龍狩りの金鎧 作:GP
地平線の彼方まで続く大いなる海、その海を進む一隻の船そこには今の快晴とは裏腹にとても不穏な空気が流れていた
「ガチャッ!」
軍艦に備え付けられている牢屋に入れられたのは、黒髪の少女だった、この世の者とは思えない程の美しい白い肌とスラッとした足、そして整った顔小柄ながらその瞳には目の前にいる大きな老兵を写している
「ワシは海軍本部中将のガープじゃ、今回の訓練所で起こった事件の犯人護送の任務を受けとる……。
もう一度聞くが本当にお前がやったのか?」
ガープは目の前にいる少女がスモーカーを半殺しに出来るとは到底思えなかった
「……。」
ステラは考えていた、昔の海兵達なら自分の攻撃であんなに傷つくかと
確かにステラは400年前の世界では最強の元帥と最強の海兵が揃っていた、しかしいくら一兵卒でもあんなに腑抜けた突きはしてこなかった、あんなに弱い突きは一体なんだったのか、まさかまた試していたのか?いやいやでもあんなにボコボコにされてまで耐えるだけに徹するか?
この国の海兵は一体どうしてしまったのだろうか?
あんなに弱い男が海軍大佐とは何の冗談だ?
ステラの頭には質問が絶えなかった
「ガープ中将と言いましたか?」
ステラはガープに聞いた
「あの、我々の指導を行ってくれたスモーカー大佐とは海軍ではどれ程の強さなのでしょう?」
ガープはやっと話してくれたステラを見て答えた
「そうさなぁ、少なくとも弱くは無い、しかしずば抜けて強いと言うわけではないのぉ」
ステラは暫く考えた、弱くは無くて強くも無いつまり中間層の強さ、昔の海兵が今では大佐か……笑えないな。
「つかぬことをお聴きしますが、ガープ中将は海軍で強い方ですか?」
失礼なことは承知の上だ、しかしはっきりさせておきたかった、先程海兵達がこの船には英雄が乗っていると言っていた話の流れからして多分ガープの事だろう、海軍の英雄そこまで言われる男はどれ程の強さなのか…試さずにはいられない
「ワシか~?まぁ数人を除けば今でも最強を自負しておるわ!!!」
自信満々に答える老兵を見てステラは覚悟を決めた
「では…失礼します!!!」
「メキャッ!」
突如ステラのいた牢屋の鉄格子が引きちぎれた、もちろん引きちぎった張本人はステラだった。
ステラは牢屋から飛び出るとガープの前に立った
「何と、鋼鉄の鉄格子が壊されるとは!」
ガープは両拳を握り拳骨を作った
「私の名前は、シャーナ・ステラ…海軍本部中将ガープ殿お手合わせ願いたい!」
ステラは真っ直ぐガープの事を見つめながら叫んだ、その黒い瞳にはガープの姿だけが映っていた
「シャーナ・ステラか…ガッハッハ!」
ガープは高らかに笑った
「まさか海軍史上最強の元帥と同じ名前の女性と戦えるとは、面白い!」
ガープは上に羽織っていた正義のローブを脱ぎ捨てた
「行きます…。」
ステラは拳に武装色の覇気を纏わせる
「ほぅ、その歳で武装色を使いこなすか…」
その瞬間、5メートル程離れていた筈の少女が消えた…いや違う一瞬にしてガープの懐に潜り込んだ
「ハァッーーーー!!!」
ガープの顎目掛けて放たれた高速のアッパーはかすかにガープの立派な髭を捉えたが当たるには至らない
「ヌオォォォ!!!」
ガープは下からいきなり放たれるアッパーを状態を後ろに反らすことで何とか回避した
「今のを避けますか…流石は英雄と呼ばれるだけありますね」
ステラはまたガープと距離を取った
「速いのぉ、まったく見えん歳は取りたくないわ」
ガープは額にうっすら汗を滲ませながら言った
「ガープ中将!!!」
突然甲板から牢屋へ走ってくる足音が聞こえてきた、その足音の主は頭にバンダナを巻いた男と目のところに眼帯のような物を巻いた二人の男だった
「だれですか貴方?」
