ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

15 / 46
この章の最終回です!


戦王の使者5

火乃香が戦闘機で飛び出して行く姿を見上げる古城、雪菜、紗矢華。

ただ目の前で何が起こったのか、事実を並べれば、

・今回のテロを影で手引きしたのが妖精部隊の最大の敵であるJAMという組織。

・そのJAMに所属する10機の戦闘機部隊が絃神島にやって来た。

・そんな時に漫画のような展開でCFFの戦闘機が登場。

・火乃香はその戦闘機に乗り、敵の航空部隊に突っ込んでいった。

客観的且つ、箇条書きのように整理すれば今起きている現象を理解するのはのは簡単である。しかし、古城達は知らないことが多すぎる為に、現状の理解が追いつかないでいる。

「結局…今俺たちはどうなっているんだ…」

古城は呟く。

だがその問いに答えてくれる者は誰1人いなかった。

JAMと面識を持つクリストシュガルドシュですら、彼らからはナラクヴェーラを強奪するまでの装備やバックアップのみでしか関わっていたので、JAMそのものの内情は知らない。

古城は吸血鬼としての五感を最大限にまで活用しはるか遠くの空で起きているドッグファイトを見続ける。

雪菜や紗矢華も霊視によりじっと見続けている。

雪風からミサイルが発射される瞬間すら見ずに気がついたら10機いた戦闘機部隊が撃墜。敵飛行部隊の発射したミサイルを華麗に避けて行く姿を見続ける。

「まるで妖精みたいだわ…」

紗矢華がそう比喩する。

実際、古城もその通りだと感じた。戦闘機にはあまり詳しくないが通常の飛行では決して行う事のできない数々の変態機動。その場で180度方向転換したりするところなんかは、既存の…いや、通常の技術では不可能だろう。

そんなふうに考えていると、〈突如〉ヘリコプターが現れた。

ステレス機能のついたヘリコプターらしい。

「今度はなんだ!?」

古城はもう勘弁してくれというふうな表情で睨みつける。

「「先輩(暁古城)下がって(いてください)!」

雪菜と紗矢華はそれぞれ得物を手にしながらヘリから降りてくる1人の男を睨む。

「手厚い歓迎みたいだな…」

「「「ーーっ!?」」」

澄んだ声だ。だが、どこか威圧のある声でもある。

しかし、それ以前に3人は目の前の男に戦慄した。

何故なら、容姿が似すぎているのだ。

現在戦闘機に乗って空を舞っている少年と。

ただ、違いといえば髪の長さだろう。火乃香は長い髪を後ろでしばっているが目の前の男は短く髪を切っている。

「あんたは…何者だ!」

古城は男に問う。

「同い年の少女に護られながら正体を問いただすとは…やはり愚弟の友人か…。残念だ暁古城」

「なっ…!何故俺の名を知っている!」

「一遍に質問を投げかけないでほしい。そうだね…私の名前は天童霞だ。天童火乃香の…いや南宮火乃香の実の兄だ」

ニヤリと笑いながら堂々と言い放った。

「火乃香に…兄が…!?」

「そんな!ならば、貴方は敵ではないんですか!?」

古城と雪菜は情報の処理が追いつかない。

火乃香の家族は10年前に皆死んだはずではなかったのか?

そして何故暁古城の名を知っているのか謎が増えるばかりだ。

しかし後者の質問に関しては案外あっさりと理由がわかった。

「そして2つ目の質問だが、今まで無線を傍受し続けていたのさ」

成る程、無線の内容で彼を知る機会はいくらでもあった。だからだろう。

そうしているうちに、先ほどまでドッグファイトをしていた火乃香が帰ってきた。

重量のある前進翼の戦闘機が垂直着陸をし、コックピットから火乃香が出てくる。

火乃香の表情は、今までで1番歪んでいた。

「何故貴様がここにいる!兄さん…いや!蒼の殺戮者(ブルーブレイカー)

