会社員生活が本格化して、家に帰ると艦これなどの最低限のゲームをして寝る日々でした。
この物語も頭にはありましたが、4度目の艦隊巡りとなり、正直マンネリ化が否めないので、どう書こうか悩んで筆が進みませんでした。
全体的な構想自体はありますのでネタ切れではありません。
横須賀・呉・トラックと周り、最後は佐世保の第三艦隊を残すのみとなった。
岩国からは鉄道を乗り継いで行く。在来線やら新幹線やらと乗り換えが面倒だ。
長崎まで新幹線を作ったのなら佐世保まで伸ばしてくれれば良いのにと思う。
もちろん商業港の長崎と軍港の佐世保では需要が違うし、ただの我儘である。例え作っても岩国と佐世保間など、軍人しか使わなそうである。
佐世保の街に降り立つ。久しぶりだ。
あまり変わっていない町並みに安心する。
駅前でタクシーを捕まえて旧米軍基地へ向かう。
十分程で基地に到着した。数年前には星条旗があったポールには日の丸がはためいている。
ここが佐世保鎮守府だ。例にも及ばず撤退した米軍の施設跡を使っている。
中に入り、身分証を見せる。
受付の職員は確認して電話を掛けた。
「少々お待ちください」
と言われたのでロビーで待つ。
四回目となると流石に飽きて来る。緊張感も薄まっていた。
そのせいか気長に待っていたが、座ってから30分待った所で流石に痺れを切らした。
「すみません…」
「あ…まだ来てないようで」
こちらが声を掛けると、係員が済まなそうに言う。
「アポ取ってるんですがね」
「申し訳ありません」
係員はただ謝るだけだ。
どうしたものかと悩んでいると奥から上司らしき人が出てきた。
「
「はあ」
来訪者の迎えに艦娘を呼ぶとは変わっている。司令部要員はいないのだろうか。
さらに待つこと5分。
「第七艦隊の司令長官ですか?」
俺に話しかけたのは短髪の巫女っぽい服を来た少女だった。
「ああそうだ」
「お待たせしてすみません!」
俺が提督だと分かると彼女は勢いよく頭を下げた。
怒ろうと思ったが彼女の謝罪を受けてそのタイミングを逃してしまった。
「長官室へご案内します」
「頼む」
あるき出した彼女の後を歩く。二人共黙っているので自然と彼女の後頭部を見てしまう。
茶髪に白いカチューシャを付けている。艦娘にしては頼りない印象を受ける。
「名取です。
「入れ」
男の声だ。名取と呼ばれた艦娘はちらりとこちらを見ると扉を開けた。
入れという事だろう。俺が部屋に入ると複数の目線を感じた。
部屋には四人が座っていた。
窓際の目の前の席には俺と同じ軍服を着た士官がふんぞり返っている。喫煙マナーが厳しい昨今の流れを逆行するように煙草を吸っている。確か名前は高橋だったか。初めて会う将校だ。
左側の少し離れた位置に髪の長いが女性が頬杖をつきながら暇そうに座っている。
右側ではポニーテールと短髪の女性がチェスをしていた。
よく分からないが、規律に厳しい軍隊で久し振りにこんなだらけた空間を見た。
俺は後に下がって部屋の表札を確かめる。
「あの、間違ってないですよ」
案内してくれた艦娘が恐る恐る教えてくれた。
「君が第七艦隊の提督か」
「はい」
「
提督は机から足を下ろすと聞いてきた。
「艦娘による民間船の護衛です」
「そうらしいな。それで後方任務の提督が何の用だい?」
後方任務と言われて不快に思ったがそれを出す訳にはいかない。第三艦隊も後方部隊ではないか。
「駆逐艦隊をお借りしたいと思いまして」
「ふん。第三艦隊は大陸に睨みを効かせてるだけで働いてないからかい?」
「いえ、そうとは申しておりません。全ての水雷戦隊を周ってお願いしています」
「そりゃ結構な事で」
「お貸し願えませんでしょうか」
提督は少し考え込む。答えは出さず、横に座っていた女性に尋ねる。
「足柄。どう思う?」
足柄はじっとこちらを見つめている。
オオカミのような視線だが、深海棲艦と何度か戦っている身からすれば大した事ないと思う。そう思いたい。
「いいんじゃないかしら」
「そうか。あいつ若いからな…」
高橋は鼻で笑うとこちらに質問した。
「いつ出せばいい」
「基本的には大規模攻勢中ですが、多忙であれば要請するかも知れません」
「分かった。考えておこう」
「お願いします」
考えるとは言ったが出すとは言っていない。だが、あまり押し過ぎても良くないだろう。気分が変わる前にまた出直すとしよう。
