いよいよプロジェクト最後のひとりとなりました。しかも一番長いです。
今回のお話しは前話を見てからだとちょうどいいと思います。
では、どうぞ。
これはロックがとても好きな彼女がロックで可愛いアイドルとして知られる少し前のお話。
「〜♪」
鼻歌スキップという、いかにも私、楽しいです!という感情が伝わってくるような状態の女の子と、
「おーいあんまり先に行くなよー。」
そんな彼女を見守りながらついていく男の娘……あ、いや、男の子がいる。
「わかってるよー!」
「わかってるなら止まってくれー。」
「は〜い。」
シュタ!と、女の子、多田李衣菜がスキップをやめて止まる。
「はい、よく出来ましたーいい子ですねー。」
「えへへぇ……じゃなくて子供扱いしないでよ!もう高校生だよ私!」
「はいはい、怒らない怒らない。」
「怒ってないもん!」プクッ
「……」
やっぱ、子供じゃん……と、溜め息を吐きながら李衣菜の頭をポンポンしている男の娘。彼氏だろうか?
「そもそも!褒めてくれるならもう少し心を込めてよ!」
「怒るとこそこなのかー……じゃあ心込められないからこれもやめる。」スッ...
「それは続けて!」
「え〜……。」
「嫌なら手繋いで!」
「……ほら、買い物する時間なくなるから行くよ。」
「え?手は?」
「繋ぎません。」
「え?あ、待ってよ兄さん!」
なんということか。このイチャイチャなやりとりをしている相手は兄だったようだ。まあ、確かに彼氏にしては距離が近い。兄と言われれば納得もいく気がする。
この男の娘の名は多田衣瑠香。妹の李衣菜とよく似ていて、彼女が髪を腰まで伸ばし、身長を高くしたら衣瑠香になる。周りから見れば、可愛い女の子とクールビューティの女の子がじゃれあっているように見えるだろう。
ん〜眼福。何人かは手を合わせて拝んでいる。
「せいや!」
「おうっ……なにする。」
「兄さんが繋いでくれないから拗ねました〜。」
「拗ねたら腕に飛びつくのか?」
「ぷい!」
「はい、可愛い可愛い」
「ひぅ!かわ、かわわわ……」
「置いてくぞー」
「え?あ!いつの間に!待ってったら!」
先に行く衣瑠香を慌てて追いかける李衣菜。なんだかんで言って追いつけるようにゆっくり歩く衣瑠香。これだけ見ても2人が仲のいい兄弟なのはわかる。
「ふう……。ところで何買うの?」
「夕飯の食材。何がいい?」
「ん〜……兄さんが作るならなんでもいい。」
「そう言ってくれるのは嬉しいがなんでもいいは困るな。」
「じゃあ、ボルシチ!」
「なぜそのチョイス……あ、いやさてはなんかの番組見たな?」
「うん!」
「めんどいからパス。」
「ええ?聞いたのは兄さんじゃん!」
「聞いたけどまさかボルシチが返ってくるとは思わなかった。めんどいから鍋で。」
「お、いいね!キムチがいい!」
「塩な。」
「なんでよ!美味しいじゃん!キムチ!」
「キムチは濃い。塩で締めがラーメン。決まり。」
「むーん……まあ、いいか、兄さんが作るし。」
……夫婦?
「あ、待って待って!」
「うん?」
「あのお店行ってきてもいい?」
「あ〜またヘッドホン買うのか?」
「か、買わないよ!見るだけ!」
「その台詞8回目」
「こ、今回はほんとだよ!お小遣いも節約しないとだし。」
「それも8回目。」
「ね?お願い!」
「はいはい。」
「やったぁ!」
そう言って2人はヘッドホンの売っている音楽関係専門のお店へと入っていく。知ってのとおり彼女は無類のロック好き。同時にヘッドホンを見るのも好きなのだ。
「へえ〜このデザインいいなー……あ!こっちは凄いロックだね!んー!!いいのばっかり!」
「どれも同じに見えるけどなー……。」
「全然違うよ!」
「でもいつもつけてるやつは同じだよね?」
「こ、これは兄さんが誕生日にくれたやつだし……。」
「あんまいいもんじゃないから取り替えればいいのに。」
「それはダメ!」
「あ、そう……。」
李衣菜にとってそのヘッドホンは性能や品質関係なしに大事なものがあるようだ。
「李衣菜はロックが好きなんだよね。」
「うん?そうだよ、かっこいいし、こうなんか心が震えるっていうか?」
「そんなに好きならバンドとか組んだらいいのに。」
「う!!だ、だって私楽器弾けないし。」
「あー……でも楽器は弾けなくても歌えれはいいんじゃない?李衣菜、歌うまいし。」
「んー、でもどうやって?」
「ふむ……。楽器が引けなくてもよくて、歌が歌えるとこねー……。」
ふと衣瑠香の目にはアイドルのポスターが映る。
「アイドルとか?」
「えー!アイドルって可愛いのばっかじゃない?」
「そんなことないと思うけどな。かっこいい人はいるし、いいんじゃない?ロックで、可愛いいアイドル。」
「ロックで、可愛いアイドル……。」
「流石に無理やりか?」
「いや!それいいかも!」
「え?まじ?」
「うん!ロックなアイドル!凄くいい!ロックだよ!」
