Fate/GrandOrderとセブンスドラゴンシリーズを混ぜてみた   作:白鷺 葵

18 / 28
【諸注意】
・もしもカドックが契約したのが異星の神ではなく、我が家の統合者(どこぞの宇宙にいる最後の竜にして人類の権化)だったら。
・もしも拗らせる前のカドック主従が、セブンスドラゴンⅢの世界に放り込まれたら。
・EXTELLA形式のように、カドックが「ナナドラⅢを実体験していた記憶と魂」と「1年間意識不明だった本体」に別れたら。
・蛇足。
・時系列は2部1章終了後、2部攻略中。
・アヴィケブロンの独白+カドックの独白メイン。
・第2部1章攻略中に、アヴィケブロンとユウマが会話をしている。
・退場した順番はアヴィケブロン⇒ユウマの順番。
・アヴィケブロンは2部1章の記憶を、朧げながらも記録として有している。
・この物語の主人公=ぐだ男/調(しらべ) 律治(おとはる)
・『百花繚乱クロニクルセブン』の世界観に関するネタバレに抵触する可能性がある。あちらの方でも大分バレバレだが、注意してほしい。
・クロスオーバーのバランスはナナドラ>越えられない壁>FGO(重要)。
・クロスオーバーのバランスはナナドラ>越えられない壁>FGO(重要)。
・クロスオーバーのバランスはナナドラ>越えられない壁>FGO(重要)。
・クロスオーバーのバランスはナナドラ>越えられない壁>FGO(重要)。
・真竜がFate関連要素をこき下ろす言動が出てくる(重要)
・真竜がFate関連要素をこき下ろす言動が出てくる(重要)
・真竜がFate関連要素をこき下ろす言動が出てくる(重要)
・セブンスドラゴンⅢ-code:VFD-の容赦のないネタバレ。


アヴィケブロン「彼はちゃんと、彼が友と呼んだ人物と“友達”になれただろうか」

 マスター、僕の唯一の友よ。少しの間だけ、話し相手になってくれないだろうか? あまり長くならないよう努力はしてみるが、難しいかもしれない。

 キミが忙しいのなら無理にとは言わないが……そうか、ありがとう。今、コーヒーを淹れてくる。友人を放置する程、僕は人でなしではないよ。

 

 ――さて。

 

 以前、僕はマスターに話したことがあったね。僕にとっての“友達”とは、『自分の間違いを真正面から指摘してくれる相手である』と。まあ、それ以外にもキミを“友達”と呼ぶ理由はある。偏屈で引きこもりの僕に対し、根気強く声をかけてくれて、多少の我儘でも融通してくれて、僕のことを理解しようと試みてくれたのだから。

 ああすまない。話が逸れたな。キミは知っていると思うが、サーヴァントには平行世界で発生した聖杯戦争や、以前ロシアで召喚された“前の僕”の記録を持って召喚される場合がある。……例えば、聖杯大戦で僕が犯した罪のことだな。あれはよくない。本当によくない。僕の霊基(たましい)に刻まれた傷は、永遠に癒えることはないだろう。

 ロシアでのことも、薄らぼんやりとした記録しか覚えていないと言ったな。それでも、キミと一緒に過ごした時間が楽しかったことや、最後の最後まで『マスターを裏切らない』という贖罪を貫き通すことができたことはきちんと覚えているよ。あれは僕にとって――……いいや、罪を犯した僕がこんなことを言うのは烏滸がましいな。みなまで言うまい。

 

 キミと旅したロシアの異聞帯の中で、キミ以外の出来事で、どうしても忘れられない出会いがあったんだ。名前も顔もよく思い出せないが、彼が笑っていたことだけは覚えている。

 

 彼は何らかの理由で永久凍土帝国に迷い込んだ生身の人間だった。生身の人間にしては色々と突っ込みたくなるような要素があったが、それでも人間として括るべき存在だったと、当時の“僕”は思っていたらしい。

 例えるなら、彼は“大きな子ども”かな。外見はどこからどう見ても青年なのに、言動は時折不釣り合いな程に子どもっぽいと思えることがあった。……マスター、キミ、今、「お前が言うな」と思っただろう。否定はしないが。

