ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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孤島の武装蜂起篇4

「私の銃弾から12発以上逃れることのできた奴はこの世にいない。私は銃弾の声を聞くことができる。私の名はリボルバーオセロットだ。精々楽しませてくれよ国連の犬め!」

オセロットの撃った銃弾は壁を跳弾し4本の支柱を避けて追ってくる。

まるで、高性能追尾ミサイルにロックオンされ追いかけられている戦闘機のパイロットの気分を味わう。

「くそっ!舐めやがって!」

支柱から飛び出し発砲するがオセロットは難なく避ける。

ジリジリと(プレムシャー)が火乃香の周りを纏わりつくその感覚に目眩と幻覚をもたらしながらも何処かもう1人の自分はその感覚に歓喜打ち震えていた。

このようなやりとりがベイカー社長を挟んで十分近く続き、火乃香の持つソーコムの弾が底をつきかけた時のことだ。

「やるな!さすがボスの弟といったところか…愚か者に育てられた割には粘るな。だが次は外さない!」

そう言いながら銃口を向け、引き金を引こうとした瞬間オセロットの右腕を切り落とされた。

「ぬぉ!う、腕があぁぁぁぁぁぁぁあ!」

「お前は!?」

天井から突然サイボーグを纏った忍者のような者が現れたのだ。そして忍者はオセロットの腕だけではなくベイカー社長を縛っていたワイヤーを斬りそのまま何処かへ行ってしまった。

「邪魔が入った!また会おう!」

「会いたくねーよ!!!!」

オセロットが捨て台詞を吐き散らし、火乃香はそれに答えるように拒絶反応を示したが、のちにあのような形で出会うとは今の火乃香は想像してすらいなかった。

「社長、大丈夫か?」

「あ、あぁ…すまないな」

「色々聞きたいことがあるが、核について聞いておきたい」

「全てこの中に入っている…新型核兵器のデータが…それと、PALキーを渡す。これがあれば核の発射入力コードが打ち込まれていても緊急解除できる」

「わかった。それで奴らの持つ核兵器はどんなものだ?」

「あぁ、あれは米軍…国防省と共同で開発していたものだ。君もブリーフィングで聞いたと思うが、核ミサイル自体の材質に電磁波吸収シートを使い形をステレス戦闘機に似せることでレーダーに探知されないステレス核弾頭に仕上げることができる…」

「発射方法も違うと聞いているけど」

「あぁ…超電磁砲(レールガン)を使って弾道を射出するから、ロケットの噴射を探知されることもない」

「そうか。最後に1つだけ、お前たちは国連軍が保有する秘匿兵器システムの要求と言っているが、それはなんだ?」

「!驚いたな…CFFの第一特務隊に所属しているからには、その辺りのセキュリティクリアランスを持っていると思っていたが…ぬっ…!?うぉぉぉぉぉ!!」

「社長!?どうした!しっかりしろ!」

「くっ…オセロットめ…!あの…注射は…!」

ベイカー社長は何か言いかけた途中で倒れた。

何が起きているのかわからない。火乃香がいま認識できるのは救出対象のうち2人が死亡してしまったという事実だけ。もしかしたら内部告発した科学者とやらもこの2人と同じようにすでに死んでいる可能性がある。火乃香の頭にそんなな考えが浮かぶ。しかし、1戦闘員の火乃香はこの事実をありのまま報告しなければならない。

「大佐!ベイカー社長が死んだぞ!」

『心臓発作のようなものだな…』

「科学者は生きていると思うか?」

『わからない』

「…大佐…。ブリーフィングの時から思っていたんだが、あんたにしては今回の作戦、随分とずさんじゃないのか?ほとんど知らされていない。なんだよ秘匿兵器って?アルマース隊に入ればほとんどセキュリティクリアランスは持っていると思っていたんだが…他の連中は知っているのか?」

