【更新停止】今を生きて、明日を歌う為に   作:ゆめうつろ

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気がついたら評価やブクマやコメント数が凄いことになっててサーバルちゃんみたいなアホ面してました。


かつては居た、今はもうテクニカル

 

 ステージの端で、クリスと響の二人、マリアと調と切歌の三人がぶつかり合うのをただ悲しい顔で眺めているのはセレナ。

 

――翼さんにわかって貰えず、翼さんの怒りの理由がわからない……私は自分を真琴アスカだと思い込んでるだけの何かで、本当の真琴アスカはもういないのかな……

 

 ただですらメンタルの貧弱なアスカが自分の存在の全否定を食らったのだ、そのダメージはそれこそ自己否定を始めるレベルであった。

 

 

「はぁ…せいやッ!!」

 

 最低限の動きで切歌と調の猛攻を捌ききった響に二人は思わずドン引き。

 

「調!こいつヤバい奴デース!?」

「切ちゃん、慌てたら負けるよ」

 

 一方でクリスとマリア、クリスは何時もの弾幕スタイルではなく、一撃特化の狙撃スタイルで的確にマリアを追い詰める。

 

「セレナって奴は何者だ?何で『真琴アスカ』と同じ声と顔をしてやがる?答えによっちゃ見逃してやってもいいぜ」

 

「くっ……答えると思うか?」

 

「ならベッドにくくりつけて自白剤や忍法でも媚薬でも何でも使って聞き出すまでよッ!」

 

 数の利はあるのに、まるで通じない、三人は少しばかり焦っていた。

 

『今日は、もう十分でしょう撤退しなさい』

 

 それを見かねたナスターシャが撤退の指示を出す。

 

「そうね、少し侮っていたのは確か……今日はあくまで宣戦布告よ、風鳴翼にも伝えておきなさい」

 

「セレナもほら、帰るデスよ!」

 

「………」

 

――ああ……クリスに……響……居たんだ……

 

 今頃になってようやく二人の存在に気づいたセレナの目は完全に死んでいて、もはや生者がしてはいけない感じのソレであった。

 

「――ッ…!?まさかてめえら!?」

 

 

 

 それを見てクリスは、セレナの正体に気付いた。

 

 

 

――まさかアスカを……ゾンビとして使ってやがるのかこいつら……ッ!?そうか…ならあの白い髪やメイクも……あの死んだ目も辻褄が合うぞッ!!くそったれッ!

 

 ゾンビみたいなのはいつも通りだが、別に死んでないし本物のゾンビでもなく、再生しただけの真琴アスカである。

 

「――そうね、まあそういう事よ……行きましょうセレナ」

 

「はい、マリアねえさん」

 

 翼に否定された精神ダメージでもはやマリアしか拠り所のないアスカは、もう『どうにでもなーれ』とでも言わんばかりに力ない返事で流れに身を任せた。

 

「くそッ!待ちやがれッ!くそったれッ!!」

 

 クリスが怒り叫ぶ声をバックに、再生ノイズをデコイとしてFISは無事に逃げおおせた。

 

――――――――

「セレナ……この状況で元気を出して…というのも少し難しい話だけど……話だけでもしたら楽になれると思うわ」

 

 拠点への帰還後、リンカーの補給や身体チェックなど、研究所から着いてきた所員達のバックアップを受けながらもFIS装者達は休息をとっていた。

 

 『黒幕』である米国はあくまで身内だとわかっていてブラフだという事も知っている為に『降伏はせず、断固として戦う』と表明。

 

 しかし余裕の無い欧州はかなり荒れ、計画の第一段階『宣告陽動』は上々だった、次は各国から聖遺物研究者の引き抜きをしながら一番の脅威である二課を釘付けにしつつ、フォニックゲインを集める事。

 だが想定外の出来事としてセレナの凄まじい精神ダメージがあった。

 

 セレナは特にこの第二段階での要で、二課に捕縛されでもしたらその時点でかなり『詰み』だ。

 

 更にウェル博士の協力の元で『ネフィリム』の『再起動』に成功したのに、ネフィリムの維持の為のフォニックゲインが足りなければ『フロンティアの制御』が成らなくなる。

 

 まさに今のセレナはこのフロンティア計画の『鎹』なのだ。

 

 ちなみに当人はそんな事は全く知らない。

 

 

「大丈夫よ、セレナ……あなたは私が守るから……信じて」

 

「ねえさん…!わたし…私…!」

 

 故にセレナの姉(メンタルケア係)としてのマリアの存在は非常にありがたく、所員達は『セレナ』を妹として扱う事を発案した彼女を改めて褒め称えた。

 

 

「わたし、わかってもらえなかった……翼さんならわかってくれると信じたのに!わたし……翼さんがわからないよ!悲しいよ!ねえさん!」

 

――そう……セレナはセレナなりに世界を想って、覚悟を見せたのにあの風鳴翼はそれを………許せないわ!!

 

 本当は正体に気づいて欲しかっただけなのだが、マリアはセレナのテクニカルな演説から『セレナは翼に同志になって欲しかった』と勘違いしていた。

 

――でも、そうよ……セレナを安心させてあげなきゃ!

 

「大丈夫よ、セレナ……一度で駄目なら二度、二度で駄目なら三度……何度だってあなたの想いを伝えなさい、あなたは正しいのだからきっと、必ず、気付くわ」

 

「ありがとう……ありがとうねえさん!」

 

――そうです、私はまだ生きてます!まだやり直せるんです!マリアねえさんの言う通り何度だって伝えればいいんですよ!

 

 チョロ重、マリアの励ましで早くも復活。

 

――そうです、世界を救って……また翼さんと向き合って気づいて貰えばいいだけなんですから!

 

 一応アスカは、フロンティア計画の全容はよくわかってないが、月の落下をどうにかする事だけは知っている。

 

「何度だって私、頑張るよ……ねえさん」

 

「ええ、頑張りましょう…セレナ」

 

 こうして依存を深めていく姉妹(仮)であった。


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