誰が為に華は散る【鉄血のオルフェンズ外伝】   作:deburi

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第5話:理想の戦争(後編)

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 大方、準備は完了した。

 アスナの予想だともうすぐ敵は襲撃してくるだろう。あと1時間もしないうちに作戦の全てが終わる。皆の命を「これから先」に繋げるかどうか、もうすぐ決まるのだ。

 アスナはアスモデウスのコックピットにて機体に乗り込んでいる花咲の元を訪れていた。作戦前に伝えなければいけないことがあったからだ。

 

「ハナ、ちょっといいかな?」

「どうしたの、アスナ」

 

 コックピットのモニターを掴んで、花咲の横に座るとアスナは言った。

 

「さっきの戦闘でハナが苦戦していたモビルスーツのこと、もう一度詳しく教えてくれないかな。少し気になることがあって」

「あ、うん。なんか凄く速くて、それなのに重火器たくさん積んで鬱陶しかったかな」

 

 そんなモビルスーツが本当に存在するのだろうか。アスナはアスモデウスの戦闘データと照らし合わせて考える。

 確かに高速で動いて相手の射線を切り、一方的に火力で圧倒するという戦術は誰がどう見ても有効に思える。しかし本当にそれが、現行のモビルスーツ開発技術で可能なのだろうか。少なくともアスナはそんなモビルスーツを聞いたことがない。

 

 通常、火力と機動力はトレードオフの関係にある。機動力に振り切れば、火力は犠牲になる。いくら装甲を薄くしようと実現は難しい。それは何故か。

 

「おそらく敵は新型機。それもロールアウトして間もない、もしかすれば試作機の実戦データ所得のために投入されているのかも」

 

 昔から軍事関係の教育は人一倍受けてきたつもりだ。モビルスーツのモデルぐらいはだいたい覚えている。これはどのモデルにもないタイプの機体だ。しかしライフルやグレネードランチャー、ミサイルポッドは傭兵の間でも広く流通されている一般モデルであった。

 

「だからこそ、弱点はある」

 

 アスナは花咲にその弱点を教えた。教えた上でどう対処すればいいかも伝えておく。

 

「あくまでもこれは奴とハナが戦わざるを得なくなった状況。だから使う機会がないならそれに越したことはないけど……」

「うんん、ありがとう、アスナ。やっぱりアスナは私に何でも教えてくれる、神様だ」

「違うよ」

 

 アスナは花咲の手を握って、目をまっすぐ見て言った。

 

「私はハナの親友よ。神様なんかじゃない」

「しん、ゆう?」

「そう。辛い時、苦しい時、ともに乗り越えられる存在なの。私だってハナに守られるだけじゃない。私もハナを守りたいと思っているの。ハナが私を信じてくれるように、私もハナを信じて歩んでいく。」

「アスナ……」

「命なんか捧げて欲しくない。ただ私はハナと一緒にいたいの。あの日のようにお話をしたり、笑い合いながら一緒にお茶をしたいの。だから―――」

 

 アスナは本心を花咲に伝える。一点の曇りもない真実の言葉を。

 

「私と一緒に戦おう、ハナ」

 

 花咲はアスナの手をしっかりと握り返すと、はっきりと返事をした。

 

「うん。アスナと私の二人で、やろう」

「ええ。私とハナなら無敵だよ」

 

 

 

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「宇宙ネズミどもめ。うまく逃げたと思うなよ……お前たちの逃げた場所は、四方をデブリに囲まれた暗礁宙域のど真ん中だ」

 

 クライスの乗る試作モビルスーツ青犢を戦闘に九機のモビルスーツが暗礁宙域を駆け抜けていた。長距離を逃げられてしまえばモビルスーツでは追えない。母艦と合流し、推進剤と弾薬の補給を行った後、再出撃したのだ。

 

「逃げ場などあるわけがない。殲滅するぞ」

『了解!』

『仇を討ちましょうぜ、隊長!』

『やってやるよ!』

 

