ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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とある刀使いの追憶3

「こちらサピロス2…司令部に潜入。目標発見次第、射殺する」

『こちらHQ了解』

通信が切れた途端、思いっきり足でドアを蹴り破り、室内へ潜入する1人の少年兵がいた。

天童…南宮火乃香だ。

現在、火乃香はトルコ国境付近の島、サモス島で活動しているJAMの支部攻略作戦を担当していた第一特務隊所属の雷電が敵に囚われ音信不通の状況に陥ったために急遽火乃香に任務が与えられた。

任務は2つ。先に潜入していた雷電の救出とトルコで活動しているJAM司令官の暗殺。

残念ながら1つ目のミッションは雷電の死をもって達成が不可能になってしまったために、現在は残されたもう1つの任務の達成を目指していた。

「火乃香…扉は蹴ってはいけないと死んだ両親から教わらなかったか?」

「に……ぃさん…?な…んで?その服は…その制服は…!」

「元気そうでなりよりだ火乃香…君の方こそなんだ?その服装とエンブレム…まさか戦争の犬(Dogs of War)に成り下がったのか?」

「う、うるさい…!」

死んだはずの兄がJAMの軍服を着て、椅子に踏ん反り返っている姿に動揺を隠せないでいた。

そして揺れる。火乃香が構えるハンドガンの銃口がカタカタと。

「それと…さっきの質問だが答えは簡単だ…あのクソみたいな両親は俺が殺してやったんだ!」

その瞬間、火乃香はキレた。気付いた時にはハンドガンの引き金を引いていた。

霞の頬を擦り、壁に穴が空いた。

緊迫した空気の中、霞が刀を抜き、火乃香も同じく、刀を抜く。

両者がにらみ合い、そして数秒後、火乃香が踏み込んだ。

狙うは鳩尾よりも左寄り…心臓ただ一点のみ。黒鋼を鋭く突き刺す。

霞はその突きを流し、刀を振るう。二本の銀色に光る刃は互いにぶつかり、甲高い金属音を立てながら、攻防が行われる。

しかし、2人の攻防はそこまで長くは続かなかった。

火乃香の握力が次第に弱くなり遂に、霞の一撃で刀が吹き飛ばされる。

「力の差も何もかも俺に遠く及ばない。いいか心技体この3つの中で他人から教わることが出来るのは技術のみだ。体なんてものはそこまで重要ではない。重要なのは技術でも体でもない心だ。その心にお前はまだ迷いがある」

「何が言いたい」

「自分で考えろ敵にそんなのを教える義理はない。だがこの世に不変なものなんて何1つないことは教えてやる…じゃあな」

ゆっくりと霞が部屋から出て行き、その部屋には火乃香だけになった。自分の無力さに嘆く暇もない。戦況は次々と変わる。その流れに自分は以下に取り残されないように着いて行くか。

そして、その流れの中で絶対的な敵なんてものは存在しない。火乃香は任務が失敗した事を大佐に伝え、トボトボと施設を後にした。

基地から出た火乃香は15マイルほどの距離にあるカルロヴァシが見える丘にふらりと立ち寄った。このサモス島は魔族と人類他にも反政府組織と正規軍の紛争など相当治安が悪い。今も眼下で戦車隊やヘリなどの機甲部隊と歩兵戦力が死体の山を築きあげていた。

日本の刀を握りしめ、涙を流す。

刀に涙が一粒一粒落ちてゆく。無線がうるさくなっているが全て無視した。何もかもどうでもよく感じた。このまま何も聞こえなくなれば知らなくていい事を知らずに済むかもしれないそう思えていた。

(憎い?)

幼い…ほのかと同じくらいの歳の女の子の声が聞こえた。

(全てを壊したい?)

別の声が聞こえる。

「あぁ…壊したい…殺したい…憎い…みんな…俺も…何もかも…」

(じゃあ私に血を頂戴?あなたの血美味しそう)

刀が喋っている。しかしそれほど恐怖は感じない。

自暴自棄になっていた火乃香は白と黒を抜き、刃を指で薄くなぞった。刀身に血が流れ、意識が暗転した。

上と下の感覚も無ければ右や左すらわからない。何1つ光が存在していないのになぜか回りが良く見える。身体はふわふわと浮くような感覚はあるのにしっかりと地面を歩いている宇宙空間とは全く違った、この世の物理法則すら通用しないような不思議空間にいた。

「やっと答えてくれた…私たちはあなたが持っている刀よ」

黒髪の子と白髪の子がいた。

「なぜ俺を呼んだ?」

「苦しそうだったから」

白髪の子が答えた。

「その辛さ忘れさせてあげる。ほら見て火乃香…あそこにいる人たちみんな死ぬ事を恐れるどころか喜んでる。あなたが殺しても誰も責めない。力を貸すわよ…そのモヤモヤした気持ち忘れない?」

甘く囁かれる。どんな代償を払おうと今この瞬間を逃れるためなら何を差し出しても構わないとさえ思えていた。

「乗った。だけど聞かせて…君たちの名前」

「黒鋼と呼ばれているわ」

「私は白鋼…」

「女の子らしくない名前だね…」

「あなたが別なな目をつけてくれても構わないのよ?」

「なら…黒音と白音って呼ばせてもらうよ…」

「気に入ったわ♪」

「ありがとう…」

黒鋼と白鋼改め、黒音と白音は嬉しそうに顔を綻ばせる。

「俺は何を差し出せばいい?」

「寿命」

黒音が答える。

「半分もらうわよ?忘れるほど暴れたいのでしょ?」

「………………わかった」

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「あっはははははは!ほらほら遅いぞ!追いついてみなよ!」

白い肌をした子供が高笑いをしながら闇夜の中を走り抜けた。

戦場にいた全ての人間の目にはその子供は白い悪魔のように映った。子供が通った道にいた兵士は殺され兵器は真っ二つに叩き切られていた。黒と白の刀を持ちその刃には赤い一本の細い線伝っている。赤い線を刃が取り込むほど刀の切れ味は増していく。

1人また1人と正規軍、魔族、反乱軍関係なしに上半身と下半身が切り捨てられていく。

まさにこの世の地獄だ。野外だというのにあたりからはナパームの独特の匂いと血の匂いが充満している。

火乃香だ。何もかも忘れるためだけに、全てを焼き払い、そして破壊する。

次々と戦車が鉄屑に変わり果てていた。もう誰ものにも止められやしない。

こうして、欧州に新たな血塗れた惨劇が語り継がれるようになった。

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「てのが5年前の事件さ…軽蔑したでしょ?」

静かに火乃香は語り続けていた。全身の痛みを忘れるために。

自分の過去を話すことはあまり得意ではなかったが、話しておいてもいいかなと感じたためだ。

『辛かったのね』

「罪悪感はあるし後悔もした…あの後大佐が直々に回収に来てくれたな」

『そうだったな…懐かしい5年前なのにな』

「しばらく精神が安定してなかったな…だけど彼女のお陰で、なんとかなった。本当に感謝しかない」

『ラ・フォリア王女様と夏音ちゃんのこと?』

「あぁそうだよ…本当に2人には救われた…」

精神崩壊の後、2人に出会わなければ今頃どうなっていたかわからなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイムリミットまで残り13時間25分




ビミョーな感じで終わらせました…べ、別に終わらせ方がわからなかったとかじゃないんだからね!
ではまた次回

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