この腹黒主人公に祝福を!   作:ユキシア

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ゆんゆん(メイド)のお礼

「うぅ……恥ずかしいよ………」

先日のボードゲームで無苓の策により降参したゆんゆんはメイド服姿となっている。

「よくお似合いですよ、ゆんゆん」

丈の短いスカートが気になるのか下に引っ張るゆんゆんの姿に無苓は微笑む。

一日メイド服姿で無苓に奉仕する。

それが賭けによって決めた無苓の命令。

因みにメイド服は《物質創造》で創った。

「ゆんゆん、コーヒーがなくなりました。おかわりを下さい」

「……はい、ムレイさん」

「おや?メイドは主人の事を何と呼ぶのか忘れましたか?」

「ご、ごしゅ、ご主人様……」

「よろしい」

顔を赤くしながらも言い切ったゆんゆん。

新しいコーヒーを注いでもらうとそれを一口飲む。

「ううぅ……どうしてあの時降参なんかしたのよ、私……」

勝利目前だったのを無苓の一言で降参したゆんゆんは今になって後悔している。

「まぁ、似合っているから気にしない方が良い」

「よ、よくお似合いです……」

そんなゆんゆんを励ます二人。

だけどそれは今のゆんゆんにとっては逆効果だったのかより羞恥心が強くなって顔を真っ赤にしてその場に座り込んで顔を隠してしまう。

そんなゆんゆんに無苓は優しい声音で。

「ゆんゆん、まだ掃除が終えてはいませんよ?早くしないとお仕置きしますからね、メイドさん」

新たな仕事を与えた。

「わあああああああああああああああああああああああっっ!!」

「ゆんゆん!ゆんゆん!?」

「ゆんゆんさん………ッ!?」

広間から廊下へ駆け出して行ったゆんゆん。

「お、おい、ムレイ。もういいんじゃないのか?」

「何を言っているんですか?私はゆんゆんの為は思ってあのような恰好をさせているんですよ」

「ご、ご趣味では………いえ、なんでもありません、ごめんなさい……」

駆け出して行ったゆんゆんを心配してもう止めさせようとするが無苓の言葉に首を傾げた。

「ゆんゆんはいつも一歩引いて私達と付き合ってくれます。ですので少し強引にでも人と触れ合えるきっかけを作る必要性があると私は思います。あのような恰好をしていれば私からは罰ゲームで仕方がなく、周囲の人に見られたらからかい半分で声をかけて来るでしょう。そうなれば自然とゆんゆんと接触してくる人も増えるはずです」

