Fate/GrandOrderとセブンスドラゴンシリーズを混ぜてみた   作:白鷺 葵

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【諸注意】

・『Fate/SeventhOrder Code:Romantic color』がうっかり1.5部および第2部に突入した際に起きそうな可能性の一側面を形にしてみた単発もの。
・『Fate/SeventhOrder Code:Romantic color』は第1部+結絆の絆イベント完了の時点でひと区切り。1.5部や2部に突入する予定はない。
・『Fate/SeventhOrder Code:Romantic color』の世界とは平行世界同士の関係。故に、あちらとは設定が変更されている。
 一例,1部で“いなくなる”面々が残留している、その影響を受けた人間関係や性格の変化がある、設定の魔改造等
・1.5部登場サーヴァントの降臨者(フォーリナー)、および第2部の冒頭や考察をちょっと齧った結果誕生した。
・登場人物の中に上位生命体故がいるため、人類およびFate関係者に厳しい発言をするので注意してほしい(重要)
・登場人物の中に上位生命体故がいるため、人類およびFate関係者に厳しい発言をするので注意してほしい(重要)
・登場人物の中に上位生命体故がいるため、人類およびFate関係者に厳しい発言をするので注意してほしい(重要)
・力関係は真竜>(越えられない壁)>異聞帯関係者(重要)
・力関係は真竜>(越えられない壁)>異聞帯関係者(重要)
・力関係は真竜>(越えられない壁)>異聞帯関係者(重要)
・上記の力関係故、FGOの雰囲気をぶち壊すレベルで蹂躙ものになる(重要)
・上記の力関係故、FGOの雰囲気をぶち壊すレベルで蹂躙ものになる(重要)
・上記の力関係故、FGOの雰囲気をぶち壊すレベルで蹂躙ものになる(重要)
・書き手には両作品を貶めるつもりは一切ありません。(重要)
・書き手には両作品を貶めるつもりは一切ありません。(重要)
・書き手には両作品を貶めるつもりは一切ありません。(重要)
・書き手には両作品を貶めるつもりは一切ありません。(重要)

今回は特にヤバイです。力関係が「セブンスドラゴン系列>(越えられない壁)>FGO」となっています。
上記の諸注意を読んで納得して頂けましたら、この先へとお進みください。


浪漫色彩IF - 異聞への航海者 -
第2部断章.結絆「激おこぷんぷん丸」/Imperial wrath


「――意外だなあ。キミのような人間が、“剪定”を生き残るだなんて思わなかった」

 

 

 女は心底驚いた。自分の持ちうる力を行使した結果、命の灯が消えなかった人間に。

 

 

「き、貴様は、一体……!?」

 

 

 花に埋もれた骸の山と女を見比べて戦慄しているのは、ふくよかな体系で煌びやかな高級ブランド服に身を包んだ金髪の白人男性だった。『自分の取り巻きたちが一瞬で死に絶えたと』いう光景は、男の精神に多大な衝撃を与えたらしい。しかし、彼は屈していなかった。恐怖に飲まれながらも、生への執着をぎらつかせている。

 正直な話、男性の第一印象は「成長の見込めない小物」で、女の“剪定”を生き残れるような人間には見えなかったのだ。そんな取るに足らない小物が、自分が愛した命と同じ適性を有している――なんて矛盾だろう! これだから人間という生き物は度し難く、故に愛おしいのだ。どう成長するか未知数だから。

 

 成長株だと思っていた奴が使えなかったり、意外な奴が適性を発揮して爆発的な成長を見せたりする。前者は心が冷めるけれど、後者は逆に心が躍るものだ。

 今回の“剪定”を生き残った男性は、女にとって大歓迎の方の予想外であった。制竜権を手に入れた極東の島国とは一切無関係だと考えると、とんだ掘り出し物だ。

 女が見出した適正者たちは、みんな極東の島国で発見した。過去、未来、現在――その過程で名前が変わっても、場所そのものは変わっていない。

 

 

「““剪定”を耐えうる才能はある”か……。下の下の下、最低ラインだけど、その生き汚さは目を見張るものがあるね」

 

 

 流石――金に物を言わせたとはいえ――天文台そのものを買い取ることに成功した男だ。女は顎に手を当てて分析する。

 

 分割という条件下なら、天文台を買い取ろうとした連中は山程いた。そんな連中の追随を許すことなく、男性は天文台の全権を手に入れたのだ。彼が天文台の新たな長に収まるまでの課程はあまりにも順風満帆でスムーズだった。嘗て実業家として人間の中に紛れ込んでいた女だからこそ分かる。

 男性が自分の敏腕秘書だと信じている“粗大ゴミの一種”がバックアップし、それ以上のモノ――女と同等の暗躍をした存在か、はたまた運命の強制力か――が背中を押したためだろう。奴が天文台の新たな長として施設を訪れる日時も完璧だ。何しろ、天文台の大騒ぎがひと段落した直後なのだから。