火乃香から殺気が溢れていた。今までに感じた事のない程だ。

古城はその殺気に気圧され、口を抑え胃からの逆流を防ごうとしている。

雪菜と紗矢華は古城とまではいかないが、それでも、汗が止まらない。

そんな殺気を直に浴びて、怯みすらしない霞はさらに煽りを入れる。

「兄弟の感動の再会なのにいきなりそんな態度を取るとは…随分と偉くなったものだな刀使い(ソードダンサー)。結局、俺たちは反対側にしか立つ事のできない者だ。」

「俺はあんたに訊きたいことがある…。何故あんな事をした…!」

「それは天童家に代々伝わる刀を手にするためさ。貴様が持っている二本の刀。あれは出来損なえなのさ。真の刀はずっと本家にだいじにほかんされていた。」

「まさか龍刃刀を…!あれは!ただの言い伝えじゃなかったのかよ!」

「いいや実在している。私はは本家から龍刃刀を奪取するため、欧州で惨劇を繰り広げ、本家の人間が欧州に対し目を向け隙を作るために、あの惨劇を繰り広げたのさ」

「貴様…!そんな理由で…父さんと、母さんを…!」

「愚弟よ、そんなんだからいつも利用されては捨てられるんだ。いいだろう。私はJAMの人間だ。そして貴様はCFFの人間だ。対極に位置するこの組織…。どちらが正義か決めようじゃないか」

「…っ!」

「正義は論議の種になる。力は非常にはっきりしていて、論議無用である。そのために、人は正義に 力を与えることができなかった。なぜなら、力が正義に反対して、それは正しくなく、正しいのは自分だ と言ったからである。

このようにして人は、正しいものを強くできなかったので、強いものを正しいとしたのである。パスカルの著書『パンセ』からの引用だよ」

「俺はパスカルを引用してくる人間がいれば用心するようにと随分前に学んだ」

「なかなか返しが上手くなったじゃないか。なら最早言葉は必要ないな。」

そう言いながら霞は火乃香を睨みつける。霞が初めて、火乃香に対し敵愾心をむき出しにした瞬間だ。

火乃香はHK416Dを装備する。

火乃香は照準を霞の胴体に向けつつ、実際は小銃を使ったCQCに持ち込もうとしていた。

視線は一箇所に定めず、手や足、頭など体の隅々を観察しながらこれから起こりうるすべてのパターンをシミュレーションする。

更に自分を第三者の視点に置き換え、この戦場の全体像を客観的に見続ける。

対して霞は火乃香と違いただ突っ立っていた。しかし視線は火乃香と同じく相手を観察している。

互いに緊張感が増し、場の空気がピリピリと肌を刺激する。

戦場には2種類ある。

1つ目は銃をがむしゃらに打ち続け、ただひたすらに生きる事を目標とする、スクリーンの向こう側のような戦場。

そしてもう1つは火乃香と霞が現在進行形で行なっている、客観的な情報を元に、神経を研ぎ澄ませるような戦場。

後者の方が前者よりも圧倒的に個人差が目立つ。今まで経験してきた修羅場や戦場の数。知識、技量、更にはお互いどこまで知っているかどの程度の能力を持つのか、そういったカタログスペックの把握。

この緊張感あふれる場では、歴戦の戦士ですら体力をすり減らす。

並みの人間ならば気分が悪くなり、吐き気や頭痛が襲ってくるだろう。この並みの人間というカテゴリには、当然の如く、古城を含め、雪菜と紗矢華が当てはまり、果てはガルドシュやヴァトラーですら当てはまる。

