ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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孤島の武装蜂起篇6

研究室でオタコンから得た情報を元に核弾頭保存棟地下一階までエレベーターで上がる。

地下一階は今まで見てきたフロアとは明らかに毛色が違った。

壁は木造だ。赤い絨毯が敷き詰められ、左右には男子トイレと女子トイレがある。エレベーターの目の前にはセキュリティレベル5の扉があり、横には細い通路が通っている。その先におそらく所長室室があるのだろう。足が絨毯に埋もれる感触に戸惑いつつも所長室へ続く通路を進む。

所長室はレベル5のカードキーで解除することができた。

ゆっくりと署長室に侵入する。床はまるで磨き上げられた鏡のように光を反射する大理石でできていて歩くと足音が響く。壁には歴代の所長のような人物の写真が並べられている。四隅には石膏でできた顔や模型他にも哲学書やらとさまざまな小物類まで飾られている。

ゆっくりと部屋を見渡すがオタコンの言っていた洞窟への入口は見当たらない。

ここで不意に前に読んだアンネの日記を思い出した。ユダヤ人のフランクは戦時中ナチス警察から逃れる為、会社にある隠れ屋で暮らすという内容だったが、その際の隠れ屋への入り口が本棚の裏だった。

まさかな。と思いながら本棚を触ると横へスライドし、薄暗い通路を見つけた。

「大佐…洞窟への入り口を見つけた」

『気をつけろよ。何がいるかわからないからな』

「今更何が出るって言うんだよ…ん?狼の遠吠え?」

『何故狼が…?』

「タイリクオオカミだ…おそらく誰かがペットとして持ち込んだんだろう」

『アルマース1!狼って言ったかい?!』

交信中、先程まで直接会話していたオタコンがいきなり回線に割り込む

『な!なんでこの通信に割り込めるのよ!』

自慢のシステムを構築したメイ・リンがご乱心のようだ。それもそのはず。世界中のハッカーを集めたところで鉄壁の防御力を誇るCFFの通信システムへ簡単に割り込むなんてほぼ不可能だろう。まぁ、火乃香の知るところで1人だけいるのだがそれを言えば収集がつかなくなるので口を紡ぐ。が、もし本当にハッキングで侵入したのならばオタコンは藍葉浅葱と同程度若しくはそれ以上のポテンシャルを秘めていることになる。

「いきなりどうしたオタコン」

『あ…いや…なんでもない』

勢いよく通信に割り込んで来たと思ったら急に尻込みしはじめた。

「大佐…とりあえず気をつける」

『そうしてくれ。洞窟内は暗いが赤外線暗視ゴーグルがあるから大丈夫だろう。狼はスタングレネードで怯ませることができるから上手く使ってくれ』

「あいつらは集団で襲ってくるからな…集団リンチに会うことだけはごめんだ」

ほのかのブラックジョークをひとしきり笑い飛ばし、洞窟内に潜入する。

洞窟内の光源ははわずかな白熱電球の光のみだった。

大佐に言われた通り、赤外線暗視ゴーグルを装着し、スタングレネードを放り投げ、狼を怯ませた隙に反対側のドアに走り、扉を開いてそのエリアを抜けた。

「?」

扉の先には6×9の長方形の形をした空間と幅4メートルほど長さ50メートル強の通路で壁は果てしなく高かった。通路を抜けた先には高さ5メートルほどの位置に足場がある。

そして最大のこの空間の様子が変だった。人の影はない。しかし、誰かにねっとりと見られているような…まるでスナイパーに捕捉された歩兵のような感覚だった。

「くっ!」

真横に飛ぶと同時に1発の銃声が聞こえてきた。

この場に間違いなく狙撃兵がいる。

「大佐!狙撃を受けた!JAMに狙撃の名手っていたか?」

『1人だけ…スナイパーウルフだ…』

「面倒だな…あいつの方が地形的に有利だ…」

『拝借したスナイパーライフルでウルフを倒すんだ!』

「了解」

火乃香は伏せて、M24のスコープを覗く。スコープで捉えた人物の容姿がよく見える。白い服を着て、その胸元は大きく開いている。腰まで届きそうな綺麗な金髪。白い肌に整った顔立ち目はサファイアを彷彿とさせる緑の瞳。まるで芸術品のような細かさを感じる。男ならばイチコロだろう。そんな容姿に火乃香は恐怖した。隠れているのだ…その美しい瞳には獲物を刈り取る鋭い視線。輝くオーラの裏側には禍々しい死神が鎌を振りかぶっている姿が。

間違いなく殺しにかかっている。すぐに引き金を引かなければ後ろで控えている死神の鎌に首を刈り取られる。幻覚はナノマシンの故障が引き起こしたものじゃない!俺の精神が生み出したんだ…!

数多くの兵士をテロリストの浄化という大義名分のもとで殺害し続けた火乃香は今、殺して着た数々の怨念とこの孤島で受けたストレスによってありもしない怪物を作り出し、そして畏怖していると自己完結した。

自己完結したところで、スコープに映る十字線の真ん中をスナイパー・ウルフに合わせ、静かに引き金を引く。

銃声が響区と同時に、硝煙によってスコープが若干曇る。

煙が晴れそのまま覗き続けて見たが完全にウルフはどこかへ行ったようだ。

進路を妨害していた死神(スナイパー)を排除したため、通路のその先へ走り抜ける。

 

 

ビー!ビー!ビー!

セキュリティドアの前に立った瞬間、警報装置がなった。

「動くな!」

歩哨三人が火乃香に銃口を突きつける。罠にかかったのだ。上を向くと赤外線装置が取り付けられていた。おそらくそれに引っかかったのだろう。敵兵士の到着が早すぎると思いながら辺りを見回すと、ウルフが狙撃に使っていた足場の奥に非常扉がある。恐らくはそこで待機していたのだろう。

「……」

ゆっくりと銃を地面に置き、両手をあげる。

「詰めが甘いわよ坊や」

「まさか本当にかかるとはな」

声の方向を見やると先程撃ち合ったスナイパーウルフと大男がゆっくりと歩いてきた。

「こいつを連れて行け」

「待って…」

大男が部下に指示を出した瞬間ウルフが近づいてきた。

「坊やは私の獲物…殺すのは私…っ!印をつけたわ…これであなたは私から逃げられない。愛してるわ」

細長い爪で頬を引っ掛かれ、謎の求愛を受けた瞬間後頭部に衝撃が走り、深い闇に落ちた。

闇の中で火乃香は1つの記憶を見るのだった

 

 

 

タイムリミットまで残り15時間30分

 




次回からちょっと脱線します
過去編でもやろうかな…ってかここでやらないと一生やらない気がするんでやります…。なるべく話数は少なくしますが、長くなったらごめんなさい

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