ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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書きます


戦王の使者篇
戦王の使者1


絃神島より離れた場所に一隻の豪華客船が航行していた。デッキには金髪で白のスーツを来た好青年が立っていた。

「で、日本政府はなんと?」

「日本政府は貴殿の入国を歓迎します。それと条件として…」

「君が監視役として僕の側にいるト」

「はい」

「まぁいいサ、僕の愛しの第四真祖に早く会いたいネ。でも君は良いのかナ?僕と第四真祖がぶつかるのハ」

「構いません…!第四真祖暁古城は私たちの敵ですから…!」

そういうと髪をポニーテールに結び、どこの制服か分からない紫のベストをきた少女が金髪スーツの男をにらみながら手に持っていた少年の写真を握り潰したのだった。

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「くそっ!なんでアイランドガードが来やがるんだ!おかげで取引がバレちまった」

そう言いながら倉庫の屋根を必死で走っている獣人がいた。

「おーい。待てよー。逃げたら綺麗に殺せないだろー?」

オリーブ色の迷彩ズボンに白いTシャツに腰には黒い鞘に納められた刀を持ち長い黒髪を後ろで纏めて結び、赤いバンダナをなびかせた少女のような少年南宮火乃香は獣人の後ろをぴったりとくっついて走っていた。

「てめぇ!なんでついてこれるんだ!お前本当に人間なのか!?」

「人間だよ」

しばらく走ると獣人は急に走るのをやめた。

追い込んだのだ。

「へへっだがな甘いんだよ餓鬼が!あの倉庫には爆弾が設置されている!こいつを押せばあそこにいるアイランドガードを吹っ飛ばすことができるんだよ!」

へへへと得意げに話してくる獣人に火乃香は呆れ果てていた。

「押したければ押せば良いさ」

「お前が押せと言ったんだからな!押すぜ!」

そう言いながら獣人はボタンを押した。

しかしいつまで経っても爆破音が聴こえない。

「どうなってやがる!?」

「今時暗号プロテクトがさ施されていない遠隔爆弾を使うとはな。貴様の脳みそは犬以下なのか?」

今度は後ろに建つクレーンの上から若い女性の声が聞こえた。その声にはどこか冷たさがあり、さらに獣人を見ている目がどこか汚物を見るような目だ。

「空隙の魔女…!なぜ貴様がここにー」

「ハッ!」

火乃香は刀を抜き獣人の手足を切り落とした。切り口からは鮮血が噴き出ていた。血の匂いが辺り一面に漂い、そしてもろに血飛沫を食らった火乃香は苦虫を噛み潰したような顔で刀を鞘に納めた。

「やりすぎだ馬鹿者」

「どーせこいつは獣人なんだ…たかだかダルマになったところで、死にやしないさ…

それより姉さん血を洗い流したいからさっさとアイランドガードに連絡してお風呂に入りたい」

「はぁ。お前はもう先に帰っていて良いぞ。」

「やったぁ!」

そう言いながら火乃香の足元に開けられた空間に堕ちていった。

「さて私も帰るとするか」

こうして火乃香と那月の仕事は終わったのだった。

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基本的に火乃香の朝は目覚まし時計によって叩き起こされるのが日課だ。

最近の目覚まし時計は耳をつんざくような金属音が鳴る昔のものとは違い電子音が鳴るタイプやスマホなどに目覚まし機能が付いてたりする。しかしそれでも人外の音が急にけたたましく鳴ると言うのは、戦場で常に精神を研ぎ澄ましてきた火乃香にとっては朝から心臓に悪い。

しかしつい数日前からそんな辛い思いをしなくて済むようになった。

なぜなら…

「教官、起床時刻です。速やかに起床してください。」

声に抑揚がないがそれでもどこか優しい声色で、体をゆすりながら起こしてくれる少女がいるからだ。メイド服を着た藍色の髪に感情の起伏が見られない人工生命体(ホムンクルス)のアスタルテが火乃香の掠れた視界に飛び込む。

「んぉ…おはよぉーアスタルテ」

「おはようございます、教官」

「はぁ…学校か…。朝ごはん作らにゃならんなぁ…アスタルテ那月姉さんを起こしてきてくれないか?」

命令受託(アクセプト)

やはり感情がこもっていない。

(あのメイド服…完全に阿夜姐ぇと那月姉さんの趣味か…つかあの二人がニヤつきながら俺に着せようとしたメイド服じゃん。いやーアスタルテがいるだけで女装させられる心配がなくなる。感謝だな)

なぜ彼女が南宮家(ウ チ)にいるのか…。それは遡ること数日前、聖遺物奪還のためにテロをしでかしたオイスタッハ一行は火乃香達にその野望を阻止され無事にアイランドガードに身柄を拘束されることになった。そこまでは良かった。しかしただオイスタッハに利用され犯罪行為を強いられていたアスタルテは被害者なのだが、それでも、テロに加担したのは変えられない事実としてそこにはあった。さらには世界初となるであろう人工生命体(ホムンクルス)でありながら人工眷獣を使役するという事により更に面倒な事態となった。そこで、声を上げたのが南宮那月だった。

彼女曰く

「あいつは元々医療用のホムンクルスだ一般市民に危害を加えるようプログラミングされていない。更にオイスタッハは一人で遂行することが出来ないから彼女に人工眷獣を植え付けたと言っている。これはどう見ても彼女は被害者だろう?それでも心配だと言うのなら、彼女を何年かの観察処分として私の家で引き取ってやる。国家攻魔官の資格を持ち、教師である私が適任だろ?どうだ?悪い話ではないだろう?(ホムンクルスはその存在理由から主人には従順だからメイドとして欲しい)」

彼女を良く知る者たちならば長ったらしく語ってはいるがそこに隠された彼女のたった一行の本音を見抜くだろう。

しかし残念ながらその場にはそこまで彼女をよく理解しているものは存在しない。直ぐに彼女の語った処遇について目先の厄介ごとを早く片付けたいが為にその提案を呑み、3年間の観察処分とし、南宮家でその身柄を預かる事になったのだ。

ご主人様(マスター)を起こしてきました。」

「助かるよ、じゃ次は姉さんに出す紅茶入れといてそれと俺はコーヒーのブラックよろしくアスタルテも好きなの用意して先で待っててくれ」

命令受託(アクセプト)

今日の朝食はパンケーキと那月とアスタルテは紅茶火乃香はブラックコーヒー。

「おはようアスタルテ、火乃香」

「「おはよう(ございます)姉さん(ご主人様(マスター)」」

こうして二人だけの朝から3人になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




また次回…

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