 どうして彼と出会ったのか、その経緯はあまり覚えていないんだ。キミと離れて行動していたことがあったようだが、おそらくその際に出会ったのだと思う。理由は分からないが、いつの間にか彼は僕に話しかけてくるようになってね。

 

 決定的になったのは“友達”に関する話題を聞いたときだ。

 

 彼は“僕”に、こんな話をしてくれた。『カドックは俺のライバルなんです。向うは俺のことを覚えてないみたいで、扱いに困っているようですが』と。――どうやら青年は、以前、クリプターと深い親交があったらしい。『殺し合いを演じる程仲が良かった』と評していたな。“僕”は比喩表現にしては妙に生々しさを感じたらしい。

 青年はカドックに認められたい一心で、禁忌の所業とも呼べる反則技に手を出したそうだ。結局最後まで青年はカドックに勝てなかったが、最後の最後でカドックから『お前は僕の仲間だ』と言われたそうだ。『本当は既に認められていて居場所があったのに、それに気づかず、自らの手で壊してしまった』と、彼は酷く反省していたよ。

 

 青年にとってカドック・ゼムルプスは仲間だった。同時に、一方的な片思いではあったものの、かけがえのない“ライバル”で、“友達”だった。

 そんな相手と久々に再会したら、自分のことなどすっかり忘れた挙句、自分が辿った黒歴史と瓜二つになっていたことに驚いたそうだ。

 だから彼は、何とかしてカドックに自分のことを思い出してもらおうと奮闘していたらしい。『今度は俺がカドックを助けるんです』と笑っていたよ。

 

 自分のことをすっかり忘れた相手の為に、どうしてそこまで献身できるのか。“僕”は実に不思議だった。だから思わず彼に尋ねたんだ。そうしたら、彼は何と答えたと思う?

 

 『カドックは、嘗て間違いを犯した俺を止めてくれました。だから今度は、俺が彼の間違いを止めるんです』。

 『俺の憧れた“狩る者”が、俺の信じた“俺たちの希望”が、あんな風に歪んで落ちぶれてしまったんですよ? “ライバル”として、見過ごせない』。

 

 ――『そして何より、苦しんでいる友を助け、激励し、背中を押すのが“友達”ってものでしょう?』と。

 

 報われてほしいと思った。報われるべきだと思ったんだ。彼の献身は、僕の思い描く“友達”の理想像そのものだったから。

 『自分が相手に求めたことを、今度は自分が相手の為に成すのだ』と語る彼は、屈託のない笑みを浮かべていたよ。

 

 ……マスターなら知っていると思うが、“僕”は彼の顛末を見届けることはできなかった。キミの旅の終わり共々、見届ける前に退場したからね。

 “僕”にとっての未練は3つあった。1つはキミの旅路を見届けられなかったこと、2つ目はキミへ呪いに等しい言葉を残した挙句泣かせてしまったこと。

 ――そして、最後の1つは、『青年がカドックの“友達”になったのか否かを知ることができないままだった』ことだ。

 

 青年は言っていたんだ。『今度こそ、カドックと本当の“友達”になるんだ』と。『そのためにも、カドックに自分のことを思い出してもらうんだ』と。『彼と再会できたのは、きっとこのためなんだ』と。……『そのためなら、俺は何だってします』と。

 不思議なことに、彼の言葉からは危惧すべきものを感じなかったんだ。言ってることは嘗て罪を犯した僕と同じだったのに、彼ならば僕と同じ轍は踏まないという絶対の確証があった。きっと彼は正しい手段を用いて目的を果たせるだろうと。――『“僕”もそんな風になりたい』とさえ思う程に。

 

 “僕”がロシアであの判断を下せたのは、彼と有意義な会話ができたことも理由だったのだろう。だから“僕”は、最後の未練の1つとして、彼の顛末を見届けられないことを挙げたんだ。その未練が、今ここにいる僕に、この話をさせるに至っている。

 

 マスター、調律治。僕の友よ。あの日の“僕”は、彼の語った“友達”の定義に当てはまるような存在だったろうか?

