彼は幻想を愛している   作:ねんねんころり

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遅れまして、ねんねんころりです。

異変が本格化するのはもう少し後の話になりそうです。
前話と今回は永遠亭側の人物の関係性を纏める内容ですので、霊夢側が出てくるのは次回以降となります。

この物語はだらだらとした場面転換、稚拙な文章、厨二マインド全開でお送りしています。

それでも読んで下さる方は、ゆっくりしていってね。


第四章 参 事の始まり

♦︎ 九皐 ♦︎

 

 

 

 

 

 

 

『それでは、失礼します! 九皐さん』

 

『ああ、また夜に逢おう』

 

鈴仙は私用が有ると言うので、彼女の部屋を出てその場で解散となった。夕餉を馳走してくれると息巻いていた彼女は、去り際に毎日三食必ず摂れと言い残して駆け足で去っていった。

 

元が兵役の身故か健康を気遣う指摘は有り難いが、如何せん夕餉までには時間が空いている。廊下を渡って最初の庭先に戻ると、近くで何とも穏やかでない炸裂音と罵声の嵐が耳に入った。

 

『おらあああ!! 今日こそその首千切って埋めてやるわぁああああ!!』

 

『馬鹿ね! そんなデュラハンごっこ一人でやってなさいよバーカ!!』

 

幼稚な煽り合いを繰り返しながら、炎弾と光弾が絶えず衝突する。一人は、先程永琳に折檻されていた姫なる少女。最初に見た時は長く美しい黒髪と高貴な佇まいだったが、今や見る影も無く煤と煙と土塗れである。

 

もう一方は見知らぬ白髪の少女。見た目だけならとても可憐だが、既に何発か被弾していたのか彼女もまた土塗れで服は所々解れている。

 

『またやっているのね、あの二人。それで、コウ…鈴仙は?』

 

『何とかなった…が、用が有ると言うので廊下で別れた』

 

傍らに歩み寄って来た永琳と言葉を交わし、続けて眼前の争う二人を見物する事とした。

 

『もう一人の娘は、姫君の友人か?』

 

『腐れ縁みたいなものね…二人とも《不老不死》だから、殺し合いついでのスキンシップが多いのよ』

 

不老不死か…実際に出逢えるとは思っていなかったが、二人の服装や纏う空気は確かに現代的ではない。

 

楽園において外の世界の常識は当て嵌まらないが、それにしても服の意匠が古めかしい。

 

『もう千年くらいの付き合いね。会う度喧嘩して死んでから生き返るわ、庭中火の粉と穴だらけにするわで…もう』

 

それでも彼女が二人を止めないのは、やはり二人の問題であるのも含めて必要な関わりだと感じているからだろう。

 

『っしゃああああ! 私の勝ちぃ!やっと勝ち越したわ!』

 

『う、うぐ…うぐぐぐ』

 

どうやら二人の戯れ合いは終わった様だ。

白髪の少女は拳を天に突き上げて勝利を喜んでいる。対して姫君は身体に燻る火が消えないらしく、頭から煙を昇らせながらうつ伏せで呻く。

 

数秒の後には、焼け焦げていた筈の姫君は何事も無かったかのように立ち上がった。

 

『確かに、不老不死だな。豪快で結構』

 

『結構じゃないわよ…姫の能力で全部元に戻せるとはいえ、飛び火して屋敷が壊れたら堪ったものじゃないわ』

 

『うん? なんだ輝夜(かぐや)、男が居るじゃないか…まさか』

 

『違うわよ、例えそうだとしても願い下げ。永琳に殺されるもの』

 

姫君は死なない筈だが、永琳には何か秘策が有るのだろうか。兎も角、隣にいる彼女は顔を赤らめつつ姫君達に殺気を放っているので、宥める方法を見出さなくては。

 

『お巫山戯が過ぎますよ? 姫…?』

 

『はいはい、それより其処の、ヒト? じゃないわね。妖怪? 違うかも…ええと』

 

『庭で逢うのは二度目だな、名も知らぬ貴き姫君よ。私は九皐という…宜しく頼む』

 

