Fate/GrandOrderとセブンスドラゴンシリーズを混ぜてみた   作:白鷺 葵

11 / 28
・セブンスドラゴンⅢ世界にFate/GOキャラ(ぐだ子、ロマニ、ゲーティア)がいる。
・結絆の辿った『セブンスドラゴンⅢ』+絆クエスト進行中のダイジェスト風味。
・登場するサーヴァントの人選は趣味。
・宝具カード選択時の台詞を改変している。
・第4真竜のみ。(書き手にとって)前回以上に“かなり長い”ので、前後編になった。
・第4真竜以外の話題に触れられていないのは、終了以降に一気に回収するため。

【参考・参照】
『命にふさわしい』(歌:amazarashi)/全編イメージテーマソング
『NieR:Automata』(SQUARE ENIX)/雰囲気
『終撃のイグニト』(歌:riya(eufonius))/VS第4真竜戦BGM
拙作感想欄および活動報告への書き込み(Gen-Gさま、ヘルサさま、アイディアありがとうございました)



幕間の物語6.軌跡-終撃のイグニト/Whereabouts

 瓦礫の迷路をかき分けて、僅かばかりの生活感が残る学術都市を進んでいく。倒れた柱や積み重なった瓦礫で出来上がった橋を渡り、大きく伸びた木の枝を渡り、木の(うろ)を通り抜けて。

 

 

「ここまで木々が伸びているのを見ると、東京の渋谷を思い出しますね」

 

「スリーピーホロウ……鱗粉……麻痺と混乱……うっ頭が!」

 

「先輩、大丈夫ですか!? 確かにスリーピーホロウのアレはえげつなかったですけど!」

 

「だ、大丈夫。ちょっと思い出して気が滅入っただけ。――よし、先へ進もう」

 

 

 渋谷の惨状を思い出したせいでグロッキーになりかけた彩羽を、マシュは慌てて励ました。ライバル組織の屍累々を駆け抜けた『彼女(じぶん)』のメンタルは本当にすごい。

 初めてその惨状(ゆめ)を目の当たりにしたとき、汗びっしょりで跳ね起きたのは今でも忘れられずにいる。それよりも酷い理不尽は次々と襲い掛かって来たけれども。

 『生きたい』――ただそれだけのために立ち上がった命たちは、自分たちの日常を守りたいと願うようになった。だから、過酷な状況でも戦うことを選んだ。

 

 彩羽は、そんな『彼女(じぶん)』の在り方に惹かれた。そんな『彼女(じぶん)』の姿に憧れた。形は違えど、いずれ自分もその境地に至るのだと――至れるのだと思った。

 確かに綺麗ではない。泥と傷に塗れ、地を這うような戦いだった。紙一重での勝利だった。積み重ねられた小さな勝利が、最後は真竜を撃退/撃破へと至った。

 

 その苛烈さを知っている。その尊さを知っている。――だから、彩羽も、彩羽自身の意志で走り出した。結果は、彩羽自身が一番よく知っている。

 

 

(手にしたものは、ここにあるんだ)

 

 

 彩羽はちらりと仲間たちに視線を向ける。ロマニ、マシュ、ゲーティア、ダ・ヴィンチ、カルデアのスタッフ、召喚した英霊たち。彼/彼女たちとの絆が、一色彩羽が手にした宝物だ。『一色彩羽(かのじょ)』が手にした絆に負けず劣らず、胸を張れるもの。

 『彼女(じぶん)』の旅路も彩羽の旅路も比べるべきものではない。どちらも過酷で厳しい旅路だったし、敗北は決して許されてはいなかった。出会いと別れを繰り返し、紙一重で突破口を切り開いてきた。積み重ねた小さな勝利が、強大な敵を打ち砕いた。文字通りの奇跡を手にした。

 

 失ったものだって、沢山ある。それでも駆け抜けた旅路(ものがたり)を、間違いだったとは思っていない。思う筈がないのだ。

 

 

「お前は、自分が歩んだ道を『間違いだった』とは思っていないようだな。その顔からして、悔いはあってもやり直しを望む程のモノではないか」

 

 

 彩羽の表情から何となく察したらしい。振り返ったエメルが声をかけてきた。彩羽は迷うこと無く頷く。

 

 

「エメルはどう?」

 

「私も同じだ。悔いること、反省すべきことは多々あったさ。……でも、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 満ち足りた笑みを浮かべたエメル。姉に同意するように頷くアイテル。赤い双瞼には一切の歪みも影も曇りもない。どこまでも透き通った瞳に、彼女たちが長い旅路の果てに手にした答えの片鱗が滲んでいるように思った。

 エメルとアイテルが()()へと至る結末とは、どんなものなのだろう。嘗ての彼女たちを「識る」彩羽は、それが満ち足りた優しいものであってほしいと願わずにはいられない。……いや、今こうして2人が微笑めるなら、要らぬ心配か。

 彩羽が思いを馳せていたとき、強い風が吹いてきたように思った。風に乗って響いてきたのは、苦しそうな――悲しそうな咆哮。何事かと声の方向へ視線を巡らせたが、特に変わったところは見当たらない。

 

 

「何だ、今の……」

 

『特に不自然な反応もないね。……何だったんだろう。何か、こう、胸を抉るような声だ……』

 

 

 ロマニが声の出所を不安そうに見つめ、ダ・ヴィンチが唸りながら分析する。悲哀に満ちた咆哮は、彼女(カレ)の感性、および琴線に触れるものがあったらしい。

 彼女(カレ)の分析を聞いたエメルとアイテルは顔を見合わせた。これから起きるであろう出来事を確認するが如く、彼女たちは互いに目で合図し合う。

 

 彩羽がそれを問いかける間もなく、この場に異変が起こった。

 

 風が吹き抜けるのを感じた直後、足元から青い花が咲き始める。色こそ青だけれど、この花はフロワロだ。いくら美しかろうと、真竜の気配を色濃くし、人体に強い悪影響を与えることに変わらない。

 彩羽の知るフロワロはニアラやヘイズが咲かせた赤いものと、フォーマルハウトが咲かせた黒い花だ。青い花を咲かせるドラゴンなど知らない。こんな花を咲かせる竜もいたなど、初めて知った。

 そこでふと、思い至る。葬送花の青には、どこかで見覚えがあった。彩羽はアイテルに視線を向ける。確証があったわけではないけれど、どうしてか、フロワロの色から()()()()()()()()のが彼女だった。

 

 

「……巫女アイテル。このフロワロは――」

 

「心配しなくても大丈夫よ。()()()()()()()()

 

 

 言い知れぬ予感を感じ取ったのは彩羽だけではなかったようだ。ロマニが険しい顔でアイテルに問いかける。

 だか、アイテルは静かに微笑んで、そう答えただけ。青い葬送花に関する話は、旅路を紐解けばわかると言うのみだ。

 

 

()4()()()()()()()()()()()。それまでは付き合ってもらうぞ」

 

 

 彩羽たちの言葉を封じるかのごとく、エメルは微笑んだ。そうして、ヒュプノスの巫女たちは己の長い旅路を綴る。――その終わりへと向かって。

 

 

