ゼロの使い魔~鋼龍と登場しなかった少女~ 作:hi・mazin
私はもう無理そうです、だからこのお話には計画性がありません
「やはりあの強さは間違いない! 伝説の使い魔『ガンダールヴ』で間違いありません!」
遠見の鏡の前でワンワン騒ぐ禿げ教師に学園の最高責任者であるオールド・オスマンは辟易していた
「オールド・オスマン。さっそく王室に報告して、指示を仰がないことには・・・」
「それには及ばん」
「どうしてですか!? これは世紀の大発見ですよ! 始祖ブリミルが召喚した伝説の使い魔『ガンダールヴ』といえば、あらゆる武器を使いこなし、千人という軍隊を一人で壊滅させ、さらには並みのメイジでは全く歯が立たなかったと記録に残っている人物ですぞ」
「そうじゃ、だからこそ、この件は内密にしておきたいんじゃ・・・もしこの事が王室のボンクラどもに知られたら、奴らは『ガンダールヴ』というオモチャを政治に利用し国中、いや隣国にまで戦火を広めてしまうぞい。あの宮廷で暇をもてあましている違中どもならやりかねんわ」
「た、たしかに・・・」
「それにあの錆龍の存在もあるしのぉ・・・」
オールド・オスマンの頭の中には決闘に乱入した錆龍の姿があった
普通、竜種は絶滅したといわれる韻竜を除き、大多数が少し頭の良い動物くらいの知能しか無いのが一般的である。
しかしあの龍はその常識を遥かに逸脱した行動をとっている
他の教師からの報告によれば、召喚された時から暴れたりせず冷静さを保ち、周りを少し確認しただけでまるで状況が飲み込めたといわんばかりに召喚者の女生徒に頭を下げ『コントラクト・サーヴァント』を要求し、嫌がる素振りも見せず受け入れ、契約後もそれが当然とばかりに女生徒に従順であった
問題の『剣』も不確かな情報だが前日の夜から自らの錆た鱗を使い制作し、仕上げを自らの主人に行わせたという
その結果、ミス・ヴァリエールの使い魔は本来なら平民が勝てるはずの無いメイジ相手に勝利して見せたのだ
しかも憎たらしい事に錆龍は自ら目立とうとはせず、まるで主人を隠れ蓑の様に使いその異質さを隠そうと行動している
「奴は確実に『ガンダールヴ』の存在を認識しておる、奴に対してこちらも十分な警戒が必要かもしれんのぉ」
遠見の鏡に映る錆龍は『ガンダールヴ』の少年とその主人のメイジを観察するかのように視線を二人に固定していた
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やあ、こんばんわ。みんな元気にしているかい。俺はいつも元気いっぱいさ
「う~~~ん。これじゃあ少し派手かなぁ? でも、こっちのは地味かもしれないし・・・」
今俺の可愛いいご主人様は鏡の前でドレスを何着もとっかえひっかえし衣装合わせを行っている
これはもうすぐ開催される『フリッグの舞踏会』のための衣装選び・・・ではなく
「ねえ、ねえサビドラちゃん。明日のルイズとのお出掛の服はこっちで良いと思う?私はちょっと地味だと思うんだけど」
どうだ!! 俺の血の滲む様な努力の結果、サフィーナちゃんは主人公であらせられるルイズ様に虚無の日に一緒にお買い物に行こうと誘われたのだ!!
これはいわゆる、デルフリンガー購入イベント参加決定、俺様大勝利である
もう、サイコーだよ! ここ数日毎日サフィーナちゃんとルイズが話しやすい空間を演出したり、ルイズとサイト君の言い争いをサフィーナちゃんに仲裁させたりと好感度稼ぎに邁進してきた結果がついに実を結んだわけですよ
ここまで主人公たちと関われば後はなき崩し的に・・・
街でお買い物⇒デルフ購入⇒夜に学園の校庭で土くれの盗賊に遭遇⇒朝教師の緊急会議に呼び出され主人公と共に盗賊退治に立候補⇒大勝利、ハッピーエンド
完璧だ。文句がないくらい完璧な流れだ、流れは間違いなく俺に向かって吹いている
「ねえ、サビドラちゃん、聞いてるの?」
大丈夫だよ可愛いご主人様の言葉は決して聞きもらしていないよ・・・でもねツッコム事が多すぎるよサフィーナちゃん(汗)
まず、お友達とのお出掛ではドレスは着ないんだよ
次にサフィーナちゃんはそのドレスが地味だとおっしゃっておりますがそのドレス、ニシキヘビが巻き付いたみたいな柄なんですけど・・・ドコが地味なんですか?
趣味悪いよ・・・いや、これは彼女の萌えポイントの一つじゃなんだろうか
可愛いけど趣味が変・・・いける!