 日時が少しずれていたら、男性は無事に新所長になれたか怪しい。天文台を守る過去の魂が砦を築き上げた危険地帯で、男性が生き残れるはずがないことは火を見るよりも明らかだ。生き残れたとしても、新所長としての威厳は木端微塵に砕け散るだろう。……最も、後者は遅いか早いかの違いでしかないのだが。

 

 

「答えろ! 貴様は何者だ!? 一体何が目的で、こんなことを……!?」

 

「――()()()()()()()()()()()()

 

 

 女は朗々と語り出す。

 まるで、幼子に絵本を読み聞かせる母親の如く。

 

 

「星という名の畑に種を蒔き、育て――やがてそれを刈り取る者。ある者はそれを農業といい、ある者はそれを放牧といい、ある者は――」

 

 

 女は男性と目線が重なるようになるようしゃがむと、ゆるりと目を開いた。

 

 

「――()()はそれを、殺戮と呼んだ」

 

「ッ!!?」

 

()()はドラゴン。その中でも()()()は真竜と呼ばれる高次元生命体。宇宙を喰らいて生まれ、新たな宇宙を生み出す糧となる循環に組み込まれた“極点の捕食者”。……この世界で言うなら、捕食遊星(ヴェルパー)の定義に属する存在かもしれないね。――まあ、破壊による観測なんてまどろっこしいことはしないけど」

 

 

 「美味しいご飯が目の前にあったら、食べるのは当然のことでしょう?」――女がそう笑えば、男性はぞくりと身を震わせる。

 自分が死ぬかもしれないという極限状態の中、人間と真竜が有する価値観の違いを冷静に理解する頭があるあたり、天才の片鱗は仕事をしているらしい。

 

 

「……捕食するために破壊を行う高次元生命体が、私に……()()()()に、何の用だ?」

 

 

 男性はこちらを見上げる。足掻いて足掻いて足掻き続けて、でも抜け道がないのだと思い知らされ、疲れ切った目をしていた。

 但し、あくまでも「疲れ切っているだけ」であり、生きることを諦めたという訳ではない。死を覚悟していても、死にたくないと願っている。

 運命の突破口がどこかにあってほしいと願い――本人は無自覚ではあるけれど――、探しているのだ。

 

 ――その眼差しを、女は知っていた。()()()()()()()

 

 3番目と5番目を打ち倒した命も、自分とお花見に洒落こんだ命も、どんなに追い詰められようが諦めなかった。僅かな希望を繋いで、すべての竜を狩り尽して見せたのだ。

 女と花見をした者たちによる活躍ですべてが()()()()()()()()()と化したが、彼等が成し得た偉業は証明されている。ほんのわずかな観測者たちによって。

 

 

()()()の願いはただ1つ。“()()()が愛する命の系譜が、2100年に至るまで継がれていく”ことだ。そのために、キミの存在は必用不可欠なんだよ」

 

「私の存在が、必要不可欠?」

 

「まさか、キミ自身が“剪定”を生き残れる人間だとは思っていなかったけどね。()()()にとって、そういう予想外は大歓迎だよ!」

 

 

 「成長こそ愉悦! 成長し、進化し続ける命こそ愛おしいんだ! そのためなら、何だってするよ!!」と力説する女を見て、男性は酷く呆気に取られていた。

 無邪気な子どもを連想させるような表情の中から、高次元生命体としての傲慢および尺度の乖離を察したのだろう。男性の顔色が著しく青くなる。

 

 

「自身が捕食者として立ちはだかることで、命の成長を観測し、自身が倒されることで成長を祝福する――……いいや、貴様はそんな簡単な存在ではないな。この場で生き残った私以外の人間を見下す様を見れば分かる。……お前は、成長が打ち止めになった命に対して一切の容赦をしない」

 

「捕食するという意味でかい? だとしたら、()()()はYesと答えよう。それが宇宙の摂理だからね。家畜を食べるのは人間だって同じだろう?」

 

「……では、お前は何を以てして、成長した命に祝福を与える?」

 

「――()()()が持ちうるすべてを以て」

 

 

 女はにっこりと微笑み、己の胸に手を突き刺した。体内を掻きまわして心臓を引きずり出して見せれば、男性はひゅっと息を飲んだ。嘗て『人間には理解できない』と突っぱねられた筋金入りの愛情を舐めないでほしい。

 男性は寸でのところで意識を繋ぎ止めたようで、真っ青な顔のまま「お前の愛は良く分かった」と蚊の鳴くような声で呟いた。同時に、心臓を引きずり出してもピンピンしている姿から、女の特異性を改めて思い知った様子だ。

 

 

「ぶっちゃけ、()()()はキミに対して一切の期待をしていなかった。この“剪定”に耐えられるとも思っていなかったし、()()()の話を理解できるとも思っていなかったよ。……ま、強硬手段としては『理解するまで死に続けてもらう』つもりだったから、逆に助かったかなー」

 

「――そんなことの為に、何度も人類を絶滅寸前まで追い込むのはやめてください」

 

 

