ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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火乃香には休む暇が無いんじゃないかなと個人的に思う今日この頃。


割と忙しい戦闘員の入院生活

「南宮さん起きてください。検温しますよ」

人の声で起こされる。掠れた視界に飛び込んだのは真っ白い天井だ。

そして次に視界に入り込むのは、ナース服を着た若く綺麗な看護師だ。

「……おはようございます…今何時ですか?」

開口1番に看護師に尋ねる。

「今は8:00ちょうどですよ?朝食も運んできたので、早く体温を測りましょう?」

朝起きた時間を確認するのは、今までずっと朝が忙しかったせいだろう。火乃香はそう思い込む。

笑顔で体温計を渡され火乃香は渋々脇にそれを挟んだ。

「何処か具合の悪いところはありませんか?」

「いいえ、ありません」

霞にボコボコにされてから既に18時間経とうとしている。

それだけ時間が経てば、至る所で悲鳴をあげていた体は、今はもう大人しい。

ベッドを起こし、ボケっとしていると、電子音が鳴った。

「どうぞ」

火乃香は体温計を看護師に渡し、ベッドにテーブルをセットし朝食を摂る。

入院食は味気ない。昔はそうだったらしいが、今の入院食は進化し、通常食と言われる一般的なお食事から、特別食と言われる代金が高いが豪華な食事が出る。しかも和食と洋食のどちらかを選ぶことができる。

火乃香が目を覚ました時、那月は看護師に言って火乃香の入院食を全て洋食の特別食にしたのだ。

サラダやコンソメスープ、仔牛のソテー、ホタテやスモークサーモンといった海の幸を使ったサラダ、果てにはデザートとしてフルーツなど中々に豪華なものだった。

そして、同じカロリー計算がきっちりとされている戦闘糧食(レーション)とは比べ物にならないほど美味しい。

そしてそれらを全て食べ終わった後、廊下に出されている配膳車に置き、ソニックミサイルや昨日行われた戦闘の報告書を作成し始めた。

「はぁ…めんどくさいなぁ…これ。なんで英語で纏めなきゃいけないんだよ…」

パソコンの画面にはワードの画面が映し出され、シートには英語で文字が書かれていた。

CFFの作戦ならば殆どが公式文書として残されないので、形だけの報告書の提出になる。

つまり日本語で報告書を作成しても問題はないのだ。

しかし今回は国連軍として公式の作戦である。故に公式文書としてきっちりと世界共通言語である英語での作成となる。

「なんか…英語の小テストを受けてる感じだ…」

英語の授業を那月が担当しているクラスは週一のペースで英語の小テストが執り行われる。

そのテストは実に様々で簡単なものは単語テスト。那月の気分次第では英作文の試験や、様々な物語の和訳だったりする。

書類作成から2時間が経過し、集中力が切れかけた時、病室のドアがノックされた。

「やぁ、気分はどうだ?」

「大佐!あなたが直々にお見舞いしに来てくれるとは…光栄ですね」

やって来たのは大佐だ。

火乃香が入院したことを聞きつけ見舞いに来たのだ。

「ほれ…土産品だ。」

そう言いながら稲垣は火乃香にスポーツドリンクを渡した。

「ありがとうございます。ちょうど喉が渇いていてそろそろ買いに行こうと思っていたところなんですよ」

「無駄金使わずに済んだな。それはそうと、相当苦戦してるみたいだな」

「当たり前じゃないですか…。はぁあなたの緩さ加減にマジ感謝ですわ」

「まぁ公式文書だからね。きちんと書かなきゃいけない」

「でもなんで英語で…姉さんからは英語の課題をプレゼントされるし…、報告書まとめなきゃだし…しかも英語で…休めるものも休めないじゃないか…もうヤダ…」

プゥーと頬を膨らませながら駄々を捏ねる火乃香に苦笑せざるを得ない稲垣。

「ハハハ…まぁ仕方ないさ。公式文章だから英語で書かなきゃいけないし適当には書けない。もし適当に書いてしまったらその文章がそのまま発表される事になって、周りから冷たい目で見られる事になるよ?」

