彼は幻想を愛している   作:ねんねんころり

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遅れてすいません。ねんねんころりです。
今回文字数少なめです…日が空きましたのに申し訳ありません。

この物語は物凄い超展開、稚拙な文章、厨二マインド全開でお送りします。それでも呼んで下さる方は、ゆっくりしていってね。


第三章 四 ただ在れかしと

♦︎ 博麗霊夢 ♦︎

 

 

 

 

 

紫との弾幕ごっこ、もとい死闘はこれまでに無い様相を呈していた。互いが一歩も譲らず、しかし余力を残した節さえ有る。空中を彩る光の粒、魔弾と霊弾の弾き合いが生まれては消え、消える度に次を繰り出す。

 

一方的に圧される事は無いが、紫の《境界を操る程度の能力》の前に有効打を決められない。

 

かく言う私も…放たれる看板付きの鉄柱や長く太い鉄の箱の弾幕を避け続け、既に何十何百の撃ち合いを演じている。

 

『退きなさい霊夢。能力を駆使した戦いでは周囲に直接干渉出来る分、私が有利よ』

 

『そういう事は当ててから言いなさい!』

 

時折言葉を交わしながら、止むことの無い弾幕勝負は膠着を続ける。

 

『人間の体力では何れ限界を迎えるわ。怪我する前に降参しなさい!』

 

『異変解決しに来て降参なんかする訳無いでしょ!』

 

まるで子供の喧嘩みたいね…こいつと揉めた時はいつもそう。だからといって譲るなんてあり得ない。

 

繰り出される弾幕は両者とも必殺。霊力弾が当たれば紫とて無事では済まないし、私にしても一発貰えば重傷は避けられない。

 

『…分かって頂戴、貴女を失いたく無いの』

 

それは親が子を慈しむ様な言葉で、本当なら私も帰ってのんびりしたい。確かに…九皐に任せておけば間違いは無いでしょうけど。違う、そういう事じゃ無いのよ。

 

不意に張り巡らされた弾幕と結界の嵐が止み、紫の真摯な視線は私を見据える。

 

『紫…私はあんたが居てくれたから、今までやってこれた。それは感謝してる…けどね、やっぱり譲れないわ』

 

『それは、貴女の意地?』

 

『私達の、異変に対する覚悟よ。初めて異変解決に乗り出す前、あんたは私と魔理沙に言ったわよね? 妖怪が生きる為に異変を起こし、人間がそれを解決する。妖怪が人々に恐れを抱かせて必要な分の存在の力を得たら、人間と共に生きる為に手を取り合うんだって』

 

幻想郷の不文律、たった一つの定められた掟。スペルカードルールの下に、お互いを理解する方法。

 

『御免なさい…今回ばかりは、私も貴女に行って欲しく無い。怖いのよ…どれだけ長い時を生きても、大切な友人を失うのは、怖い』

 

『……決裂ね、あんたと揉めたときはいつもだけど…こういう時は、決まって真っ向勝負で勝った方の我を通す』

 

『ええ、そうね…勝った方の言うことに従う。今回もそれでいきましょう』

 

目一杯の霊力を私は練り上げ、紫は有りっ丈の妖力を解放する。全く、変な所が似た者同士だから…この遣り取りも何度目かしらね。

 

 

 

 

 

 

 

『ーーーー《深弾幕結界-夢幻泡影-》ーーーー』

 

『ーーーー《夢想天生》ーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

全てを賭けた最後のスペルカードが開放される。

私は凡ゆる事象から宙に浮き、紫は凡ゆる事象の境界を操る。

 

人は定められた道であろうとも、己が意思で歩き見果てぬ夢を想う。しかし夢は儚く、人の世と生は余りに短い。

 

二つの似て非なる理から放たれる弾幕の拮抗は、認め守り合いながら時に争う楽園の人と妖の在り方そのもの。

 

無数の光線は包囲網を敷き、視界を弾幕の光彩一色に染め上げる。魔弾と光線、霊弾と光玉は絶えず冥界の空を交差し、何もかも幻だった様に淡い残滓を残して消えて行く。

 

『霊夢…よく此処まで、磨き上げたわね』

 

『まだまだこんなもんじゃ無いわよ』

 

