元中二病同士の青春ラブコメ?   作:いろはにほへと✍︎

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私はただ一つの事
ただ一つの夢に生きました

―マリ・キュリー―



ばにっしゅめんと!

 冨樫との不幸な再会から一週間。

 あれ以来、冨樫と会うことは無かった。……まだ一週間しか経っていないが。

 意図的にずらしているのか、本当にタイミングが合わないのか、まるで前回の再会が奇跡であるかのように感じた。

  警戒している理由はただ一つ。フラグは回収されるからだ。

 今日も今日とて駅に向かう。

 もちろん警戒は解かない。

 部活を終えたあとの帰宅で、ふと時計を見ると、六時を回っていた。

 早く帰宅したい気持ちもあって、自然と歩くペースは上がっていた。

 いつものように、改札を抜け、エスカレーターに乗る。

 ホームに出ると、人が一人もいなくて、気味の悪さを感じたが冨樫たちがいない事に安心した。

 次の電車まで三分ほどしかないが、ベンチに座る。

 ホームとホームの間に差し込む月明かりにもまた不気味さを感じて、思わず目を閉じた。

 そうするとすぐに、こちらに向かう足音が聞こえて、安堵する。

 「はぁ、はぁ、間に合った……」

 ふいに耳に入った女子っぽい声は、どこかで聞いたことのある声だった。

 「ったく、冨樫くんには明日絶対仕返ししてやるんだから」

 「富樫くん……」

 聞き覚えのある名前に、つい口を滑らせた。俺とその女子との距離は約一メートル。十分に聞こえる距離だ。

 俺は聞こえてないことを願いつつ、なぜか見覚えのある彼女を必死に思い出そうとした。

 「え?」

 こちらを凝視する女子。

 実は俺モテるんじゃ! なんて余裕は今の俺にはない。

 「すみません、富樫って名前のヤツが知り合いにいて……、ちょうどあなたと同じ制服の――」

 弁解していると、突然、目の前の女子が動揺し始めた。

 「あ、そうですか! 気にしないでください! それでは!」

 急に元気に、というよりなにか焦りを感じ始めたようだ。

  彼女は話を挟む間もなく、ホームを今いる位置とは逆に歩きはじめた。

 

 ――何かを落として。

 

 癖というか、小町の教育の賜物というか、俺はすぐに拾った。まあ、色々言いましたけど、常識でしたね。

 落し物が何なのか、自分の影でうまく見えなくて、光に照らす。

  だが、つい手を滑らしてしまった。ちょうど明るいところに落ちて、開いたそれを見る。いや、見てしまった。不可抗力だ。

 由比ヶ浜が隣にいたのなら、ふかこーりょ? と聞かれているところだが、そんなことよりもその落し物は俺の目を引き付けた。

 

 落し物を渡す為に彼女に視線を送る。

 彼女は、ここより少し進んだところに立ち止まっていた。

 確か、あそこは六両目の停止位置。

 同時にアナウンスが流れる。

 

 『ただ今、快速列車待ち合わせのため、三分ほど遅れて運転しております。お急ぎのところ、ご迷惑をおかけ致しますことをお詫び申し上げます』

 

 『なお、次の列車は普通列車、三両編成となっております』

 

 ほら、戻ってこい。……丹生谷森夏。

 




クロスオーバーのSSって書くのが楽しいんですよ。書いてみると分かりますけど、自分の好きな、表現したい世界が作れるんですね。
それが、自分の作ったというより、本当に存在するって思えるんですよ。
文章に違和感なくするのって大変です(笑)

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