ゼロの使い魔~鋼龍と登場しなかった少女~ 作:hi・mazin
今後はちゃんと計画性をもって取り組みたいです
・・・なんて言ってるけど私の計画性はボロボロです。
今日もモチベーションを上げるためにクシャルを狩りに行ってきます(遅れる原因)
「はぁ~」
「ル、ルイズ、元気だそうよ、サイト君だって喜んで?いるんだし」
サフィーナの励ましが半分くらいしか耳に入らないくらいルイズは気が滅入っていた
「いや~おでれいた。まさか再び使い手に巡り合えるなんて」
「いや、だから使い手ってなんなんだよ」
「・・・忘れた」
主人の意志に反しての決闘だったが結果としてはサイトは勝利し、決闘での勝利のご褒美として新しい剣を買ってあげるつもりが武器屋で新しい錆び剣を選んだサイトにルイズは絶句した
確かにインテリジェンス・ソードであるこの剣はとてつもなく珍しいモノではあるが・・・ボロいのだ
何度も言う、錆びてボロいのだ
いや、今サイトが腰に下げている錆龍の剣よりはマシ、いや、五十歩百歩、団栗の背比べなのだがルイズの貴族としてのプライドが従者であり、使い魔のサイトがボロを使うのが嫌なのですぐにでも処分したいが
彼の腰に付けている錆び剣は正体不明の龍の鱗を材料に使われ、学校で初めてできた友人からの送りものであり、背中にあるのは世にも珍しい珍品と言うこともあり処分しずらいというジレンマがルイズの中にはあった
「ごめんねルイズ。私の買い物にまで付き合ってもらって・・・」
申し訳なさそうに隣を歩いている友人は言ってきたがルイズは全く気にしてはいなかった
「気にしなくていいわよ。それにしても、ずいぶん買ったわね」
「うん。サビドラちゃんも街に行きたがってたみたいだからお土産くらいは奮発しようと思って。驚くかなサビドラちゃん」
長い前髪のせいで表情は読みにくいが弾んだ声と口角の上がった口元で彼女の喜びがわかる
それほどあの使い魔が大事なのだろうか?
ルイズは一瞬、錆龍を召喚したサフィーナに嫉妬を覚えたが、すぐにその思いは霧散した
メイジの象徴であるマントを咥えて半分自己的に学内を動きまわり、衛兵の鉄の装備品を勝手に食い漁る錆龍の姿を思い出したからだ
御しきれない使い魔ほど厄介なものはない、そういう意味では勝手に決闘をした自分の使い魔にも言えることだ
この奇妙な価値観の一致があったからこそルイズとサフィーナの距離は近づいたともいえるかもしれない
「ええ、ご主人様がここまでしてあげたんだし、きっと驚くわよ」
「ありがとルイズ」
たわいもない会話だったが心許せる友人がいなかったルイズはそれだけで心が満たされた気がした・・・今でもボロ剣と口論しているバカ犬が視界に入らなければの話だったが
「ただいま~。サビドラちゃん、お土産だ・・・・よ?」
一足先にサビドラのもとに走っていたサフィーナの手から荷物が零れ落ち呆然と何かを眺め固まっている
何事かと思いルイズはサイトと共に駆けつける
「どうしたのサフィーナ!? サビドラに何かあったの?」
「お、おい。ル、ルイズ・・・アレ」
アレ? ルイズはサイトが指さした方に視線を向け絶句した
門の外で待機していたサビドラが蹲りピクリともしておらず、まるで置物の様に微動だにしていなかった
ルイズの脳裏に最悪な結末が浮かび上がる、すなわち、サビドラの『死』だ
元より正体も生態も謎だらけの存在だが身体が錆び付き、関節も固まり始めている事からかなりの高齢である可能性があると言うのが教師たちの見解であった
そんなバカなと言いたかった、何かの間違いだとサフィーナに駆け寄りたかった
意を決してルイズがサフィーナに近づこうとした瞬間、サビドラの背部が急激に盛り上がりベコン、バキンと金属が砕けるような音が鳴り響き、ついには砕け、錆びた身体から白銀の身体が姿を表しそのまま錆びた体を脱ぎ捨てるようにゆっくりと姿を表し、翼を大きく広げる
その姿にルイズ達が見とれている間に、ピシ、ピシと何かが硬化するような音が響き始めると白銀の龍の身体は黒銀色の外殻に変わっていき・・・
「きゅー」
そしてそれが終わると同時に卒倒するサフィーナ
錆びがなくなり真新しい姿になった龍は倒れたサフィーナにすり寄り起こそうとしているようだったが、どう見ても捕食の一歩手前だった
「サ、サフィーナ!?」
自らの使い魔を驚かせようと張り切っていた友人は逆に使い魔に驚かされ意識を手放してしまった
急いで駆け寄るルイズとサイト。状況がイマイチ飲み込めていないのかオロオロする鋼龍
「いや~おでれいた、長生きはすんもんだな」
ただ一人、デルフリンガーだけはこの状況下になってもそれしか言わなかった・・・
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皆様、こんばんわ。錆龍改め『鋼龍クシャルダオラ』です。え?、脱皮は夜くらいじゃなかったって?、ははっ、何をおっしゃっているんだかわかりませんねぇ~(笑)
そんな事は置いといて、今現在、俺はめちゃくちゃ身体が軽くて力が湧き出てきます
まさに『ハイ』ってやつだぁぁぁ・・・とここまでテンションは高くないんだけどね
だって俺の一番カッコいい所を主人公たちや可愛いいサフィーナちゃんに見てもらったのに、主人公たちはドン引きでご主人さまは気絶って、俺何か悪いことしました?