 絨毯張りの廊下のせいで、男性は近づいてくる足音を察知できなかったのであろう。驚いたような顔をして、声の主を見上げた。

 

 白い学生服に身を包み、赤縁の眼鏡と緑のマフラーを纏った青年。誰が見ても口を揃えて「凡庸なお人好し」と例えるような微笑を湛える彼の正体を、女はよく知っている。

 女が張り巡らせた人類への祝福を斜め上に飛び越えた、宇宙最強の命だ。真竜が組み込まれた理を打ち壊し、不完全なままで極点へと至って見せた。

 真竜を喰らいつくした極点の捕食者のことを、この世界では何と例えよう。一番近い専門用語を挙げた場合、“星の具現者(アルティメット・ワン)”だろうか。

 

 

「その度に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”のは僕なんですから」

 

 

 心底呆れたような調子で――あるいは無謀を成そうとする上司を咎めるような口調で、青年はため息をつく。

 

 幾ら真竜との戦いに慣れていると言えど、7体斃すのに手間がかかることは間違っていない。いくらVFDをペロリと平らげることができる最強の生物であったとしても、食べていきなり運動して疲れ果てたらまた食べるなどと言う暴挙を義務感だけで繰り返せば、精神的疲労は蓄積されていくのは当然のことだった。

 その話を目の前の男性に語って聞かせてやる。男性は「もうどうにでもなーれ」と言わんばかりに濁った眼を向けてきた。正直な話、これ以上にもっと頭を抱えたくなるような事象は山ほどあるのだが、男性のキャパシティにはあまりにも重すぎたらしい。唯一の救いは、極限状態に身を置かれても虚勢を張って返せることくらいか。

 

 

()()()は、()()()が愛した最強の命が無に帰されることが嫌だ。その系譜を絶やさないために必要な絶対要素として、()()()はキミが欲しい。キミはこんな場所で無残に殺されたくはないし、誰かに認めてもらいたいという願いが叶う。……利害はきちんと一致していると思うけど?」

 

「……はっ。結局は利害関係でしかないじゃないか」

 

 

 男性は乾いた笑みを浮かべる。

 

 

「そうやって、最後はみんな私を裏切るんだ。私を切り捨てて、置いていくんだ……!」

 

 

 先程男性が口走った「嫌われ者」の意味が、ほんの少しだけ鮮明に見えたような気がした。女の隣にいた青年は、特に。

 青年は男性と同じ感情を抱いていた人間と交流があったから、該当者の面影を重ねたのかもしれない。

 「お前たちもそうなんだろう!?」と男性が吼える。彼が語るのは、自身の経歴から裏打ちされた予測であった。

 

 

「いくら努力しても、無駄だった。誰の1番にも――いいや、何にすらもなれやしなかった! 傲慢で、偉ぶっていて、ひねくれ者で、その癖実力が伴わない落伍者! 自分が嫌われていること自体、最初から承知していたさ!」

 

 

 「でも、じゃあ、どうすればいい!?」――ゴルドルフが絶叫する。

 

 

「愛し方が分からないんだ。好きになってもらえる方法が分からないんだ。愛されている奴らの見様見真似をしてみても、『一時の気まぐれ』だの『今更偽善者ぶっても』だの『点数稼ぎ』だの『何か裏があるんだろう?』と言われてお終いだ! ……そんなことを言われて振り払われてしまったら、諦めるしかないじゃないか……!!」

 

「……ムジークさん……」

 

「手に入らないものを求め続けるなんて、卑しい乞食のすることだ。ムジーク家の家長であるこの私が、外聞問わず他者に縋りつくなど……」

 

 

 言葉の最後は尻すぼみとなり、空気に溶ける。彼がここまで吐き出すことができたのは、“自分以外の人間が死に絶え、圧倒的な力を有する地球外生命体を目の前にしている”という極限状態に置かれていたためだ。

 

 振り払われても縋りつく勇気がなかった。その勇気を出すには、“由緒正しきムジーク家の家長”というプライドは最大の障害だった。

 真竜たる己には理解できない――けれど、人間であれば誰もが持っている意地。時に人を窮地へ追い込むモノでありながら、時に人間の成長を爆発的に促すモノだ。

 

 

「ゴルドルフ・ムジーク」

 

 

 その意地は、7番目の真竜を否定し『“人類”という不完全な生命体のまま』極点の捕食者に至った青年が、瞳に宿していたものと一緒だった。それが人一倍強かったから、女の剪定を突破するに至ったのだろう。

 

 

「キミは、()()()の寵愛を受けるに値する存在だ。……でなければ、この剪定を生き残ることはできない」

 

()()のばら撒いたフロワロは、適合者の能力を爆発的に引き上げる効果を持っているんです。適合しなければ即刻死に至る劇薬でもあるので、剪定と呼ばれるんですよ。――不適合者の末路は目の前にあり、貴方は彼等と違って生きている。適合者として生き残ったんです。――その意味がお分かりですか?」

 

 

 青年は、女がばら撒いた薄桃色の花びらが如何様な効果を有するのかを説明する。

 