それ程までに2人は殺気を放ち続けている。

先に動いたのは火乃香だ。

なるべく相手の正面に立たないよう側面に回り込みながら、そして足掛けを受けないように立ち回りつつ相手の胴体にノズルを突こうとする。

「ーっ!」

しかし霞の方が一手上手だった。

すぐに体を突きを放つ火乃香の側面に回り込みつつ、その小銃を力の向きに逆らわずにそして力の向きに引っ張った。

火乃香はバランスを崩す。そのわずか0.01秒の隙を突くかのように霞から見て右に流れるノズルをそのまま右に流しつつ火乃香の体に押し込むよう、力を加える。

突然力が加わった事によって、火乃香の鳩尾が銃床に突っ込むように前のめりになる。

霞はと言うと更に素早く銃を押し込む。

霞が押し込む事によって銃床が得られる力といままでの運動エネルギー、そして火乃香の全体重が火乃香の鳩尾にぶつかる。

ただでさえ鳩尾を軽く殴られただけでも痛みでもがく羽目になるのに、2つの力が衝突した事により火乃香は痛覚を通り越して意識を手放しそうになってしまう。

呼吸ができなくなり、眼前が暗くなる。力も抜け、膝を地面につきかけたがそれでも必死で耐える。

しかし力が抜けたせいで小銃を手放してしまう。直ぐに火乃香は体制を立て直すべく、ホルスターからハンドガンとコンバットナイフを装備する。

そしてもう一度今度は相手の小銃にも気を配りつつ肉薄していく。

しかし、それでも霞は巧妙に避け、火乃香の腹に火乃香から奪った小銃のノズルで腹を突き、流れるように銃床で火乃香の首の後ろに回し思いっきり地面に叩きつけようとする。そうする事で火乃香の両腕は大きく開き、ほのかの右腕が霞の左腕の側面に右腕が乗り、火乃香の右腕を器用に背中側へと曲げ、右手に持っていたハンドガンを奪う事が出来る。

霞は火乃香を解放し、火乃香は手と膝をつきながら脂汗を流しながら、荒い息を上げる。

「CQCで私に勝つことは一生ない。貴様の本領を発揮すれば、もう少しは粘れたかもしれないな。魔術だとか、射撃だとか格闘だとか…。そういった様々なものに手を出し『中途半端』な状態で終わらせる。1番厄介なものだ。そういった技能を細かく使い分ける戦闘スタイルは一見『強い』ように見えるが所詮小細工にすぎない。更に、それを見せられ、その小細工が本物の強さだと勘違いする三流兵士もいる。そして、そいつらを見て自分は強いと思っていては5流以下だ。一生かけても私は倒せない。愚弟よ闘争本能の赴くままに動け、でないと俺は殺せないぞ」

「はぁ…はぁ…。うるせぇ…。」

「ほぉそこまで口答えするのか。ならいいだろう」

そう言いながら四つん這いになっている火乃香の腹に強烈な蹴りを入れ更に襟元を掴み掛かりながら霞のもつナイフを火乃香の肩峰に突き刺し、無理やり起立させた。

「ぐっ!」

「ここまで頑張ってきた愚弟に1つ、プレゼントを使用じゃないか。」

「…なんだと…?」

意識が朦朧とする中で必死に意識を保とうとする。

「愚弟よ、なんだか辛そうだな。どれ目覚ましがわりだ。こいつはただのコンバットナイフではない。スタンナイフなんだよ」

そう言いながら霞はナイフの柄を強く握る。すると、火乃香の全身に電流が流れる。

「がああぁぁぁあぁああああ!!!!!!!!!」

傷口から流れる電流は全身を痺れさせ、脳が焦がされる感覚に陥る。

手足の指先まで電流が流れ、筋肉が痙攣を起こす。

傷口の周りは熱く、まるで焼きごてを押されたかのような感覚に襲われる。

「こいつはな、110万ボルトの電圧を流す代物なんだ。こうして生きているだけでも奇跡だと思わないかい?」

「……!」

火乃香は霞のことを睨みつける。

「おい!てめぇ!やめろよ!」

古城が見ていられなくなったのか、霞に抗議をする。しかし、霞はそれを一瞥し、さらに睨みつけた。

「真祖だかなんだか知らないが…、君は何も分かっていない。ちょっと事件に巻き込まれて、世間の裏側を見て、修羅場をくぐったからといって、大きく出るのは間違えだ。この件はな、お前たち素人が首を突っ込んではいけないんだよ。何でもかんでも首を突っ込んでいると、火乃香(こいつ)のようになるぞ…!」

そう言いながらもう一度スタンガンの電源を入れる。

まるで、その姿と行為は古城達への見せしめのように感じた。

「グガァァァァァァアアアアァァア!」

火乃香は叫ぶ。全身からありとあらゆる体液が溢れ出し、そして体がヌメっていく。唾液や涙、鼻水が溢れ、格好も何もない。しかし火乃香にとってそんなことはどうでもよかった。

一回に流れる電流は約2秒。

しかし、その2秒は永遠に思える長さだ。

「さぁ、わかったか?お前たちが首を突っ込めば突っ込むほど…こいつが弱くなり苦しむんだ。自分たちの立場をわきまえて見たらどうだい?」

「クッソォ!」

古城は自分が何もできないことに対し、腹が立って仕方がなかった。これほどまでの無力感はいつぶりだろうか。欧州の列車事故で妹の凪沙を失いかけた時以来だろうか?そう考えていた。

