―Side 葵―
私はお兄ちゃんのことが大好きだ。両親は仕事の都合で家にほとんどいない。でも、私は寂しくなかった。だって、お兄ちゃんがいたから。私はいつもお兄ちゃんに助けてもらっている。お兄ちゃんはいつも私の味方でいてくれている。だから、私もお兄ちゃんの味方でいる。味方でいるからこそ、私は時々お兄ちゃんにも少しきついことを言う。でも、多分その時の顔は怒っている表情じゃないと思う。それは、お兄ちゃんが大好きだからというのもあると思うけれど、もう一つ。それは、お兄ちゃんのつらい過去を知ってしまったから。何もできなかったからだと思う。
そんなお兄ちゃんから昨日、家で勉強会をするという言葉を耳にしたときは嬉しかった。でも、お兄ちゃんは、友達ではなくクラスメイトと言った。私はそれが少し悲しかった。ああ、まだなんだ、そう思った。それでも私はお兄ちゃんの味方だよと大好きな兄に伝えた。
翌日になり、11時くらいにお兄ちゃんのクラスメイトが家に来た。本当はすぐに挨拶にいった方がよかったとは思ってはいたけど、私もテスト期間中だから少しでも勉強したかった。お昼時になって、リビングに降りていきクラスメイトの人たちとあいさつを交わした。そのあと、お兄ちゃんがほめてくれた。お兄ちゃんは私をほめるとき頭をなでてくれる。私はそれが恥ずかしいけどすごく嬉しい。お兄ちゃんがお昼ご飯を作り終えるまで話をしていた。一つだけ確かなことが分かった。小野優華さんはお兄ちゃんに惚れていること。なんでだろう、あったばかりのはずなのに、女の勘かな、この人にならお兄ちゃんを任せられると思った。
皆でお昼ご飯を食べた。私はお兄ちゃんの料理が好き。美味しいっていうのももちろんあるけど、温かさがある。そんな感じがする。
お昼ご飯を食べ終わった私は自室に戻り、勉強を再開した。分からないところはあとでお兄ちゃんに聞くのが一番良い。そうこうしているうちにお兄ちゃんのクラスメイトが帰る時間になった。挨拶くらいはしたかったので1階に降りて挨拶をした。お兄ちゃんは見送りに行くと私に告げて家を出た。しばらくして、お兄ちゃんが帰ってきた。
葵「おかえり、お兄ちゃん!」
優「ただいま。」
葵「クラスメイトの人たち良い人たちっぽいけど?」
優「ああ、そうだね。でもそれは最初だからそういう風に見えるだけだよ。」
この言葉に私は何も返すことができなかった。ただ、私はこれだけは伝えた。
葵「私はあの人たちは信じて大丈夫だと思う」
確証はない、けど確かに感じた何かが私にはあった。だからこそ、それだけは伝えた。
葵「あっ、お兄ちゃん。あとで英語教えて!」
優「ああ、良いよ。どこなんだ?」
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