「くっ…それだけは勘弁願いたい…!」

「どれ…どこまで書けているんだ?」

「殆ど書き終わっているんです。後はソニックミサイルについて纏めるだけです」

そう言いながら火乃香は稲垣にディスプレイを見せる。

火乃香の言う通り戦闘の報告書は完成しており後はソニックミサイルの実戦評価のみを纏めるだけとなっていた。

「ソニックミサイルの実戦評価は日本語で提出してくれて構わないよ」

「ほんとですか!?」

「あぁ。あとで私が英訳するから」

「ありがとうございます!」

先ほどの死にそうな火乃香の表情が、心なしか生き生きとし始めている。

そして作成する事30分。

「できました!USBメモリー貸してください!」

「はいどうぞ」

稲垣からメモリーを受け取りコピーし返す。全ての報告書の提出を確認した稲垣は時計を見ている。

「どーしたんですか?」

「そろそろ私は本部に戻るとするよ。色々と忙しいんでね」

「わざわざ俺のためにありがとうございます、お気をつけて」

「あぁ。ありがとう。火乃香、お大事に」

そう言いながら稲垣は部屋を出て行く。

その姿を眺めていた火乃香は今度は用意された英語の課題と格闘するのであった。

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彩海学園高等部1年B組ではいつも通り、HRが始まろうとしていた。

いやいつも通りではない。何故なら空席が1つあるからだ。

空席がある事自体にはなんら不思議なことはない。問題なのはその座席の人物に問題があるのだ。

だからと言って休みについて騒ぎ立てはしない。何故なら皆考えていることが同じなのだから。

「どーせ那月ちゃんに言われて、特区警備隊(アイランドガード)と一緒に犯罪組織を相手に刀を振り回しているのだろう」と

始業のチャイムがなり、生徒たちは慌ただしく自分の座席に座り、彼らの担任である那月が教室に入りHRが始まる。

「那月ちゃん火乃香いないけどーべぶっ!」

いきなりクラスの男子生徒が那月をちゃん付けで呼び、扇子が飛んで行く。

「私を那月ちゃんと呼ぶなと言っているだろ!お前たちは暁古城と同レベルの知能しか持ち合わせていないのか!」

(((いやいや、あんたは普通にちゃん付けしないと違和感ハンパないし)))

見事にいつもの返しをしながら、それでいて古城に対する罵倒も忘れない。ツッコミ役の鑑だ。しかし残念ながらクラスの意見は満場一でちゃん付けじゃなければ気が済まないようだ。

「それと火乃香だが入院している」

「「「なにー!?」」」

クラスが一斉に騒ぎ始める。

それもそのはず彼が休むのは仕事だけで、病に倒れることもなければ、手足を骨折しても平然としている火乃香が入院したのだ。

クラスがざわめき始める。

「おいおい、あいつが入院って…」「どんな怪我を負ったんだよ…」

「火乃香君をそこまで追い詰める犯罪者がいるとなると…」「私達、明日の朝日をちゃんと崇められるのかな?」「いやいや、なにも犯罪者にやられたとは限らないぜ?」「まさか、那月ちゃんから拷問を受けた?」

「え、なにそれ、もし本当ならめっちゃ羨ましいんですけど」

様々な憶測や不安が教室内で飛び交う。

つか、最後のやつは別の意味で入院したほうがいいと思う。

と、古城は思いつつ口には出さない。趣味は人それぞれだからだ。

あの場面を見た古城や雪菜達には厳しい箝口令が敷かれた。

どんどんヒートアップしていき収集がつかなくなりかけたので、那月は仕方なく黒板に爪を立て引っ掻き、騒ぎを沈めた。

「お前達静かにしろ!それと、私は断じて火乃香に暴力など振るっていないからな!そこら辺理解しておけ!あいつが休んだのは…ただの検査入院だ!だから心配するな。HRを終わる号令」