 真竜たちはフロワロという花を持つ。星を喰らう際に、自身が好む味付けをするために使う力だ。それは星そのものを蝕む毒素として力を発揮し、星に住まう被捕食者対象を衰弱させる効果を有している。花が有する効果は真竜によって様々だ。

 正面突破で喰らい尽くすのが好きな金ぴか3番目と武器蒐集家6番目は赤いフロワロをばら撒くし、腐りかけが大好きな5番目は人間の細胞に異常を発生させる黒いフロワロを割かせている。常に絶叫する4番目は対象者を急激に弱らせる青いフロワロを咲かせていた。

 女が有するフロワロは、適合者には身体能力の強化という福音を与える。その一方で、不適合者は容赦なく息の根を止めるのだ。薄桃色の花による祝福を受けた命は、次世代の真竜として目覚める統合者候補を剪定する。――それは、女にとっての躾だ。

 

 ゴルドルフは苦々しい表情を浮かべて視線を彷徨わせる。真竜の寵愛を受けるということは、人間から逸脱することを勧められているようなものだ。

 嘗て女が剪定した青年同様――第7真竜候補として褒められて賞賛されたとしても、あまり喜べないのかもしれない。女が実体験から学んだことだった。

 

 

「……理解は、した」

 

 

 ゴルドルフは絞り出すような声色で呟いた。冷や汗と青筋に塗れたかんばせだが、こちらを見上げる眼差しに光が宿る。

 女のお眼鏡に叶ったことの意味を正しく理解したが、受け入れるか否かは別問題であった。青年もゴルドルフに同意し、頷く。

 

 

「真竜の寵愛を受け入れるか否かは一旦保留にした上で、貴方は知るべきだ。――貴方の価値は、貴方が思っている以上に低くないということを」

 

「……お前」

 

「『彼女が認め、寵愛をそそぐに値する』と判断したなら、彼女は決して貴方を裏切りません。むしろ、概算度外視上等で貴方をサポートしてくれます。文字通り“心臓を捧げる”ことだって厭わない。貴方が彼女から求められるハードルに応え続ける限り、形はどうであれ、彼女は貴方の絶対的な味方でいるでしょう」

 

 

 「実際、彼女は僕に心臓を捧げてくれました」と青年は微笑む。先程女が自らの胸から心臓を抉り出してみせた姿を思い出したのか、ゴルドルフは手を口で覆った。異形の愛は恐ろしい、と、青い瞳が訴えている。

 “ゴルドルフ・ムジークは、女の仕掛けた剪定をクリアして生き残った”――その事実が、彼が示した価値だった。真竜候補になり得る才能を秘めた存在だったから、女から見出された。それは即ち、星の具現者(アルティメット・ワン)から認められたのと同義。

 予てからの願いが、斜め上方向に吹っ飛んだ形で叶えられたのだ。喜ぶべきか逃げ出すべきか、ゴルドルフは複雑な表情を浮かべている。眉間に刻まれた皺の形は、青年が初めて『7番目の真竜に関する真実』を知ったのと同じ形だった。

 

 女は青年に視線を向ける。彼の眼差しは、少しだけ寂しそうだった。

 

 脳裏に浮かんだのは、花が咲き乱れる千鳥ヶ淵。人類の統合者候補――嘗てのライバルの屍を踏み越えてきた青年の眼差しと同じだった。

 人工的に生み出された統合者候補と青年の間にどのようなやり取りがあったかなど、女は知る由もない。

 

 青年の眼差しの奥には、『創り直す際に置いてきた日々』への追憶が浮かぶ。世界を救うという大義名分で友人を殺した人間の脆さ――それを抱いたまま、女の予測をはるかに上回る異形を成した極点の捕食者。そのかんばせは、その言葉は、きっとあの日の痛みに向けられている。

 

 

「貴方は自身のことを随分と卑下していらっしゃるようですが、僕はそうは思いません。形はどうあれ、貴方はちゃんと自分の意見を言える人だ。自分自身の汚さを直視し、それから決して目を逸らさない強さを持った人だ。でなきゃ、あそこまで堂々と『自分は汚い奴だ』とか『誰かの1番になりたかった』なんて言えませんからね」

 

「お前、私を馬鹿にしてるのか?」

 

「いいえ。……羨ましいです。僕は、自分の愚かさを認めるのに、随分時間がかかりましたから」

 

 

 青年は苦笑する。『竜のいない世界を願った結果、彼の大事な人々がいない世界が残った』ときのことを思い出しているのだろう。

 

 何もなくしたくない一心で戦った青年の願いは滞りなく叶えられ、青年がなくしたくなかった一切合切がなくなった。

 竜という絶対的な要素を引いた結果、友人も、家族も、旅路で成した偉業も存在しない。――そんな世界に放り出された青年の救いは、一握りの観測者がいたことだった。

 淡々と自分の経歴を語る青年は、静かな目をしている。物語を聞き終えたゴルドルフは、何かを言おうとして喉を鳴らしたが、明確な言葉になることはなかった。

 