じゃなくて、確か学生は学生服の着用が義務づけられてるんじゃないのかな?
いや、アニメとか漫画でも、ほとんど制服だったしそうだよね?
う~ん、ずいぶん昔の事だからその辺の細かい事があやふやになってしまっていが・・・ま、いいか。ここを卒業するまでは制服を着たままでも問題ないし、主人公達も制服で行動してたし大丈夫でしょう
と、いう訳で・・・はいサフィーナちゃん新しい制服だよ
「え? 学園の制服がどうしたのサビドラちゃん・・・えぇ!明日はこれを着ていけって!? まぁ、サビドラちゃんがこれで良いって言うなら制服で行くけど・・・変じゃないかな? 」
全然変じゃないよ。いつも通り愛嬌があって可愛いご主人様だよ。だからその趣味の悪・・・ゴホン、独創的なデザインのドレスは箪笥の肥やしにしましょうね(後で処分決定)
「ふぁ~ぁ、お洋服が決まったら何だか眠くなっちゃった。私、もう寝るね・・・サビドラちゃんも今日はありがとう」
いえいえ、どういたしまして。サフィーナちゃんの為ならたとえ火の中、スカートの中、何処までもお伴致しますよ
はぁ~、手早く寝間着に着替えるサフィーナちゃんまじ可愛い、出るとこ出て、引っ込むとこ引っ込んでてスタイルも割と整っていてホントすげーよ
まぁ、こんなに可愛い子が目の前で無防備にお着替えしても俺は全く興奮しないがな
え、何故かって? 普通に種族が違うからだよ
俺がいくら人間の頃の記憶を持っていて人間ポイからといっても俺は『鋼龍クシャルダオラ』なのだ
いくら俺の御主人さまが可愛い子だからと言っても所詮は別種族、愛でる気持ちはあってもそっちの気はまるで起こらない
これはサフィーナちゃんだから特別興奮しない訳ではなく他の女生徒でも検証済みである
え? 誰で検証したかって? ははっ、決闘の後で主人公のサイト君をたらし込む女生徒がいたでしょう
その様子を一部始終窓から覗いていたけど、キュルケは色っぽいなぁ位の感想しかなく格別興奮したりはしなかったなぁ
ただ俺が覗いているのに横入りしようとする男子生徒がうざったかったから尻尾で地面に叩き落としたがな
少ししてルイズも部屋に突撃してきたけど原作とは違ってあまり暴れたりサイトを罵倒したりしなかったなぁ
そのやり取りも見るのが楽しみでジッとルイズを眺めていたのに残念だ
なぜかサフィーナちゃんも部屋にやってきてみんなにしきりに謝っていたけどなんか悪いことでもしたのかなぁ・・・それは無い。断言できるうちのサフィーナちゃんが悪い事は何一つない!
おっと、つい考え事をしてたらもうサフィーナちゃんは御就寝しちゃったか
よし、俺も寝床に帰って明日に備えますか。おやすみなさいサフィーナちゃん
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あ~たらしい~♬ あ~さがきた~ ♪希~望のあ~さがきた~♫
俺は朝早くからサフィーナちゃんを背中に乗せ街に向けて飛行中である、勿論サフィーナちゃんだけではなくちゃんとルイズ達主人公コンビも一緒に空輸しておりますよ
最初は原作通り馬を借りるとか言っていたが飛行できる俺がいるということで運んでやることにしたわけですよ
だから女の子二人を背中に乗せて飛ぶという役得を味わっております
これで二人に恩を売ったことで只でさえ高い好感度を更に上げる事ができるし、サフィーナちゃんとルイズの間に更なる友情が芽生える事を期待している
え?サイト君は何処にいるかって。背中は女の子で一杯だから俺が抱きかかえておりますよ
男を抱くなんて精神衛生上宜しくないが背中に乗せてハーレムを味わわせるのも、それはそれでむかつくからこの位置という訳である
「うおぉぉぉ!!俺、ホントにドラゴンと共に空を飛んでるよ!! ホントスゲェよ!」
「うっさいわねバカ犬!。少しは静かに出来ないの! せっかくの優雅な空の旅が台無しだわ!」
「ル、ルイズ、少し落ち着いて、サ、サイト君だって悪気がある訳じゃないと思うし」
「サフィーナはアイツに少し甘いのよ。ここでちゃんと言い聞かせておかないと余所でも同じことして恥を掻くのは主人である私なんだから」
「そういうものなのかなぁ・・・あっ、ルイズ、もう街が見えてきたよ」
「本当ね。馬で来るよりも早く着いたからゆっくりと買い物ができそうね」
うはー、俺の背中で女子会ポイこと話してるよ、抱きかかえているサイト君が五月蠅くて何も聞こえんがな
ともあれ予定より遅くなってしまったな
思っていたより早く翼の関節まで錆ついてきてしまったので最盛期の半分以下のスピードしか出せなかったな
早くて今夜くらいが脱皮の時期だろう、身体の内側から筋肉が膨れあがり外殻を突き破ろうとしている
本来なら安全に脱皮出来る場所に移動しなくてはならないがこの世界なら襲われる心配もないし大丈夫だろう
それより今は憧れの王都の観光に集中しましょうか・・・
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「もう、サビドラちゃん、お願いだからここでおとなしく待ってて。貴方は大きすぎるから街に入ったら大騒ぎになっちゃうの」
やだやだやだやだ、他の二次創作主人公が街に入れて、なんで俺が街に入れないんだよ! 可笑しいだろ常識的に考えて、こちとらこれだけが楽しみで錆た身体に鞭打ってここまではるばる飛んできたんだよ!