「(半分冗談なんだけどな……)」
「うわーいいなー!!それならユニットとかで出たいな!ロックなユニット!」
「気が早いよ。そもそもオーディションとかあるでしょ。……まあ、李衣菜なら余裕だろうけど。」
「それでもいいーの!組むならロックが好きな人がいいな〜。」
「それはどうかね〜。」
「?なんで?」
「多分李衣菜が最初に組む人はロックが好きな人じゃないと思うよ。」
「???なんでわかるの?」
「なんとなく。」
「わ、出た。兄さんのなんとなく。でも当たるんだよね。」
「しかも李衣菜のロック好きはイマイチ理解できない相手で、でも相手にも李衣菜のロックと同じくらい入れ込むものがあって、でもそれを李衣菜が理解出来なくて。ことある事に反発し合うような人。」
「え〜それじゃぁ上手く行かないじゃん。」
「ところでどっこい。反発し合う中でお互いのいい所が見つかって、好き物に対する思いの強さは同じなことを理解して、相手のことを肯定できるようになって、そんでもって壁にぶつかる。んで、その壁を2人で壊す。そんでお互いのことをより信頼し理解する。でも根っこが似ているせいか、いっつも反発して、いっつも『解散だー!』とか言うんじゃないか?」
「……なんかすごい具体的だね?みてきたの?」
「まさか。今の科学じゃあ未来に行くことなんて出来やしないさ。ただの直感だよ。でもきっとその子が李衣菜にとって1番大切な相方になるかもね。」
「ふーん……」
「ほら、そろそろ行くぞ。あんまり遅いと母さんに怒られる。」
「あ、うん!」
アッソウイバワタシネカレイノニツケツクレルヨウニナッタヨ!
スゴイスゴイ
ツギハニクジャガオシエテ!!
コンドナー
2人はお店を後にして食材を買い行ってしまった。
また、李衣菜が兄の腕に飛びつている。兄は苦笑しながら頭を撫でている。いい兄妹だ。
ちなみに、後日李衣菜はオーディションに受かりアイドルとなった。
その時の衣瑠香はビックリしすぎて軽く記憶が飛んだらしい。
おしまい。
〜〜現在〜〜
今日は私達の初ライブ。色々とイレギュラーが重なったけど上手くいってよかった……。あとは……。
「……」ソワソワ
「リイナちゃ〜ん、寝ないのー?」
「あ、も、もう少しだけ」
「先寝るからねー?」
「う、うん。」
ま、まだかな?もう寝ちゃってるのかな?で、でも兄さんは来てくれるって言ってたし。
「……」ゴロゴロ
ピコン
「!!」カバッ
き、きた!
「スー……ふぅ〜……。よし!」
『李衣菜へ。今日のライブはよく出来ていたと思う。しっかりと見てたから、お前の可愛い姿とロックのとこも。これからも頑張って。』
「え、えへへ……。」
や、やた!褒められた!
「ふふふ……えへへぇ」ゴロゴロ
可愛いって!頑張ってって!
「えへへへへへ/////」パタパタ
「……だー!!!うるさいにゃー!リイナちゃん!」
「わっ!?ご、ごめん!」
「もーさっきからスマホ見てソワソワしてると思ったら今度はニヤニヤして……正直怖いにゃ。」
「うっ……うるさくしたのは悪かったけど、そこまで言わなくてもいいじゃん!」
「いーや!言うよ!どーせ愛しのおニーサンなんでしょ?」
「い、いいい愛し!?そ、そうだけどそうじゃないよ!そんのこといったらミクちゃんだって電話してくる時の声甘すぎて砂糖吐くかと思ったよ!」
「あまっ!?ふ、ふーんミクは駿チャン好きだしぃ?結婚したいし?」
「け、けけけけ結婚!? 」
な、何言っててるこの人!?
「そ、そんなのおかしいよ!だって兄妹だよ!?」
「愛に血縁は関係ないの!そんなこと気にするなんてリイナちゃんの兄愛はたかが知れてるにゃ!」
『最初に組む人はロックが好きな人じゃないと思うよ。』
「んな!?わ、私だって兄さん好きだし!ロックのこと理解してくれてるし!」
「リイナちゃんのロックは基準が全くわからないよ!」
『李衣菜のロック好きはイマイチ理解できない相手で』
「み、ミクちゃんのネコも、いっつも謎だよ!」
「ふ〜ん駿チャンは理解してくれるもんねー!リイナちゃん勉強が足りないんじゃないかにゃ?」
『相手にも李衣菜のロックと同じくらい入れ込むものがあって、でもそれを李衣菜が理解出来なくて』
「だいたいミクちゃんはーーー」
「リイナちゃんだってーーー」
『反発し合う中でお互いのいい所が見つかって、好き物に対する思いの強さは同じなことを理解して、相手のことを肯定できるようになって』
「ぐむむむ……」
「うぎぎぎき……」
『いっつも『解散だー!』とか言うんじゃないか?』
「「解散だよ(だにゃ!)!」」
『でもその子が李衣菜にとって1番大切な相方になるかもね』
絶対に違う!!
おしまい?
ありがとうございます。
次に座談会を挟みまして、いよいよ自分の好きなアイドルが登場します。もし自分の妄想と独断と偏見でもよければ読んでいってください。
それでは。