◆◆◆

 

 

「ヘイズを倒しに来ました」

 

 

 その眼差しに、いつかの面影を見た。

 

 若葉を帯びた琥珀の双瞼、静かに微笑む青年の姿。見出したのは、嘗てのエメルが愛した人類――一色彩羽の姿だった。

 彼の物言いから察するに、この青年は一色彩羽の孫らしい。言われて見れば、揺らがぬ意志を宿した双瞼なんてまさに祖母/彩羽譲りのそれだ。

 西暦2100年からエデンへやって来た結絆とノーデンス13班の目的は真竜ヘイズ打倒による検体入手、および、すべての竜を狩り尽すことにあった。

 

 敵対する理由もなければ、味方にならぬ道理もない。自身の目的のため、すべての竜を狩り尽すため、エメルが結絆に手を貸すと決めたのは当然のことである。

 故郷や仲間を食い荒らした真竜への憎悪を糧にして、エメルは戦いを続けていた。この憎悪は、すべての竜を狩り尽すまで止まることはないのだと信じていた。

 

 ――憎悪の果てに、何が待っているかも知らずに。

 

 

「っぐ……!」

 

 

 時折、エメルは得体の知れぬ息苦しさや痛みを感じることがあった。身体を得てから、こんな苦痛を――自分自身の存在が脅かされるのではないかと錯覚する程、苛烈な痛みや苦しみを感じたのは、今回が初めてのことである。自身を突き破り、得体の知れぬ何かが出てきそうな衝動だ。

 警笛のように、警告のように、遠くで何かが響いているような感覚。けれど、エメルにとって、そんなことで立ち止まっていいとは思わなかった。竜への憎悪がエメルを駆り立てる。すべての竜を狩り尽せ――これが、エメルをエメルたらしめる絶対的な理由だった。

 

 

(憎い。憎い憎い憎い! こんな所で倒れるわけにはいかないんだ。ドラゴンを根絶やしにするまでは!!)

 

 

 そのためにも、原因不明の体調不良で休んでいる暇はない。不調を隠し、エメルは対竜戦線の指揮を執る。カザンに現れた遺跡の頂上に、打ち倒すべき真竜ヘイズが潜んでいることは明白だ。一刻も早く殺さなくては。

 

 憎しみに駆り立てられて歩き続けたエメルは、遺跡の中で妹アイテルと邂逅する。妹は愛する男の喪失から、少しずつ壊れてしまっていた。その有様は幽鬼の如く、希薄な存在と成り果てている。愛する男を探して彷徨う姿は、エメルを酷く苛立たせた。

 そういえば、エメル自身の不調も、アイテルが壊れていったのと同時に発生したような気がした。愛する男のいない世界に対し、どんどん執着を失っていくアイテル。愛情の行きつく果てがアレならば、たった1人に執着するのは悪手だったように思える。

 エメルの声は届かない。アイテルは最愛の男の面影を探して、また姿を消してしまった。いつも一緒にいて、離れていたとしても互いの存在を支えにして歩んできた自分たちの在り方が、徐々に壊れてきたように思う。妹は愛故に立ち止まり、姉は憎しみ故に走り続けた。――いつの間にか、お互いの存在が離れ始めた。

 

 

「エメル学士長!? 大丈夫ですか!?」

 

「エメルさま! しっかりしてください!!」

 

 

 体が思うとおりに動かない。意識を保つことすら難しいように思える。ブリジルドとナギリの声が、どこか遠い。

 でも、エメルには倒れている暇などなかった。竜への憎しみは、こんなことで止まるはずがなかった。

 

 戦わなければ。殺さなければ。竜への憎悪を強めれば強める程、エメルの不調は悪化していく。いつの間にか、まともに起き上がることも不可能な程になっていた。

 

 殺さなくては。根絶やしにしなければ。

 殺す。殺す殺す殺す。殺し尽くしてやる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ア、アァァアア……! 憎い、憎いぞ、竜が憎い……!!」

 

「え、エメルさま! 落ち着いてください!!」

 

 

 体の奥底から湧き上がってきた衝動に、エメルは胸を抑えて跳ね起きる。身体の震えが止まらない。ナギリの必死な声が、どこか遠くから響いてくるようだ。

 

 

「いけませんエメルさま! おひとりでヘイズを倒すことなど――」

 

「邪魔するなァ!!」

 

 

 自分を呼び止める声を、邪魔する存在を、ありったけの力で吹き飛ばす。それを皮切りに、エメルは自分の奥底から湧き上がって来た力に突き動かされるようにして、自分の部屋から飛び出した。

 

 どうやって真竜の元へ辿り着いたのか、記憶は定かではない。道中、ひしめく竜を殺して殺して殺して殺して、やっとこさエメルは塔の頂上に辿り着いた。自身の眼前で蠢く真竜ヘイズ。竜殺剣に封印されていた真竜。真竜はすべて、エメルの殺すべき復讐の相手だ。

 エメルの存在を確認したヘイズは、不気味に蠢きながらも嗤っていた。エメルがヘイズに対し、たった1人で挑みかかって来る無謀さを嗤っていた。恥辱に狂ったと馬鹿にしてきた真竜に対し、エメルは憎悪を募らせる。――この憎悪こそが、竜を滅ぼすための力だった。

 

 

「ハァ……ハァ……! 殺して、やる……!」

 

「ヒャハハハッ! 殺せぬさ。貴様は所詮、()()()()()()()()()()だ!」

 

「なんだと……ッ!?」

 

 

 驚愕するエメルに対し、ヘイズは笑う。

 何も気づかぬエメル自体が傑作だと。

 奴は、エメルの軌跡を挙げ連ねた。

 

 

「思念体となって宇宙を彷徨い、この星に降り立ち、人間に関与する……。貴様のやってきたことは、オレたち()()()()()()ではないか!」

 

 

 ――不意打ちで頭を殴られたような心地になった。そんなこと、考えたこともなかった。けれど。

 

 

「――違う」

 

 

 違う。

 違う。

 断じて違う。

 

 エメルとアイテルがしてきたことは、人間たちに知識と力を与えたことは、奴らの行動原理とは全く違うはずだ。

 星という畑に種を蒔き、育て、刈り取る――そんな悍ましい行為とは、全然違う。

 

 

「違う、違う、違う! 私は貴様らに復讐するヒュプノスだァァァァァ!!」

 

「――だめよ、姉さん。心を失っては……」

 

 

 ありったけの憎悪を込めて、エメルは叫ぶ。同時に、さらなる力が自分の奥底から湧き上がってくるのを感じた。――同時に、視界の端に漂った燐光に、エメルは目を丸くする。

 そこにいたのはアイテルだった。以前遺跡で邂逅したとき以上に、妹の存在は希薄で儚い存在となっている。ほんの少しでも力を加えれば、あっさりと消えてしまいそうだ。

 

 

「姉さんの憎悪がわたしに流れ込んでくるの。これ以上はもう、受け止められない……」

 

「黙れアイテル! 私はコイツらを殺す……殺さなくてはならんのだ!」

 

「――ほう。成程な、()()()()()()か!」

 

 