私の挨拶を聞き届けると、彼女は右手を突き出して来る。細く嫋やかな指が実に美しいが…どうしろと言うのか。

 

『《蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)》よ。ねえ? 特別に触れるのを許すわ。手を取って、私を縁側に連れて行って頂戴…疲れてしまったの』

 

『あーあ…知らないわよ私は、こいつ男に褒められるといっつもコレなんだから』

 

『姫、辞めて置いた方が身の為ですよ』

 

白髪の少女と永琳の言葉の意味は判然としないが、彼女の手を取って縁側へ導けば良いのか。

 

『では、失礼する』

 

『ーーーーーーえいっ』

 

彼女の手を握った直後、指ごと掌を強く握り返される。別段力が強い訳でも無い、可愛らしい少女の力加減だ。

 

『え、マジか…ちょっと永琳、誰なのよこのヒト』

 

白髪の少女と、何故か目の前の姫君は驚愕の表情で私を見ている。問われた永琳は深い溜息を吐き、しかし得意げな表情で応えた。

 

『私が言えた事じゃないけど、不老不死が長いと気を読むのも雑になるのね。姫に握られて無事ってことは、そういう事。注意するけど、戦うなんて考えない方が良いわよ? 探れば分かるわ』

 

鈴仙に促した時と同じく、二人に向かって私を覗いてみろという話らしい。握られた手の意味が全く分からない私は、彼女等の視線に晒されている状況に任せるしか無い。

 

『おいおい…何処まで深いんだ? 底が見えないじゃない』

 

『見えないってより…底なんて無いって感じだわ。これ以上覗くのはヤバいわね』

 

私の内側を探る姫君の手は、心なしか汗ばんでいる様に感じる。鈴仙よりは(のめ)り込まずに済んだのは重畳だが、私が知る由も無い話題なのは変わらない。

 

『分かりましたか? 如何に姫と(いえど)も、礼は尽くすべきです』

 

『う、うん…分かった』

 

『こんな奴も居るのね…私や輝夜じゃ、アリンコと象くらい差が有るよ』

 

『正確に言えば…もし私と彼を比べても、てゐと姫くらい差があるわよ。勿論、彼の方が強いわ』

 

『ふむ…皆は強さの話をしていたのか。だが、その話と握られた手に関係は有るのか?』

 

全く蚊帳の外だった私に、永琳を含めた三者は三様の反応を見せる。白髪の少女は急に笑い出し、姫君の方は目を瞬かせている。永琳は…私に呆れ果てているのが分かる。

 

『はぁ…貴方は昔から、格下相手にもその対応だったわね。だから余計な恨みを神々から買うのよ?』

 

『力の強弱など、拳も交わさず競った所でどうなる。そんな物は、実際に勝った後か負けた後に考えれば良い』

 

私の無自覚が原因なのは彼女の言から察しはするが、かといって納得出来たかと言えばそうでも無い。そして永琳よ、若かりし頃の話はしてくれるな。

 

『スケールが違い過ぎて悔しがる気にもならないわ』

 

『あっはっはっはっ! 駄目だ!永琳でもてゐと同じって、無理無理! ぶっ! はっはっはっは!! 輝夜、ざまぁないわね!』

 

白髪の少女は何が面白かったのか、先程からずっとこの調子だ。庭を笑い転げた挙句、姫君も揶揄われているのに反論も出来ないでいる。

 

『個性的だな、この少女は』

 

『そうね…ちょっと変わってるの。あの娘は色々と特殊だけれど、気にしないで』

 

それは構わないが、未だ私と姫君の手は繋がれたままだ…所在無い事この上無い。とりあえず、姫君の足が疲れているならば付き添うより抱えて運ぶ方が効率が良い。

 

『縁側だったな』

 

『ふぇ? きゃっ!』

 

姫君を身体ごと腕に抱えて縁側へと歩いて行く。

天真爛漫な印象の彼女だったが…抱えられている今は借りてきた猫より大人しい。

 

『あ、う…はなしなさいよぉ』

 

『着くまで待て』

 

