「『エクスプロージョン』ッッッ!」
「
クエストに行っていない無苓は今日は以前に約束していためぐみんの爆裂魔法を見させて貰う為に和真と変わって貰い、遠く離れた丘の上にある廃城に向かった放たれた爆裂魔法を見させて貰ったと同時に《魔眼》の力の一つ
「い、いかがでしたか?我が爆裂魔法は……」
地面にうつ伏せに倒れるめぐみんは自身の爆裂魔法の感想を求める。
「そうですね、初めてでしたので素人意見になりますが想像以上です。これほどの威力でしたら大抵のモンスターは一撃でしょう」
「……ふ、ムレイも中々わかっているじゃないですか。どうです?盗賊からアークウィザードに転職して共に爆裂魔法を極めるというのは……?」
「いえ、私は盗賊の方が向いていますので転職はしませんよ」
魔力が尽きためぐみんを背負いながら街に戻り始める無苓。
「ムレイはドSですけど紳士ですね。カズマならセクハラ発言とかしてきますのに」
「表面上は紳士的にしないと警戒してしまうでしょう?」
「………否定しないのですね」
自他共に認めている無苓にめぐみんは呆れるように息を吐いた。
「ムレイはどうしてゆんゆんをパーティーに誘ったのですか?」
「おやおや、やっぱり友達であるゆんゆんの事が心配なんですね」
「ち、違います!ただ、どうやってあのボッチがパーティーに入れたか気になっただけです!断じて心配などしていません!!」
ほくそ笑む無苓の言葉を全力で否定するめぐみんだが、無苓は話半分で聞き流す。
「そうですね、偶然という言葉がしっくりきますね。私が冒険者になった日に誰かクエストを手伝ってくれる人がいないか探していたら酒場の隅でゆんゆんを見つけて声をかけたのがきっかけですね」
当時の事を懐かし気に語る無苓。
「……ゆんゆんは友達という言葉にちょろいですから変なことしてませんよね?」
「安心してください。メイド服着せて膝枕して貰うこと以外に手は出してはいませんよ、今はまだ」
「最後不吉な言葉が聞こえたのですが!?というよりゆんゆんに何をさせているのですか!?カズマでもそのようなことしていませんよ!」
不安要素たっぷりの言葉に叫ぶめぐみんに無苓は微笑む。
「ゆんゆんは13歳ですから手を出したら犯罪ですから!」
「大丈夫ですよ、全然守備範囲内です。それに私からは手は出しませんよ」
「怖いです!今まさに私は貴方に恐怖を感じます!………ちょっと待ってください、ゆんゆんが守備範囲内ということは」
「ええ、めぐみんさんも入っていますよ。あ、安心してください。許可さえなければ襲いませんから」
「許可しませんから!万が一に手を出そうというのなら私の爆裂魔法が炸裂しますよ!」
「あまり暴れると悪戯しますよ?今、この場で」
無苓の背中でジタバタともがくめぐみんに軽く脅しをかけると借りてきた猫にように大人しくなった。
「……ムレイは下手をすればカズマ以上に鬼畜ですね」
「まさか、私はただめぐみんさんが慌てもがく姿が見たいだけですよ」
「ドS発言はダクネスにしてあげてください!」
「自分から求めてくる人を責めるのも面白いですが、嫌がり、抵抗してくる人を責める方が何倍も楽しいんですよ?」
その発言にめぐみんはカタカタと震え始める。
少しやりすぎたと思った無苓は話を切り替える。
「そういえば先ほどの廃城、もう何発も爆裂魔法を受けているにも関わらずまだ壊れていなかったですね」
「………そういえばそうですね。もう崩れてもおかしくはないのですが」
「もしかして魔王軍の幹部があそこに住んでいて防御結界でも張っていたりして」
「ムレイ……それは冗談でも笑えません」
「申し訳ありません。あ、街が見えてきましたよ」
冗談半分で話をしていた二人は無事にアクセルの街に戻って来た。
実は冗談ではなかったとは言わなかったのは無苓の優しさだった。
その次の日。
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』
街中に、緊急のアナウンスが響き渡り、無苓達も他の冒険者達と一緒に正門に集まるとそこには凄まじい威圧感を醸し出すモンスターに呆然と立ち尽くした。
デュラハン。
それは人に死の宣告を行い、絶望を与える首無し騎士。
漆黒の鎧を着た騎士は自分の首を目の前に差し出した。
「………俺は、つい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが……」
首をプルプルと小刻みに震え出す。
「ままま、毎日毎日毎日毎日っっ!!おお、俺の城に、毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は、誰だああああああああー!!」
それはもうお怒りだった。
やはり、爆裂魔法ぐらいで魔王軍の幹部は倒せれなかったと思った無苓。
そんな無苓を置いてデュラハンは何かに耐えて、我慢ができずに切れてしまったかのように叫んだ。
「………爆裂魔法?」
「爆裂魔法を使える奴って言ったら……」
「爆裂魔法って言ったら……」
誰の視線がめぐみんに集まるなかで無苓は一人で前に出た。
「ムレイさん!?」
「大丈夫ですよ。発動『エクスプロージョン』!!」
「え?」
他の冒険者より少し前へ出て無苓は
