真剣で弟と認めなさい!?   作:黒瀧汕

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まじこいA+をやって思わず衝動でストーリーを書いてしまった。


第一話

 かつて、九鬼家長男には双子の弟が居た、名は「九鬼傑將(くきまさかつ)」。

 兄の英雄に比べ豪胆さは無かったが、冷静で大人顔負けの落ち着きが備わる神童であった。活発な兄と冷静な弟。正反対な二人でも、姉弟の中でもとても仲が良かった。

 しかし、アメリカのテロによりその仲は引き裂かれた。

 

『う……ぶじか、まさかつ』

『う、ん。なんとか』

 

 此度出席したアメリカのパーティー、それは綿密に計画されたテロにより阿鼻叫喚の地獄へと化していた。

 

『はしれ、ここをぬければきっとたすかるぞ!』

『はぁ、はぁ、わかった!』

 

 黒煙と焦げ焼けた臭いが充満する廊下を二人は駆けていた。幼いながらも冷静に地上へ繋がる道筋を見極め、物をどかしては飛び越え走り続けた。

 出口はすぐそこ、助かる希望が見え駆ける足にも力がこもる。しかし、二人に迫るのは希望だけでは無かった。

 最低限の稽古しかこなしていない弟の傑將は兄の英雄に比べ走りに差が出来てしまう。そんな些細な所が二人の未来を大きく変えた。

 突如、兄の英雄の居る床が崩れ落ちたのだ。だが英雄は野球で鍛えられた瞬発力で辛うじて穴に落ちることは無かった。しかし、傑將は目の前に出来た床崩れに反応する事が出来ず滑り落ちてゆく。

 

『まさかつ!!』

『うわぁあ!!』

 

 英雄は今落ちる弟に手を伸ばし、その腕を掴まえることが出来たものの子供の体重といえど腕に掛かる負担は相当なものだった。

 

『うぐぅ!!』

『ひでお!!』

 

 掴んだ右腕にかかった重さは関節を痛め、英雄の肩は焼けるような痛みが走る。

 

『まってろまさかつ、いま、あげてやるからな』

『むりだよひでお、ぼくはいいからひでおだけでも』

『おとうとをおきざりにするあにがいるかばかものぉ!!』

 

 降りかかる火の粉もコンクリートの破片も物とはせず英雄は最愛の家族を救おうと奮闘する。

 

『おまえがいなければだれがいっしょにボールをなげあう、だれがいっしょにべんきょうする、だれがいっしょにけいこをがんばる!!』

『あねうえも、ちちうえも、ははうえだっておまえがいないとぜったいにかなしむ。そしてなによりおまえがいないとわれはいやなのだ!』

 

 家族を守る。涙流しながら力強く訴える兄の姿に傑將も生きる為の覚悟を固めた。

 

『ひでお……あっ!!』

 

 今も引き上げようとする英雄の頭上から子供の頭くらいのコンクリートの塊が落下してきた。当然英雄はこれに反応する事が出来ず飛来してきた塊は英雄の伸びきっている腕に直撃した。

 

『あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!』

 

 とてつもない激痛が英雄を襲う。しかし、英雄はその手に握る命だけは離さなかった。

 

『ひでお!!』

『あ、わ…てるな、こん、なの…どうっ、てこと……』

『ひでお……もう、やるしかない』

 

 意を決した傑將は下を見る、暗く全てを飲み込んでしまいそうな穴は幼い傑將にとてつもない恐怖を煽る。

 

(だけど、そんなもの!!)

 

 目の前で痛みに苦しむ家族を眺めるより遥かにマシであった。

 

『ひでお、もういいよ』

『な、にを……まさか』

『もうだいじょうぶだから。あとはぼくががんばるよ』

『やめ、ばかな、ことは』

 

 兄の言葉を最後まで聞くことなく傑將は英雄の手を振り払った。

 

『またすぐにあうよ、ひでお』

『まさかつぅぅぅぅぅうううううう!!!!!!』

 

 英雄は血に塗れた手を伸ばす。しかし、暗い闇の中に落ちてゆく最愛の家族には届かなかった。

 

 ※ ※ ※

 

 「っはあ!!」

 

 飛び跳ねる様にベッドから起床した九鬼英雄、飛び起きる際伸びた右手はどこに向かうでもなくただ空を切って固まっていた。

 

 「また、あの夢か……ここまで尾を引くとは我ながら軟弱なものよ」

 

 思わず握りしめる右手。それはかつて弟たる傑將を救う事も出来ず、夢であったプロ野球選手の道を閉ざした。夢も弟も取りこぼした右腕を英雄はいっそ切り落とすことすら考えたこともあった。

 

 「過ぎてしまった事は仕方ないか……確かに引き摺ったままでは民に示しがつかぬわ」

 

 気持ちを切り替え英雄は起き上がり時計に目をやる。

 

 「ふむ。少し早めに起きてしまったか」

 

 時刻は早朝午前4時15分。九鬼の執事やメイド達ならば起きてる時間帯である。

 

 「ならば、湯浴みをした後気分転換に散歩するも良かろう。フハハ、そうと決まれば早速行動せねば」

 

 普段通りのテンションに持ち上げ英雄は今日を過ごす。その裏で自らを傷つけ怒り狂う激情に蓋をしながら。




やっぱシリアスな感じは難しい。

ちなみに『』は過去の会話文です。
あと、読みにくいでしょうが会話が平仮名なのは幼少期を意識したものなので間違えではありません。

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