 

「ねえ、ムジークさん。別に、立派じゃなくたっていいんですよ。家長だからって無理しなくていいんですよ。今みたいに全部叫び散らしたっていいんです。ダメ人間だから存在しちゃいけないなんてこと、絶対にありませんよ」

 

「そうそう! 13班のメンバーにだってヤバヤバな性癖持ちは存在したし、ダメダメなヤツだっていたよ! それでも()()()は彼等を信じた。育むべき命だと判断した。――キミもまた、()()()が育むべき命の1つなんだからね」

 

 

 女は微笑み、ゴルドルフの手を取った。

 彼は一瞬身じろぎしたものの、最後は深々と息を吐いて手を握り返す。

 

 ようやく極限状態に適応したらしく、彼は不敵に笑い返した。

 

 

「当たり前だ。私はゴルドルフ・ムジーク。由緒正しきムジーク家の家長だからな!」

 

 

◆◆◆

 

 

 施設の廊下には、爆発によって焦げた跡や銃弾痕が刻まれている。眼前には無数の殺戮猟民(オブリチキニ)たち。奴らはゴルドルフの息の根を止めんと犇めいていた。館内放送を使って誰かに助けを求めるという選択は、ぶっちぎりの悪手として作用したらしい。

 

 秘書のコヤンスカヤと護衛役の言峰綺礼は行方不明、警備兵たちは何度も復活する殺戮猟民(オブリチキニ)の得物――大鎌によって無慈悲に惨殺された。奴らはロシア皇帝(ツァーリ)のみに忠実なエリート階級の親衛隊にして、反逆者の掃討を請け負う精鋭兵である。人の皮を被った悪魔と称される存在だ。

 突如この世に甦った奴らは魔術的な存在――強いて言うならサーヴァントに近しい構造――らしく、現代兵器は一切通じなかった。警備兵の武装は神秘が宿らない現代兵器一式だったため、殺戮猟民(オブリチキニ)を斃すことができなかったのであろう。神秘を倒せるのは神秘だけだ。

 ゴルドルフがここまで生き延びることができたのは、護身用に持ち込んだ魔銃と魔除けがあったからだ。しかしながら、金に物を言わせて持ち込んだ虎の子は既に尽きている。魔力だってすっからかんだ。今の自分は、最早“無力な一般人”に他ならない。

 

 

(……剪定を知らなかった私だったら、顔を真っ青にして、鎌の殺傷力を分析していたのかもしれんなあ……)

 

 

 それでもきっと「痛そうだ」くらいの思考回路で打ち止めだったであろう。今、ゴルドルフが考えているのは、極限(この)状態で生き残る術だ。

 自分は何発、あの鎌による攻撃を耐えられるだろうか。外宇宙の星の具現者(アルティメット・ワン)に認められたこの命は、どこまで踏ん張ることができるだろうか。

 

 ゴルドルフは自分の魔銃に視線を向ける。この拳銃の本命は銃弾なのだが、拳銃本体にも若干の神秘が付与されていた。弾丸の威力を底上げする程度のお粗末なものだが、力いっぱい殴れば通じるかもしれない。

 

 自分の人生は常にツイてなかった。ムジーク家の家長として育てられていること以外、誇れることなど何もなかった。誰かに愛されたことも、誰かに認められたこともなかった。この現状も、ツイてないとしか言いようがない。――でも、と、ゴルドルフは己を奮い立たせる。

 確かに自分が望んだようなモノではないが、ゴルドルフ・ムジークという命を認めてくれたヤツがいる。ゴルドルフ・ムジークという命を愛してくれたヤツがいる。ゴルドルフ・ムジークという命に期待してくれているヤツがいる。それらを裏切るのは、ムジーク家の家長――否、ゴルドルフ・ムジークとしてのプライドが許さなかった。

 人類の尺度で測れないヤツに対し、何で答えればいいのかなんて全く分からなかった。人間に対してどう接すれば“期待に応えた”ことになるかすら分からないのだから、免許を持たないまま車を運転するような無茶無謀をするようなものだ。明らかに嫌な予感しかしない。

 

 

(それでも)

 

 

 脳裏に浮かんだのは、鮮やかな躑躅色の色彩。眼鏡のレンズ越しに、女の瞼がゆっくりと開いていく。屍の転がる花畑で、彼女は慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。

 

 

(それでもだ)

 

 

『キミは、()()()の寵愛を受けるに値する存在だ』

 

 

 あの言葉を裏切るわけにはいかない。応えぬわけにはいかない。

 人生で始めてもらった、一番熱烈な口説き文句に。

 ムジーク家の家長として――ゴルドルフ・ムジークという命として。

 

 

「まだだ……!」

 

 

 見苦しい悪あがきであることは、重々理解している。由緒正しい金持ちにして魔術師一族の家長としてのプライドだって、もう意味をなさないことだって理解している。

 今のゴルドルフを突き動かすものは、ただ1つ。“ゴルドルフ・ムジークという一個人/ゴルドルフ・ムジークという命”としてのプライドだ。

 