目的の場所まで弱々しい口振りの姫君を運び終わると、白髪の少女は持ち直した様子で私に話し掛けて来た。

 

『さしもの輝夜も形無しだったわね。結局恥ずかしがって部屋に篭ったみたいだし。改めて名乗るよ、私は《藤原妹紅(ふじわらのもこう)》…一応人間だ』

 

『宜しく。君も永遠亭の住人なのか?』

 

『偶に泊まらせて貰うだけで、永遠亭とは近からず遠からずよ。何百年か前に、竹林に小屋建てたから近場に住んでるけどね』

 

快活に笑う妹紅は、去ってしまった姫君とは千年以上の交流が有るという。姫君との浅からぬ因縁を窺わせる遣り取りから、深く追求するのは野暮というものだろう。

 

『九皐…さんは、どれ位生きてるんだ?』

 

『私の歳か…少なくとも、永琳が童の頃には齢数万程度だ。其処から先は数えていない』

 

『ひゃー…私の千年なんて豆粒以下じゃないか』

 

『独特な例えだ……まあ、年数など重要ではない。これまでにどう生きて、これからをどう生きるかが大切だ』

 

妹紅は目を見開いて、私の言葉の真意を噛み締めている様だった。何か不味い事を口走ったのか…それとも、

 

『ーーーーそうよね。どう生きるか、だよね…うん! 気に入ったよ! もし人里か竹林で逢ったら、また話そうな! じゃ、私はこれから行く所あるから…またね!』

 

縁側に座っていた妹紅は立ち上がり、術らしき力で生み出した炎の翼を広げて飛翔する。

 

不老不死の少女、炎の翼で竹林の奥へ飛び去る姿は…さながら不死鳥の如く雄々しかった。

 

『…皆、居なくなったな』

 

『コウ…』

 

『何を隠している…私には、話せぬ事か?』

 

彼女は直ぐには答えない。

次々と永遠亭に所縁の有る者が屋敷を離れ、此処には最早私と永琳、部屋に居る姫君しか残っていない。

 

不自然な点が多い…僅かな違和感だが、永琳が鈴仙に覚悟を求めた理由や、急ぎではない素振りを意識させながら足早に消えて行く妹紅、因幡。そして…私の行く先々に決まって現れる彼女。

 

私が鈴仙から読み取った負は、あの娘の懊悩だけではない。それに気付いているからこそ…永琳は私から目を離さないのだ。

 

『ーーーー月の追手が、私達を直ぐそこまで嗅ぎつけているの』

 

『……成る程な。しかし、楽園には大結界が施されている。月の眼とやらは結界を抜けて尚、君達を捉えられるのか?』

 

永琳だけではない、永遠亭には月から逃れた者が少なくとも二人…鈴仙と姫君が居る。彼女の言葉から憶測を重ねれば、月の上役共の眼が幻想郷に向いているとするのが妥当な線だ。

 

『時間の問題です。早ければ明日には、私達は奴等に捕捉されることでしょう』

 

月の眼から逃れる為に…永琳は何かを起こそうと準備している。幻想郷における異変と、その裏で推し進めるもう一つの何かを。

 

『異変を起こせば、解決者が此処へやって来るのは必至。それはさして問題ではないの…重要なのは幻想郷で副次的に起こす異変が終わる前に、私が月の干渉を跳ね除けられるかどうか』

 

『月の使者が楽園に入り込めぬ様に、術式を組み上げる時を稼ぐ訳か。異変はあくまで幻想郷側に悟られぬ為の餌だと』

 

話せば理解を得られる…という内容ではない。元を正せば、原因は月との蟠りを持つ永遠亭の面々に有る。

 

幻想郷は全てを受け入れる…裏を返せば、幻想郷が外部からの侵略や過ぎた干渉を受ければ、この前提は瞬く間に覆ってしまう。

 

万が一、月の民が楽園を顧みず永琳達と争えば…遠因となった彼女達は幻想郷の庇護を受けられない。孤立した永琳達は何れ月の刺客に捕らえられ、死なぬとなれば非道な実験台や下衆の慰み者とされるのは想像に難く無い。

