がむしゃらに破壊力をぶつけるだけが武ではない、自分や相手を破壊してしまわない力の加減、衝撃の受け流し、言ってしまえば武は戦う為の理だ。
世界はいつだって理を極めた奴が上を行く。
前回の敗北からしばらく経ち、傷も癒えた頃。
風鳴弦十郎の監督の元で修行をする事となった装者達。
体力お化けである響は平気へっちゃら。
慣れている翼は特に問題無し、これ幸いに自分を見つめ直すと打ち込み。
装者ではないが未来も陸上部パワーで追い付いてきた。
「し…しれー……体が動かねぇ……です」
「なっ……なんで私まで……」
だがアスカとその場の流れで連れてこられた弓美はダメだった。
「なんか、体が内側から結晶生えてるみたいに重くて、医務室に帰っていいですか」
「あら、正常よ」
更にアスカの状態を監視する為についてきたものの、流れで修行に参加させられて半ギレのフィーネ、もとい了子も居た。
現在地は某県某所山頂、ハイキングコースもあるが早朝からコース外を突っ切り、山中にある訓練施設で一通り特訓メニューをこなし、昼飯前に山頂まで登る。
そして昼食を終えればまた施設まで戻り午後のメニューを行うのだ。
「でも、楽しいですね……みんなで山登りなんてはじめてですよ」
「そうだよね!遠足を思い出すよね!」
とはいえダメダメ組、特にアスカははじめてのアウトドアな活動をエンジョイしており、喜びを隠さない。
「……そうだな」
「そうですね!」
あまりにも楽しそうなアスカに翼と響もつられて笑う。
「肝心の特訓はダウンしっぱなしだったけどねアスカさん」
「そうねーアスカちゃん、帰りの荷物持ちも修行の内容に入れない?」
未来も実態に呆れながらも、確かに楽しい事は同意だった。
――だから何故、真琴明日歌に関わるとこうもわけのわからん事になるのだ!?
そしてフィーネは、困惑しつつも少しばかり『楽しい』と感じた自分自身に呆れていた。
――大成功だな
企画者である弦十郎はその様子を見て頷く。
この修行、実は装者の強化よりも心のケアが目的であった、一般人組二人とフィーネこと了子まで修行に参加する事になったのは完全に誤算であったが。
「ようし!飯を食ったらしばし休憩、それから特訓の再開だ!しっかり休む様に!」
「やっとごはんだああああ!」
人を良くすると書いて食、特訓において栄養まで計算尽くだ、まあ消費エネルギーに見合う量だった。
「ひぎっ……こんな入らないよぉ……」
それを見てアスカは思わず弓美から借りた『暇潰し』で得たネタを披露。
「は…ハレンチな!?」
「アスカさん突然何を!?」
「アスカさんちょっと……それは」
「アスカくん……」
瞬く間に周囲は凍り付いた、まるでアザゼル型フェストゥムのクローラーがやってきたかのごとき凍り付き具合であった。
「マッキー!?ちょっ!?そのネタは」
「あら、あらあら、まだダメよそんなアニメを見たりしちゃ」
「あっアニメじゃないよゲーm……しまったぁ……」
「??」
「板場ちゃんアウトね」
突然だが、アスカはニブい、恋愛とかそういうものがわからない。
それではイカンと弓美が与えたのは恋愛ゲーム、これだけなら微笑ましいのだが、『成人向け』の文字が全てを台無しにした。
ちなみに百合作品であったとだけ記しておく。
一人、何がダメだったのか理解できないアスカであったが、とりあえず弓美の冥福を祈っておいた。