『答えられない』

ゆっくり事実を確認するように問い詰めた火乃香だが、稲垣は飄々と受け流した。この反応で火乃香は今回の作戦におけるバックアップに失望した。

「…わかった、ただこの作戦が終わったら覚えておけ…。それと5年前に死亡していた筈の雷電が生きていた」

『雷電が…』

『アルマース1それは本当?』

今まで黙り込んでいたナオミがいきなり声を荒げた。

「間違いない。あのサイボーグと刀はあいつだ…ただ…正気を失っているように見えた」

『薬物実験を受けているようね』

「メイリン?なぜわかる?」

『JAMのデータベースにハッキングしかけてみたの。色々な薬物が投与されてるみたい』

ならなぜ奴らのデータベースから

『麻薬まで投与されているわね…』

「あー…ナオミ、今雷電にどうな薬物を投与されているとか言わなくていい。俺が聞いたところで何もわからないから」

『えぇ…ただ彼に会う時は気をつけて』

「わかった」

通信を切った火乃香は先ほどのサイボーグ忍者について知ることができた。

雷電ー彼は約5年前第一特務隊に所属していた4人のうち1人だった。

とある作戦に駆り出されたのだが、敵に捕まり捕虜として手酷い扱いを受けたらしく、火乃香が雷電の代わりに作戦を遂行するため敵地に潜入していたのだが、その時独房を通りかかった火乃香は彼の死体が独房の中で放置されていたのを見た。

死んだはずの忍者、本作戦のバックアップ体制への疑念、そして上層部が隠したがっている秘匿兵器と核弾頭。更にはオセロットが呟いた愚か者…様々な疑念と自分の知らないところで何か重大な出来事が起ころうとしている。そう感じずにはいられなかった。なぜなら、火乃香の第六感がそう囁いているからだ。

だが、このまま何もしなければ確実に自分が滅んでしまうので、前進することにした。

とりあえずベイカー社長の死体をそのままにすることはできないので、どこか隅に安置しようと身体を引っ張ろうとした瞬間カードキーが落ちた。しかもカードキーのレベルは5だ。

「カードキーか…拝借しておこう」

死体を漁るのは趣味ではないが今は丸裸も同然の状態だ。使えるものは何でも使わなければならない。

ベイカー社長を隅に安置し、手に入れたカードキーで先ほど開けることのできなかった武器庫の扉を次々と開けていく。

手に入れたのはアサルトライフルのM4とスナイパーライフルM24SWSだ。あとはチャフグレネードやスタングレネード、通常のグレネードを手に入れた。

エレベータへ乗り込み戦車格納庫に出てみると先ほど鎮座していた二台のM1戦車が一台に減っていた。

恐らくどこかへ行ったのだろうと予想をつけ、戦車の行方も気にしつつ核弾頭保存塔へ行くために平原を抜けるためセキュリティのかかったシャッターの前まで行く。しかもシャッターの大きさはちょうど”戦車一台”が通れるほどだ。

シャッターをカードキーで開ける。ゆっくりとシャッターが上がり中へ入ろうとするとシャッターが閉まった。

薄暗い道だと思いながら先ほど手に入れた赤外線暗視ゴーグルを装着し、電源を入れると、壁からセンサーがため出ていた。

大佐から通信がきた

『アルマース1、気をつけろエアロックだ』

「みたいだ…通り抜けるにはちょっと時間がかかる」

エアロック…センサーに触れると有毒ガスが部屋に充満し侵入者を殺すシステムだ。

うまく赤外線を避けながら無事に渡りきった火乃香は平原に出るとまた無線通信が入った。

知らない周波数に警戒しつつも通信に出る。

『アルマース1気をつけろそこは地雷原だ。しかもその先にM1が待ち構えている』

「雷電か?」

『雷電は死んだ…なに私は君のファンの1人さ第二の告発者(セカンドディープスロート)とでも名乗っておこう』

「待て!」

通信が一方的に切られた。第二の告発者が残したメッセージと戦車格納庫になかった一台のM1戦車。ディープスロートもとい雷電。

所々地面を掘った後がある。やはりこの平原は地雷原であり、その先にM1がいるのだろう。

とりあえず超万能レーダーの機能の1つ地雷探知を使うことにした。

地雷探知機能を入れると出るわ出るわあちらこちらに対人・対戦車地雷の数々が…

それらの地雷をうまく避けながら前へ進み続ける。

反対側に見える核弾頭保存塔の扉まで残り250メートルを切ったところで、妙な電子音と戦車(・・)の砲塔が回る音がした瞬間、火乃香は反射的に右手を軸にしバク転をした。先程まで火乃香のいた位置にはちょっとしたクレーターが出来上がっていた。もしそのままのうのうと突っ立っていたら今頃は四肢がバラバラに砕けていたと思うと…。

