真剣で弟と認めなさい!?   作:黒瀧汕

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やっぱり、描写って難しいよね。


第三話

 ゴールデンウィーク

 それは祝日が重なり土・日曜日、長期休暇期間とは別に休みが与えられる連続休暇期間である。社会に身を置く者にとってはあまり影響ない期間だが、その連休を大いに喜ぶ者達がいた。

 

 「よーし、いっくぜぇーー!!」

 「キャップ、折角だし大物期待してるよ」

 「任せろ、今にも川の主とか釣り上げてやるからな!!」

 

 赤い龍の模様のバンダナを巻いた自由奔放な少年「風間 翔一」の他、賑やかな少年少女の声が山に木霊する。大自然の威厳と神秘が溢れた場所、川神が誇る修行場の一つ「川神山」。その麓にある川の位置に、とある一団が賑やかに遊んでいた。

 

 「こちらも負けられないな」

 「フフフ、それじゃあこっちも勝負よ!!」

 「良いだろう、受けて立つぞ!!」

 「その前に、餌付けをまゆっちに頼るんじゃなく自分で付けれるようになろうやクリ吉」

 「うっ、だ、だって、うねうねとして気持ち悪いんだもん」

 「クリ〜、自分でやらないと意味無いわよ〜?」

 「ぬぐぐ」

 

 悔しそうに呻く金髪のドイツ少女「クリスティアーネ・フリードリヒ」は改めて釣り餌を見て顔を歪めた。それを慣れたのか黒髪の大和撫子「黛 由紀江」は平気で針につけると釣りを続ける。

 

 「う〜む。これ、釣りじゃなくて素潜りじゃ駄目なのかしら?」

 「一応、ここの川は少し深めだけど止めてよね」

 

 赤みがかった茶髪の活発少女「川神 一子」は釣り糸を垂らしながらうずうずと水面を眺めるが、その実行しかねない様子に懸念した線の細い内気な少年「師岡 卓代」は釘を刺した。

 

 「間違っても飛び込むんじゃねえぞワン子。下手して釣り針がそっち行ったら怪我するからな」

 「わかってるわよ。でも、目の前で餌垂らしてるのに食いつかれないのは何か悔しいわ」

 「わかるぜ。俺も常に餌を垂らしてるのに向こうからは来る気配すらねえ、やっぱりお姉様方に映る俺の肉体美は刺激が過ぎたか。罪な男だぜ、俺様ってやつは」

 

 自分の肉体を誇張し上腕を掲げる大男「島津 岳人」は自慢の筋肉を見せびらかし皆の反応を横目で伺うが、岳人の期待に反し辺り一帯は静まり川のせせらぎが虚しく響く。

 

 「ガクトって国語の成績どのくらいだっけ?」

 「確か以前のテストは最下位からいくつかだった筈」

 「なら仕方ないね」

 「自分の名前も間違うレベルだし無理もないさ」

 「そこ、もう過ぎたことぶり返すんじゃねえ!!」

 

 後ろから毒の籠った言葉を突き刺さす2人。のんびりと寛ぎ竿を石で固定するように組み立ててるやや童顔の少年「直江 大和」とすぐ側にくっついてる無表情な少女「椎名 京」。ぴったりと傍に寄り添い仲睦まじい2人だが、実際には京の方が大和に寄っている構図である。

 

 「お〜い、まだ釣れないのか〜?」

 

 間延びする声で釣りをする少年達にかける人物。発育の行き届いた身体に黒い前髪を交差させる美女、川神が誇る武人の一人「川神 百代」は少年達と少し離れた位置から退屈そうに胡座していた。

 

 「だったら姉さんも釣り参加してよ。どうせ暇なんでしょ?」

 

 大和はそんな胡座かいてる百代に釣りの催促をするも「やだ、今日は気分じゃない」と拒否をする。百代の反応に大和は「やれやれ」と苦笑する。すると大和の竦めた反応が気に入らなかったのか、百代は座っていた場所から姿を消し大和の後ろに現れ抱きついた。

 

 「ちょ、姉さん」

 「何だ、さっきの反応は? お姉さん、ちょ〜っとムカついちゃったから弟を弄ることにした」

 「わ、うわ、ちょっと、シャツの下から手を入れないで!!」

 