コーヒーを飲みながら語る無苓。

一人、ボッチのゆんゆんに自分から、周囲の人から接触できるきっかけを手に入れる為にメイド服の恰好をさせた。

全ては心優しいゆんゆんの為、心を鬼にしての行動だった。

「とまぁ、これが半分の理由でして後は純粋に面白いからです」

「……だんだん本性を現してきたな、はぁ、ララ、ダクネスと相性が良さそうだ」

呆れるように息を吐くセルティに半眼で見てくるアリッサ。

二人の視線に耐え切れなくなった無苓は広間を出てゆんゆんの様子でも見てみようと探すと無苓の言葉通りにしっかりと掃除をしていた。

潜伏を使って掃除しているゆんゆんに歩み寄る。

「んしょ、よいしゃ、と、ふぅ~」

棚を動かしてその下まで丁寧に掃除をするゆんゆん。

真面目だな、と感心している無苓は感心と同時にこのままではつまらないと思い、そっとゆんゆんの背後に近づく。

「ゆんゆん」

「ひゃっ!?」

突然耳元で囁くように声をかけられたゆんゆんは驚きの余りに変な声が出た。

「ムレイさん!からかわないでください!!」

「すみません、ゆんゆんがあまりにも可愛らしいものでしてつい」

「ついではありません!!」

顔を真っ赤にして怒るゆんゆんに笑顔を崩さない無苓。

「実はというとゆんゆんに一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」

「はい?」

唐突に頼みごとをする無苓はその内容を耳打ちするとゆんゆんは羞恥心にかられる。

「む、無理ですよ!恥ずかしくてできません!!」

無苓の頼みごとを断ったゆんゆんだが無苓はここで諦めるつもりはない。

「ゆんゆん、私達はなんですか?」

「え?何ですか、いきなり?」

私達とは何か、と問いかけられて怪訝するゆんゆんに無苓は言葉を続ける。

「私達は仲間です。共に苦楽を分かち合い危険な依頼をこなしていく……それが仲間というものです」

「仲間……」

「私達はまだパーティーを組んで日が浅い。だからこそ話し合い、触れ合いをすることで信頼関係を固めて行きたいのです。自分の後ろを任せられる大切なパートナーとして」

「パートナー……」

「……しかし、そう思っていたのは私だけのようですね。いいのです、異性にする頼み事ではないことは私も重々承知しております、お仕事の邪魔をして申し訳ありませんでした」

「ま、待ってください!」

頭を下げて去ろうとする無苓をゆんゆんは呼び止めた。

「そうですよね、私達は仲間ですよね!仲間同士のスキンシップは信頼関係を固まるいいことですよね!」

「……無理しなくてもいいんですよ?」

「無理してません!むしろさせてください!!私の膝でよければいくらでも!!」

「ありがとうございます、ゆんゆん。私はいい仲間と巡り合えて幸運です」

こうして無苓はゆんゆんに膝枕をさせて貰いながら耳掃除もして貰った。

「う、動かないでくださいね……私、男の人とするのは初めてで」

「ゆんゆんの初めてのお相手になれて感激です。大丈夫です、ゆっくりでいいですか」

「は、はい……あ、動かないでください」

「すみません、あまりにも心地よいものでしたもので」

「そ、そんなにいいものなのですか?」

「ええ、暖かくて気持ちいいですよ」

ゆんゆんに膝枕をさせて貰いながら堪能する無苓は内心でゆんゆんはちょろいな、と思っていた。

美少女の膝枕を十二分に堪能する無苓はゆんゆんが耳掃除を終えても離れるつもりはなかった。

離れない無苓に困惑するゆんゆんの反応が見たい無苓は寝たふりを行う。

「あの、ムレイさん……寝ているんですか?」

予想通りの反応をするゆんゆんに内心ほくそ笑むと不意に頭を撫でられる感触が無苓を襲った。

「ふふ、普段は大人びてるムレイさんだけど寝ている顔は子供みたいで可愛い」

無苓の頭を撫でながら微笑ましいことを言うゆんゆんに無苓は起きようにも起きれなくなった。

「あ、でも変な所をこだわるところは子供みたいで可愛かったな」

そんなことを思っていたのかと内心で愚痴る無苓。

「ムレイさんが起きていたら恥ずかしくて言えないけど私、ムレイさんに話しかけられて凄く嬉しかったんですよ。気さくに話しかけて来てくれて、パーティーに誘ってくれて、今もこうして一緒にいてくれる」

無苓が寝ていると思って一人でどんどん話を続けていくゆんゆんに無苓の心臓は今にも飛び出しそうなほどドキドキしてきた。

こんな告白されるような空気のなかどうやって起きればいいと真剣に悩み始める。

「ありがとうございます、ムレイさん……って、寝ている人に何お礼言っているのよ、私」

起きていますよ、とは言えなかった。

完全に起きるタイミングを見失った無苓は最後の手段を取ることにした。

適当なタイミングで起きたふりをして至急かつ速やかにギルドに行って酒を飲みまくってこの事は忘れようと決めた。

万が一に実は起きていることがわかれば気まず過ぎる。

「ゆんゆん、ここにいたのか?ん?ムレイは寝ているのか?」

部屋に入って来たセルティはゆんゆんに膝枕をされて寝ている無苓が視界に入ると訝しむ。

「ムレイ……お前、起きているだろう?寝たふりしてゆんゆんを困らせるのはどうかと思うぞ?」

「え?」

「……………」

セルティの言葉に放心するゆんゆんと額から冷や汗が流れ落ちる無苓。

視線を膝元で寝ている無苓に向けるゆんゆんは若干涙目だった。

「お、おはようございます、ゆんゆん……」

耐えられなくなった無苓は観念して当たり障りのない言葉を述べる。

涙目で顔を真っ赤にしたゆんゆんが掴みかかって来た。


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