引き上げようかと腰を上げた時、内線が掛かって来た。秘書艦らしい足柄が取る。
「はい、
足柄はこちらを見る。何の電話だろうか。思わず動きが止まる。
「
「俺に?」
「そう。早く替わってちょうだい。何か怒ってるみたいよ」
「わかった」
誰からだろうか。とりあえず替わってみる。すると、いきなり怒号が飛んで来た。
「君が第七艦隊の提督か!」
「はい。そうです」
「マカッサル海峡で客船スメルが撃沈された!」
「スメル…」
聞いた事のない船だ。どこの船だろうか。
「どう責任を取るんだ」
「責任?」
「ああそうだ。管轄はそっちだろう」
「当艦隊はまだ開設されたばかりで運用は来月からと…」
「知らんわ!」
「えぇ…」
「とにかく何とかしろ!」
激しい音と共に電話は切れた。
「終わったか?」
受話器を足柄に返すと高橋が聞いて来た。
「ええ。理不尽な電話でした」
「スメルが沈没したそうね」
足柄がため息をつく。だが高橋はピンと来ていないようだ。
「スメル?聞いた事ねえな」
それは同感である。
「知らないんですか?インドネシアの客船よ」
足柄は当然の事のように言う。
「インドネシアの閣僚を載せて日本を訪問する予定だったじゃない。一昨日の報告書見たでしょ?」
高橋は呻いて目を逸らす。
ここ最近、艦隊巡りのため出張続きだった俺も知らなかった。
秘書艦がいればフォローしてくれたのだろうか。
「大事な船だな。しかしなぜあいつに責任が回るんだ」
「それは日本に護衛を頼んだからよ」
なるほど。そういう事か。
「地図を見せてくれませんか」
「地図は…」
「はい、これ」
俺の申し出に後ろから声がした。
振り向くと緑のツインテールの艦娘が地図を差し出す。
壁に貼ってあるものとは違うものだ。よく見るとそれは日本を中心に中国までを映した物だった。確かに第三艦隊は対東アジア向けの戦力であるから正しい。
逆に艦娘から渡された物は太平洋の海図だった。この某ボーカロイドのキャラクターのような艦娘は頭が回るようだ。
机を借りて地図を広げる。
東アジアからオーストラリアまで目線を下げる途中、マカッサル海峡を見つけた。インドネシアのカリマンタン島とセレベス島の間にある海峡だ。
バリクパパンとかいう都市の沖だ。
「バリクパパン…懐かしいわね」
足柄がしみじみと言う。
「知っているのか」
「大きな油田があって、日本軍が占領してたのよ」
過去の記憶か。旧海軍の軍艦の魂だけあって当時の事も覚えているようだ。
「それで…スメルはどこが護衛戦力を出したんですか?」
「ええと、護衛艦隊の第6護衛隊ね」
「第6は…こんごう型DDGとたかなみ型DD2隻、あきづき型DD1隻か。かなり本気だな」
「防空重視ね」
「連合艦隊への要請は?」
「ないわ。打診してもないみたい」
「そうか…」
護衛艦隊と連合艦隊は仲が良いとは言えない。現場はともかく、上層部は特に。
「ハイテク艦隊の威信を掛けた任務ってやつだな」
黙って煙草を吸っていた高橋がポツリと言った。
なるほどそうかも知れない。
「詳細を聞いてみないと分かりませんが、そのようです」
「おたくも大変なこった」
「まだ始動もしていませんので、責任が回ってくる事はありませんよ」
足柄と緑髪の艦娘にお礼を言い、引き下がる事にした。
部屋を出て、空気を吸い込む。特段綺麗な空気とは言えないが、紫煙が篭る部屋よりマシだ。彼らは気にならないのだろうか。
保科に電話を掛けると、スメル号の問い合わせが複数来ていると言う。困惑しているようだが、引き続き調査中と答えるよう指示した。
「さて、帰るかな」
長い旅だったが、一通りの目処はついた。第三艦隊は了承を貰えなかったため、また来る必要がある。当分は三艦隊の駆逐隊で凌ぐしかないだろう。
スメル号の沈没についても調べなければ。
まだまだ忙しそうだ。
春イベはまさかの護衛艦艇祭りでした。正直、海防艦や護衛空母の実装はまだ先だと思っていたので面くらいました。
大鷹かわいいですね。物語にもピッタリですし、是非登場させたいです。
実装が嬉しい反面、彼女ら無しでシナリオ組んでたので、修正しなければなりません…。
(数ヶ月前にコメントくれた事に、この前気が付きました。通知機能とか無いんですかね?探してみます。)