ステラは二人を見つめる
「ガープ中将、ご無事ですか!」
ガープの前に立ちはだかる二人の男、一人は手に湾曲した刀を持っている
「どけい…コビー!ヘルメッポ!お前達には荷が重すぎるわい」
コビーとヘルメッポはガープの何時もと変わった真剣な眼差しから自分達は入れない戦いと悟った
「ハッ…失礼しました」
二人はガープの後ろの階段の所からこちらを様子見している
「いやぁ、すまんな~」
ガープは頭を掻きながらステラに笑いかけた
「じゃあ次は…ワシから行くぞ!」
突如ガープはステラに襲いかかった、ガープのステラの頭程ある拳骨を腹部目掛けて放つゴォォッ!と言う風切り音がステラの腹部をかする
「これは当たったら痛そうだ!」
ステラは避け様にガープの腕へ死銃を当てた、ガープの腕からは激しく血が舞う
「クゥ!舐めるなよ!」
ガープは風穴が開いた左腕をそのままステラに振り落とす、流石のステラも片手では受け止めきれなかった、脚は軍艦の床を貫いた
「重いですね…」
ステラは腕を振り払うとまた距離を取った
「なるほど、ガープ中将貴方の強さは分かりました」
ステラは武装色を解除するとガープの方をじっと見つめた
「ガープ中将、少しお話があるのですが宜しいですか?」
罪人の身でインペルダウンへ護送中に牢屋を脱獄してましてや海軍中将に怪我まで負わせた、そんな奴の話を聞いて貰えるとは到底思わない、しかし言うしかない
「えっ、良いよ」
ガープはすんなり了承した、二人は階段の横に立つ二人組の脇を抜けて甲板へ出た、空には一面の青空と大海原グランドラインそして目の前には大きな天を突くほどの扉正義の門
「ガープ中将、何で正義の門がこんなに大きいか分かりますか?」
ステラは正義の門を指差して言った
「いやぁ、考えたことが無かったのぉそれこそシャーナ・ステラ元帥が作ったと言われとるが」
ガープは目元を手で隠しながら正義の門の頂上を見た
「その理由を知りたくありませんか?」
ステラはガープに訊ねた
「知れることなら知りたいが…」
ガープは頭を掻きながらステラに言った、するとステラはまた正義の門を指差した
「その答えは頂上にあります、ついてきてください」
ステラは龍歩を使い空に舞い上がる、ガープは月歩で後を追う
「お主の技、月歩に似ておるなぁ」
ガープはステラの体術に目を凝らして何回か真似しようとしたが出来なかった、暫く飛び続けると頂上についた
そしてその光景にガープは目を疑った
「なんじゃ……こいつは!!!」
そこに有ったのは白骨化した巨大な鳥の骨だった、しかも一つ二つではなく無数に転がっていた
「その骨はドラゴンの骨…昔、いや今から400年前の悪の象徴です」
ガープは暫く言葉を発っせなかった、信じてはいたがこんな所に本当にいたと言う証拠が有ったなんて
「この景色を見てください」
ステラとガープは正義の門から三つの門を見えた、するとその三つの門の海の間にうっすら黒い影が見えた
「なんじゃ、三つの門を繋ぐ影?」
ガープは首をかしげた
「正義の門、確かにこれは正義の門と呼ばれていたけど門があるのに何か無いものが有るんじゃないですか?」
ステラの質問にガープは驚愕した、確かに足りないものが有ったそして今は見えない、しかしここから見ると明らかにあったで有ろう痕跡が見てとれる
「あの影は……城壁か?」
ステラは頷いた、400年前正義の門は分断されていなかった全ての門が繋がって進入不可能の要塞とされていた
「400年前今はエニエス・ロビーと言われる場所は普通の島でした、民間人達が住むごく普通の町そしてドラゴン襲撃時に避難島として使う島。
インペルダウンを作ったのもシャーナ・ステラです、なぜ海底に作られたと思いますか?」
ガープは直ぐに答えた
「能力者をとじ込める為じゃろ?」