まぁ、学校に着くまでには回復してくれたおかげで夜のイベントには参加できたしね
行きたかった王都探索も我慢したし、途中から来たキュルケたちにもちょっかい出さずにじっと待っていたのにこれは酷い
しかし、悪いことばかりではない、サイト君はちゃんとデルフリンガーを購入してたしキュルケはなんとか卿が作った駄剣を買ってきたし、もうたまりません
「はなせ~!! はなしてくれ~!! 俺が何したって言うんだよ!!」
原作にはないセリフだけどサイト君は『無事』ロープで簀巻きにされて吊るされております
いいぞもっとやれ!
・・・と最初はテンション上げて主人公の不幸を観ていたんですけど画面越しや本で語られているのを観るのと目の前で見ているのは違うわけでして、ちょっと可哀そうに思えてきた。(ワクワク)
「二人ともそんなことしても意味がないよ」ゴニョゴニョ
うん、サイト君を心配する常識人ポジのサフィーナちゃんマジ可愛い。でも残念、声が小さいく唯我独尊状態の二人には何も聞こえておりません、これからの流れを変えることは不可能である。
もちろん大きく言っても二人には聞こえませんけどね(笑)
女同士の男の取り合い。醜いものだな(建前)。しかし、それも若さか。でもヒロインしているサフィーナちゃんも一度でもいいから見てみたいな
だがサイト、おめーはダメだ。チカヅイタラ・・・コロス
「うわぁぁ!何か背中がゾワッときた!」
ち、相変わらずカンの良い野郎だ。これが主人公補正か
お、とうとう茶番劇が始まるみたいだな。ルイズが魔法を外して外壁に亀裂を入れ、それをキュケルが笑い、ファイアーボールの魔法で楽勝にロープを焼き切り頭から落下するサイト君
悔しがるルイズを横目にボロ剣から駄剣に装備し直し、腰に錆び剣を装備するサイト君
いや~原作どう・・・あれ? 俺が知っている『ゼロ魔』と装備が違う気がするんだけど?
あれ?あの剣は決闘時のみのチュートリアル装備のはずなんだけど、ギーシュの馬鹿が作った青銅剣みたいになんで使い捨ててないの?
サイト君、キュルケが「要らないでしょ」と言っているのに「友達にもらった大切なものだから使いたい」って何言ってるの?
どいうことですかサフィーナちゃん!? って、ああ、友達といわれ満更でもない顔してるこの子は天使ですか可愛すぎるんですけど!
じゃなくて。このままではゴーレムが襲撃してきたとき駄剣が折れて、頑丈なデルフリンガーで戦うという場面が腰の錆び剣で戦うに変わってしまうかもしれないだろ!?
うぬぼれではないが錆びているとはいえあの剣は古龍の素材で出来ているのだ、切れ味は黄色ゲージだが魔法で強化されたその剣は硬さだけならそこそこの強度があるんだよ
「きゃぁぁ!!」
どうしたの俺の可愛いご主人様、サイトの野郎がラッキースケベってきたのか!よしコロス。原作なんて関係ねぇサフィーナちゃんを汚すものは残らず排除したらぁ!
って、あぁぁぁ!。もう来ちゃったんだ! まだ来ないでよ!!
見上げる先には巨大なゴーレムが学校の壁に拳を叩き込んでいた
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結果だけ言おう!