 

ゴルドルフ・ムジークという命(わたし)を、舐めるな――!!」

 

 

 高らかに咆哮し、ゴルドルフは殺戮猟民(オブリチキニ)へと躍りかかった。まさか襲い掛かって来るとは思わなかったのか、殺戮猟民(オブリチキニ)の行動がワンテンポ遅れる。ゴルドルフは殺戮猟民(オブリチキニ)の頭部に、容赦なく銃を叩きこんだ。

 金持ちの道楽を舐めてもらっては困る。ゴルドルフは金に物を言わせて、護身術がてらガン・カタを嗜んでいた。銃弾が尽きた拳銃は役立たずではなく、本体で殴ればそれなりのダメージを与えることができるのだ。――それが、こんな形で日の目を見るのは予想外だったが。

 ゴルドルフに殴られた殺戮猟民(オブリチキニ)が昏倒する。その際、後ろにいた複数人を巻き込むような形で倒れこんだ。ほんの一瞬見えた突破口へ向かい、ゴルドルフは走った。だが、殺戮猟民(オブリチキニ)は次から次に湧き、鎌を振りかざして襲い掛かって来た。

 

 痛い。痛い。痛い。泣き言を咆哮でかき消し、誤魔化しながら、包囲網から逃れるために走る。

 だが、すぐに限界が来た。満身創痍のゴルドルフの眼前には、殺戮猟民(オブリチキニ)の群れ。

 

 体はまともに動かない。けれど、心はまだ折れていない。――だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

 

「――言っただろう? 『キミもまた、()()()が育むべき命の1つなんだ』って」

 

 

 聞き覚えのある声がした。金属で作られた無機質な床に、ぽつぽつと花が咲く。殺戮猟民(オブリチキニ)の群れはびくんと体を震わせ、そのまま崩れ落ちた。

 断末魔を上げることすら許されなかった彼らは、あの剪定に耐えられなかったらしい。“既に死したはずなのに生き返った”という背景のせいだろうか。

 

 

「私の愛する命が存在するために、私にはキミが必要なんだよ。――今この瞬間、キミが私を必要とするようにね」

 

 

 かつん、と、ヒールの音がした。マーメイドラインのスカートがふわりとたなびく。

 首から膝までの長さのフェイクファーが揺れた。躑躅色の色彩は、灰色の世界には鮮やかに映える。

 見目麗しい女から発せられるのは、膨大過ぎる神秘の力だった。

 

 

「その足掻きこそ、私の寵愛を受けるに値する」

 

 

 女はくるりと振り返った。細い目がゆっくりと開眼する。眼鏡のレンズ越しに輝くのは、慈愛に満ちたアメジスト。

 

 けれどそれはすぐに拡散した。そこにいたのは、天衣無縫を体現する女性。

 特徴的な笑い声を上げながら、女は無邪気な笑みを浮かべた。

 

 

「――ドモドモ、アリーだよ~! 今回はサーヴァント・降臨者(フォーリナー)として限界したんだ。どうかこれから、ヨロシクねッ☆」

 

 

 殺戮猟民(オブリチキニ)の死体を踏みつけながら、女――アリー・ノーデンスはゴルドルフに名乗ったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

 汎人類史のサーヴァントが、異聞帯のサーヴァントに敵う筈がない。前者の世界がイージーモードなら、後者は超絶ハードモードだ。ぬくぬく温室育ちの可憐な花が、生存競争の激しい野生植物に淘汰されるようなものである。

 実際、汎人類史出身であるダ・ヴィンチや、そのサーヴァントを宿したデミ・サーヴァントのマシュ、サーヴァントと遜色ない戦闘能力を有するロマニやゲーティアはみんな膝をついている。満身創痍という言葉がよく似合う有様だった。

 

 ――なのに。

 

 

「……どうして、どうしてアンタたちは平然と立ってるのよ!?」

 

 

 コヤンスカヤは金切り声を上げ、該当者3名を指さした。指された張本人――カルデアのマスターである一色彩羽が不適な笑みを浮かべて、一職員として登録されていた結絆・ヴィラノヴァ・アーキマンとゴルドルフが召喚したサーヴァントである謎のフォーリナーはきょとんとした顔でコヤンスカヤを見返す。

 

 

「いや、だって、ねえ。こんなの大したことないし」

 

 

 フォーリナーはつまらなさそうに呟いた。女は結絆に目配せする。恐らく同意を求めているのだろう。

 結絆は歯切れが悪そうに「あー……」と呟いたあと、視線を逸らした。気まずい空気が漂う。

 

 苛立つコヤンスカヤにとどめを刺したのは彩羽だった。凡人は得意気に笑って頷く。

 

 

「アリーの言う通りだよ。この程度の寒さなんて、台場拾参号氷海にいた帝竜ゼロ=ブルーに比べれば大したことないよね」

 