 自分たちの様子を見ていたヘイズが楽しそうに笑い始めた。出来損ない、もしくは昇格するかもしれないなんて言葉の意味を考える余裕など、最早エメルにはない。憎悪を剣に乗せて、エメルはヘイズへと切りかかった。

 

 長い剣載を繰り返す。自分の力はヘイズに届かない――それが酷くもどかしくて、腹立たしかった。そんなエメルを――ヒュプノスの民たちを、真竜と戦い続けてきた人類の意志や決意を踏み躙るように、ヘイズは取り込んだ“ソレ”を指示す。

 嘗て、ヒュプノスが真竜を屠るために作った兵器、千人砲。千人の命を魔力に変換し、弾丸として撃ちだすものだ。200年ほど前に発生した竜戦役で、その弾丸となることを志願したのは、北にある国――ネパンブレスのルシェたちだった。

 先陣を切ったのは当時の王。彼に続いたのは、老若男女のルシェたちだ。ある者は国家の未来を守るため、あるものは次世代の担い手たちのため、またある者は幼い子どものため、礎となることを選んだ誇り高き命たち。

 

 彼らの想いを、エメルは「識っている」。未来のために命を散らした人間たちの意志と決意を。

 遠い昔の2020年、同じ決意と誇りを抱いて、共に死んでくれた部下たちの姿を「識っている」。

 

 

「ヒャハハハハハハハハ! 貴様は本当に笑わせてくれるなァ。家畜が何千人集まろうが、オレに傷1つ付けられるはずがなかろう! 所詮は喰い残しの浅知恵よ!!」

 

 

 許さない。許さない。決して、あの真竜を許さない。

 湧き上がる憎悪を糧にして、それでもふらつく体を叱咤する。

 頭が痛い。息ができない。体中が悲鳴を上げる。でも、でも――憎悪は、もう、止まらない。

 

 

「お願い姉さん、もうやめて……! これ以上、憎しみを――」

 

「殺す、殺す殺す殺す殺ス……! 殺してやる!!」

 

「あ、あぁ……消える……。私の、私の……いや……タケ、ハヤ――」

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!!」

 

 

 妹の断末魔が遠く響く。己の奥底から溢れだした力が、器に収まりきらぬと叫ぶかのように弾けた。強烈な風が吹き抜ける。足元に、青く輝く花が咲き始める。

 

 自分の身体に一体何が起きているのだろう。エメルの命を蝕む代償と言わんばかりの爆発的な力は、確かにヘイズを追いつめた。奴の身体に傷をつけた。

 けれど、おかしい。苦しい。気持ちが悪い。自身の存在が、酷く揺らいでいる。これ以上ないくらいはっきりとした憎悪があるというのにだ。

 

 

「何を苦しむことがある。誇りに思え。貴様はようやく座に就いたのだ。家畜の分際を抜けて、その先の地平へ……」

 

 

 違う。認めない。エメルはヘイズたちと同じではない。

 ()()()()()()()()()()()()()()など、認めてなるものか。

 エメルは竜を狩るのだ。そのためにここにいるのだ。

 

 ヘイズの笑い声が煩い。背後から聞こえてきた足音、後からやってきた人間たち。その中に平然と紛れ込んでいる()()()()()()()()が、エメルの邪魔をするかのように「下がれ」と声をかけてきた。

 

 奴は平然と人間面をしている。自分が人間であると信じ込み、人類の味方のように振る舞い、その信念の元動いている。何と腹立たしいことだろう。

 そいつは人間と同じ外見でありながらも、その内面には多種多様、数多の竜を飼い慣らしていた。――ああ、視界におさめているだけでも腹立たしい。

 

 

「かかってこい、この雑魚が! フ、フフ、アハハハハハハハハ!」

 

「雑魚……だと……!? ――上等です。ヘイズは後回しだ。先に貴女を片付けます!!」

 

 

 悍ましい竜の化け物はそう叫ぶなり、エメルに襲い掛かって来た。エメルは躊躇うことなく剣で受け止める。拳と剣が派手に火花を散らしていた。

 長い剣載を繰り広げていたとき、不意に断末魔の悲鳴が木霊する。見れば、ヘイズの姿はどこにもなく、青く輝く美しい剣が結絆の手に握られていた。

 竜殺剣。竜を殺すために必要な兵器。対竜に絶対的な殺傷能力を有する武器だ。エメルの望むドラゴン殲滅には、決して欠かせないもの。

 

 結絆たちは勝利に湧いていて、こちらに気づいていない。今ならば、竜殺剣を奪うことなど造作もないことだろう。

 

 あの剣さえあれば、エメルの望みは叶う。ドラゴンを殲滅することができる。この憎悪を、この復讐を成すことができる。永き流浪の果てに、夢にまで見続けたドラゴンの殲滅を――!!

 動きを止めてしまった()()()()()()()()の隙をついて、エメルは駆け出した。異変に気づいた結絆が驚いた表情でこちらを見返す。間髪入れずエメルは竜殺剣をひったくった。

 

 

「エメル学士長、お待ちください!」

 

 

 そう叫んで飛び出してきた人間を睨みつける。()()()()()()()()()()()()()()()()()()――!!

 

 エメルは自分の持つ力を振るう。あっという間に()()()()は吹き飛び、地面に叩き付けられた。みな、ピクリとも動かない。邪魔者がいなくなったのを確認し、エメルは竜殺剣を持って飛び出した。

 目的地はプレロマ。エメルが学士長を務める、嘗ての対竜戦線における最前線。今ではドラゴンが跋扈する廃墟だ。エメルは一瞬で目的地へと転移すると、意気揚々と竜殺剣を振りかざす。身の程知らずの竜たちを切り捨てながら、エメルは廃墟を彷徨い始めた。

 

 

◆◆◆

 

 

 憎悪と悲しみに彩られた咆哮が響く。先程よりも鮮明になったそれは、第4真竜が待つ廃墟の奥地に辿り着いたことを意味している。

 周囲には青いフロワロが群生している。文字通り塊となって咲き誇る青い葬送花は、吹き抜ける風に揺れていた。

 エメルとアイテルは足を止めて振り返った。2人は相変らず、穏やかに笑っている。曇りのない赤い双瞼は、彩羽たちを見つめていた。

 

 

「長く付き合わせて悪かったな。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 エメルはそう言うなり、廃墟の奥地に視線を向けた。他の区域よりも一段と葬送花が群生する場所は、地理的に白亜の街の学府だ。廃墟プレロマに突入する以前の最高学府――在りし日の栄光が脳裏をよぎる。

 

 ヒュプノスの姉妹たちは彩羽に視線を戻す。その眼差しには覚えがあった。

 2021年の国会議事堂、決死隊を率いて死地に赴くことを宣言したエメルの瞳と同じものである。

 

 

「この先には()()()()()()()()()()()がある。()4()()()()()()()()()()()()()()かもしれないが、それを()()()()くれないか?」

 

「迷惑だなんて思うことはないよ。『彼女(わたし)』にとって、貴女たちは大切な仲間だもの」

 

「――ありがとう」

 

 