 正直、最近までこれを訊ねる勇気が出なかった。だが、どうしてか、今、それをキミに聞きたいと思ったんだ。

 

 ――そうか。

 

 “前の僕”も、キミにとって友足り得る存在だったか。

 ……そうか。そう呼んでくれるのか。――ありがとう、律治。

 

 随分と長い時間語ってしまったな。付き合ってくれて感謝する、僕の友よ。

 

 ……しかし、だ。やはり一度疑問に思うと、気になって仕方がないな。

 自分でやったこととはいえど、彼の顛末を見届けられなかったことは悔やまれる。

 

 彼はちゃんと、彼が友と呼んだ人物と“友達”になれただろうか?

 

 

 ――?

 

 

 何やら騒がしいな。異常事態が起きたのか? ――成程。戦力強化の一環として、カドックがサーヴァントの召喚を試みたのか。

 この騒ぎようだと、カドックは誰か既知の存在を呼びだしたのかもしれないな。一体誰を呼びだしたのやら。

 ……何故だろう。――僕は、こんな瞬間がやって来るような予感がしていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 ――ああ、そうか。

 

 彼はちゃんと、彼が友と呼んだ人物と“友達”になれたんだな。

 それは、よかった。……本当に、よかった。

 

 

◆◆

 

 

『カドック』

 

『もしもまた会えたら……今度はキミと、……ともだち、に――』

 

 

 聞きたかった言葉があった。言いたかった言葉があった。

 それらはすべて、僕の口から出ることはなかったけれど。

 

 塵芥になって消えていった温もりは、僕の手からすり抜けて消えてしまった。

 

 

『……カドック。……カドック・ゼムルプス』

 

『キミのこと……勝手に友達だと呼んで、すみません』

 

『……無許可で“キミの友達”だと名乗って、ごめんなさい』

 

『――今度こそ、俺は、キミの友達になりたかった』

 

 

 そんな言葉を言わせたくなんかなかった。そんな言葉が聞きたかった訳じゃなかった。

 

 僕が何かを言うより先に、奴は言うだけ言ってさっさと逝ってしまった。奴の堪え性のなさは、僕が一番知っていたはずなのに。

 伝えるべき言葉は幾らでもあったのだ。もっと早く言っていれば、アイツは足を止めて振り返ってくれたかもしれないのに。

 せっかち過ぎたアイツを知っている僕には、アイツを責める資格なんて存在しなかった。分かっていて、僕は怠慢を演じたのだから。

 

 僕と一緒に召喚の顛末を眺めていたキリエライトが息を飲む。僕の隣にいたアナスタシアが、精霊(ヴィイ)の依代たる人形をぼとりと取り落とした。彼女は身体を戦慄かせる。僕も同じ穴の狢だった。何かを言いたくて口を開いたのに、弱々しい吐息が掠れて響くのみ。

 僕が召喚した青年は、僕の顔を見てぱああと表情を輝かせた。だが、前回の出来事を思い出したのだろう。喜色満面だった表情は突然萎んでしまい、怯えた子どものように僕の様子を伺う。鳶色の瞳に浮かぶのは警戒の色。完全に、以前の出来事がトラウマになっている様子だった。

 

 

「……カドック」

 

 

 何かを確かめるように、青年は僕に問う。

 おずおずと、僕の様子を窺っている。

 

 

「俺のこと、覚えてますか? ……俺のこと、分かりますか?」

 

 

 僕の答えによっては、彼は即座にシャドウボーダーから逃走を図ろうとするだろう。僕の偽物(と本人は思っている)に散々酷い目に合わされた経験は今、悪い方面で活きている。もう二度と僕の偽物に騙されたくないのだと、そのせいで僕の友達を名乗ってはいけないと思っているらしい。

 

 お前の友達を名乗る資格がないのは僕の方だ。だって僕は、二度もお前を殺した。一度目は世界を救うという大義名分の為に『認められたかった』というお前の願いを踏み躙り、二度目はタッチの差で間に合わなかった。お前の存在を予測せず、慢心していた果てに、あの悲劇へ至るための道筋を描いた。