「――はは、あはははは! ……そうだよねぇ、彩羽。キミは『地球環境が変わるレベルで、外宇宙から来襲した上位生命体を狩り尽した“平行世界の自分”』を夢限召喚(インストール)してるんだものねぇ」

 

 

 喜びたいが素直に喜べないと言わんばかりに、ダ・ヴィンチが引きつった笑い声を漏らした。マシュも納得したように頷き、「流石先輩!」と目を輝かせる。

 ダ・ヴィンチの隣で膝をついていたロマニが顔を覆って身体を震わせていたし、ゲーティアはロマニを励ますべきか嗤うべきか、真剣に悩んでいる様子だった。

 

 馬鹿な、と、コヤンスカヤが呻いた。

 

 信じられなかった。一色彩羽という汎人類史代表のようなマスターが平行世界の己を夢限召喚(インストール)した結果が、皇女の冷気を「この程度」とあしらえるような強さだなんて! 汎人類史にあるまじきタフさである。

 カルデアの資料を確認した際、そんなことはどの文面にも記載されていなかった。大方、職員の大半がグルになって情報を改竄したのだろう。汎人類史というぬるま湯環境で生きてきた連中に、一杯食わされるだなんて!!

 こちとら異聞帯で必死になって生きてきたのだ。人類ハードモードでやってきたのだ。あんなに厳しい世界を渡り歩いてきた自分たちが、お気楽極楽で生きてきた汎人類史の連中に出し抜かれるとは!!

 

 

「――何故?」

 

「?」

 

「何故『彼女(あなた)』は、汎人類史に協力するの?」

 

 

 「『彼女(あなた)』は異聞帯(こちら)側の存在に等しいはずでしょう……!?」――冷徹な皇女が紡いだ声には、爆ぜるような熱が込められていた。言葉の意味をよく理解していない彩羽が眉間に皺を寄せる。

 対して、皇女の言葉に明確な反応を示したのはフォーリナー――アリーと結絆だった。双方共に眦を釣り上げると、拳を掌に打ち付ける。極寒を引き裂くような殺気に、コヤンスカヤと皇女は反射的に身じろぎしていた。

 

 

「……人生イージーモード? お気楽極楽に生きてきた汎人類史?」

 

 

 「どこが?」と、結絆が問う。怨敵を見据えるが如く。

 コヤンスカヤたちに、答える術はない。結絆は小さく吐き捨てる。

 

 

「――何も知らないくせに」

 

「は……?」

 

「……僕が何を()()()のか、何を()()()のか、そのために何を()()()のかも知らないくせに――!」

 

 

 いつの間にか、コヤンスカヤは結絆・ヴィラノヴァ・アーキマンという職員の分析を始めていた。それが俗に言う『現実逃避』であることを充分理解した上で、だ。

 

 第一印象はおっとりしていて気のいいお人好し。親戚であるロマニとその恋人たる彩羽を慕っている医師の卵。人柄と愛想のよさ、及び本人の社交性の高さが相まって、多くの人物から好かれているような青年だった。

 だが、今。コヤンスカヤが対峙する結絆からは、あの第一印象を引っ張り出すことなど不可能だった。今の彼は医者の卵なんかじゃない。言峰綺礼を連想させるような――人殺しを厭わなさそうな顔をしている。

 いいやそれ以上に、異聞帯出身のサーヴァントたる皇女を押し負かすレベルの神秘が渦巻いていた。一般人のくせに、神秘の暴力という言葉がよく似合う。獰猛な獣が隠していた牙を露わにしたらしい。

 

 毛並みが逆立つ。威嚇しているのではない。怯えからだ。

 神秘の暴力を撒き散らしているのは、結絆だけではなかった。

 

 

「キミたちからすれば、この世界は確かに温室にしか見えないだろう」

 

 

 「でもね」と、アリーは目を開いた。紫色の瞳に宿るのは、明確な怒り。

 

 

「この世界の価値を知っている私からしてみれば、()()()()()()()()()()()、非常に腹立たしいことなんだよね」

 

 

 凍り付いた大地にひびが走る。地中から生えた植物が、氷を砕きながら生い茂り始めた。

 皇女が何かを叫ぶより、植物の蕾が開花する方が早かった。

 

 

「――躾の時間だ。身の程を弁えなよ、ゴミ風情が」

 

 

 花が咲いた。花が咲いた。コヤンスカヤと皇女の周辺を覆い尽くすように、薄桃色の花が咲いた。

 

 これはダメだ。コヤンスカヤは直感する。この花は、異聞帯(こちら)に関わるすべてを否定するものだ。異聞帯(こちら)の存在を剪定するものだ。異聞帯(こちら)を「滅ぼされるべき事象」として狩り尽すためのものだ。この場から逃げなければ――。

 しかし、逃げることは叶わなかった。皇女共々コヤンスカヤは崩れ落ちる。体中に痛みが走り、呼吸すらままならない。薄紅色の花はただ咲いているだけだった。なのに、花はコヤンスカヤという存在を否定し、侵していく。咳き込む度に多量の血が飛び散り、薄桃の花を汚した。