そう言いながら無理やり事態を収束させ、那月のあらぬ誤解も解いた

のだった。そして古城達いつものメンバーは放課後火乃香をからかいに病院へ行こうと決意するのだった。

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火乃香は必死に那月から出された課題を処理していた。

報告書を書き終えて、昼食を摂り、シャワーを浴びプリントの束と向き合ってから約2時間半ようやく最後の一枚を片付けようとしていた。

「ふぃ〜やっと終わりそうだ…これでようやく昼寝ができる」

午前中から今までずっと書類整理をしていたため眠ることができなかった火乃香は、ようやく本来の目的である休養を取ることができそうだ。

しかし現実は残酷だということを火乃香は忘れていた。

「おやすみなさ〜……」

コンコンコン。病室の扉が等間隔のリズムで三回ノックされ、容赦無くドアが開け放たれる。ぞろぞろと6人の人間がわちゃわちゃと入室して来た。

「よぉ、元気してっか?」

「火乃香君、お見舞いに来たよ〜?」

若干の笑いを押し殺しながら真っ先に火乃香に声をかけて来たのは先日死にかけた矢瀬基樹と学級委員長の築島倫だ。

「おい2人とも一応ここは病室だぞ。静かにしてやれよ…」

古城が呆れながら興奮する2人を睨む。

基樹はまぁまぁと古城を落ち着かせようとしている。

「ほのちゃん大丈夫?急に来ちゃったから、もしかして迷惑だった?もしそうだったらごめんね?」

「あ、いや別に迷惑ではないよ、それにちょうど暇つぶしが消えたところだから退屈せずに済みそうだよ」

申し訳なさそうな表情で凪沙が火乃香に尋ねるが、火乃香は別に気にしていないというそぶりで答える。

凪沙や雪菜達に言われてしまえば、自然とありがとうと言える。

何故なら悪意というものがないからだ。

しかし、残念ながらクラスメイトは違う。こいつらは火乃香との距離が友人として近いが故に、邪念の混じった言葉を投げかけてくる。

もし古城達だけで見舞いにやって来て凪沙のセリフを言われれば、恐らく火乃香は追い返していただろう。

「南宮先輩…怪我の方はどうなんですか?」

小声で雪菜が怪我について聞いてくる。

「あぁ別に大丈夫だよ。走ったりとかすると傷口が開くから暫くは体育とかは見学だけど別に日常生活には支障をきたさない」

「そうですか…」

雪菜と会話しているうちにどんどん古城達は騒がしくなって行く。

「お前ら騒ぐんだったら帰れや!」

「ちょっと基樹!あんたのせいじゃない!」

「なんでだよ!?」

どうやら今日浅葱が学校で古城との接し方が若干おかしかったらしく、その事について昨日病室で何かあったのではとからかわれて、浅葱がキレたらしい。

「全く…お前らここ病室だってこと忘れてるのか!?いくら個室だからって、少しは静かにしろ!」

「てかあんた、個室って!私は大部屋だったのになんであんただけ個室なのよ!」

「いや、浅葱はただ気絶していたから、起きるまでの処置ってやつじゃないのか?」

古城はもっともな事を言う。実際そうなのだ。浅葱が気絶していたので病院へ搬送され一応検査はしたが問題ないと言う事で起きるまで病室で寝かせる事になっていた。

しかし火乃香は違う。なにせナイフで刺され高圧電流を2度も全身に流されたのだから、入院は必至だった。

偏に那月が個室を選んだのもそうだろう。

「まぁ、明日には退院できるし、午後の授業には間に合うと思うよ」

「ほーそうかそうか良かったな。んじゃ俺たちはもうお暇しようぜ」

先程までヘッドフォンをつけていた矢瀬が急に話を切り出した。

「矢瀬のくせに常識があるじゃねーか」

火乃香は矢瀬に対していつも皮肉られているのでその返しをした。

「まぁな。それじゃ、甘い時間を過ごせよ」

「?矢瀬お前なにいってるんだ?」

「いいから早く行くぞ!」