 彩羽はカルデアの面々にも視線を向ける。マシュとダ・ヴィンチは迷うこと無く頷き、ロマニとゲーティアは少し考え込んだ後、神妙な顔つきで頷き返す。全員が頷き返した様子を目の当たりにした姉妹は、安心したように頬を緩ませた。

 不穏な気配が滲む中で、それでも自分たちは進むことを選んだ。その先――第4真竜と、ヒュプノス姉妹の()()()()()に何が待っていようとも、足を止めるつもりはない。ここを乗り越えて、会いたい仲間がいるから。

 

 アイテルは静かに息を吐いて、天を仰ぐ。その眼差しは、どこか遠くを見つめていた。

 何千、何万にも及ぶ流浪の途――その結末について、彼女は何を思ったのだろう。

 口元をふっと綻ばせたアイテルは、彩羽に視線を向けた。

 

 

「……わたしたちは、長く生き過ぎた。()()()()()と共に、私たちはこの惑星(ほし)の“狩る者”たちにすべてを託したの」

 

「そして、その意志は受け継がれ、彼らは――結絆は、()()()()()()()()()。……あいつは、凄い奴だったよ」

 

 

 結絆が成し遂げたことを語るヒュプノス姉妹は嬉しそうだった。孫を褒められて喜ばない祖母はいないし、自分の仲間を褒められて喜ばない奴だっていない。なんだか誇らしくて――けれど酷くむず痒くなって、彩羽は口元を緩ませた。

 

 思えば、アトランティスの案内人だったウラニアとエーグルも、先の案内人だった愉快な幼馴染たちも、みんな結絆のことを褒めていた。結絆に希望を託したと言っていた。人々の希望と祈りを一身に背負って戦い抜いたその在り方は、竜戦役を駆け抜けた『彼女(じぶん)』や人理を守った彩羽とよく似ている。

 結絆は彩羽たちを慕ってくれていたけれど、彼だって『彼女(じぶん)』や彩羽以上に素晴らしい偉業を成し遂げていたじゃないか。――それ故に、彩羽は引っかかりを覚える。……『どうして結絆は、己の偉業を“なかったこと”にしなければならなかったのだろう』かと。

 

 

「――信じているぞ、彩羽」

 

「え?」

 

「私に“人の意志”を見せてみろ。お前の信じる者たちと共に、私たちの旅路と第4真竜に相応しい終幕を彩れ。……お前になら、それができる」

 

 

 彩羽の思考を引き留めるかのように、エメルは言った。晴れやかに笑った彼女を見て、彩羽も笑い返す。その言葉の意味を、彩羽はよく知っていたから。

 脳裏に浮かぶのは、2021年の首都高速・湾岸摩天楼。インソムニアの幻覚に飲まれた彩羽たちを救い出してくれたエメルが、『彼女(じぶん)』たちを激励してくれた。

 インソムニアの幻覚に嵌った『彼女(じぶん)』たちを見たエメルは、呆れたように苦笑して――けれど、優しい眼差しで送り出してくれたのだ。

 

 

「任せてよ。最高のメンバーを選出して、彩ってみせる」

 

「――それでこそ、私たちが愛した命だ」

 

 

 彩羽の答えを聞いた姉妹は嬉しそうに目を細めた。彼女たちの眼差しを受け止めつつ、カルデア一行は戦闘準備に入る。マシュの盾を使ってレイポイントを展開した。エメルとアイテルの願い通り、2人の旅路と第4真竜の終焉を彩るための布陣を組む。

 

 一抹の不穏を振り払うようにして、彩羽はサーヴァントの選出を終えた。編成が終わったことを告げれば、エメルとアイテルは小さく頷く。穏やかに笑った彼女たちは「少し待ってくれ」と言い残し、どんどん先へと進んでいった。――青いフロワロが一番群生する、建物の瓦礫へと。

 青い葬送花の花弁が舞う中を、彼女たちは何かを確かめるようにして足を進めていく。最初に足を止めたのはアイテルだ。彼女はくるりと振り返り、彩羽の方を見た。悲しそうに、寂しそうに、アイテルは目を閉じる。まるで、自分に待ち受ける運命のすべてを受け入れたかのように。

 

 エメルはすぐに足を止めた。腰から剣を引き抜く。エメルは静かに目を閉じ、再び目を開けた。

 光のない、深い憎悪を宿した紅蓮の瞳。人間では絶対にありえぬ瞳の光彩に、彩羽は思わず身を震わせる。

 増大する殺気、渦巻き始めるエントロピー、地を震わせるほどの唸り声――出所は、ただ一つだ。

 

 

「……エメル……!?」

 

 

 彩羽は思わず、戦友の名を呼ぶ。答えはない。

 

 

「……ああ、そうか。そういう、ことか……!」

 

「だから、()4()()()()()()辿()()()()()()()()()()()()()と……」

 

 

 彩羽の隣にいたゲーティアとロマニが、納得したように呟いた。

 若草の双瞼と紅蓮の瞳は、エメルとアイテルに向けられている。

 

 

「先輩! 一体何が起こってるんですか!? エメルさんが――」

 

『そんな……まさか、第4の真竜は――』

 

 

 眼前の光景に困惑するマシュとダ・ヴィンチの言葉は、最後まで紡がれることはない。

 

 エメルの剣がアイテルの胸を貫く。アイテルはびくんと体を震わせた後、何も言わず、青い光となって消え去った。キラキラと輝く光が溶けていく。姉が妹を手にかけるという光景を目の当たりにして、彩羽は息を飲んだ。

 エメルはアイテルのことを大切にしていたし、アイテルもエメルのことを大切に思っていた。だから、エメルがアイテルを刺し殺すなんて考えられない。残されたのはエメル1人。たったひとりのヒュプノス。

 

 ――どこかで、何かが砕ける音を聞いた。箍が外れる音とよく似ていた。

 

 ばきばきと音がする。膨大なエントロピー/魔力が、エメルの姿形を()()()()()()()のだ。

 溢れ出た余波に逆らうこと叶わず。彩羽たちに出来たことは、ただ見つめることのみ。

 鮮烈すぎる赤の光彩が、ゆらゆらと揺れ始めた。最早エメルとしての器を手放し、“ソレ”は旅の終わりを告げる。

 

 

「――そうして、私たちは辿り着いた」

 

 

 鮮やかな光が、視界を覆いつくした。

 

 

◆◆◆

 

 

 ()()()()()に竜殺剣を奪われた。奴はこちらを■■と呼び、竜殺剣を振り上げる。エメルは防御しようと剣を突き出した。

 

 

「駄目――!!」

 

 

 消えてしまったと思っていた妹の声がした。次の瞬間、()()()()()が青い燐光に阻まれ、弾き飛ばされる。奴は強か、地面に体を打ち付けた様子だった。

 剣に鈍い感覚が伝わって来た。エメルの前に躍り出たアイテルの背中。突き出した剣が迎え撃つはずだった竜殺剣はない。()()()()()()()()()()()()()()はあるが。

 

 

「……アイ、テル……?」

 

 

 自分は今、何をした?

 剣は今、何を貫いている?

 どうして妹が、儚げに笑っている――?