 部下たちの士気が高揚していくなかで、クライスたちは一隻の灰色の戦艦を発見した。ゆっくりとだが前進しているようで航行能力はあるらしいが、砲台は破壊されており自衛は不可能な状態であった。この宙域に航行可能な戦艦と言えば、アスナたちの乗るシラヌイ以外にない(同型艦のカスミは航行不能)。

 

「見つけたぞ。どこからモビルスーツが出てくるか分からん。警戒しつつ、取り付くぞ」

 

 クライスはまず部下のスピナ・ロディ隊を前に出して、周辺警戒をさせつつシラヌイと思われる強襲装甲艦に接近していく。

 

『周辺にエイハブリアクターの反応ありません』

「奇妙だな……抵抗の意思が見えない」

 

 すると、シラヌイの甲板から降伏を示す信号弾が放たれた。

 

「なるほど、降伏か。マリーメル家は代々、臆病者の血が流れていると見たわ。取り付いて、中にいるお嬢様を引っ張り出してやれ!」

 

 クライスの指示通り、三機のスピナ・ロディはシラヌイの甲板に取り付いていく。格納された艦橋を引きずり出そうとしたその時。部下の一人から通信が入った。

 

『隊長、この戦艦おかしいんです』

「何がだ?」

『スラスターが破壊されているのに、前進しているんです』

 

 クライスが異変に気がついた時には遅かった。甲板は次々と爆発していき、三機のスピナ・ロディは赤い炎に飲み込まれていった。

 

 

 

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 アスナは《シラヌイ》の艦橋で、現場からの報告を待っていた。エイハブリアクターを停止させているため、艦内は無重力状態にある。明かりも懐中電灯の光のみとなっている。艦長席の横には外付けの通信機が置いてあり、それで外との連絡を取っていた。

 

 ゴードンの乗るゲイレールはちょうど暗礁宙域のデブリに隠れて、エイハブリアクターを停止させている。コックピットから外に出たゴードンは双眼鏡で、追撃してきたクライスたち傭兵団のモビルスーツを監視していた。

 

『団長! 敵のモビルスーツが《カスミ》の甲板に取り付きました!』

「よし、起爆させて! こちらもエイハブリアクター起動し、全速前進!」

 

 アスナの号令とともにデブリ帯に身を潜めていた本物のシラヌイが起動する。

そう、クライスたちが取り付いたのはシラヌイではなく、撃沈していたカスミなのだ。撤退戦時に砲台が破壊されたため、シラヌイとカスミは航行能力の有無はあれど瓜二つになっていた。

 

 クライスたちがカスミのスラスターを破壊し航行能力を奪ったため、彼らの頭の中にはシラヌイは航行能力残っているほうと印象づけられているだろう。カスミは沈めたはずだ、と。その盲点をアスナは突いたのだ。

 

 撃沈したカスミのスラスター基部にモビルワーカーを取り付け、遠隔操作で前進させる。それによりモビルワーカーに押し出される形でカスミは前進する。簡易スラスターの完成となり、さも航行能力があるかのように見せることができるわけだ。敵が来る方向が決まっているので、モビルワーカーを見えないように隠すことも容易にできた。

 

 あとは信号弾を放ち、中に人がいるように錯覚させる。降伏信号を受けた敵は格納されている艦橋を引きずり出そうと甲板に取り付く。そうなれば後は甲板に仕込んでいた「爆弾」で敵モビルスーツを焼いてしまえばいい。

 

「総員!!!!! 対ショック用意!!!!! 突ッ貫!!!!!!!!」

 

 リウの大声とともにシラヌイはデブリを押しのけながら、クライスたちモビルスーツ隊に突っ込んでいく。デブリ帯から突然現れたシラヌイに対応しきれず、二機のスピナ・ロディがシラヌイの突貫に巻き込まれて撃墜される。