何気ない言葉の応酬とはかけ離れて、終わりの時は近づいていた。紫の操る境界の力は、弾幕を敷いた空域全てに及んでいる。冷酷なまでに集約された数多の高位結界が標的の動きを制限し、魔弾と光線の檻が動かぬ的を射殺す。

 

それでも、絶対的な妖怪の仕掛けた一手は私には届かない。ただ一つの特異点、境界を操る賢者の支配する領域で私だけが…唯一何にも害される事なく浮かんでいる。

 

『ただ浮いているだけでなく…私の結界を塗り替えていくなんて、本当に我儘ね』

 

『三日会わざればなんとやらよ! 分かったらーーーー』

 

陣取りゲームの趨勢は決した。

弾幕ごっこも宴も闌、さっさと認めて道を譲れ!

心配性のお節介め、ちゃんと上手くやるわよ! 要は異変の首謀者ぶっ飛ばして、桜を何とかすればいい!

 

『黙って見てろ! 人間、舐めんなぁーーッッ!!』

 

私の一声と共に、紫の結界は砕け散った。

あいつに別段怪我など無いけど、妖力の大半を費やした状態では勝負は見えている。完膚無きまでに、私の完全勝利だ。

 

『はぁ…さっきの言葉、使い方間違ってるわよ。でも、良いわ。試合には負けたけど、もう一つの勝負は勝てそうだから』

 

『何の話よ? 負けた癖に偉く潔いじゃない』

 

『はいはい…ほら、早くお行きなさい。コウ様に先を越されるわよ?』

 

わかってるっての!

心の中で毒づいて、魔理沙を紫に任せて階段を再び飛翔する。余計な時間使ったけれど…まだまだ先は長そうだ。

 

 

 

 

 

 

『にしても…ほんっと長い階段よね』

 

目算あと半分手前といったところ。

中腹と思しき場所には開けた空間が用意されており、漂う何者かの気配を感じて足を下ろした。

 

『止まりなさい! 此処から先はーー』

 

『私とお前の勝負だぜ!』

 

眼前の少女が口を開いた直後、私より先に応えた聞き慣れた声が聞こえる。

 

『何!?』

 

『あんた、回復早過ぎるわよ』

 

箒に乗って空を飛ぶ金髪白黒の魔法使いが、何事も無かったかのように飛来した。

 

さっきまで寝ていた筈なのに、よっぽど元気有り余ってるのね。

 

 

 

 

 

 

♦︎ 霧雨魔理沙 ♦︎

 

 

 

 

 

 

『次から次へと…しかし通さぬ! あの御仁が西行妖を止める迄はーー!』

 

『先に行けよ霊夢。本命は譲ってやる…剣士の方は私に任せな!』

 

霊夢と紫の戦いを途中で起きて見ていた私は、魔力がすっからかんの状態で満足に動けなかった。今も本調子じゃないが、パチュリー直伝回復薬を飲んで何とかといった具合。

 

威勢良く啖呵を切った銀髪の剣士を前に、足止めくらいは出来るだろうと考えて霊夢に先を促した。

 

『そ、ありがとうね』

 

『おう…さっさと解決して来いよ』

 

悔しいが、霊夢と私じゃ持ってる力の量が違う。紫とやり合った後だったのに、涼しげな表情の親友は短く応えて階段を上がって行く。

 

『邪魔はすんなよ? 背中見せたら撃ち抜くぜ?』

 

『愚かな…如何に紅白のアレが噂に聞く博麗の巫女とはいえ、一人で幽々子様に勝てるものか!』

 

『そいつはやってみないと分からない。見た所、お前も一応人間だろ? 人間やれば何とかなるもんだ』

 

忌々しげに舌打ちした銀髪の女は、背に携えた二振りの剣を抜き放つ。生粋の剣士の放つ気配は何処までも鋭く、自然な動作で構えを取った。

 

『お前も、私の弾幕ごっこに付き合ってくれよ!』

 

『それで良いならやってやる。妖怪が鍛えし我が剣に、斬れぬ物など殆どない!』

 

ノリの良い奴で助かるぜ、私を早く片付けて霊夢を追いたいらしいが…根気の要る勝負なら幾らでもやりようがある。

 

『さあ、弾幕ごっこの始まりだ!』

 

『巫山戯た魔法使いめ!』

 

銀髪が繰り出す高速の斬撃は、刀身から通常の小型弾や長く平べったい衝撃波じみたモノまで様々な弾幕を展開する。

 

私には奴の手捌きがまるで見えない。弾幕ごっこには違い無いが、フランや霊夢というよりは紅霧異変の美鈴を相手にした時に近い。

 

近接からの斬撃は、地上における水平な立ち位置を想定した物が多い。近寄られた時の対処さえ怠らなければ、充分渡り合える!

