真剣で弟と認めなさい!?   作:黒瀧汕

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待て、いや待って、本当に待ってお願い、いつの間に評価されていた!?
あと、知らない内にめっちゃ伸びてるのですが!?


第六話

 そこは、地獄だった。荒廃し空気すら焦がす大地に俺は居た。

 

 空は見えず反響する低音の地鳴りがここを屋内と証明する。取り込む空気は火の粉が含まれてるかのように熱く喉を焦がしにきていた。顔を上げても見えるのは炎の輪郭。そんな狭まれた空間から俺は無駄だと理解しても逃げた。走り、躓き、這いながらもその場から遠ざかりたくて。

 すると肩に何かが触れた。ぬるりと粘着力のあるそれは生暖かく気持ちの悪い水音を奏でながら俺を掴む。それは力を込めながら俺をゆっくりと振り向かせた。

 

 ※ ※ ※

 

 「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」

 

 横になっていた姿勢から全力で飛び上がり身を低くし警戒態勢になる。

 

 「フゥーっ、フゥーっ、フゥーっ!!」

 

 獣のような息を漏らし神経を研ぎらせ周囲の情報を取り込む。やがて、意識がはっきりとなり獣じみた呼吸を落ち着かせる。そして、改めてここが見慣れぬ場である事を理解すると最後の記憶を辿りながら情報を集めた。部屋の調度品からベットの品質を調べたがどれも統一されたメーカーから作られたもでその中でも最高級な部類の物であると確認、多少の違和感を抱きながら今度は自分の状態から推察する。

 

(さっき動いた時、感じた痛みからしてまだ体に罅が入ってるが、丁重に治療されてることからしてまだ利用価値がある者として生かされてるってことか……)

 

 だが、それでもこの部屋の違和感が拭えない。いくら何でも丁重過ぎるのだ。いくら実績あって優遇されてるとしてもだ、一介の軍人がこの様な全てが高級で設えてる場所に捕虜を連れてくるか?

 

(俺ならば否だ。ならば何が目的か……そういえば俺は何故、先程飛び起きたのだろうか?)

 

 まるで全身運動を全力で行ったかのような汗のかき具合に疑問が浮かぶ。

 

(イギリスにいた時のフラッシュバックはここまで酷くはなかった。ならば一体……)

 

 部屋の中央で思い耽る所にドアのノック音が部屋に響いた。完全に思考の方へ意識を向けていたシルバークロスは数秒は慌て机の上にあったペーパーナイフを手に構える。しかし、ノックの相手はそのまま部屋に入ることなく様子を伺ってる様に感じた。すぐに落ち着き現状を確認する為の方法を幾通りもシュミレーションする。

 

 「……どうぞ」

 

 絞り出した声音はいつもより強ばっていたがちゃんと言葉として伝えられた。扉の向こうにいる人物は最小限の音だけをたて入室する。入ってきたのはやせ細り執事服を着込んだ老人である。軽くこちらの顔を見ると微笑み恭しく頭を下げた。その動作一つ一つは非常に洗礼されてもので、角度、距離、こちらに対する配慮まで全てが完成されていた。

 

 「どうも、こうして会うのは初めてでございますね。私は九鬼家従者部隊のNo.3クラウディオ・ネェロでございます」

 「クラウディオ……まさか、『完璧人間』の……」

 「その名前は買い被りでございます。今の私はここで働く執事です。それに、この体は既に老いており、ミスは防げても長く保てなくなりましたから」

 

 そう語ると老執事は「ささ、お体が冷えるでしょう」とソファーに座らせると、どこから出したのかティーセットが準備され茶を淹れ始める。その様子を眺めると自然と惹き込まれた。バーテンダーや手品師は人に見られる為、手など意識してより美しく洗練された動きをお客に魅せる。この執事も同様、バーテンダーや手品師の様に人に魅せる動作でティーカップに淹れる事で紅茶への味の期待感が高まった。僅かに立ち上る湯気からして温度も調節されているのだろう、広がる香りとカップに触れた時の温度が適切ですぐにでも口を付けて飲みたい衝動に駆られた。一度警戒しごく少量、薬の有無が判断出来る量を含む。

 

 「美味い……」

 

 思わずその味に驚きを隠せず呟いてしまった、渋味が少なくすっきりとした茶葉の味。さっきまで興奮してた体が落ち着いてゆく感じからしてダージリンなのだろう。飲んだことのある茶葉でも淹れ方次第でここまで変わる事に衝撃を覚えた。次に次にと飲んでいきカップが空になった。そんな俺の反応に満足したのかクラウディオは付け合せの焼き菓子をテーブルに乗せ次の茶葉を準備する。ガツガツと寝ていた細胞が起き始めたのか栄養を欲した体が次々と菓子に手が伸びる。

 最後の一枚を咀嚼し、何度目かクラウディオが淹れてくれた紅茶で菓子を胃に流し込んだ。改めて腹も膨れ落ち着いた俺は恐らく答えを知っているだろうクラウディオに体を向け尋ねた。

 

 「さて、クラウディオ。ここまでしてくれた貴方にこんな聞き方をするのは不躾ではあるが、こちらも聞かずには居られない状況であるのはわかりますね」

 「はい、真っ先に尋ねてくるだろうと思っておりました。その為の返答は用意してあります。」

 「では、聞きます。何故、九鬼が俺をここに運んだのか、説明して下さるのですよね?」

 「ええ、実に簡単なことで御座いますよ」

 

 老紳士はこちらを安心させるように微笑み穏やかな口調で話す。だが、彼が語る言葉は俺の今までを、これまで信じていた生き方を根本から変えるものだった。

 

 「何せあなたはここ、『九鬼家』の血を引く人間であらせますから」

 




源氏との絡みが難航中。

そして、いつもの

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