ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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第三次世界大戦2

藍葉浅葱が対策チームに協力したと時、ニューヨークにあるホワイトハウスにて大統領による緊急記者会見が行われていた。時刻は13:00、ちょうどニュースが放送されていた。そのため記者会見はライブ映像で報道されていた。

「本日、皆さんに重要な報告があります。国際指名テロ組織JAMが我が国の西海岸と同盟国である日本に向け、大部隊を編成し、侵攻しているという情報を手に入れました。彼らは卑劣な事に核弾頭を切り札にし、我々に多額の金銭を要求してきました。しかし!同時多発テロによって深い傷を負った我々は決してテロに屈することは絶対にありえない!彼らは我が偉大なるアメリカ合衆国を敵に回し、剰えテロの標的にした事を後悔するだろう!」

この記者会見が行われた瞬間、全米はパニックに陥った。ニュースでは専門家達が持論を展開しだし、西海岸では我先にと逃げだした人々の車によって高速道路は渋滞し、ロサンゼルスの高層タワーから見える海にはアメリカ合衆国が誇る第三艦隊と今や国連軍所属となったミズーリが合流し、西海岸に展開され、JAMの襲撃に備えていた。

また、アメリカ西海岸には全米の航空隊が集結し、ビール基地だけでは処理しきれないため、普段は試験機の運用を行うエドワーズ空軍基地も活用されることにたった。西海岸の空が戦闘機で埋め尽くされ流のは時間の問題だろう。

こうして着々とアメリカではJAMの侵攻に備え、部隊を展開すると同時にロシアとの電話外交で、テロに対する徹底的な攻勢を改めて確認し、援軍を要請、約束させた。

これらのニュースは約4時間後、日本でも同様に放送される事になり、海上自衛隊はアメリカ第7艦隊と合同で海上封鎖し、現在日本に向かっている飛行機を除き全ての便の発着を停止させ航空自衛隊による空域封鎖を行った。陸上自衛隊は空と海がカバーしきれない地域に展開される事になった。絃神島も同様に特区警備隊(アイランドガード)沿岸警備隊(コーストガード)が周辺海域の封鎖を行いその指揮に南宮那月も加わっていた。世界が静まり返り、戦争の足音がすぐそこまで聞こえてきていたのだった。

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藍葉浅葱を含め対策チームの面々の表情には疲労が見えいた。

何故ならパソコンの画面に張り付いてから既に2時間半が経過し、絃神島では現在時刻は5時半。朝日が昇り始める頃合いだ。大和の現在位置は11:30。真昼間だ。1発目のワームホールドライバーの発射まで残り15分を切り、対策チームにも焦りが見えていた。ワームホールドライバーの発射は一度もなく、シミュレーションと机上の空論で出されているだけだった。その為、1発ごとのインターバルは理論上4時間から6時間だが、もしかするともっと早まるかもしれない。故に焦っていた。

そして船のエンジンがけたたましく唸り、前進し続けているのを肌に感じながら火乃香は今寝ることしかできない自分に嫌気がさしていた。天井の眩しい蛍光灯の光は右目にのみ届き、左目は暗闇を映し出していた。左目を失ってから何時間も経つのに今更ドクドクと左目が痛み、熱く感じる。そして白い包帯が冷たく感じる。まぶたはきっちりと縫合され、今更血は出ないのに冷たく感じた。

ICUの扉が開き、稲垣隼人が見舞いに来た。

「具合はどうだ」

「最悪だ…目が今更痛む………」

火乃香の声は普段の凛とは違い震えていた。

「…………こんな目に合わせてしまってすまない。これは餞別だ」

黒い眼帯が渡された。柄も何もないただの眼帯だった。

「火乃香、荷物をまとめて絃神島に戻れ」

「何故」

大佐からの唐突な言葉に驚いた。

「お前は十分戦った。その眼帯と荷物をまとめて普通の学生としてこれから生きていくんだ。もう2度と引き金を引くな。刀を握るな。空を飛ぶな」

事実上の解雇宣言だった。火乃香は何故そのようなことを伝えられたのか全くわからなかった。稲垣隼人から伝えられた言葉は火乃香の心に響かず、素通りした。理解する事が出来なかったのではなく理解したくなかった。火乃香は現実逃避をしていた。

「それは…俺がこの任務でヘマをしたから…ですか?それとももう使い物にならないと?!人を殺す事が出来ないとでも言うんですか?!」

「あぁそうだ。お前がこのまま戦場にいればいずれ火乃香自身が壊れる。大和は3日後に最終決戦に参戦することになる。それまではゆっくりと休んでいて構わない。作戦が始まる前に大和()を降りろ」