 

 自分はもうだめなのだと妹は告げる。自分たちは長く生き過ぎたのだと妹は呟く。あとはこの星の“狩る者”たちに任せるべきだと、妹は語る。

 

 

「ねえさん、ごめんなさい。私は、もう――」

 

 

 希薄だったアイテルの姿が、更に薄くなっていく。キラキラと輝く青い光。自分たちはいつだって一緒で、これからも共に在るのだと信じて疑わなかった妹の姿が、思い描いていた未来が、がらがらと音を立てて崩れていった。

 

 残されたのはエメル1人。

 たったひとりのヒュプノス。

 

 

「ア、アアア……」

 

 

 ――どこかで、何かが砕ける音を聞いた。箍が外れる音とよく似ていた。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!!」

 

 

 ばきばきと音がする。湧き上がって来た力がついに、()()()()()()()()()()()()顕現した。

 

 

◆◆◆

 

 

「――これが、幾千、幾万の流浪の果て。憎悪と愛情が行きついた先。エメルとアイテルの終着点。第4真竜としての覚醒だ」

 

 

 高らかに響く宣言は、確かにエメルの声だった。けれどもう、眼前にいたのは、彩羽たちを案内していたエメルではない。

 エメルとよく似た外見の竜は、アイテルとよく似たシルエットの青い翼を生やしていた。群生する葬送花と同じ色。

 翼と本体を繋ぐかのように、エメルの剣を模した楔が打ち込まれている。その姿は、エメルとアイテルの最期を連想させた。

 

 

「円熟した文明を有する種族がただ1つの意志の元に統合されるとき、その命は高位生命体――所謂真竜へと進化する。これは、すべての命に定められた(ことわり)

 

 

 彩羽は愕然と、エメルとアイテルがたどり着いた旅の果てを――4番目の真竜と化したヒュプノスを見上げる。

 

 

「彼女たちの憎悪も、愛情も、すべては()()()()に至るための通過点に過ぎなかったのだ」

 

「……違う。そんなの、絶対に違う!」

 

 

 一歩遅れて、彩羽はヒュプノスの言葉を否定した。竜を憎み、命を愛した巫女たちの辿った終わりが、こんなものであっていいはずがない。こんな終わり、認められない。

 だって、彩羽は「識っている」。彼女たちがどんな思いで、必死に戦い続けてきたのかを。憎悪の刃も、深すぎた愛情も、こんな結末のために紡がれてきたのではないのに。

 

 脳裏に浮かんだのは、意志を得たのだと嬉しそうに笑って消えたエメルの姿だった。自分たちに「人間の意志を見せてみろ」と激励の言葉を贈ったエメルの姿だった。その末路が第4真竜だと言うなら、意志など持たなければよかったのだろうか。

 それはアイテルにも言えることだ。彼女がタケハヤへの愛に執着しなければ、タケハヤが人類戦士に至らなければ、アイテルの存在が不安定になることはなかった。でも、彩羽はそうなるべきだったとは微塵も思えない。思いたくない。

 2人が意志と愛を得なければ、人類は竜戦役で生き残ることは不可能だった。彼女たちの助けがなければ、まともに戦えていたかどうかも怪しい。ヒュプノスは人類の恩人だ。――でも、人類への介入が、彼女たちを4番目の真竜に至らしめた。

 

 ――なんて、皮肉。

 

 彩羽が何かを言おうとするより先に、ヒュプノスが表情を変える方が早かった。人にはあり得ぬ光彩が揺らめく。その目の細め方は――エメルやアイテルと同じ仕草だ。懐かしむように、4番目の真竜は微笑む。

 

 

「私の息の根を止めた“狩る者”も、今のお前たちと同じ目をしていたぞ」

 

「え……」

 

「この結末に満足していないのだと言いたいのだろう? 私の中に残るエメルとアイテルの意識も、そう叫んでいる。……もっとも、2人の意識もいずれは淘汰されるだろうが」

 

 

 人類を見つめる眼差しは、どこまでも優しい。真竜に至っても人類を見下さずにいるのは、エメルとアイテルの意識が()()残っているためだろう。

 ヒュプノスは何かを考えるように視線を巡らせた後、彩羽たちに視線を戻した。「このままだと自分は命を食い荒らす真竜になる」のだと付け加えて。

 

 

「結絆たちは私を倒して、悲しみの連鎖を止めた。それを成せたのは、彼らが真なる“狩る者”であったからに他ならない。……ならば、彼と絆を結び直すために、エメルとアイテルが愛した命である『一色彩羽』の旅路を紐解き、彼の軌跡すら解き明かすために真竜を屠り続けたお前たちも、同じことが言えるはずだ。――同じことができるはずだ」

 

 

 それは期待だった。

 それは決意だった。

 それは懇願だった。

 

 エメルとアイテルの、最後の意志。

 そして――第4真竜の、最初の意志。

 

 

「ヒュプノス……」

 

 

 不意に、彩羽の脳裏によぎったのは、冠位神殿で見送った恋人の背中だった。カルデアの司令官代理にして、今、彩羽の隣にいる男。

 

 彩羽から沢山のモノを貰ったのだと笑って、ロマニ/ソロモンは多くのモノを投げ捨てた。希望や未来を投げ捨てるという決断を、己の意志で下したのだ。その意志と勇気もまた、彩羽から貰ったモノなのだと語って。

 今のヒュプノスの眼差しは、あのときのロマニと同じだった。けれど、ヒュプノスは生まれてまだ数分も経過していない。意志を持った真竜が真っ先に願ったことが「己の消滅」という事実が、どうしてか酷く胸を抉る。

 

 

「定められた運命、揺るがぬ真理、絶対的な(ことわり)……。最早、私が真竜へと至る事実も、至ったという事実も、覆すことは不可能だ。――だが、それでもできることはある。選択肢は、まだ残っている」

 

「それが、貴女の意志なんだね」

 

「ああ。私はもう()()()()()。なにも喰らうことなく、成すことなく、死へと至りたいのだ。お前たちの手によって」

 

 

 ヒュプノスは訥々と語る。

 

 

「真竜にとって、自身より格下である命を喰らうことはステータスだ。3番目や5番目、6番目が自慢していたのを聞いたことがある。数多の家畜を喰らった自分たちこそが優れた命なのだと主張して憚らなかった。……それならば、と、エメルとアイテルの意志は考えた。『何も食わず、何も成さぬまま、家畜と見下す命によって刈り取られるということは、真竜にとって一番屈辱的なことなのではないか』と」

 

「……成程な。これは、エメルとアイテルの復讐であり、お前の中に残る“2人の意地”というわけか」

 

 

 ゲーティアは眩しいものを見るようにして目を窄める。辿り着いた結末を祝福すべきか否か、悩んでいる様子だった。彼もまた、彩羽との戦いで意地を得た男である。

 彼が意志を得た結果、ただの人に成り果てた。ゲーティアの辿り着いた結末は、意地を得た結果“ヒュプノスとして覚醒した”エメルとアイテルたちとは真逆であった。

 数奇な人生を歩んできた/歩んでいくであろうゲーティアにとって、理に組み込まれてしまったヒュプノス姉妹はどのように見えるのだろう。どのように感じたのだろう。

 