 自分は()()()()()――コヤンスカヤの五感が、確証を持って訴えた。生きているはずなのに、強制的に理解させられる。コヤンスカヤと皇女はこの場で()()()()のだ。生きているはずなのに、まだ感覚も意識も存在しているのに。

 

 ()()()()()()()。何度も何度も()()()()()()

 アリーの逆鱗に触れた結果だとは分かったが、そこから先に進めない。

 

 ――いいや。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()。何度も何度も()()()()()()

 もう嫌だと叫ぶことは許されない。剪定による淘汰を受け入れること以外、許されない。

 

 

「貴様らが成したことは、()()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()()()()を踏みにじるような冒涜だ。剪定の場に立つことすらもままならない不適合者が成した悪逆だ。人類の進化に逆行する者――極点の捕食者を侮辱する者を、私は許さない」

 

 

 こちらを見下すアリーの双瞼がぎらつく。彼女の言葉を引き継いだのは、結絆だった。

 

 

「正々堂々真正面から殴りに来たことに関しては、貴女方の高潔な精神に敬意を。……その心意気にお応えして、僕らも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 こんな邪道を使って殲滅する価値もない――アリーと結絆の眼差しは、冷徹に訴えている。コヤンスカヤたちのような凡俗など、こんな最終手段を行使するまでもなく潰せると豪語しているし、奴らにはそれを成す力があるのだ。

 コヤンスカヤは嫌でも理解させられた。何度も何度も()()()()()()ことで、その恐怖を嫌が応にも刻みつけられた。同時に、コヤンスカヤの視界に映し出されたのは、汎人類史へ反逆を翻した異聞帯の参戦者たち――その姿だ。

 

 ()()()()()()。異聞帯のサーヴァントたちも、そのマスターたちも、薄桃の花によって()()()()()()()()

 己の犯した罪を突きつけられるが如く、反逆の代償には足りないと言わんばかりに、延々と()()()()()()()()

 自分が何を相手取ったのかを、何を敵に回してしまったのかを、何に喧嘩を売ってしまったのかを思い知らせるように。

 

 薄桃色の花が消えて、ようやくコヤンスカヤは動けるようになった。折れてしまいそうな心を叱咤しつつ、言峰綺礼に連絡を取る。――奴もまた、薄桃色の花によって()()()()()()1人だった。

 

 

「すまない。ダ・ヴィンチは仕留めたんだが、逃げられてしまった」

 

 

 どうやらカルデア側は報告書を改竄し、他のサーヴァントが現界していることを隠していたらしい。該当者はシャーロック・ホームズと、結絆・ヴィラノヴァ・アーキマン――後者の名前を聞いて、コヤンスカヤは頭を抱えて発狂したくなった。……寸でのところで踏み止まれたのは僥倖だったのか、最悪だったのかは分からないが。

 

 

「は、はは、ははは。あははははははは……!」

 

 

 喉の奥から乾いた笑いが零れる。汎人類史を刈り取るための戦いを始めたはずだったのに、蓋を開けてみればこの始末だ。

 己が狩る者だと思っていた。実際は、己らこそが狩られる側だった。身の程知らず過ぎた7つの異聞帯は、確実に汎人類史に喰らいつくされる。

 汎人類史は文字通りの「眠れる獅子」だった。――否、獅子という表現では優しすぎる。例えるならそれは星の具現者(アルティメット・ワン)が相応しい。

 

 自らの末路を悟りながらも、動き出した世界は止まれない。突きつけてしまった宣戦布告を撤回することはできない。……そんな無責任なこと、彼等が許しはしないのだ。

 反逆の拳を上げたならば、最後まで責任をもって拳を振るえ。振り上げた拳が落ちる――即ち、異聞帯が敗北する――まで。

 

 

 

 

 これは、未来を冒す物語ではない。そんなものにはなり得ない。

 

 これは、喧嘩を売ってはいけない汎人類史に喧嘩を売ってしまったがために。

 極点の捕食者によって喰いつくされることが決定づけられた――異聞帯(こちら)にとっては、ただそれだけでしかない物語だ。

 

 




「ナナドラ側優勢な話を読んでみたい」というコメントと、1.5部や第2部絡みのネタを見聞きした結果誕生した劇物がこれです。書いた本人が言うのもなんですが、かなり過激なお話となりました。深夜テンションって凄いですね!!
異聞帯の扱いから考えると、第2真竜にとっての異聞帯は「剪定の場に立つ資格のないゴミ」扱いだろうなと考えた結果、コヤンスカヤと皇女を中心とした面々がヤバいことになりました。極点の捕食者とタッグを組んだ結果、とんでもない生き地獄を作り出したようです。
このノリでいくと、第2部は「この世界線におけるFGOとナナドラシリーズ世界の繋がりに関する話題」を中心とした物語になることでしょう。ナナドラⅢ要素が強い物語になりそうです。因みに、この世界線では「1部クリアで結絆君が消える」ことはありません。つまり――?

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