「待ってください…!俺は…俺はまだやれます!」

「無理だ」

「何故そんなことを言うんですか?!」

「もうお前の精神は壊れている。あの島での歩哨の殺し方。正常な判断能力を有していたならもっと丁寧に殺っていた。だがあれはなんだ?溶鉱炉に突き落としたあの殺り方。殺し方から見てわかった。お前は殺戮を楽しんでいる。ただの殺人鬼同然だ。そんな犯罪者は COMBAT FAIRY FORCE(うち)には必要ない」

稲垣隼人の言葉が冷たく火乃香の胸を突き刺した。

確かに冷静になって考えれば火乃香自信もあの殺し方はあり得ないと感じていた。戦場で冷静さを欠如させた時点でもう火乃香自信戦う事を自ら拒絶していた。本格的に壊れたと感じたのは恐らくウルフを殺してからだろう。彼女の死が引き金となり、殺人への拒絶反応と任務と言う理性の鍔迫り合いが苦痛に感じた。その苦痛から逃れるために、人を殺すことに快楽を感じるようになっていた。

火乃香の精神はすでに崩壊寸前だった。このまま作戦に参加し続け、兄を自らの手で殺した後、確実に壊れてしまう。それを感じ取った稲垣は火乃香からありとあらゆる武装を剥奪し、日常に戻そうとした。

「大佐…心遣い感謝します…ですが…自分は…まだやらなければならない事があります」

「霞か」

「はい…彼奴は俺の手で殺さなきゃならない…だから…!彼奴を殺すまでは…いや彼奴を殺した後、大佐が判断し問題がなければ前線とまで言わなくても後方でもいいのでどうかCOMBAT FAIRY FORCE(ここ)にいさせてください」

涙でかすれていた。霞を自らの手で殺す事が、影で火乃香を匿っていた()へのせめてもの礼だと思うから。

「わかった。但し除隊するべきと判断したその瞬間お前には前線を離脱し、COMBAT FAIRY FORCE(ここ)から去ってもらう。32時間後、第3ブリーフィング室で会議を行う。それまで休んでろ」

「…!了解…!」

『休んでいるところ悪いけどちょっといい?』

モニターからオタコンの声が聞こえてきた。ワームホールドライバー奪還に成功した雰囲気ではなさそうだ。

「どうした」

『ワームホールドライバーがカウントダウンに入った。軍事衛星を使ってリアルタイムで着弾予想地点の映像を見ているんだ。こっちにも映像を流すよ』

そこに映し出された光景は緑豊かだが少々小さすぎる島だった。海鳥が休憩のために岩場に群れをなしているのがわかる。そして小さなモニターにはカウントダウンが記されていた。10秒ほどの時間だ。

1秒1秒が長く感じる。そしてカウントダウンがゼロになった瞬間、一筋の光がまっすぐ島の中央に突き刺さり、その緑豊かな島は一瞬にして蒸発した。

「大佐…発射台を破壊するのにあんな高威力のレーザーを使う必要性を感じないんだけど」

「確実にミサイル基地を叩くためだと理解してくれ。しかしこれほどまでの威力とは…」

予想されていたよりも遥かに上回る威力を見せつけた光学兵器ワームホールドライバー。それは3㎢ほどの島を一瞬にして蒸発させてしまうほどの威力だった。

もしそれが絃神島それもキーストーンゲートに直撃すればほぼ間違いなく絃神島は崩壊する。

「エメリッヒ博士、この映像はここ以外にどこに流している」

『LCOだよ…LCOの仙都木長官と副官だよ……』

オタコンは震えた声で大佐にそう伝えた。稲垣大佐の溜息がマイク越しにまで伝わっていたのだろう。しかし震えていた理由はそれだけではなさそうだった。その証拠にすぐさまメイ・リンからフォローが入った。

『司令官仕方なかったのよ。あまりの剣呑さにこっちだって断れないわよ』

「大佐あのあの姉妹が逆らうと命の危機を感じるレベルだ。まぁ…オタコンたちを責めないでやってくれ」

「わかっている。だがなぁ!はぁぁぁ…なんとまぁ情けない」

大佐の溜息はより一層大きくなったのだった

「それでオタコンワームホールドライバーの次弾発射はいつになるんだ」

『約144時間後ってところ。藍葉さんがワームクラスターを速攻で作ってくれたおかげであとは放置ゲー。だけどやっぱりシステムに侵入したウイルスは手強いらしくて、140時間ほどかかるらしい』

「ずいぶんとギリギリだな」

『仕方ないよ』

「まぁこれでわかった。最悪の状況を想定しておくか…。大佐、次弾発射までのタイムリミットを144時間に設定して全特務隊に通達しておいていい?それと6から10は先に第三艦隊と合流させる」

「通達は構わないがなぜ先に送る」

「感」

「そうか」

火乃香の感はよく当たるしいつも期待できる。先遣隊として部隊を送る為、稲垣はICUから退出した。

特務隊に新たなタイムリミットが設定され、緊張感がより一層増したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ワームホールドライバー発射まで144時間

システムクラッキング1%




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