物陰に隠れながら、未だ収まる気配のない動悸を何とか抑えるようとする。

『大丈夫か!?』

大佐からだ。一応察して死にかけたんだ。大丈夫なわけがない。なのに素人が聞いてくるような事を言わないでほしい。嫌がらせのつもりなのか?

「何とか。対戦車ミサイルなんて持ち合わせていないから随分と古典的な方法で撃破するしかなさそうだ…あんな戦車刀があれば瞬殺なのに…これで死んだら化けて出てやる」

『怖い事を言うな。刀が入るスペースなんてなかったんだ仕方ないだろう?それより、M1に対抗する方法だが…その手の専門家を呼んでいる』

「専門家?」

『あぁ、ナスターシャ・ロマネンコだ。彼女はディスカバリーにはいないがニューヨークにある自室からアルマース1をサポートする予定だ。彼女の周波数は141.52だ』

「わかった」

ここで、新たな協力者が出て来たらしい。とりあえず言われた周波数に合わせて通信を試みることにした。

『こちらナスターシャ・ロマネンコ。はじめまして刀使い(ソードダンサー)

「悪いが今は作戦中だ。2つ名で呼ばないでくれ」

「悪い事をした。フランクに行こうと思ったが逆効果だったようだ。改めてこれから君のことをサポートするナスターシャ・ロマネンコだ。これからよろしく頼むアルマース1』

「よろしくナスターシャ。早速だが目の前にM1がいる。手持ちの武器は…」

『こちらでも今までのことはモニターしていたからわかる。M1の主砲はラインメタル社製44口径120ミリ滑腔砲一門と主砲同軸と砲塔正面右側に7.62ミリ機関銃M240が装備されている。さらに暗視装置や高度な電子装置で砲塔とシステムが連動しているから君が動けば砲塔は自動で追尾してくる。だから砲身の内側に行かない限り常に打たれ続けることになるし、仮にうまく懐に潜り込めてもそのあとは機関銃の雨が降り注ぐ。それに戦車を破壊するには手持ちの武器では火力不足にもほどがある。あれを戦闘不能にしたければ第二次大戦中ロシアやドイツ日本で行われていた方法を使うしかない』

「ハッチを開けてその中にグレネードを放り投げるか…」

『大戦中だったら相当厳しい作戦だが、今の君にはチャフグレネードがある。それで敵の電子装置を撹乱すれば』

「奴らの目を潰せば自ずと目視で確認する必要が出るからハッチを開けざるおえない」

『その隙にグレネードを投げ入れるんだ。うまくいけば弾薬庫に火がついて戦車はスクラップになる』

「わかった、何とかやってみよう」

『健闘を祈る』

通信を切った。電子装置の撹乱からグレネードを投げ入れる時間は約6秒程度。この一瞬で決着がつく。

大男が戦車から顔を出してきた。距離が相当あると言うのに大男の声が十分に聞こえる。

「来たな!ソードダンサー!ここが貴様の墓場だ!カラスたちが貴様の行動を見ている!荒ぶる大地が貴様を敵とみなしている!俺は執行者だ!異端児は俺が排除してやる!死ねぇ!」

勝手に熱くなっているらしい。あれが巨漢のシャーマンバルカンレイブンか…ああいう奴はしぶとく生き残って最後の最後まで手こずらせてくれる。ここはきっちりと奴もろとも始末しなければ後々めんどくさいことになる。

火乃香は覚悟を決め、3つあるチャフグレネードのうちの1つを手に取りピンを抜いた。

 

 

タイムリミットまで残り16時間38分


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