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
あまりの不意打ちの爆裂魔法にデュラハンは悲鳴を上げた。
静まり返る冒険者の中で無苓は息を吐いて。
「よし」
「よし、じゃねええええええええええええ!!」
予想外過ぎる無苓の行動に和真が叫んだ。
「ムレイ!どうして私ではなく貴方が爆裂魔法を披露するのですか!?」
「お前は黙ってろ!ロリっ子!!」
無苓を中心に騒ぎ出す和真達に爆裂魔法を撃ち込まれたデュラハンは立ち上がる。
「いい、いきなり爆裂魔法を撃ち込むとはどういう神経してをいるんだ!俺でなかったら間違いなく吹き飛んでいたぞ!!そこの無礼な男を!名を名乗れ!」
「透過………では名乗りましょう。自分の頭を女性のスカートの中に投げ込むことで日々精進している変態デュラハンことベルディアよ」
「へ、変なことを言うな!お、俺は決してそのようなことはしていない!!」
図星をつかれて慌てふためきながら否定の言葉を上げるベルデュア。
「私の名は刈萱無苓です。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げて挨拶する。
「ああこれはどうもご丁寧に俺の名はベルディア……って違う!クソ!調子が狂う奴だ!」
調子を狂わせられるベルディアは一度落ち着いて無苓を指す。
「貴様だな!我が城に爆裂魔法を撃ち込んできた大馬鹿は!」
「はい、私ですがそれがどうしました?」
「どうしただと?低レベルの冒険者しかいない街だと知って放置しておけば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポン撃ち込みにきおって………っ!!喧嘩売っているのなら、堂々と城に攻めて来る気概はないのか!?貴様には!」
「何故貴方の流儀に従う必要があるのですか?陰湿であろうと戦いは戦い。貴方を倒すことが出来れば過程など私にはどうでもいいのですよ、いつ撃ち込まれるか不安で毎日毎日ビクビクしているベルディアさん」
「ビ、ビクビクしておらんわ!貴様には人として常識はないのか!?」
「知っていますが?」
「き、貴様………!雑魚だと思って俺がいつまでも見逃して貰えると思うなよ?」
怒りが溜まっていくベルディアに無苓の表情から笑みは消える。
「雑魚ですか………ベルディアさん、貴方は一つ勘違いをしています」
「何?」
「私が何の策もなく貴方の前に立っているとお思いですか?」
「ほう、つまりなんだ?俺はまんまと貴様の策に嵌められたと言いたいのか?」
ベルディアの表情から怒りは消えて好戦的な笑みを浮かべ始める。
自分を倒す為にどのような策を用意しているのかと楽しみだと言わんばかりの笑みを浮かばせているベルディア。
「その通りです。貴方を精神的にジワジワと嬲るように倒す算段です」
「陰湿な嫌がらせではないか!?」
吠える騎士ベルディア。
予想外の陰湿な策に叫ばずにはいられなかった。
「私は逃げてアクシズ教団に貴方の根の葉もない噂を流します。そこから徐々に外枠から貴方の心を追い詰めて騎士として人としての心を壊して魔王城から出てこれないようにします」
「ふざけるな!!よりによってアクシズ教団を選ぶとは貴様アクシズ教か!?そんなことしてみろ!今すぐこの街の住民を血祭りにあげてやる!!」
その時、無苓は一枚の用紙を取り出してベルディアに見せた。
「なんだそれは………?」
「とある人物の契約書ですよ」
下にある名前欄を指すとベルディアの表情が強張る。
何故ならそこにはウィズと書かれていたからだ。
「バ、バカな………!?」
「筆跡を見れば本物かどうかは貴方の方がわかるでしょう?もし、街の住民に手を出したらいくら貴方でもただでは済まないでしょう?」
ウィズが魔王軍の幹部であることは商談の際に《魔眼》の力で知っていた。
そしてその過去は『氷の魔女』という二つ名を持つ凄腕のアークウィザード。
その過去を知った無苓は使えると思い、商談が成功した時に用紙を二枚重ねて容易してカーボン紙を使って商談ように契約書の上から名前を転写させいた。
「街に手を出せばどうなるかこれでハッキリしましたね?」
微笑む無苓に歯を食い縛るベルディア。
無苓がベルディアに見せている契約書には街に襲撃が陥った場合戦場に赴くと記されている。
もちろんこの事はウィズは知らない。
だけどハッタリには十分通用する。
「……ここは互いに大人になりませんか?」
「何?」
襲撃に迷うベルディアを無苓は畳みかける。
「貴方が今日は大人しく帰るというのならここでこの契約書を破りましょう。私も二度と城へ爆裂魔法を撃ち込みません。互いに譲渡し合うということです」
本当に爆裂魔法を撃ち込んでいたのはめぐみんであったが、無苓が前へ出ている以上ベルディアはめぐみんを疑ってもいない。
こちらの被害をゼロで済ませることができる。
「………いいだろう。爆裂魔法を撃ち込まないというのならここに留まる理由もない。今日は見逃してやる」
「騎士として名に誓いますか?」
「誓おう」
「では」
無苓もその場で契約書を破り捨てる。
去って行くベルディアを見て息を吐く。
「さてと、取りあえずは時間を稼ぐことはできましたね」