秘書のロングビルこと土くれのフーケは、無事に破壊の杖をお持ち帰りいたしました。
古龍というイレギュラーがある中、よくも盗んでくれたな(感動)
まぁ、俺は戦いもせずサフィーナちゃんを咥えて身の安全だけを考えて行動していたからな、危険性なんて皆無だったよ
だって下手に戦って俺の強さが露見したら彼女がどの様な行動に出るのだかわからなくなるから、本気で戦うのは第二回戦目からだな
ただ、サフィーナはとても怖かったらしく、俺が寝ている所に毛布を持ってきて一緒に寝たんだがな
ちょー可愛い寝顔だったと言っておこう
そして、現在。ルイズ達主要メンバーとサフィーナちゃんは、オールド・オスマンに呼び出されていますた。
もちろん俺は勝手についてきて窓に首を突っ込んで中の様子をうかがっていますけど
・・・・これは酷い(誇張無し)
ミス・シュヴルーズを筆頭とするダメ教師団の言い訳&罪の擦り付け合いはアニメや本よりも酷い、まさに人間の本性がむき出しているかのようだ
・・・こりゃぁルイズ達学生が憤るのも分かる気がするよ。だってこいつら犯人を捕まえるより、自分たちの地位が揺らぐことばかり心配しているんだもの
その酷さのせいか、持ち前の正義感からは分からないけど、怖がりで人見知りなサフィーナちゃんが討伐に杖をあげてくれた
手に持った杖は微かに震えており、土くれに対しての恐怖を何とか抑え込んでいるその姿はこの古龍の心を震わせてくれた
ほんとにカッコいいんだから・・・絶対に杖を上げないと思って自分が掲げるように用意した杖もどきの木の枝を握りつぶしたのは内緒だぜ
「ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持ち、トライアングルメイジだと聞いておる」
あ、サフィーナちゃんの新しい一面に感動していたらオールド・オスマンの生徒紹介コーナーになってる。
紹介されてもいつもと変わらない無表情のタバサ。サフィーナちゃんもタバサが称号もちだという事に驚いている。
でもねサフィーナちゃん、彼女はそれだけではなく王家の血筋でもあるんだよ。彼女はそこそこ優秀だしこの国の姫様と交換してもらえないかなぁ
いや、どっちも私怨で動くタイプだから国は任せたくないなぁ
「ミス・ツェルプストーはゲルマニアで優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、自身も優秀な炎のメイジだと聞いておる」
「あら、どうも」
さも当然といった感じで微笑むキュルケ。その自信に満ち溢れた表情はちゃんと実力に見合っているから凄いよなぁ
あーあ、将来禿げ教師にぞっこんになるなんてこの段階では信じられないよ
「ミス・ヴァリエールは座学では常にトップ、ヴァリエール家もツェルプストー家に負けず劣らず優秀な軍人を輩出する家系じゃ。彼女自身、学業に真摯に打ち込む努力は評価されておる」
ルイズ自身の魔法に関してはノータッチですかオールド・オスマン?だが、褒めてる事に違いない訳でルイズもちょっと得意げだ。気づけよ座学一位、魔法はまるでダメと遠回しに言われてるんだぞ
「そして彼女の使い魔は、ドットとはいえメイジを倒した凄腕の剣士じゃ。恐らく剣の腕は生半可な騎士くらいでは歯が立たぬじゃろう」
平民扱いのサイト君だけど評価は上々じゃないの。まぁ『ガンダールヴ』だってオールド・オスマンは確信している訳だしその評価は妥当と言うべきかな
「最後になったがミス・サイファーはドットとはいえ四属性全てを使いこなせる将来有望な生徒じゃ」
な、何だって!! サフィーナちゃん!? 貴女そんなに優秀だったの!! 流石は古龍を召喚しただけあって素のスペックは高かったんだね
可愛くて一般常識があり気遣いもでき魔法の才能もありおまけに可愛いなんて貴女は主人公ですか!?
あ、あそこの虚無メイジの方が主人公だった、残念。
こんなに優秀なのに原作ではモブとしての登場もないなんてなぁ。まぁ、俺が知っているのはこの世界によく似た創作の話であって、現在自分の置かれている世界の話ではない
きっとこの学校にはサフィーナちゃん同様『ゼロ魔』では語られないけど優秀な人材は眠っているのだろう
そう考えるとやはり世界は小説より奇なりといったところだろう
「「杖にかけて!!」」
こうして土くれのフーケ討伐隊は組まれた。俺も気を引き締めて可愛いサフィーナちゃんの安全を確保しなければな・・・・と、その前に・・・
「きゃっ、何ですか!? いきなり」
二次創作とかで短時間で移動したのに汗臭くないとか、土に汚れていないなどの理由でよく疑われているフーケさんのにおいを嗅いでみたけど・・・まったくわからん。女の人のにおいはするが不快かと聞かれれば不快ではない、しかし確かに言われてみたら汗臭くないような気がするが、そもそも『クシャルダオラ』って匂いに敏感な古龍なのだろうか?
うーむ、全くの無駄骨だったな。そして、勝手に女の人の匂いを嗅ぐなんて破廉恥な真似をしてフーケさんに平謝りするサフィーナちゃん。本当にすみませんでした
この借りはフーケにバックジャンプと共に眼前に巨大な竜巻を発生させるブレスを放つという大技をぶつける事で返したいと思います。
原作一巻の挿絵に錆びた殻を破り脱皮する『鋼龍クシャルダオラ』シーンが加わった
この凄さは生態ムービーでチェックしよう
『物語』は佳境になり『世界』は異物を組み込み再構築される
モハヤニゲルコトハユルサレナイ