのは構わない、けど…

 

いなかったとはいえ、ここまで放置した俺にも責任はあるし

 

長男としてインタビューを受けるのも筋だろう

 

けど、それではいまの岬はどうなる?

 

自分の存在意義を見失って二度と立ち直れないかもしれない…

 

ってことはここで俺が取るべき手段は、茜には悪いが

 

「無理だ」

「なんで!?翔ちゃんも反抗期なの!?」

「なわけないだろ…シャウラ、悪いけど時間稼ぎ頼む」

 

お馬鹿な茜に呆れつつ、背中のシャウラにこっそり言う

      

「はぁい…ままま茜ちゃん!今日のとこは私がやるから」

「えっでも…」

「いーから!いーからー!」

 

そしてシャウラはそのまま茜を連れ出し部屋から出ていった

 

…やめろ、そんな目で見るなよ他の分身達よ

 

言っといてあれだけど俺だって思ったさ…

 

あ、人選ミスったかもって…

 

 

「あのさー必要とされてないって言うけど…」

「ごめんそれ私のワガママ…私ってさ何やっても平均以外だから、勉強も運動も…顔もスタイルもぜーんぶ普通…お姉ちゃんやあんた達がちょっと羨ましかったんだ…でももういいんだ…普通の私が特別な人間に相談したって理解されるわけないよね」

 

…いや、普通の人間が分裂とかするかよ

 

って絶対思ってんな、こいつら…

 

にしても、どうしたものか…俺が口出してもいいのかな…?

 

と、その時だった

 

「いいじゃん普通だって」

 

いままで黙って本を読んでいた遥が口を開いた

 

「ていうか、僕の周りには変な奴らばっかりで…だから逆に僕にとっては岬が特別なわけで…岬が岬じゃなくなったら僕は困るんだけど」

 

…へぇ…良いこと言うじゃん遥

 

「それに必要とされてないって言うけど、要はーー」

「ねえ岬!インタビューやっぱりあなたが答えて!」

 

そこへシャウラを連れて茜が乱入…ほんと騒々しい子だな茜よ

 

「こ、この子えっちな回答しかしないんだもん!客観視できて社交性もある岬が適任なんだよ!」

「翔ちゃーん!茜ちゃんにめちゃくちゃ怒られちゃった!慰めて?」

 

そう言ってまた俺の背後に回り抱きつくシャウラ

 

「…やっぱシャウラに任せた俺が間違いだったか…」

「もう!翔ちゃんのいじわるぅー!」

「こらそこ!どさくさに紛れてなにやってんの!!」

「あら?あなたが本心からしたいと思ってる事をしてるだけよ?」

「私はそんなこと思っとらん!」

「なに言ってんだ、さっきも自分がオマケだとか私らが羨ましいだとかほざいてたけど…私達みんな岬の一部なんだぞ」

 

そう言って分身達にただされる岬

 

「…岬…家にいなかった俺が言えた立場じゃないのはわかってるけど…お姉ちゃん達もただ岬に押し付けてるわけじゃない…岬だから、岬が適任だと思えるから岬に任せてるんだよ…だから許してやってくれないかな?」

 

「…うん」

 

「うん!ありがとう!…けど無理なら無理って言えばいい誰も責めたりなんかしないから、その時は俺が、もちろん遥も、岬を庇う!岬が頑張ってることはちゃんとみんな知ってるから」

 

岬の頭を撫でる

 

「嬉しいときは笑えばいい、何かあったら甘えればいい、嫌なときは弱音を吐けばいい…単純なことの様で難しいかもしれないけど、それが出来る素直な岬が俺は好きだよ!」

 

「…わかった…ありがとう翔兄、遥も!私行ってくる!私がいないとみんなダメダメなんだから!」

 

そう言って分身達を戻し茜を連れていく岬

  

「…言うようになったじゃんか遥」

「べ、別に!…それにどうせ確率ではどうせこの予定だったし」

 

そういう遥のノートには

 

岬が立ち直る確率100%と書かれていた

 

「なるほどな…けど遥、これはお前がいてこその確率だと俺は思うぞ?」

「え?翔兄さんじゃないの?」

「俺は今回何もしてないよ…確実に岬の心を動かしたのは遥、お前だよ」

「…そうかな?」

「そうだよ…どうだ?数字だけじゃわからない、人の感情ってのも捨てたもんじゃないだろ?」

「どうかな…けど岬にはまだ僕がついてないとダメだな」

「それだけでもいい…誰かの為に何かしたい、そう思えるなら十分だ!」

 

遥の頭を撫で

 

「適材適所…それは遥にも言えることだぞ?…だから、これからも岬の事頼んだよ!」

 

そう言って俺も二人の部屋をあとにした

 

 

俺と葵の様に双子だからな…

 

俺達兄弟でも理解できない絆はあるはずだ…

 

まああの二人ならこれからも問題ない

 

今回は俺が口出す程でもなかったかなーー

 




次回は明日です!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。