 戦艦はその頑丈さゆえに、質量兵器として利用できるのだ。もちろん向こうが警戒している場合は簡単に回避されるが、奇襲なら話は別だ。回避する前に敵は戦艦に轢き殺される。

 

「ジャックさんは甲板で《推進剤爆弾》をくらった敵モビルスーツをお願い! ハナはモビルワーカーの射出を!」

『りょーかいっと!』

『了解、アスナ』

 

 ジャックのユーゴーはデブリの影に隠れながら、対物ライフルを構える。狙いを定めて、爆炎の中に佇む機影に向けて銃弾を撃ち込んでいく。銃弾は一機のスピナ・ロディの頭部を貫くと、その向こうにいたスピナ・ロディの胸部にも炸裂した。

 

『マジかよ!?』

 

 ジャック自身、一発の弾で二機のモビルスーツを撃破するなど初めてのことで、驚きを隠せずにいた。通常であればナノラミネートアーマーの影響で数発打ち込まなければ、モビルスーツは撃破されないからだ。

 

 しかしこういう話がある。ナノラミネートアーマーは熱に弱い。対艦ナパーム弾などがその特性を利用した兵器としてよく使われている。つまり爆炎によって熱されたモビルスーツの装甲はナノラミネートアーマーを剥ぎ取られた、ただの鉄の板ということになる。そこに大口径の対物ライフルが炸裂するのだから、当然貫通する。

 

『何だか分からないけど、こりゃ気持ちがいいね!』

 

 さらに言えば、甲板に仕掛けた爆弾はただの起爆式のTNTではない。それに可燃性のあるモビルワーカーの推進剤を取り付けた、推進剤爆弾だ。通常は好んで使われない可燃性の高い推進剤だが、その安さゆえにモビルワーカーに積まれていることがよくある。そんな推進剤が爆発に巻き込まれたらどうなるか。

 爆発の威力は何倍にも跳ね上がり、モビルスーツの全身を焼き焦がす炎となる。

 

「推進剤爆弾の使い方は教えた通り。狙いを定めて発射。タイミングを見計らって起爆よ」

『うん、大丈夫』

 

 一方、ハナのアスモデウスはシラヌイの甲板に立ち、数十本もの推進剤のタンクをワイヤーで無人のモビルワーカーに取り付けたものを持ち上げる。そしてそれを前方の混乱している敵モビルスーツ隊に向けて発射した。モビルワーカーの推力を活かして猛進する推進剤爆弾は、ちょうど二機のスピナ・ロディに炸裂し装甲表面を焼き尽くす。

 そこにジャックの遠距離射撃が炸裂し、瞬く間に二機は撃墜された。

 

『やっぱり凄いな、アスナは……こんなこと私には思いつかないや』

 

 艦橋では戦況が逐一、更新されていった。次々と撃墜されていく敵機、反撃は全くと言っていいほどなかった。

 

「スピナ・ロディ、七機大破!!!!! 残り一機も中破!!!!!」

 

 これがアスナの立てた作戦であった。カスミを偽装することによりシラヌイによる強襲を成功させ、推進剤爆弾を使用することでナパーム弾のように相手のナノラミネートアーマーを剥がし、混乱した敵を遠距離射撃によって確実に撃破する。

 戦力の差が覆っていくのは一瞬だった。

 暗礁宙域という奇襲に最適な環境、破壊された砲台、可燃性の高い推進剤。どれか一つが欠けていたら、この作戦は成功しなかっただろう。

 

『わりぃ、団長! 残りの一機がすばしっこくて狙撃できねえ!』

「分かったわ! ハナを向かわせる」

 

 おそらく花咲の言っていた例の新型だろう。高機動でありながら、火器管制能力に長けている万能機。グレネードランチャーを甲板にシラヌイの撃ち込みつつ、高速機動で遠距離射撃を回避していく。

 アスナは花咲の乗るアスモデウスに回線を繋いだ。

 

「ハナ! 例の新型……やれそう!?」

『ええ、もちろん』

 

