【更新停止】今を生きて、明日を歌う為に   作:ゆめうつろ

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私の姉さん/私の妹

――私は何をやっているんだろう

 

 部屋に一人引きこもり、ただ後悔を繰り返すのはセレナであり、アスカである。

 

 クリスを傷付けた事、自分が原因でマリア達が叱られた事、そしてマリア達を騙していた事。

 

 消えたい、いなくなりたいという思いがゆっくりと心を蝕んでいく。

 

「セレナ……」

 

 そこへやって来たのはマリア、いつもの様に『姉さん』と呼ぶ事さえ出来ず、アスカはその表情を曇らせる。

 

「あなたが、何者であっても……私にとってあなたは大事な妹よ、だから貴女から聞かせて」

 

――ついに、語る時が来た

 

「一つお願いがあります」

 

「何?」

 

「語り終わるまでは『姉さん』と呼んでもいいですか?」

 

 依存していたのはマリアだけではない、マリアを本当の家族の様に思っていたのはアスカも同じだった。

 

「ええ……」

 

「私の名前は真琴明日歌、日本生まれで聖遺物との融合症例、両親は私が8歳の頃にノイズ災害で亡くなって、今は妹と叔母さんが居る、それで2年くらい前に櫻井先生によって聖遺物の摘出をしてもらい装者となった、けどその際に天羽々斬とイカロスの二種類の聖遺物と融合した、それでルナアタックの少し前の戦いで皆を守る為に犠牲になった……大まかにはこんな感じだけど何か聞きたい事はある?」

 

 ゆっくり息継ぎをしながら今までの出来事を全て明かす、それはもうどうにでもなれという気持ちからであった。

 

「ねえ、今の話だとあなたは一度死んでいるという事にならない……?」

 

「ええその通りです、下半身は吹き飛び、残った上半身も灼熱で焼け、消し炭も海に落ちて完全に死んだ……筈なんですよ」

 

「でもあなたは再生した、私の目の前で」

 

「……それが聖遺物融合体の能力だと思います、だから今の私はかつて真琴アスカであった聖遺物の塊と言えるかもしれません」

 

 思い返せば本当に今の自分は連続した『アスカ』という存在なのか?それさえも不安になってどんどん表情を暗く重く落としていく。

 

「……それで装者達とはどういう関係だったの?」

 

「クリスは、親友かな……ほんの少しの時間しか一緒にいられなかったけど……響さんは頼れる後輩、翼さんは……なんていうかわからないけど大事な人でした……」

 

「そう、貴女が戦いの度に深く落ち込んでる理由、しっかりわかったわ」

 

「そうです……親友を私は傷つけたり、武器を突きつけたりしたんです、皆を月の落下という大災厄から救いたいと思いながらも敵対して、それに……二課の所属という立場からこっちの皆にもずっと何も打ち明けられなくて……本当の私は何処にいるのか……」

 

「セレナ……いえアスカ、あなたはずっと一人でそれを抱え込んで来たのね……」

 

「マリア……姉さん……」

 

「あなたはセレナでありアスカでもある、だから私だけは『姉』としてあなたの味方でいるわ……だからこうして二人きりで居るときはあなたの自由にしなさい」

 

 マリアは優しくアスカを抱きしめて囁く、それは彼女自身もいつの間にか失ったセレナの代わりとしてではなく、もう一人の新しい妹として彼女を見ていた事に気づいて。

 

 

「なら私は……私はあなたの妹で居たい」

 

 

 たった二人だけの真実、世界を敵に回した姉妹は心で繋がった姉妹(そうごいぞん)となった。

 

「大丈夫よ、アスカ……私は何処へもいかない」

 

 

◆◆◆◆

 

 チョロ重シスターズが愛を確かめている一方、日本では包帯に巻かれたクリス(全身くまなく軽傷)が一冊の本を読んでいた。

 

 本のタイトルは直球で『同性愛について』だ。

 

――アスカが私を愛してて……お……おう……確かに一緒に居て……家族みたいな気持ちになれて……つまりはそういう……

 

 顔を真っ赤にしながら全身の傷が開きそうなくらい悶えるクリス。

 

「あのー雪音さん?今大丈夫かな……?」

 

「おっ…おう平気へっちゃらだぞ!?」

 

 すかさず読んでいた本を隠すクリス、見舞いと称してやってきたのは弓美だ。

 

「その、直球で悪いんだけど……セレナはマッキー……アスカだった?風鳴司令に聞いても『調査中』って教えてくれないしビッキーは居ないし…翼さんはアレだし……」

 

「……ああ、間違いなくアスカだったよ……色々事情があるみたいだ……でも確かにアスカの再生力なら生きててもおかしくないよな……前に私とデートした時もアタシをかばって崩落した瓦礫に潰されても生きてたし」

 

 かつてのデートを思いだし頬を赤らめるクリス。

 

「えっ……」

 

 そして唖然とする弓美。

 

「あっ……悪い刺激が強かったか?」

 

 潰れただとか再生だとか普通に考えればグロ案件だ、とクリスは申し訳なくなった。

 

「あっうん……びっくりシタナー……まるでファフナーの芹ちゃんみたいな再生能力モッテタンダネー……でも確認が取れて安心したからありがとね雪音さん、それじゃあ……」

 

「おう…?まあとにかくアスカは必ず連れ戻すさ……だから安心しな!」

 

 爽やかな笑顔で答えるクリス。

 

――安心できないよ!っていうかマッキー!翼さんだけじゃなくて雪音さんにまで手を出してたの!?何!?私が百合ゲー貸したのが原因で修羅場!?マッキー!翼さんはあからさまなヤンデレキャラだよ!?このままじゃBADルートだよ!?どうするの!?何故か悪堕ちしてる場合じゃないよお!?

 

 かろうじて笑顔をつくる弓美であったが内心、気が気ではなかった。

 

 

 今はここに居ない友に想いを馳せるアニメ少女であった。


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