死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件 作:くいあらためよ
ハシラジマを出立してからしばらく過ぎた頃、ミカサは何となく違和感を感じ始めていた。
辺り一帯の海域で霧に未だ出会ってないのだ。
作戦ログによるとここはコンゴウの警戒ライン………あの、コンゴウが自らの職務を放棄しているとは考えづらいため何かしらの想定外の事が起こっているのだろう。そうなると原因は401しか考えられない。
それでも駆逐艦の1隻2隻は居ても良いのだと思うのだが……。
「そういえば、マヤの反応も消えてたわね………一体何が起きていたのやら………くそっ!この艦の一部機能が使えなくなってる。」
先程から最新のデーターへアクセスしようにもロックされてできなかった。
「ただで返すわけがないとは思っていたが、そう言うことだったのか……」
しかし、ひとまずは横須賀へ行かなくてはならない。
401と離れ、霧にも隔絶されたミカサにとってどこかに所属しておくのが安心だと考えたからだ。
人類側についたら霧の攻撃を受けるのはわかりきっているが、それでもバックに誰かいた方が今後としても行きやすい。
そのため、今のところでは好感度が高いと思われる横須賀にいくのが懸命だと思われた。
「それに……前々から横須賀につれていってほしいって言ってたしね、あの男。」
ふと、あの男が気になる。
一体かれは何を研究してなぜ追われる身になっていたのか…
気になったミカサは問い詰めてみることにした。
甲板で寝転がっていた菅野を起こし話を聞いた。
先ほどまでミカサに攻撃的だった男とは思えない大胆さだ。
「何で追われる身になったかって?」
「そうよ、少し疑問に思ってね。」
「……隠しても無駄か……良いだろう、話してやるよ。」
彼は自分に起こったことの断片を話始める。
・・・
1年前のことだった。
俺がまだ艦に乗っていた時だ。そのとき俺には小さな妹がいた。俺が仕事をしている間は祖母の家に預けて育てていた。
あるとき、俺の帰りが遅くなった日があってその日はちょうど妹の誕生日だった。何とかケーキを手に入れて帰り道、光の明かりが消えていてドアが開いている。家に入ると目の前には無惨な妹の姿と祖母の姿があったよ。
・・・
「それから2年、必死に犯人を探した。そして俺はとうとう見つけた。」
「誰だったの?一体犯人は……」
「管区軍部長官・武藤真北だ。あいつは………あいつは自身の特権を使って不祥事や犯罪歴をすべて隠してきた。しかし………一部データを復元させることに成功できた。」
そういって、菅野はポケットからUSBを取り出す。
「1度俺は告発した。そして、罪が表に出る前に…俺に401捜索命令が出たんだ。」
「あなたを抹消するためにね。」
「そうだ。でも、結果的には俺は死ねなかった。流石の真北も焦っただろう。今度は作戦の失敗を俺に擦り付けて来やがった。」
「何てクズなの………」
「だから俺は逃げた。離島の旧海自の観測所に身を潜めたんだ。」
そこまで話すと、菅野はミカサに向き直り、目を見つめる。
「俺は横須賀に行き、これを告発する。あいつが生きている限りはいまも誰かが苦しんでいるに違いない。」
「告発するっていってもアテはあるの?」
「一人だけ………昔からよくしてくださった先生だ。」
「それは誰なの?」
「北野良寛先生だ。」