もう首を横にブンブン振って置いて行かれるのが嫌だってアッピールしまくってやるぜ
「サビドラちゃん言う事を聞いてよぉ~」
上目遣いで迫っても駄目なもんは駄目で、嫌なもんは嫌なんだ!
街に入れないとデルフリンガー購入イベントが見られないじゃないの
サフィーナちゃんは俺の原作イベント全制覇の野望がここで終わってもいいって言うのかよ!
くう~、こんなお話の序盤でご主人様との対立イベントが起こるなんて聞いてないぞ!
「・・・ルイズ。俺の中のカッコいいドラゴンのイメージが崩れていくんだけど」
「奇遇ね。私もサフィーナのドラゴンのこと、錆びてるけど羨ましいなぁと思っていたんだけど、なんかそんな気が薄れてきたわ」
やかましいぞ主人公コンビが俺が街に入れるか入れないかの瀬戸際でそんなどうでもいい事考えてるんじゃねぇ
あっ。良いこと思いついた・・・あそこの道端に落ちてるロープを使って・・・
「なあルイズ。サビドラの奴、拾ったロープを首に巻き付けて何やってんだろうな」
「そうねぇ。巻きつけたロープの先をサフィーナに握らせているから首輪とリードのつもりなんじゃないの」
お、察しがいいな主人公コンビ、これは、題して『犬の散歩だから大丈夫作戦』なのだ。代償は俺のプライドだけで良いと非常にリーズナブルなのだ
原作介入出来るならプライドなんてかなぐり捨ててやんよ
「はぁ~、しょうがないなぁ。ごめんルイズ、サビドラちゃんが言う事聞かないから二人でここで待ってる事にするね」
なにぃぃぃいぃ!! それはいかん! 俺のもう一つの野望の『サフィーナちゃんお友達増やそう大作戦』が破たんしてしまう
ぐぐぐうぅうぅうぅうう!!(葛藤中)
幼気な少女のお買い物を駄目にするギリ20代の男
最悪じゃないか。俺が悪いのか、俺が悪いんか、原作見たさに街に入りたいと駄々をこねる俺が悪いんか!
「確かに、サビドラがこんなじゃ、ちょっと無理っぽいなぁ」
「このバカサイト! サフィーナが今日のお買い物をどれだけ楽しみにしていたか知らない訳じゃないでしょ!少しは考えてしゃべりなさいよね!」
うっっっっわぁぁぁぁぁぁ! 完璧に俺が悪い流れじゃないですか!? そんな目で俺を見るんじゃない
サフィーナちゃんも『仕方がないよね』って感じの哀愁を出さないでくれよ
これは大人としてまずいでしょ、ぐぎぎ良心が痛んでくる
「私は大丈夫だから二人で・・・きゃぁぁ! マントは咥えないでっていつも言ってるでしょう!」
すまんサフィーナちゃん、本当にすまん。このまま咥えてルイズの横まで運んで降ろして、三人の疑問の声を無視して少し離れた場所で休眠ポーズ
・・・・と、これで大丈夫。あとはご主人様たちが都合の良いように解釈してもらうのを待つばかりだ
しばらく狸寝入りしていたらサフィーナちゃんがお土産を買ってきてあげるから大人しくしていてねっと言ってきた
どうやら俺の思惑は成功したらしい
街に入れないのは悔しかったが、年頃の女の子に我慢させてまで我が儘を言うほど人間として腐ってはないしな
自分でそう納得する事にして俺は街に入っていく三人を見送るのであった・・グスン
原作一巻の挿絵に首を振ってイヤイヤする錆龍とそれをなだめるサフィーナ、その様子をあきれ顔で眺める主人公達の姿が追加される
全てを許容する『世界』も龍の街への侵入は許容できない模様
サフィーナちゃんはここ最近明るくなり人見知りも軽減傾向。
彼女に幸あれ