死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件 作:くいあらためよ
私は、燃えている彼らの船を眺めていた。
沢山の人が救助を求めている。
救命ボートは何隻かあったがそれでも乗れない人たちがいた。
『どうせ、奴らは死ぬわ。』
とタカオが、頭のなかに話しかけてきた。
この頃、意識を概念伝達空間に飛ばす方法がわかってきたので試してみた。
気付くと、洋式の庭園を模した空間にいた。
中央には机と椅子があり、片方にタカオが座っている。
「さっきのは…どういう意味だ?」
椅子に腰をかけつつ、さっきの意味を聞いた。
「どうって……この海域は私たぢ霧゙が掌握してるのよ。救助船がこられるわけがないわ。そしてここは海岸からかなり離れてる。どうやっても泳いでいける距離ではない、そういうことよ。」
「助けたりはしないのか?」
「はぁ?アンタなにいってんの?私達は兵器、アドミラリティ・コードに従って行動するのよ。助けるわけが無いじゃない。」
人として生きてきた私には、到底理解できぬ事だった。そして、彼らを攻撃してしまった事に後悔した。
「とりあえず、この海域はよろしくね。これから私は太平洋に向かうから。」
タカオはそう言うと、通信を切った。
「私は、兵器なのか……あれ、いつから自分の事を私って言ってたっけ……」
そもそも、なんであのとき奴らの事をすぐに人類だと思ったんだ?
様々な疑問が頭をよぎった。
色々考えた結果、一つの答えにたどり着く。
「まさか!?」
既に自分も霧になりつつある?
過去の自分の人格は消されつつあるというのか…
私は、気付いたら泣いていた。
全ての物が信じれなくなってきた。
この涙は私の涙ではなくミカサの涙なのか、等。
概念伝達空間から戻ると、目の前ではまだ船が燃えていた。
私が私であるためにどうしたら良いのだろうか…
ふと、タカオがいった言葉を思い出す。
『私達は兵器、アドミラリティ・コードに従って行動するのよ』
霧の行動を制限してると思われるもの…
じゃあ、そのアドミラリティ・コードに従わない行動をしよう。
私は、そう思い付いた。
霧を霧たらしめているのはそのコードだ。なら、それ反発すればそれは私の意志となる。
ふと、海に漂っている人達を見た。
「彼らを助けよう!戦艦ミカサ、前進!」
この行動が、これからの運命を変えることになるとは今はまだ知らない。
同日、三時間前
「ナガラ、あなたはただ命令にしたがっただけ。」
「イオナ、どうしたんだ?」
伊号401ことイオナと、千早群像らは振動弾頭をアメリカに届けるべく、佐賀を出発し、横須賀に向かおうとしていた。
「艦長、クライアントからもう1つお願いがあるそうです。」
「お願い?依頼じゃなくてか」
「先程、横須賀から霧に撃沈された船の乗組員を助けてほしいとの連絡がありました。ちょうど、我々の進路と一致します。」
「ふむ……イオナ、いけるか?」
「大丈夫、多分いける。」
「よし、じゃあ横須賀に向けて出港だ。全速前進!」
こちらも原作とは少し違うものの、話が動き始めた。