 

『ーーーーさせぬ』

 

私が月で味わった苦々しさを…それさえ凌駕する悠久の責め苦を彼女等に与える等、誰が許すものか。

 

『月の干渉を防ぐ手立ては有るのだな』

 

『月からの通路を閉じる術を使うわ、術式も既に完成している。明後日は丁度満月…月の全面が出て初めて条件が揃う。術を行使してから完了までは私でも半日掛かるから、どの道足止めが必要ね』

 

術中の経過として、幻想郷から見る月の姿はこれまでとは違う趣となる筈。時間稼ぎにしても、異変解決者を相手取る中で完遂するのは困難を極める…となれば。

 

『では、君が事を為す迄来客の気を引くとしよう。決行が二日後なら…私も此処で待つ』

 

『幻想郷には一時的に結界を張って置くわ。それを解決者に調査させている間に月側の路を断つ…ごめんなさい、私達の身勝手に貴方を巻き込んで』

 

『案ずるな…君達が楽園に在りたいと願うなら、私は協力を惜しまない』

 

月の者共に勝手はさせぬ。地上へ降りた彼女等の事情がどう有れ、楽園を漁られた上傷物にされるのは全く以って不快だ。

 

此度の異変の表と裏…表は幻想郷に裏を気付かせぬ事。裏は永遠亭の平穏と安寧を護る為。そして楽園の在り様を歪ませぬ為。

 

二日後の夜…私も異変の片棒を担ごう。永き夜の宴には、私自身も切って捨てられぬ思いが有る。

 

許せ、友よ…我の過去、忌まわしき中にも希望の灯る在りし日が、彼女等を助けよと強く囁く。

 

見捨てる事は出来ない…此処には、失ってはならないモノが溢れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎ 蓬莱山輝夜 ♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんなのよ…調子狂うわね』

 

部屋に敷かれた布団に飛び込み、抱き上げられた自分を反芻する。今まで言い寄られこそすれ、誰も彼も私の外見や地位だけを目当ての者しか居なかったのに。

 

アレはそういうのでは決して無かった。永琳に窘められて彼の内側を見た時は藪蛇を突いた心境だったけど、彼は快く私を運んでくれた。

 

『もしかしたら…失敗するかもしれないのに』

 

二日後の異変を前にして私の心は無関係な事柄に…そう、浮かれていた。ごつごつとした、大きく温かな手が私に触れて…初めて胸の高鳴りを自覚した。

 

『こんなんじゃ駄目…妹紅に揶揄われて反論も出来ないなんて、どうかしてる。気の迷いよ、きっとそう』

 

言葉とは裏腹に、不謹慎な動悸は治ってくれない。

深淵に包まれた…心地よい闇に身を委ねている様な感覚、彼の胸板の逞しさに、どうしようも無く掻き乱される。

 

『永琳も、そうなのよね…付き合い長そうだったし』

 

しかし、彼には分からない事が多過ぎる。敵では無い…むしろ慈しむ視線さえ放たれていた。

 

奥底に眠る彼の本質を捉えるには、存在の密度…距離みたいなモノがとても邪魔に思える。

 

『今更こんな気持ち…誰かに抱くなんて、最悪』

 

彼の不器用そうな笑顔が頭に焼き付いている…もう少し、もう少し待って欲しい。せめて異変が終わるまでは…過去に一先ずの決着をつけるまでは。

 

浮かんでは消える彼の姿を夢想していると、不意に襖の向こうから声が聞こえた。

 

『姫様? お夕飯が出来てるってよー?』

 

この声は、てゐね。軽い口調と跳ねる様な声音が彼女だと確信させ、気怠い身体を起こして彼女を迎える。

 

『分かった…今行く。そのーーーーアイツは?』

 

『あいつ? ああ! お兄さんね、お師匠が言うにはあのヒト…泊まり込みで異変に参加するみたいだよ? 詳しい事は食べた後に話すってさ』

 

『そう…なんだ。ふうん、ま、別に良いんじゃない?』

 