 グレネードランチャーの直撃で黒煙が立ち昇るなか、一機のガンダムフレームが姿を現す。ブリアンのユーゴーが持っていたバスターソードを右手に構えながら、アスモデウスは宇宙を駆け抜ける一筋の光を睨みつける。

 

 奴を落とせ。

 奴を潰せ。

 奴を殺せ。

 

『やらなきゃ、アスナを守れないもの』

 

 殺意の眼光がアスモデウスの双眸に煌く。

 

 

 

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 ずっと冷たい土の上で眠っていた気がする。

 

 花咲はヒューマンデブリになってから五年間は地球にいた。ヒューマンデブリで地球の重力を体験した者は珍しいとよく言われるが、あまり実感が沸かない。宇宙だろうと重力の下であろうと戦場はどこも同じだ。

 

 どこの誰が何のために起こしたのかも分からない紛争の中で、ただ目的もなく人を殺し続ける。女子供でも命令があれば容赦はしない。見せしめに捕虜の処刑させられることも多かった。カメラの前で意味の理解できない言葉を述べさせられた後、捕虜の首筋にナイフを突きつけ勢いよく切る。

 

 吹き出した血がナイフを握る手を濡らす。初めて処刑をした時から、血の臭いしない食事はなかった。首を切り裂かれ、絶命していく捕虜の呻き声が鼓膜に焼きついて何度も頭の中で響き続ける。

 

 花咲は恐怖と罪悪感と寒さで眠れない夜に怯え続けていた。そんな時、ずっと傍にいてくれたのがアスナだった。誕生日カードに描かれたアスナの似顔絵を見るたびに、ヒューマンデブリになる前に過ごしたアスナとの日々が体を暖かくしてくれたのだ。

 

 そうして今日まで耐えてきた。

 いつしか花咲にとってアスナは神にも等しい存在になっていた。

 アスナに祈ることで何でもできる。

 恐怖も罪悪感も何もかもが吹っ飛んで、銃を握る勇気が湧いてきた。

 今になって親友と言われても正直、実感が沸かない。

 でもきっと、アスナならこう言うだろう。

 

 

―――これから先、知っていけばいい。思い出していけばいい。私とハナが親友だということを。

 

 

 その為にも、花咲は守らなければいけない。自分とアスナの「これから先」を。

 

「アスモデウス、いくよ」

 

 花咲は操縦桿を握り、目の前を飛翔する敵モビルスーツを目指す。

アスモデウスはモビルワーカーに取り付けられた推進剤爆弾を抱えながらに突撃すると、グレネードランチャーの次弾装填を行う青犢に向けて投げつける。間一髪、爆発から逃れた青犢が煙の中から現れた。

 

「そこ!」

 

 推進剤爆弾が通用しないのは百も承知。全ては、この一発を撃ち込むためにある。

 アスモデウスの右腰に装着した、アンカークローが射出される。大破したスラスターの代わりに、ユーゴーの腰についてあるアンカークローの射出機構を移植したのだ。アンカークローは青犢の右足に巻きつくと、二本の爪を装甲に食い込ませて固定された。

 

『小癪な!』

「捕まえ……た!」

『ならば、青犢の加速に押しつぶされろ!』

 

 青犢は両肩両脚のスラスターを展開させ、高速機動形態に変形。加速を開始し、アスモデウスを振り払おうと縦横無尽に飛び回る。

 

「あ、ぐっ!」

 

 背中のスラスターを噴射させて青犢に追従しようとするが機動性能の違いから、引っ張られてしまう。そして加速に伴うGが花咲の全身に襲いかかる。パイロットスーツがミシミシと体に食い込んでくるのが分かった。

 

『これでは滑空砲も撃てないだろう!』

 

 滑空砲を撃とうとアームを展開してしまえば、加速による負荷でアームが折れてしまう可能性が高い。敵の加速を止めるためにデブリ帯を足場にするという手もあったが、それをクライスは見切っていたのか。青犢はデブリ帯を避けて飛翔していた。

