死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件 作:くいあらためよ
海辺沿いの高台を道なりに宛もなくあるく。
壊れた壁がそのままにしてあった。
下の方では配給をめぐって人々が列をなしていた。
管野ミカサはこの町でしばらく過ごすことになった。
話は遡ること二日前…
横須賀へ寄港したミカサは横須賀市民に熱烈な歓迎を受けた。
彼らからすればミカサは人類の救世主といったところだろうか。
菅野は予定通り北野へと接触を果たした。
しかし、予想外だったのが北野の権力が弱まっていたということだ。
というのも、半年前から各地にいた北野派閥の人員が消息不明となっていた。
菅野はその原因を突き止めると約束をしてしまったことから今に至る。
その約束の中に、霧の戦艦……つまりはミカサを横須賀に留めておいてほしいという約束も含められていたのだ。
「頼むミカサ!ここにとどまってくれ!!!」
「なんで私の知らないところで勝手に約束するのよ!!!!」
「この通りだ!頼む!」
甲板に額を擦り付けて頼み込む菅野に流石に嫌ですとははっきり言えなかった。
それに横須賀を出たとしても行く宛が無いためどうしようもない以上、ミカサはしぶしぶ要求を飲むことにした。
そこからの対応は(何故か)早く、町外れの海の近くに用意された家に今はすんでいる。
菅野は基本的に北野の事務所にこもっていた。
「静かなものね……あれだけ霧の艦隊が暴れたというのに…」
土手に座り、壊れた壁を眺める。
材料や人員が不足して直すことができないと通り過ぎる人の会話から聞いた。
仮に直したとしても、今回簡単に破られてしまった以上直す必要性もないと思う。
「401は何をしているかわからないし、データベースにアクセスできないし………することもないし。」
「なにしてるのー?」
「ひっ!?」
突然後ろから声をかけられ小さく悲鳴を上げてしまう。
振り向くと申し訳なさそうな顔をした女の子が立っていた。
見た目は10歳ぐらいだろうか、茶髪の長い髪に汚れたヨレヨレのワンピースを着ていた。
「お、驚かせてごめんなさい!ただ、何をしてたのか気になって………」
「え、あ、大丈夫よ!!こちらこそごめんなさいね。」
「ここらへんに人が来ることなんてなかったから…」
ミカサ達が拠点にしている家の近くには廃工場が乱立しており、人が住むには向いていなかった。
「ただ海を眺めてたの…君は?」
「私は…えっと…家に帰る途中で……」
「家?でもこの先は…」
「家がないので、工場の場所を家にして…ます。」
少女はバツが悪そうな顔をしてそう話す。
きくと両親は小さい頃になくしたらしく今は一人で過ごしているらしい。
一応親戚の家も回ったそうなのだが食料不足のこのご時世に受け入れる余裕がないと断られたらしい。
「大変だったね…」
「いえ、私はなれましたから。」
明るく笑顔で返す少女にミカサは心苦しさを感じた。
この子を助けることは出来ないだろうか、そんなことを考えていた。
「そろそろ私は帰りますね!お姉さん、ありがとうございました!」
「あ、まって!」
とっさに声をかけてしまったが続く言葉を考えてなかったため、少しの間固まってしまうミカサを少女は不思議そうに眺めていた。
10秒ぐらいたっただろうか、ようやく言葉をひねり出すことができた。
「私の家に来ない?」