予想外の彼の逗留に、あからさまに喜んでいる自分がいる。目の前の兎の反応から悟られてはいないみたいだけど…平静を心掛けていないと、自分が思わず迂闊な事をしそうで油断ならない。

 

『にしても不思議な空気持ってるよねー、お兄さん。気配は真っ黒なのに、あったかいって言うか…うん! 大きいね! 器? ってやつ』

 

物言いは間抜けっぽいけど、そうかもね。野生の本能ってやつかしら…当たりよ、てゐ。

 

『さあ、行くわよてゐ。折角イナバが作ってくれた料理が冷めちゃう』

 

『はーい』

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎ 藤原妹紅 ♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

永琳に言われた通り、竹林の周辺見回りと御札を貼り終えて…今は永遠亭に向かっている。

 

月の奴らが来たら、輝夜達だけでなく私まで連れて行かれる可能性が有ると言う。此処での生活は私も満更でないから、拉致されて実験台にされるのは御免だ。

 

『明後日には異変開始だな…輝夜達と組むなんて、意外だったけど』

 

一人で生きてきた時間が長かった所為か、明日こそばゆい感じがする。新入りの顔も拝めて有り難い言葉まで貰ってしまった。

 

『これからをどう生きるか…ね。重みあるなぁ』

 

独りごちる私に応えるモノと言えば、虫の音と月明かりくらいのものだ。迷わず永遠亭へ進みながら、九皐の言葉を復唱する。

 

彼の存在は大きい…見た目もそうだが、抱えているモノが兎に角果てしなかった。私など及びも付かない長い長い時間を生きる彼の言葉は、簡潔明瞭にして含蓄のあるモノだった。

 

『あの場に居たって事は…手伝ってくれるって事よね』

 

私達の異変はともすれば、幻想郷には迷惑でしか無い事情を孕んでいる。此処に残りたいが為に、月の干渉を今後寄せ付けないのが目的の戦い。

 

《蓬莱の薬》と呼ばれた秘薬を飲んだ私、輝夜、永琳のそれぞれの利害が一致した結果、異変解決に乗り出す者を足止めする必要が有る。

 

見回った先々で御札を貼って罠を仕掛けたのもそう。失敗したら後も無ければ先も無い。

 

『最初の三百年は、死にたくて仕方なかったのに。現金な性格だよね』

 

潔く月に行くには、捨てられない思い出や愛着を持ち過ぎた。これまでには起こらなかった変化に戸惑いつつ、私の決断は早かったと思う。

 

夜に浮かぶ月は、二日後には満月となる。永琳が術を敷く間、残りの面子はそれを死守する。簡単に纏めたが、難しいのは分かっている。

 

『それでもやらなきゃね…これからを生きたいもの』

 

詳しい話は、恐らく夕食の後にでも改めてされるだろう。月の連中に好き勝手されて玩具に成り下がるのは嫌だ…どうしても嫌だ。

 

輝夜と殺し合って、永琳に怒られて、てゐや鈴仙に馬鹿話として披露する日常を…壊されたくない。

 

だから、彼は彼処に来たのかも知れない。手紙で呼んだって聞いたけど…助けてくれるならどれだけ心強いか。

 

『大暴れするだけして、出来るだけ困らせてやるわ』

 

視線の先には、見慣れた屋敷が映り始める。

彼はまだ居るのかな…覗き見た力だけでも、月に対抗するには充分に感じたけど。

 

あと二日…二日しか無い。爛々と輝く月を見上げれば、今宵のソレは何時になく嘲笑っている様で、不意に奥歯を噛み締めた音がやけに遠く聞こえた。

 

(あんた)に必ず吠え面かかせてやるから、心してやって来なさい。自分達の居場所は、自分達で勝手に決められる。見も知らぬ連中に…いちいち口出されて堪るもんか』






輝夜や妹紅のキャラクター性が掴めず、難儀しておりましたが、悩みつつも止まれない現状にどう向き合うのかを書いてみました。

長々と続く永夜抄編ですが、一番の見せ場はやはり主人公が務める事となりそうです。

長くなりましたが最後まで読んで下さった方、誠にありがとうございます!

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