ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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明けましておめでとうございます。
新年最初の投稿です。


第三次世界大戦
第三次世界大戦1


「ストレッチャーがくるぞ!メディック!急げ!」

「酷いな…だめだ瞼を縫合する。全身麻酔…は彼に効かないから部分麻酔…いやナオミさん!ナノマシンで痛みを鈍くさせてくれ!それとあるだけの消毒液も!治療室開けろ!」

「司令官…彼を次の戦闘に参加させるのは無理だ。今からICUに入れる」

「わかった…医務官…彼を頼む」

「えぇ」

耳元がうるさかった。船のスクリュー音と波の揺れによって休まることもできない。

火乃香は今、戦艦大和に回収され、オセロットたちから受けた拷問による痛々しい傷の治療を行っている。

体中から痛みが消えていく。そして呼吸器を取り付けられ、傷口に何本もの針が刺さり、縫われていく。

_________

大和艦内にある最も大きいブリーフィングルームには、多くのスパコンが持ち込まれ、技術者やエンジニアが必死にコンピュータを操作していた。その中には先の作戦で通信系統のサポートをしてくれたメイ・リンと火乃香を現場で支えてきたオタコンもいた。

スクリーンにはワームホールドライバーの発射状態や衛星の位置など事細かに映し出されていた。

彼らはJAMに奪われたワームホールドライバーのシステムを奪還するために編成されたチームだ。

「あー!もう!なんなのよ!これ!いつまでたってもウィルスを破壊できないんですけど?!てか凄い勢いで増殖してる?!」

「それだけじゃない…セキュリティシステムがどんどん書き換えられているよ…とほほ…」

火乃香達が回収されてから約2時間彼らはずっとPCの前に張り付いていた。約1時間にも及ぶ作戦の後のデスクワークに弱音を吐きながらもポチポチとキーボードを打ち込む。

「全然埒があかない…!どうすれば…」

その時治療を終え、ICUに監禁されたた火乃香から艦内通信が入った。

『どっかの誰かさんのおかげで、ワームホールドライバーの奪還に相当苦労してるみたいだな』

「火乃香!あなた寝てなきゃダメでしょ!」

『メイ・リン…お前は俺のお母さんか!それはそうと望みは薄い上に俺の財布がとんでもないことになるけど、いれば頼りになる人がいるからその人呼んでみる?』

「待って火乃香、その人って誰?」

『電子の女帝藍葉浅葱だ…ただ…』

「藍葉浅葱って誰?」

『俺のクラスメートで絶賛恋する乙女16歳だ。ふざけた紹介だが、そいつナラクヴェーラのコマンドを自分で作っちまうくらい腕はいいぞ。少なくとも俺なんかよりはな』

ナラクヴェーラのコマンドを作ったということを聞いた対策チームはざわつく。

『ただ召集を受けたのが午前8時45分、作戦遂行時間が16時間、回収されてから2時間半の計18時間半が経過しているから、日本だと今は深夜の3時15分だから起きてるかわからない』

「それでも一回当たってみたほうがいいと思う」

「そうね…正直言って私達だけじゃ無理よ」

『わかった。データリンクを暗号化して彼女の指定したコンピュータに送ってくれ。かけるぞ』

そう言い、艦内通信機を手に取り、タッチパネルで番号を押していく。ピピピと音がなってから呼び出し音が聞こえてくる。

4回ほどコールした後寝ぼけた様子の女性の声がほのかの耳元に当てている受話器と対策室のスピーカーから流れる。

『もしもしどちら様ですか』

「繋がった!」「やった!」「これで勝てる!」

対策室は狂喜乱舞だ。まるで世界の終末に女神が助けに来たかのような状態だ。

「浅葱か?」

『ん…?誰?』

「あー…南宮火乃香だ…」

『みなみや………!あんた!ちょっとどういうことか説明しなさいよ!いきなり今朝連れてかれたと思ったら夜の8時くらいにLCOとか言う組織にいる優麻って子から南宮先生に電話が掛かってきて拷問受けてるだの何だのって!』

「落ち着け浅葱!いいか!今はそんなことを言っている暇ではない!」

「そんなこと?いい加減にしてちょうだい!私や古城だけじゃなくて1番守らなきゃいけない夏音ちゃんとラ・フォリアさんにも心配かけて…!よくそんなこと言えたわね!無事を伝えるならまず先に2人じゃないの?!南宮先生だって電話来た後酔い潰れるまでお酒飲んじゃってたし!』

いきなり攫われ生死不明の状態になったと知らされ1番、心配している彼女2人に謝りもせず、2人に心配させたことを《そんなこと》として扱う火乃香に聖人君子ではない浅葱は頭にきていた。