 

『剣技だけが、私の持ち味ではない! この身は半人半霊…分身たる半霊との合わせ技を受けろ!』

 

妖夢の傍らの白い煙、アレは半霊って言うのか。

半霊が光を放ち、巨大な青色弾が剣士の前に生成される。

 

『獄界剣ーーーー《二百由旬の一閃》!!』

 

スペルカードの宣言と同時に、奴は青い大玉を一刀の下斬り伏せる。真っ二つにされた弾は、断面から無数の小型弾を所狭しと発射した。

 

『はあああああッッ!!』

 

二刀から生み出される剣圧は斬撃として放たれ、低速と中速、そして高速の多様な弾幕が入り乱れ押し寄せる。

 

『おいおい! こっちは本調子じゃないんだ! 少しは空気読め!』

 

『知らん! 真剣勝負に手を抜くは剣士の恥だ!』

 

言ってくれるじゃないか、その意見には同意するが避けてるこっちは堪ったものじゃない。

 

『ったくよお! こうなったらーーーーうっ!?』

 

『な…何だ、この気配は?』

 

一瞬にして、冥界を取り巻く状況が一変した。

暗く、昏く、黯く。漆黒の帳が冥界を揺るがす。

周囲の景色は黒い靄を帯びた銀一色に塗り潰され、飛行もままならない程の重圧がのし掛かる。

 

 

 

 

 

『■■■■■ーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!』

 

 

 

 

 

 

冥界の桜の聳える場所から、私達の耳朶を震わせる咆哮が響き渡り…私も剣士も動きを止め、ある一点に眼を奪われていた。

 

鎧の如き肢体、刺々しい肩、背鰭、尾、翼。

発達した腕と脚、身体中に伝う銀色に発光する管の様な筋。二足で空に浮かぶそれの…圧倒的な存在感。禍々しく、美しさすら感じてしまう力の塊。どこか覚えのある感覚に、似ても似つかぬアイツの姿が幻視される。

 

『なんだアレ…あんなヤツ…何時から居たんだ!?』

 

『冥界全体が戦慄いている…! なのに、この感覚はーーーーまさか!?』

 

私達は戦っていた事も忘れ、地に跪いてそれを見上げた。

冥界の頂に現れた、深淵を纏う竜の姿を。

 

 

 

 

 

 

 

♦︎ 九皐 ♦︎

 

 

 

 

 

 

 

『……忌まわしき妖怪桜、西行妖』

 

真の姿を此処に現し、見下げる古木に一人呟く。

応えは無い。意思無き死を齎す古木…その裡に巣食う悪しき力に、最早刹那の胎動さえ許せはしない。

 

『我は、深淵より来りし者。汝の凶行、実に不愉快極まる…負に穢れし貴様に、我が怒りを刻んでやろう』

 

冥界を蹂躙する力の波は、此処に在る全てを下僕の様に傅かせる。視界の端々に見える各々の畏怖、戦慄、負に向かう存在の発する命の光は名残惜しく、だからこそ眩いと思える。

 

『特性解析、完了。識別固定、完了。術中掌握、完了ーーーーーー別たれよ』

 

紡いだ言葉に従って、西行妖に眠る楔、蠢く死の源、古木、亡骸を選り分け一つ一つを分離させる。

 

楔は枯れぬ桜の礎と書き換え、亡骸はそのままに、古木には只の樹として、死の源だけを奪い去る。

 

『還れ…死に歪められ、変わり果てた虚しき古木よ。今こそ、悪しき衣を脱ぎ捨てる時』

 

急速に変化を遂げる西行妖は、溜め込んでいた春の欠片を次々と吐き出し楽園へ還して行く。

 