 

「先輩。……ヒュプノスを――エメルさんとアイテルさんを眠らせてあげましょう?」

 

『マシュの言う通りだ。『彼女(あのこ)』の世界の人類は、エメルとアイテルに大きな借りがあるんだろう? ……今こそ、それを返すときだよ』

 

 

 隣にいたマシュが泣きそうな面持ちで彩羽を見た。通信機越しから、ダ・ヴィンチも同意する。その言葉を紡ぐために、2人は何を思い、決断を下したのだろう。

 「同じ時代に出会えたら語り合えただろう」と言われたダ・ヴィンチも、彩羽から「人類の大恩人」と聞かされていたマシュも、声が震えているように思えた。

 

 

「マスター」

 

 

 この場に選出されたサーヴァントが、彩羽を呼ぶ。

 各々の決意を滲ませながら。

 

 

「我が運命」

 

 

 ゲーティアが、彩羽を呼ぶ。

 最後の意地を持ってして、人類最後のマスターに挑んだ男の眼差しが訴えていた。

 第4真竜――および、ヒュプノス姉妹の願いを叶えるべきだと。

 

 

「彩羽ちゃん」

 

 

 ロマニが、彩羽を呼ぶ。

 自分がどれ程残酷なことを言っているのか、すべてを理解したうえで。

 嘗て同じ決断を下して彩羽の前に立ったが故に、その気持ちが分かるのだと訴える。

 

 

「――わかった」

 

 

 悲しみの連鎖を止めてほしい――それが、エメルとアイテル/第4真竜の願いだと言うなら、それを叶えてやれる存在が彩羽たちだというなら、やるしかないだろう。

 

 それはやけっぱちの決断ではない。諦めでもない。嘗て「人理焼却に対抗できる唯一のマスターとして、世界を救え」と言われたときの気持ちと変わらなかった。

 自分しかいないなら、逃げることができないなら、生きるためならば――立ち上がる以外に道がないなら、その道を往くのは()()()()()()()ではないか。

 

 

「その道がどれ程理不尽でしかなかったとしても、前に進むしかないなら進むだけだ」

 

 

 竜戦役を駆け抜けた“狩る者”たち――『一色彩羽(かのじょ)』や結絆・ヴィラノヴァ・アーキマンがそうだったように。

 特異点を駆け抜けた一色彩羽もまた、一色彩羽なりの困難や理不尽にぶち当たって、一色彩羽なりに悩んで、一色彩羽なりに決断したのだから。

 

 彩羽が下した決断が何かを理解したのか、4番目の真竜は安心したように微笑んだ。

 「それでいい」と笑うヒュプノスの表情は晴れやかだった。

 ――そうして、笑みを消した第4真竜ヒュプノスは名乗りを上げた。

 

 

「私は第4真竜ヒュプノス。愛と憎しみを糧とし、万物を屠る縛めの真竜なり! ――私を……打ち砕け!!」

 

 

 

 

 

 

人と竜の物語 A

 幻想火天 西暦7000年相当 学術都市プレロマ・竜殺剣封印区

 

 

 

 

 

 

「『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――ッ!!』」

 

 

 これは呪いか、それとも罰か。

 

 進化の理に組み込まれた命が咆哮する。――いいや、咆哮と称するには語弊があった。ヒュプノスの叫びは相手を威嚇するためのものではない。あれは、彼女の中に残るエメルとアイテルの悲鳴なのだ。己という存在を失っても、姉妹はヒュプノスの中で戦いを続けていた。

 憎悪と愛情――相反する感情を駆使し、ヒュプノスは彩羽たちに攻撃を繰り出してくる。苛烈なまでもの破壊力はエメルの憎悪由来だ。振りかざした手にエントロピーを収束し、鎌鼬、あるいは衝撃波としてこちらに撃ち出してくる。

 

 

「――つかまえたっ!」

 

 

 彩羽は速度を上昇させる陣形を組む。身軽に動けるようになった面々は、撃ちだされた衝撃波を紙一重で回避した。下準備としてばら撒いていておいたドライアイスも効果を発揮してくれたらしい。

 自身の攻撃を回避されたヒュプノスは、次の攻撃準備のために動き始めた。唸り声と共に、憎悪のエントロピーが集っていく。収束する先は、本体の腰に集った赤い剣の群れだ。間髪入れず、憎悪を纏った剣が降り注ぐ!!

 

 

「消えろォォッ!」

 

「マシュ、宝具お願い! ――耐えてみせる!」

 

「お任せください! 守り抜いてみせます!」

 

 

 彩羽は防御陣形を整えながらマシュに指示を出す。マシュは2つ返事で頷き、仲間たちの眼前へと躍り出た。

 展開された“いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)”が、吹き荒れる憎悪の刃から仲間たちを守り切る。

 人理焼却滅式の宝具すら防ぎ抜いた対悪宝具の名は伊達ではない。憎悪を司る攻撃は、善き少女による精神の守りによって阻まれた。

 

 それを見たヒュプノスは満足げに笑った。この程度で死なれては困るためだろう。

 

 

「言葉にしないだけで、求められているものはタケハヤと変わらないよね……!」

 

 

 ロマニは苦い顔をしたまま、即座に魔術を展開した。鮮やかな光がヒュプノスに降り注ぐ。本体は腰部分の剣を展開させることで防いだが、何発かが翼に直撃した。

 高らかに響く悲鳴――それはアイテルの声だった。妹の声に共鳴するように、エメルが苦悶の声を上げる。彼女たちの声に、胸が抉られるような心地になった。

 

 

「くそぅ……! こんなの、こんなの……!」

 

 

 攻撃した張本人であるロマニが苦しそうに顔を歪める。彼の本業は医者であり、命を救うことが仕事だ。けれど、今の彼に求められているのは、安楽死を滞りなく行うための勇気だった。皮肉以外の何物でもない。

 

 

「……くッ!」

 

 

 嘗て憐憫の権化として存在していたゲーティアも表情を歪めたが、それら一切合切を振り払うように首を振った。間髪入れず、ゲーティアが魔術を展開する。数多の光がヒュプノスを穿った。

 

 真竜の咆哮は痛々しい。「悪夢のようなこの時間を終わらせてほしい」と懇願しているかのように。

 実際、この光景は悪夢としか言いようがなかった。彩羽たちにとっても、エメルたちにとっても。

 

 

「一気呵成に攻め落とす! みんな、お願い!」

 

「えぇ」

 

「残酷なことだ」

 

「請け負った」

 

 

 彩羽は眦を釣り上げて指示(オーダー)を出す。仲間たちは弾かれたように飛び出した。

 

 次の瞬間、ヒュプノスは足元から燃え上がった炎に体を焼かれた。反撃しようとジャンヌ・オルタを睨んだヒュプノスであるが、上空から降り注いだ憤怒の槍に貫かれる。ヒュプノスは咆哮を上げてジャンヌ・オルタへ襲い掛かろうとしたが、鎌鼬は放たれることはない。