「うぉ!ちょ!押すな!」

入室して来た同様騒がしく退室していく6人を見ながら矢瀬のいっていた意味を理解した。

「失礼します。火乃香さんこんにちは」

「夏音、今日も見舞いに来てくれたのか?」

「はい、でした。」

そう言いながら夏音は火乃香の側によりパイプ椅子に座った。

「夏音…せっかくお見舞いに来てくれたのに、ごめん。ちょっと寝ていい?」

「どうぞ、ごゆっくり。それに火乃香さんの寝顔はとても可愛いかった、でした」

「なんか…恥ずかしい…な…」

そう言いながら火乃香は意識を手放した。夏音が来た事により安心したのだろう。火乃香はスースーと寝息をたてながら瞼を閉じている。

「ちょっと…だけ」

夏音はそう言いながら火乃香のサラサラな髪の毛にに触り、頭を撫でた。シャワーを浴びてから少々時間が経っているはずだが、髪を撫でるとシャンプーの匂いがふわりと夏音の鼻腔をくすぐる。

「柔らかい…それに…いい匂いでした…」

火乃香が着ているTシャツから覗く白く細い首や鎖骨が艶めかしく見える。女性のような…いや、自分よりもキメの細かいであろう肌を夏音はまじまじと見る。さらに、若干、影で暗くなっているがそこから見える鎖骨は首の細さも相まってか妙に色っぽく、夏音は舐めてみたいそう考えてしまう。

しかし夏音は頭を振って邪念を必死に取り払おうと奮闘する。

だが振り払えば振り払うほど、火乃香の鎖骨が夏音を誘う。

「うぅ…少し…少しだけなら…」

そう言いながら、夏音は火乃香の鎖骨に顔を近づけ舐めようとする。

その時火乃香から「ん、んんっ」と呻き声が聞こえた。

「!?」

起きたのか?そう考えながら、そっと火乃香の顔を見やるが未だに眠り続けている。

しかし夏音は火乃香の呻き声で冷静になり、先程の行動で顔を赤くしている。

「火乃香さんに、こんなことしようとしたなんてしれたら嫌われちゃう…」

そう呟きながら夏音は火乃香が起きるまで顔を赤くしながら悶々と悶え続けるのだった。

 

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現在時刻19:00火乃香覚醒から1時間経過。

「いやー何かせっかくお見舞いに来てくれたのに、ずっと寝顔晒し続けてごめんね」

「い、いえ…問題ありません、でした…」

未だに若干恥ずかしそうにしている夏音に?マークを浮かべる火乃香。

火乃香が起きた時、夏音はシーツの端を持ち顔を真っ赤にさせていた。

何かあったのかと聞くと

「何もありませんでした!」

と勢いよく言われてしまい、さらに夕食の時間帯で、夏音は火乃香にあーんをした事により、それ以上の追求ができずに終わってしまった。

「まぁ何にせよ、明日には退院できるから…またいっしょに帰れるな」

「はい。あ、火乃香さんそろそろ帰らなきゃ…」

「そっか、もう時間も時間だから気をつけてね?今日は1人なんでしょ?」

「はい…」

「変な人に猫を見せられてついていかないようにね?」

「もう!そんな事しません!」

プクリと頬を膨らませながら夏音は子供扱いしてくる火乃香にそっぽをむく。

「悪かったって、冗談だから」

「もう…わかってますよそれくらい」

火乃香が笑いながら夏音に謝り、先程の表情とは打って変わり笑顔を見せる夏音。

「お大事に」

「あぁ」

そう言い残しながら昨日と同じように夏音は病室を後にした。

「はぁ…意外と今日1日退屈せずに済んだかも」

そう呟きながら、再び眠りに落ちるのだった。

こうして15時間後無事に火乃香は退院し、5時限目から学校に復帰したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ではまた次回

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