最後に滲み出た死の源は、どす黒く淀んだ川底を思わせる

核を取り出され、我の翳した手の内に収められた。

 

 

 

 

 

『ーーーー《総体変換・負極浄一(そうたいへんかん・ふきょくじょういつ)》ーーーー』

 

 

 

 

 

掌に留まる核を、敷いた理の下に握り潰す。

負を操る力…負とは遍く禍、禍とは遍く死、死とは無、無は闇、闇は我。我が理に違う事無く、死を運ぶ西行妖の妖足らしめていた核は吸収された。

 

鮮やかにも冷たい花弁を実らせていた古木は、今後他者の精気を蒐める性質を失うだろう。だが、既に冥界に永く在り続けた古木は生と死の狭間で存在を変異させている。

 

いつかは自力で花開く。それは書き換えた楔の機能の通り、咲き誇る西行妖を拝みたいと願う者の心の光を受け取って。根の巡る土の中で、嘗て亡骸になる前の少女が父の愛した樹を慮った様に。

 

『西行妖、いや…西行桜よ。只在れーー見る者の心に花の美しさを添え、永久に在り続けよ』

 

竜化を解除し、冥界を覆う力を肉体に収束させる。

人型に戻った私のやるべき事は、未だ終わっていない。

 

『さて…西行寺幽々子に掛けた暗示も解けた筈だが』

 

そして彼女の前に伏して詫びよう。止むを得ずとはいえ、精神の向きを弄った代償は払おう。紫の沙汰も仰がねば…最悪死ぬか、楽園を追放か。

 

広大な屋敷の正門を抜け階段下に視線を送ると、予定通りに西行寺幽々子と霊夢の姿が確認できた。

 

『霊夢、西行寺…桜に最早害は無い。開花しようとも、何も起こらぬ』

 

双方は振り返り、異変に係る原因の排除を伝えた。

伝えたが、霊夢と西行寺は睨み合ったまま距離を保っている。

 

『だそうよ? 此方は良く分からないけれど、私の異変は終わりみたいね…全然上手くいかなかったわ』

 

『アイツに聞きたい事は山程あるけど…まずは起こした異変の始末はつけてもらう。九皐も! 黙って見てなさい!』

 

取り付く島も無いといった体の霊夢に、私は黙して成り行きを見守る。

 

『決着はつけるわよ。これは異変…首謀者は異変解決者に勝つか負けるか、二つに一つよ』

 

『それで…負けた私はどうなるのかしら?』

 

『決まってるでしょーーーー』

 

言葉の途中で、霊夢は宙に舞い上がり、練り上げた霊力を表に出した。彼女の表情は思いの外清々しげで、肩の荷が降りた様に不敵に笑う。

 

『あんたが負けたら、宴会開いて酒を飲ませろ! 費用は全額そっち持ちよ!』

 

『負けられないわね…博麗の巫女は蟒蛇らしいから』

 

西行寺も空を翔け上がり、暗々とした冥界に幾度目かの光の粒が灯される。

 

これで良かったのだ…何の憂いも無く、何も気にせず。

微笑みを交わし撃ち合う少女達の姿は、私にとって何にも勝る報酬だ。

 

『そんなもん効かないわよ!』

 

『面白い娘ね、私が勝ったら是非貴女も亡霊にして側に置いてあげるわ!』

 

今は己の犯した罪も忘れ、その光景に想いを馳せる。

儚くも鮮烈な蝶が舞い、雄々しく凛々しい光が交差する。

 

異変は元より人間と妖怪達のモノ。彼女等の聖域に、私の手はもう必要無い。

 

『おりゃあああああ!! 成仏しろやああああッッ!!』

 

『嘘!? お祓い棒で殴るなんて反則よーーーッ!?』

 

 

 

 

 

 

数えればものの半時、春を集めた冥界の異変は…前回と同じく博麗の巫女が勝利を収めた。

 

 

 

 

 

 

『いったぁー…死んでるのに死ぬほど痛いわぁ』

 

『完全勝利! 漸く一件落着ね』

 

『いや、そうも行かない』

 

最後の一撃にお祓い棒で頭を叩かれて蹲る西行寺に、私は膝を付き罪状を述べる。

 