「先輩…!ここは南宮先輩に負担はかけられません。ですのでここはただ話を聞くだけにしましょう」

「あ、あぁ…。」

「火乃香…。可哀想に…あんなにボロボロにナッテ…」

古城と雪菜は憎々しげに霞を睨み、紗矢華は必死で目をそらし、耳を塞ぎヴァトラーは憐みの目を向けていた。

「さぁ、愚弟よ、邪魔がいなくなった。さぁ、本題に入ろう。実はな、近々、とある軍事演習が行われるんだが、そこで私は武装蜂起を決行することにした。この事は誰にも言ってはならないよ?もし言ったらあそこにいるお前のオトモダチも今のお前と同じ運命になる。俺たちははJAMだ。CFFと同じ種類の組織だ。そこのところよく考えるんだな」

そう耳元で呟く霞を虚ろな目で見続ける火乃香。

この話は火乃香以外には聞こえていない。いや火乃香の耳にすら聞こえていないのかもしれない。

火乃香にとっては霞の言葉を言葉としてではなくただ音として認識していた。

何を言っているのか分からない。それだけ火乃香は疲弊していた。

「ふむ…聞いているのかわからないがまぁいい。さらば愚弟よ、次に会うときはもう少し期待しているぞ」

そう言いながらナイフを手放しヘリに向かう霞。

ナイフを手放された瞬間、脱力し、ピントの合わない目で霞を見続けながら最後に放った言葉を聞く。

霞が火乃香を解放した瞬間古城達は火乃香に駆け寄り、火乃香の近くには転移魔術の魔法陣が展開され那月が現れた。

「火乃香!しっかりしろ!」

古城が大きく呼びかける

「暁古城!何が……!?火乃香!しっかりしろ!くっ!意識が朦朧としている!早く病院に連れていくぞ!急げ!」

いつもは澄まし顔で優雅に紅茶を飲みながら古城や火乃香をいじって遊んでいる那月だが、今は違う。

今までに無いくらいに取り乱している。

その証拠に那月は珍しく大声で古城達に指示を出している。

火乃香の耳元で慌ただしく繰り広げられる会話を聞きながら意識を手放したのだった。

 

_______________________________________

ピッ、ピッ、ピッ

規則的に聞こえてくる音は心電計から流れている。

呼吸器マスクをつけられ、ナイフで刺された場所は手術によって縫われている。

命に別状は無いが、もしもう一回電流を喰らっていれば死んでいたかもしれないと医師から告げられた。

運がいいことに、火乃香は集中治療室(ICU)にいれられずに済んだ。

那月は火乃香の頭を優しく撫でながら、唇を噛み締めた。

「火乃香…すまない…」

泣きそうだった。もうとっくに枯れ果てたはずの涙なのに、泣きそうだった。

子供達を良き道へ歩ませるため、それまで全力で守りたい。そういう決心から、国家攻魔師の資格を習得し、教師へとなった那月だが、たった1人の大切な義弟すら守れなかった事に対し己の無力さで震えていた。

「那月…オマエは良くやっていると思う。火乃香を守りきれなかったのは私の責任でもある」

阿夜は那月を抱き寄せ慰める。

火乃香は目を覚ますまでどれくらいの時間がかかるかわからない。

そんな時、火乃香が入院している個室のドアがノックされた。

「誰だ?」

「あの…火乃香さんのお見舞いに来ました…」

「あぁ、火乃香の恋人か…。まだあいつは眠っている。」

やって来たのは左手の薬指に指輪をはめた火乃香の恋人である夏音だ。

「………火乃香さんは…」

細い声で那月に尋ねる。

「命に別状は無い。だが、目が醒めるまで…少なくとも2、3日は入院だと医者が言っていた」

「そうでしたか…。火乃香さんが…なんで…こんな事に…」

夏音は涙を堪えていた。しかし、その目には大粒の涙がたまっていき、いつダムが決壊するかわからなかった。

那月と阿夜も泣きたかった。しかし自分達にはその資格がない。何故なら、自分達が泣く理由は、大切な義弟を守れなかった己の不甲斐なさに対しての涙。結局は自分に向けての涙なのだ。