 奴が攻撃するよりも先に動いたのは巌窟王エドモン・ダンテスである。鋼の精神力はありとあらゆる牢獄からの脱出を可能とし、高速移動はあくまでもその副産物だ。出し惜しみすることなく、エドモンは攻撃を叩きこんでいく。彼の横顔は、珍しく険しさを滲ませていた。

 ヒュプノスはエドモンに向かい鎌鼬を撃ち放った。エドモンは高速移動を駆使して回避し、そのまま戦線から下がった。代わりに飛び出したのは山の翁キングハサン。彼はゆったりとした足取りで――けれど厳格な気迫を以て、己の得物である大剣を振るった。その一刀が、ヒュプノスの腹部を抉る。

 

 

「来るなァ!」

 

「うぅおおおおお!」

 

 

 間髪入れずヒュプノスが吼えた。キングハサンが飛び去る間も与えず、彼女も剣の群れを展開する。それは、自分の腹部を抉った大剣死告天使(アズライール)への報復だ。

 だが、刃の群れによって傷つきながらも尚、キングハサンはまだ健在であった。揺らぐこと無く踏み止まった彼は、即座に反撃を叩きこむ。ヒュプノスは弾き飛ばされた。

 

 追撃と言わんばかりに、ロマニとゲーティアによる魔術の弾丸が降り注いだ。体勢を立て直せなかったヒュプノスはそれをもろに喰らう。そこへ、マシュが大盾で殴り掛かった。ヒュプノスの身体は地面に叩き付けられた。呻き声を上げながらも、奴は体を起こす。

 

 ヒュプノスの剣に宿っていた憎悪が吹き払われていく。姉の名を呼ぶのは妹の声、妹の名を呼ぶのは姉の声だ。蒼い光は本体の傷を癒していく。

 憎悪の剣による攻撃がエメル由来ならば、ヒュプノスの傷を治すのはアイテルの愛情由来であろう。相反する感情により、ヒュプノスの攻守は万全らしい。

 己の傷を癒し終えたヒュプノスは、突然彩羽たちに背を向けた。普通ならあり得ぬ行動だが、背中の翼がアイテルであることを考えるに、無意味な行動とは思えなかった。

 

 

「みんな、気をつけて! 何か来るよ!」

 

「――うぅぅああァァァァ!!」

 

 

 彩羽の警告とほぼ同時に、背中の翼が吼えた。アイテルの瞳に当たる部位がギラリと輝く。

 

 金切り声、あるいは絶叫がこの場に響き渡る。びりびりと空気が震えた。途端に、四方八方から苦しそうな呻き声が聞こえた。酷い痺れのせいで体がまともに動かない。視線を巡らせると、他の面々も身動きが取れないでいるではないか。

 今の攻撃はヒュプノスに敵対する生命体の動きを封じる力があったらしい。それでも、仲間たちは動こうと足掻いている。彩羽は心の中で己を叱咤しつつ、どうにか癒しの歌を響かせる。仲間たちの痺れは治ったようだが、ヒュプノスは既に攻撃動作に入っていた。

 まずいと叫ぶよりも先に、剣の群れがこちらに降り注いでくる。先程の攻撃は指示(オーダー)とマシュの宝具で防いだけれど、痺れによって身動きが取れないでいた時間が明暗を分けた。防御する間もなく、自分たちはそれを喰らってしまった。

 

 それでも、誰1人カルデアへ強制送還されなかっただけマシだろう。

 満身創痍でも踏み止まり、彩羽たちはヒュプノスと対峙する。

 

 

「……本当、アンタっていけ好かないわよね。人類を愛し、竜を誰よりも憎んだ奴が竜になるなんて、気色悪いにも程があるわ」

 

 

 ぜえぜえと息を吐きながら、ジャンヌ・オルタは旗を支えにして立ち上がった。刺々しい言葉使いではあるが、声は震え、不敵に彩られたはずの笑みは酷く歪んでいる。「憎しみに喝采を」と勝ち鬨を挙げる彼女にとって、憎しみを燃やして戦い続けたエメルの結末は納得できないのだ。

 

 

「お前たちの憎愛、そして恩讐の彼方が“地獄”だと言うならば……最期の復讐に手を貸そう。そして、お前たちが果たせなかった竜への恩讐を、俺たちが引き継ごう。――あの小僧(結絆)がそれを成したように」

 

 

 おそらくこの中で一番憤っているのはエドモンだろう。彼はその手の憎悪と愛情を肯定し、称賛し、誘導する立場にある。エメルとアイテルの歩みを聞いていたとき、一番表情が輝いていたのは彼であった。そして、彼女たちの結末に衝撃を受けたのも。

 エドモンが真顔のまま凍り付いたのは、姉妹が恩讐の果てに辿り着いた先が“自身もまた真竜として覚醒し、もう元に戻れない”という結末を迎えたためだ。戦いの最中、ずっと彼の表情は険しいままだった。普段のやたら響く笑い声もない。

 正当に評価されるべき愛と憎しみも、それを糧として突き進み続けた意志すらも、こんな結末の為だったなんて認められるはずがない。――だからこそ、エメルとアイテルの最期の意志/真竜が抱いた最初の意志に対して、エドモンは二つ返事で応えた。エメルとアイテル/真竜ヒュプノスの復讐に手を貸すために。

 

 不意に、ヒュプノスが目を丸くした。きょろきょろと周囲を見回す真竜の姿は、酷くあどけなく見える。

 そうして、疑問の答えに至ったのであろう。ヒュプノスの双瞼は、キングハサンを映し出した。

 

 

「そうか。聞こえるのだな? この鐘の音が。……安心しろ、神託は下った。――喜べ、()()()()()()()()よ。汝の望みは、ようやく叶う」

 

 

 甲冑によって顔は見えないが、キングハサンの言葉はとても優しい。

 

 死すべき時を見失った亡者の首を落とすのが彼の役目であり、対象者――エメルとアイテルは、死すべき時を渇望しながらも止まることができず苦しんでいるのだ。いずれ、その願いすら淘汰され、真竜ヒュプノスとして“命を食い荒らすだけの存在”に成り下がるだろう。

 彼女たちはヒトではない。けれど、その在り方はヒトと同じだ。好きな人がいて、守りたいものがあって、失いたくないものがあって、奪われたくないものがあった。それらを壊されたくなくて立ち上がった彼女たちにとって、第4真竜として目覚めるという終わりは残酷すぎる。

 

 ヒトのまま終わりたいと願いながら、それが叶わず苦しみ続ける亡者たち。

 彼女たちの懇願を聞き届けたからこそ、山の翁は慈悲を以て首を断つのだ。

 

 

「『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――ッ!!』」

 

 

 それはエメルとアイテルにとっての安堵だった。同時に、第4真竜にとっては避けるべき終わりだった。

 後者の意志が優勢になって来たのだろう。ヒュプノスは真っ先にキングハサンを狙い、剣を展開する。

 間一髪、マシュの盾が憎悪の剣を防いだ。その隙を見逃すことなく、彩羽は即座に指示を出す。

 

 

「ジャンヌ・オルタ、宝具開帳!」

 

「愛憎を司る真竜よ、汝の道は既に途絶えた!」

 

 

 ジャンヌ・オルタは不敵に微笑み、大きく旗を振るう。

 