状況が全くわからないのにその当人から電話がかかって来ていきなり落ち着けと言われても落ち着けるわけがない。

「それは…あとできちんと事情を説明するし…夏音とラ・フォリアには埋め合わせもきちんとする…。だけど今はそれどころじゃないんだ!」

『それどころじゃないって…じゃあどう言うことよ!』

「よく聞くんだ。国連軍は地球上あらゆる地点を攻撃することのできる対地攻撃用衛星を保有しているんだ。だけど、国際指名テロ組織JAMによってコンピュータウイルスに感染させられてその攻撃用衛星が乗っ取られたんだ。だから2時間ほど前に対策チームを組んで急ピッチでシステム奪還を狙っているんだが埒があかない。彼らに言わせればあと1人凄腕のエンジニアがいれば何とかなるらしい。だから力を貸してくれ!」

『あんたね……!そんな危険な兵器作って勝手に乗っ取られてそして民間人に助けてもらいたいですって?!冗談言わないでよ!』

「すまない…『パフェ』…はい?」

『パフェ奢りなさい!あとそれからきちんと夏音ちゃんとラ・フォリアさんに無事だってこと伝えて、心配かけた分一緒にいてあげなさいよ!』

「あぁ…わかっている…。って…ことは」

『仕方ないからこの藍葉浅葱様が特別に!手を貸してあげようじゃない!』

「「「「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」

「国連軍を代表して、申し上げます。貴殿の協力感謝します」

『それで私はこれからどうすればいいの』

「今いる場所は?」

『南宮先生の家よ古城たちもいる。元基は帰っちゃったけど』

「そうか…ならちょうどいいな。俺の部屋に入って3つ目の扉にスパコンがあるから。俺の部屋は59階5901号室、鍵はかけてない」

『わかったわ。パスワードは?』

「今こっちで遠隔操作して外してもらった。コンピュータの電源入れてもらったら衛星のシステムにつながっているはずだ」

『もう少し待っててちょうだい。それと電話は切ったほうがいい?』

「いや、今から対策室の…そうだな…メイ・リンという人物とコンタクトを取りながらやってくれ。だから切らなくていい」

『分かったわ』

「はじめまして、貴女が火乃香の言っていた藍葉浅葱さんよね?通話をモニターしてたから分かるわ。それと改めて自己紹介するわ。私はメイ・リンよ。宜しくね。それと単刀直入に言うのもなんだけど、初弾のエネルギーのチャージと座標の入力が終了してるみたいで、もう手が出せないのよ…」

『え…えぇ?!初弾は…よくわからない島ね……だけど2発目って絃神島じゃない?!』

「その辺の対策は…司令長官に任せてあるから…ごめんなさい…」

『……2発目を打たせなければいいのよね…』

「そ、そうよ!それでなんだけどーーー」

浅葱とメイ・リンの会話は全て会議室のスピーカーから流れてきている上に火乃香のもとにも聞こえていた。しかし途中から専門用語のオンパレードとなり、ちょっとしたハッキングやダークウェブでの情報収集しかしない火乃香にとって、そちらの道にあまり詳しくないが為に早々に話を聞くのをやめ、ベットに体を預けることにした。

16時間にも及ぶ作戦。人生で最も長かったと感じていた。生きていることをいまだに実感できないし、それに別のICUには五年前死んだと思われていた雷電が眠っていることが未だに信じられないでいた。

しかし、ゆっくり休んでもいられないのは事実だった。

ワームホールドライバーを2発目発射する前に機能を完全に停止することに失敗すれば、物理的に絃神島をなんとかしなければならない。

幸いにも着弾予想地点が分かっている。それに久し振りに思い出す人物を頭に描いた。第四真祖暁古城。彼の何番目かの眷獣に自分の体や周りの物体を霧にしてしまう者が居たはずだ。姫柊さんや護衛についていると聞いた煌坂さんの血を吸ってもらって覚醒させればいい。

使えるものはなんでも使わなければならない。出来ることなら、民間人に頼りたくはなかった。ワームホールドライバーの光線をミサイルでも無人戦闘機でもなんでもいいからぶつけて防ぎたいところだ。しかしそれができないのはそれを実行に移すための時間も労力も無い。現在CFFだけでなく国連軍全体を見ると人員の稼働率が150%以上を超えている。明らかにオーバーワークとなっている。只でさえ少ない人員を圧迫しているのは第二次大戦の遺物(戦艦大和と戦艦ミズーリ)によるところが大きい。

故に非情な決断と利用できるものは全て利用する覚悟を必要としている。

だから古城には悪いが最悪の時はしっかりと働いてもらわなければならない。なぜなら遅かれ早かれ絃神島は暁古城の物になるのだから。

自分の領土をしっかりと自分で守ってもらわなければならない。未来の為に。




ちょっと題名変更しました。
その為、前の話に出てきた一週間戦争を第三次世界大戦という風に変えています。まぁ名称が変わっただけですのでそこまで大きく話が変わるとかありませんし、もし前回までに投稿している話の中で一週間戦争という単語が出てきたら「あぁ第三次世界大戦の事か」って脳内変換してください。
適当な作者でほんとすみません!

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