死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件 作:くいあらためよ
双方共に放たれた重力砲は海を割った。
ミカサの方が実のところおしていた。
「沈めぇ!!」
「これくらいでナガトは沈まぬッ!」
ナガトの船体には、ミカサのミサイルが着弾していく。
やはり、硬い。
「ここで負けるわけにはいかないのよッ!!!」
ミカサの思いはさらにナガトを圧倒していった。
「ナガトッ!このままではッ!」
「全演算能力を移しましょう。これで、いけるはずよ。」
「了解、出力最大!」
今までおされていたが一転、おし返し始めた。
ミカサの重力砲では、防ぎきれなくなっていた。
「クッ……索敵能力の低下………自動迎撃システムの95%の停止……」
ナガトも相応の代償を受けていた。
「もう少しよッ!いっけぇぇぇえ!!!」
ナガトの重力砲が今まさにミカサを貫こうとしたとき、
「まずいッ!!!侵蝕弾頭よッ!!」
「え………う、そ」
海中から侵蝕魚雷が飛び出した。
ナガトの中心部に到達した侵蝕魚雷は、盛大に破裂した。
「もう…………持ちこたえれない!」
ミカサのキャパシティがオーバーし重力砲を維持できなくなっていた。
「あぁ………多聞、約束守れないかも……」
ミカサの重力砲が維持できなくなり消えた。
死を覚悟したまさにそのときであった。
『こんなところで死ぬんじゃねぇ!!』
そう、声が聞こえたかと思うと船体が横に大きくスライドしナガトの重力砲から逸れ、船体を少し削っていた。
「え………え?」
何がどうなったか、私には理解ができなかった。
しかし、
「ナガトが…………やられてる?」
爆発を繰り返すナガトを見て、本能的に助かったと感じた。
「いったい誰が………多聞?」
そう思うとすぐに駆けていった。
「大成功だな…………ちっこいの。」
「コクコク」
多聞は一人、笑っていた。
ミカサとの撃ち合いでナガトが夢中になっている隙に侵蝕魚雷を何本かうちこんだ。
最初は気付かれると思ったが、ハルナ・キリシマ戦でもハルナたちは、重力砲を撃つ際は索敵能力が低下しギリギリまで気づくことはなかったから、賭けてみることにしたのだ。
「最後に……この艦のコントロールが使えてよかった………」
ミカサのコントロールシステムに干渉した多聞は、側面のスラスターを全開にし、間一髪でナガトの重力砲から逃げることができた。
「ふふ……こいつで俺も…名を…残せた……かな。」
じょじょに意識が薄れていく。
「ちっこいの……あとは頼むぞ…」
もう視界は暗くなってしまったが、誰かに揺さぶられているのがわかる。
最後までいいやつだった……ミカサ。
いつか、霧と人類が手を取り合えば………いいな。
多聞の意識は、そこで完全に途切れたのであった。