 突然背中から密着された上、こそばゆい撫で方で刺激され大和は悲鳴を上げそうになる。しかし、反応を我慢し耐える大和の姿に百代は楽しくなり責める手がエスカレートしてゆく。どんどん苛烈になっていく百代の責めに大和は己の対応の失敗を悟り適わないと理解しつつ、現状打破の知恵を模索した。

 

 「モモ先輩!!」

 「どうした京?」

 

 すると京が声を張り上げ百代の楽しみを止めた。丁度乗ってきた舎弟弄りを止められ、百代はやや加虐者の顔で京に止めた理由を聞く。京はごく自然な動作で大和の右側に座り直すと大和の腕を抱き寄せた。

 

 「右半分私が責めるからモモ先輩には左から責めて欲しい」

 「ちょっと、京さん!?」

 

 絡んで来る手が2倍と自分の事を隅々まで観察、ストーカーしてきた京による的確な責めにより堪えてきた喘ぎにも似た声が解放された。この時大和の周辺は現状釣り上げた魚の処理をし始めてスルーしていた。こうして大和はまた一つ、男としての何かを失った。

 

 ※ ※ ※

 

 川神にはある有名な学校がある。武を尊び、お互い切磋琢磨する為常に競い合う学舎「川神学園」。そこはまさに文武両道を体現させるために特殊なコースや規則が組み込まれていた。故に他県からわざわざ川神学園を選ぶ者も少なくない。そんな者達の為に川神学園はいくつかの地主達へ協力を頼んだ。直江大和や椎名京達が暮らす「島津寮」もその一つだった。その島津寮の一室で直江大和はモンスターの前で力尽きた狩猟人のように倒れ伏せていた。

 

 「あー、疲れたー」

 

 それもこれも原因の殆どは昼のくすぐりにやるものだったが学生生活としてはこの上なく満喫してる日常だ。身体全体に乗りかかる疲労に瞼が重くなり、意識を落とす直前に大和の携帯からメロディが流れる。眠る直前にかかる携帯の音楽に大和はのろのろと手を伸ばし、通話のボタンを押す。

 

 「もしもし」

 [もしもし、私だ。声に覇気がないな、疲れているなら明日に掛け直した方が良かったか?]

 

 電話の相手は予想外な人物であった。現在ヨーロッパでファンドマネージャーとして活躍中で大和の実の父親である「直江 景清」。その慧眼は金融危機を逆手に好成績を弾き出す程の腕を持っている。

 

 「あれ、父さん? ううん、ちょっと疲れてただけだから問題ないよ」

 [そうか、あまり無茶はするなよ。母さんだってお前に何かあったら心配するからな、勿論私もだが]

 「気をつけるよ」

 

 淡々とした会話であるがこれでも親子の家族愛は他より強いものであった。その後も軽く雑談を交え、大和は親の電話をかけてきた本題を思い出す。

 

 「そういえば、この一昨日話したのにどうしてこんな早く電話を? 何かあったからかけてきたんだよね」

 

 緊急の内容であれば真っ先に伝えてる筈だ。それがないということは何かの知らせか予定でも話すのだろうと考えた。

 

 [ああ、そうだ。実はな、私の知り合いが近頃日本に行くそうだ。これを機にお前と顔を会わせてやろうかと思ってな]

 「へー。父さんがそこまで言うってことは、大物?」

 [いや、名前はあまり売れてないが腕は確かだ。そこらの傭兵や諜報員より役に立つ]

 

 返ってくる仕事基準がどこも物騒極まりない所にまだ会ってないその人物の性格を予想し大和は嫌な予感を覚えた。

 

 [それに大和とも同年代らしいからな、今の内に知り合っても良いだろう。私の仕事を手伝わせ働きぶりを間近で見たが、あれは敵に回さん方がいいな]

 「同い年なのにそこまで出来るのか……。」

 

 実際大和の身近にも人外的なことする奴もいるが、実の父から語られるその評価に大和は顔も知らないその同い年に対して無意識に嫉妬し口元が尖ってゆく。

 

 [本人も日系人だから水は合うだろう。折角だ、川神を案内でもして交流を深めるといい]

 「……わかった。来る日が決まってたら連絡お願いね」

 [ああ、聞き次第また連絡する]ピッ

 

 通話を終えた大和は、携帯をそのまま手放すことなく電話帳欄の人物に電話をかける。その作業は時計の針が真上に重なる時間まで続いた。




段々文が拙くなってる気がする……。

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