『君に暗示を掛け、一足先に西行妖を止めさせて貰った。理由はどうあれ、君の心を弄んだ私の罪は…君の手で裁かれるのが当然と思う』

 

『……お気になさらず、とは申しません』

 

彼女の手が振り上げられる。

私は瞑目し、彼女が上手くやれる様にと願いながら…自らの死を待った。

 

待ったのだが、一向に最期の刻は訪れなかった。

 

『………どうした?』

 

『どうしたも何も、この通りですよ。頭に平手打ちです』

 

平手打ちと西行寺は言うが、どう見ても頭に手が添えられ、二度三度撫でられただけだ。亡霊の少女は柔らかな笑みを浮かべ、それ以上は何もしない。

 

『貴方の去り際に、遠くから聞こえましたわ。紫の涙に怒りを覚えた貴方は、無知な私に代わって手を尽くしてくれたのですよね?』

 

『結果的に、だ。言い訳には出来ない…これでは』

 

『罰にならないと、コウ様は仰りたいのでしょう?』

 

西行寺の傍らに、スキマが形成され紫が現れる。

彼女もまた私に微笑みで返すが、ぎこちないのは彼女の相談から始まった事に責任を感じているからだろう。

 

『此度の強行は、私が西行妖への対策が遅れたが為。コウ様が罰をお求めなら、私も共に受けねばなりませんわ』

 

『待て、紫に非は無いのだ…これ以上は話が拗れてしまう』

 

『もう充分拗れてるけどね…私なんか置いてけぼりも良い所よ。それに、下を見なさいよ』

 

霊夢が横合いから指差した方向を見やると、妖夢と魔理沙が弾幕ごっこを再開していた。

 

『うおおおおおっ!!』

 

『はあああああっ!!』

 

互いに雄叫びを上げて拮抗状態の二人は、状況を分かっているのかいないのか…頭の痛くなる光景だが、これはこれで微笑ましいと言えよう。

 

『こら! なにボサッとしてんのよ! アレを止めて来なさい! 二秒で!』

 

『…私が止めるのか?』

 

『あー、それは良いわね…罰をお受けになりたいと言うならアレを止めて頂きましょう。ねえ? 紫』

 

『はぁ…そうね。もうそうしましょう…お手数ですがコウ様? 罰の内容は、妖夢と魔理沙を無力化するという事で、お願いしますわ』

 

有耶無耶にされた気もするが、紫と西行寺が決めたなら致し方無い。これを罰と呼んで良いか甚だ疑問ではある…妙な落ちが着いたものだ。

 

『良い!? 二秒よ二秒!』

 

『うむ…二秒だな』

 

頂の屋敷から跳躍し、階下で戯れる二人に向かって肉薄する。

 

『うぇ!? ちょ、乱入は反則だぜ!?』

 

『貴様が言うな! このーーーーみょん!?』

 

銀の波濤が、弾幕の蔓延る空域を魔理沙と妖夢諸共包み込む。屋敷に残る三人は声高らかにそれを笑い、私に巻き込まれた二人も負けじと技を競って来る。

 

一先ず私が経験した二度目の異変もまた、遺恨を残さず終わる事となった。

 

背に聴く暖かな声に包まれ、水を差した私へ果敢に挑む二人の真っ直ぐな瞳が愛おしい。紆余曲折を経たものだが…私の行動は、全くの無駄では無かったらしい。

 

 

 

 

 

 

『…細かい事はまた今度聞くから、私達をちゃんと送り届けなさいよ。転移だかっていう術が使えたから先に着いたんでしょ? じゃ、よろしくね』

 

『私も頼むぜ!』

 

『私もお願い致しますわ! 勿論行き先はコウ様のお家で!』

 

余談だがーーーーー、案外私と近しい少女達は皆良い性格をしている事も…此度の異変にて判明したのだった。

断じて皮肉では無い…少しばかり、釈然としないだけだ。

 

そして紫よ…君はスキマを使えば、あの場は自力で帰れたのでは無いだろうか。




短めな内容で、重ねて申し訳ありません。
次話にて妖々夢編は終了となりますが、次回は冥界での後日談的内容を予定しています。

長くなりましたが、最後まで読んで下さいまして、誠にありがとうございます!

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