だが夏音(彼女)は違う。真っ直ぐに火乃香に対しての涙を浮かべる事が出来る。

だから夏音(彼女)には泣いてもらいたかった。

その思いがあり那月と阿夜は頑張って泣かないようにしている彼女にこう伝えた。

「お前は…お前だけは火乃香のために泣いてくれ…私たちはあいつのために泣くことが許されない。だから、せめて、お前だけは泣いてやってくれ」

那月がその言葉を発した瞬間に、夏音は那月にしがみつき声を上げて泣いた。

どれ程の時間だろうか…。実際は数分しか経っていないだろうが那月は何時間にも感じていた。

その時、寝ている火乃香から唸り声が聞こえた

「んんっ…ここ…は?」

マスク越しに曇った声が聞こえる。その声に3人の表情は明るくなる。

「火乃香!気がついたか!?」

「姉さん…?俺は…」

「喋るな!まだ寝ていろ!」

「うん…夏音も…心配かけた…みたいだね」

そう言いながら苦笑する火乃香を見ている夏音は何か言いたげだった。

「火乃香さんのバカっ!南宮先生から電話が来て、大怪我をしたって聞いて、どれだけ心配したと思っているんですか!もう…私の前から消えないで欲しい…でした!」

泣きながら火乃香の胸に顔を埋める夏音。

その頭を優しく撫でながら、それでもやらなければいけない事が出来た火乃香にとって、これだけは伝えなければいけないと思った。

「夏音…ごめん…まだ、色々と始まったばかりだし…それに…やらなきゃいけない事が出来るかもしれない…。そうなるとまた俺は戦場に身を置かなきゃいけなくなる。でも必ず君の元に帰ってくるから…だから…今は許して…。必ず全て話すから」

「はい…。絶対戻って来てください…。」

「火乃香…お前は三日間入院することになる。退屈凌ぎに英語の課題を用意した。それと…お前のスマホとPC、それから着替えだ。置いておくぞ。私たちは、もう面会時間が終わりそうだから帰る。今日はゆっくり休めよ」

「ありがとう。それと、お休みなさい那月姉さん、阿夜姐、夏音」

「「「おやすみ火乃香(さん)」」」

そう言い残し、3人は空間転移で消えて言った。

ほんの少しの沈黙の後、電話が鳴り響く。

海外からの番号だ。

「もしもし」

『火乃香ですか?』

「ラ・フォリア?どうした?」

電話の相手は以前護衛していたアルディギアの王女だ。

『大変なことになりました…やはり以前に話していた例の子はお爺様の隠し子だったみたいです…。』

「そ、そうか…」

火乃香の顔が引き攣る。

『夏音さんを我がアルディギア王室に正式に迎え入れようと思います。ですから、来週日本に行きますね。それに貴方の事ですから夏音さんを彼女にしているんじゃないんですか?』

「え!?あ、いや…その…」

図星だ…。火乃香は思った。彼女の域ならばまだ良いだろう。しかも婚約指輪まで渡して更にヤってしまったのだ。

『はぁ…。その様子ですとわたくしより先に夏音さんにプロポーズして男女のアレをしたみたいですね?夏音さんが嫌だといえば手を引きますが、私は別に2人でも構いません。』

「はぁ…本当に申し訳ございません…。」

『いいえ、まだ貴方の答えを聞く前でしたし、浮気にはなりませんよ」

微笑みながら喋っている様子が目に浮かぶ。しかし背後にはどす黒いオーラが見え隠れしている。現に電話の向こう側からでも分かるほどのどす黒いオーラが感じる。

しかしそのオーラも一瞬のものでありすぐに霧散した。

『火乃香…それよりももっと自分を大事にしてください。貴方に期待している人は大勢います。ですから辛くなったらわたくしに頼ってください。苦しみで押しつぶされるその前に…』

火乃香の声のトーン、喋り方で何かあったのだと感じたラ・フォリアが火乃香に対し、いつでも頼って欲しい旨を伝えた。

「あぁ…わかったよ…。ありがとなラ・フォリア」

『いえ、気にしなくて結構です。ではお休みなさい』

「あぁ、お休み。ラ・フォリア」

そう言い終えて携帯の電源を切り、再び夢の中へ潜り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




格闘戦の描写がうまくいかない…。分かりづらかったかな…。
火乃香と霞の格闘戦はMGS4のACT3レジスタンス尾行の最後に行われるリキッドとスネークのCQC戦を見てくれればイメージがつくかもしれません。と言うよりもあのシーンをイメージして書きました。
色々間違っているかもですがそこはスルーで。
次回は火乃香の入院中のエピソードとかを番外編で書けたらなと思っています。
ではまた次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告