 

「まだだ……私はアスナを、信じているから……」

 

 花咲は耐える。アスナの考察が正しければ、加速し続けた青犢は致命的な弱点を露出させる。そして、パイロットのクライスはそれに気がついていない。

 

『貴様だけでも道連れにしてぇぇえぇえぇぇ!』

「悪いけど、あんたと一緒に死ぬ気はないよ」

 

 アスナとの明日を手に入れるため、生きるのだ。

 アスモデウスの火器管制システムに異常が発生し、アラートがコックピットに鳴り響く。まもなく、背中にマウントされた滑空砲の銃身が加速によって折れ曲がった。同時に青犢の脚部に取り付けられたミサイルポッドが軋んだ。

 

「まだ私は生きるから」

 

 加速によるGの影響を一番受けるのは人体だ。高速機動を前提に造られた青犢のコックピットならまだしも、三〇〇年前の遺物であるガンダムフレームのコックピットにいる花咲は、本来であれば失神してもおかしくないほどのGを全身に受けている。しかしモビルスーツのコックピットとパイロットスーツによる負荷の軽減で、体が押し潰されることはまだなかった。

 

 ならば次に影響を受けるのは何か。モビルスーツはナノラミネートアーマーに加え、剛性の高いフレームを採用しているため頑丈だ。しかし武器は違う。青犢の搭載火器は高機動に対応していない。ゆえに加速によるGで潰れるのだ。耐久性を重視して設計されていない、一般的なミサイルポッドなどは特に。

 

 そして加速によって耐え切れずに潰れたミサイルポッドは爆発する。

 

『なに!?』

「アスナの言ったとおりだ」

 

 戦場において万能など有り得ない。万能のように見える性能でも、何かを犠牲にしているはず。青犢の場合、それは安定性であった。加速をすれば搭載火器に負荷が掛かる。長期戦になればなるほどそれは顕著に現れ、整備性の悪化に繋がる。そして現在のように過度の加速による負荷によって火器が圧壊、誘爆するという最悪の事故も想定できるのだ。

 試作機ゆえの欲張った性能による、致命的な欠点をアスナは見抜いていた。

 そしてそれを伝えた。失神寸前の加速にも耐える肉体と精神力を持ち、高い戦闘技術で的確に弱点をつくことのできるモビルスーツパイロット、花咲レゴリスに。

 

『クソ! 何故動かん、青犢!』

「そろそろ……終わりよ!」

 

 爆発により脚部を損壊した青犢は加速を止め、宙に投げ出された。その隙を見逃さず、アスモデウスはバスターソードを振りかぶって青犢に向かう。バスターソードは青犢の頭部に打ち込まれた。

 

『メインカメラが死んだ!?』

「死んじゃえぇえぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇ!!!!!!」

 

 接触回線でクライスの慄く声がコックピットに響くが、花咲は手を緩めることなくバスターソードをコックピットに叩き込む。モビルスーツの燃料がまるで鮮血のように噴き出し、血しぶきとなってアスモデウスの純白の装甲を濡らす。崩壊する鉄の塊にクライスの肉体は押し潰されていき、大破炎上する機体の中で絶命した。

 

「はぁッ……あっ……はぁっ」

 

 極度の興奮状態と加速による身体負荷によって、荒くなった呼吸を花咲は整える。

 青犢の撃墜を確認すると、花咲はシラヌイの艦橋に回線を繋いだ。

 

「敵機撃破。残存勢力、ゼロ」

『了解。味方の損害は無いわ。ありがとう……ハナ』

 

 安堵したのか、回線の向こう側から嗚咽が混じったアスナの声が聞こえた。

 

「こちらこそ。ありがとう、アスナ」

 

 大破炎上する機体からバスターソードを引き抜いたアスモデウスは、暗礁宙域に広がるモビルスーツの残骸の中で立ち上がり、その双眸をシラヌイに向けた。

 

「作戦終了、帰投するわ」


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