 でも、もう間違えたくない。お前が今そう思っているように、僕だって同じことを思っている。自分を卑下し、お前の友達であると胸を張って言わなかったせいで起きた地獄は未だに色あせない。塵芥となって消えた温もり、残されたネームタグ、二度も伝えられなかった言葉の重み――刻み込まれた喪失。

 

 人は反省する生き物だ。それを活かすために何をすべきか、考えることができる生き物だ。

 さあ考えろ、カドック・ゼムルプス。あの痛みを感じたとき、お前は何を思ったんだ?

 間違いを正せるならば、どうしたいと願ったんだ? ――その機会は、僕の目の前に。

 

 

「忘れるはずがない」

 

 

 僕は答える。

 途端に視界が滲んだ。

 

 

「忘れられるはずがないだろう。僕とお前は、あの大剪定で、殺し合った仲じゃないか」

 

 

 僕は言葉を紡ぐ。

 情けないくらい、声が震えていた。

 

 

「僕とお前は、仲間じゃないか。一緒に竜と戦った、大切な仲間じゃないか」

 

 

 アイツの顔は、全然見えない。

 

 

「僕だって」

 

 

 情けない顔をしているということは、容易に想像がつく。

 僕もアイツも、似たような顔をしているだろう。

 僕の後ろにいるアナスタシアも、きっとそうだ。

 

 

「僕だってお前のこと、友達だって思ってたんだぞ」

 

 

 僕は涙を拭い、勢いよくアイツに飛びついた。アナスタシアも僕に続く。

 奴は情けない声を上げて尻もちをついた。2人分の突撃を捌くのは難しかったらしい。

 

 僕もアナスタシアも、奴をぎゅうぎゅうと拘束する。

 

 

「――僕だって、お前と、友達になりたかったんだぞ……!」

 

「――酷いわ。貴方って人は、いつもいつも、勝手に行ってしまう。もう少し待てなかったのかしら……!?」

 

 

 僕らが言葉らしき言葉を紡げたのは、ここで限界だった。

 

 喉の奥から零れたのは、獣のうめき声のような嗚咽。瞳からは涙を、鼻からは液体を垂れ流し、無様な姿を取り繕うような真似もしない。そんな余裕なんかなかった。

 それは向こうも同じだったようで、お互いにわんわん泣き叫ぶ。誰かが近づいてきたような気配を感じたけれど、そんなのどうでもよかった。気にする気力もなかった。

 僕が掴んだ彼の手は、もう塵芥になって消えていくことはない。ネームタグだけを残していなくなることもない。照れ臭そうに泣き笑いする彼は、正真正銘、僕の“友達”だ。

 

 ひとしきり泣き終えた後、僕は服の袖で涙を拭う。泣き過ぎた影響か、僕の喉はからからに乾ききっていた。

 水が飲みたいとは思ったけれど、そんなことよりも、大事なことが残っている。水分補給は、彼を迎える言葉を伝えてからだ。

 

 

「ようこそ、ユウマ。フィニス・カルデア――シャドウボーダーは、お前を歓迎する。……何てったってお前は、僕の友達なんだから」

 

 

 




あの2話で綺麗に終わっていたのに、どうしてか書きたくなった蛇足話。「こんな未来があるかもしれない」的なお話です。最近アヴィケブロン沼にドボンしたこともあって、このネタが浮かびました。“友達”絡みのお話となっています。
Ⅲ原作ラスボス戦で主人公含んだ13班を激励してくれたユウマなら、2部1章のアヴィケブロンと話が合いそうだなと思った結果がコレ。Ⅲ主人公に希望を託した際のユウマの言動は、2部1章のアヴィケブロンと通じるものがあるなと感じたもので。
多分この2人は、お互いの真相を知ったら「キミは何てことをしているんだ!? それは全然よくないぞ!」「貴方の方こそ何やってるんですか!? 俺の黒歴史とどっこいどっこいでしょう!?」と喧嘩になりそうです。工房が賑やかなことになりそうだ……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。