 

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮――“吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)”!!」

 

 

 復讐者という御旗の元に、彼女と周囲の怨念が魔力へと変換される。燃え盛る焔はジャンヌ・オルタの憎悪と怒りだけではない。竜にすべてを奪われたヒュプノスの民たちの怒りと悲しみ、この結末に納得できない彩羽たちの憤りを糧にしていた。

 竜には一切の不正も汚濁もない。あるのは、人類には測定不能レベルの独善だけだ。第4真竜としての意識が強くなりつつあるヒュプノスにも同じことが言える。結果、ジャンヌ・オルタの宝具は容赦なくヒュプノスを焼き払い、串刺しに処していく。

 

 

「あははははははは! 喝采を……汝らの憎悪に喝采を!!」

 

 

 高笑いするジャンヌ・オルタの双瞼が滲んだように見えたのは、きっと気のせいではない。

 彼女は、進化の理によって踏み躙られた憎悪を拾い上げてくれている。

 その憎悪が本来焼くべき対象(もの)が何だったのかを確かめるかのように。

 

 

「よし、動きが止まった! ゲーティア、エドモン、宝具で追撃!」

 

「……これは、悲しいな」

 

「ああ、それでいい」

 

 

 そんな魔女の祈りに呼応するかのように、彩羽の指示を受けたゲーティアとエドモンが戦場を駆けた。

 

 

「我が征くは恩讐の彼方――“虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)”!」

 

「ウアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 

 身動きを止めたヒュプノスに、高速移動で飛び出したエドモンの炎が襲い掛かる。ヒュプノスも咆哮し、即座に剣を展開した。怨念と復讐を糧とし、触れるものを死へと至らしめる炎が、長すぎる流浪の旅によって研ぎ澄まされた愛憎とぶつかり合う。

 拮抗を崩したのはゲーティアの宝具である。人生を祝福する命の輝きがヒュプノスの翼を穿った。その輝きに、奴の中にいたエメルとアイテルは何かを見出したのかもしれない。彼女たちの意志が、ヒュプノスの眼差しを命の光に釘付けにする。間髪入れずエドモンが攻撃を叩きこんだ。

 

 ヒュプノスは呻きながらも、再び剣を展開する。降り注ぐのは憎悪と悲しみの剣。けれど限界が近いのか、エントロピーの気配が薄れているように感じる。

 

 ジャンヌ・オルタは旗でそれを受け流し、キングハサンは大剣でそれを受け流し、エドモンは高速移動でそれらを躱した。ロマニとゲーティアが魔術でその威力を削ぎ、マシュは盾でそれを防いで2人を守る。

 先程に比べて、明らかに威力が下がっている。満身創痍になりながらも、身体の支配権を握っているのは第4真竜なのだろう。ヒュプノスは唸り声を上げながら、数多の鎌鼬を生み出して弾幕を張った。

 なけなしの力を使って自身を守ろうとしているのかもしれない。竜としての生存本能が、下位生命体にとっての『歪んだ命』に執着しようとしている。死すべき時から逃れようと足掻いていた。

 

 

「聴くが良い。晩鐘は汝の名を指し示した」

 

 

 だが、その足掻きにも終わりが訪れる。

 

 アイテルの愛情を使って傷を癒そうとしたヒュプノスが、弾かれたように身をすくめた。瞳に浮かぶは、明らかな怯え。

 蛇に睨まれた蛙のように、4番目の真竜は一切の動きを止める。奴の視線の先にいるのは、大剣を構えて近づいてくるキングハサンだ。

 

 

「告死の羽───首を断つか。“死告天使(アズライール)”」

 

 

 厳かに、山の翁は宣言する。その大剣の行方を、ヒュプノスはじっと見つめていた。

 赤い瞳が細められた。安心したように綻んだその微笑は、エメルとアイテルの笑い方だ。

 

 満足したように頷いたヒュプノスの口が動く。――これは、エメルとアイテルの意志が紡ぐ言葉。

 

 

「ああ、それでいい。……ありがとう、私が愛した命たちよ」

 

 

 剣が振り下ろされた。死を告げる天使の名を冠した剣――山の翁が成し得てきた偉業と彼の信仰――が、滞りなく4番目の真竜の命を刈り取った。

 晩鐘が高らかに鳴り響く。朝焼けに、白い羽が舞い散った。ようやく安息を迎えたヒュプノスの民。竜への恩讐を人類へ託し、彼女たちは静かに目を閉じた。

 

 幾千、幾万の流浪。人類へ知識を与え、竜への憎悪と命への愛情を抱いて歩み続けたエメルとアイテルの旅路は、ここで幕引きを迎える。それは悲劇か、それとも喜劇か。人類には語る資格は無く、ヒュプノスは語る術を持たない。分かることはただ1つ――エメルとアイテルは、この結末に一切後悔していないということだけだった。

 

 

 




てごわかった……(リヨぐだ子感)。私のような未熟者にはこれが手一杯でした。なんだかとても申し訳ないです。
今回選出した面々は以下の通り。
・マシュ(対悪宝具なら、憎悪由来のヒュプノスの攻撃とは相性が良さそうだよなと思った)
・ジャンヌ・オルタ(エメルの憎悪に同調しそう&ヒュプノスの結末に憤りそうだと思った)
・巌窟王エドモン(第4真竜の顛末で一番ダメージがでかそう&一番真面目に取り組んでくれそう)
・山の翁(慈悲を以て首を断つ)
ヘルサさまの案で提示されたジャンヌを不採用にしたのは、憎悪に一定の理解と同調を示しそうなジャンヌ・オルタの方が物語の展開に合いそうだと思ったためです。ご期待に沿えず申し訳ありません。
次回からは西暦2100年/U.E.77の東京。一旦小休止したら、ド鬱の地雷原をひたすら駆け抜ける『お花見』――もとい、Chapter6がやって来ます。結絆の友達(受付嬢、軍人)とその上司との決戦を、彩羽率いるカルデア一行はどう彩るのか。
幕間の物語を乗り越えた面々が1.5部に突入したら、黒幕と探偵が顔を覆う発言しそうです。だって、黒幕のやろうとしていた「完全犯罪」を、結絆の上司は「躾け」で実行してしまったのですから。そこからメタ読み推理でゴリ押しするネタが浮かんでは消えていきます。
新宿のハチ公と噂されるアヴェさんにとって、結絆=ナナⅢにおける“人類の統合者”の扱いは悩ましい限りだろうなあ……。“人類の統合者”がいなきゃ地球滅亡で同胞絶滅は確定だから、迂闊に「復讐だ」って襲い掛かることはできないでしょうし。
ボブミヤは淡々とドラゴン狩りそうだし、新宿のハチ公にとってドラゴンは敵判定だろうし、教授と探偵は頭痛と胃痛に悩まされそうだし(主に犯罪の規模や犯人の動機)、新宿のイケメン暗殺者は状況が状況なだけに複雑な表情になりそうだし……意外と楽しいなあ(白目)

“追記”
ジャンヌ選出を希望していたのはヘルサさまでした。M95マスクさま、ヘルサさま、誠に申し訳ありませんでした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。