ステラは首を横に振った
「海底と言うのはもしドラゴンが逃げ出しても壁に穴を開ければ水圧で殺すことが出来たからです」
ガープは分からなかった
「この三つの重要な拠点を守るために作られたのが正義の門とその城壁でした」
ステラは各場所を指差しながら言った
「今はもう朽ちて海底へと崩れ落ちたようですけど」
ガープは首をかしげた
「なぜお主がそんなことを知ってるのだ?」
「…。」
ステラは暫く考えた後口を開いた
「元海軍本部元帥シャーナ・ステラ、それは私の前世の名前です、しかしそれは転生した今もはっきりと覚えています、あの凄惨を極めた戦いも……。」
ガープはステラの顔を見た、すると暫くするとそっと膝をステラの前で着いた
「えっ!あのガープ中将?」
ステラは慌ててガープを見たその顔にはうっすら涙が浮かんでいた
「ステラ元帥…信じましょう我らが海軍の英雄を」
ガープは膝を着いたままステラに頭を下げた
「あの、ガープ中将頭を上げてください」
ステラはオドオドしながらガープを見た
「是非良ければあの戦いをお聞かせください、本人からあの戦いを!」
ガープの熱意にステラは負け≪マリンフォード防衛戦争≫の中身を話した、ガープはじっとステラの話に耳を傾けていた
「これが、マリンフォード防衛戦争の真実です」
話が終わるとガープはステラにこう言った
「ありがとうございました、貴方のおかげで今の世界があります」
その言葉を聞いてステラは胸が熱くなった、死んでいった数々の兵士たちの何よりの追悼の言葉だった
「所で元帥!400年前の世界に私がいたら何匹程のドラゴンを殺れたでしょうか?」
ガープは真剣に聞いた
「そうですね~、あともう少し丁寧に戦えると20匹は行けたんじゃないですかね」
ステラは正直に答えた
「20ですか、ステラ元帥はお一人でゴーノと200のドラゴンを倒された、まだまだ修行が足りないですな」
ガープはガッハッハと高らかに笑った
「じゃあ受けてみます?私の全力の拳をその方が目標が分かりやすいのでは?」
ステラは冗談混じりにガープに訊ねた、するとガープは暫く考えた後服を脱いだ
「是非良ろしければ!!!」
ガープは腹部に武装色の覇気を溜めた
「えっ!本当にやるんですか!」
ステラは冗談だと言ったがガープはヤル気満々で武装色をため続けている
「絶対に一発は耐えきります!」
ガープは歯を食い縛った
「分かりました、では行きますよ≪武装色・硬化プラス鎧塊≫」
ステラの拳が赤黒く染まり鱗のような模様が浮き上がる
「手拳≪黒槍≫!!!」
ステラの腕は漆黒の槍となってガープの腹に突き刺さる
「グオオォォォォォ!!!」
ガープは20メートル程後ろに吹き飛んだ
「大丈夫ですか?」
ステラの呼び掛けにガープは答えた
「耐えきりました」
ガープは笑顔で答えた
「ハハッ、やりますね」
ガープとステラは船に戻るとスモーカーの意識が戻ったと聞いた
「たった今、インペルダウン収監が取り消されました」
ステラとガープはインペルダウンからマリンフォードへ逆戻りとなった
戻って直ぐに現元帥・センゴクに会うことになった
「やぁ、君がスモーカーを倒したと言う少女か?」
ステラのすぐ側にはガープがいる
「はい、センゴク元帥」
ステラは敬礼の体勢をとる
「いやいや楽にしてくれ、さて今回呼び出したのは他でもないスモーカーの件だ」
センゴクはステラを睨む
「話の流れは大体スモーカーから聞いとる、だがあんなに大勢の訓練生の中、大佐がボコボコにされたとあっては海軍のメンツに関わる」
ステラは負けじとセンゴクを見る
「じゃから、お主は訓練生から准将の地位を与える」
いきなりの昇格にステラは言葉を失った
「イヤッ!私はまだ訓練生ですよ?なのに准将ですか?スモーカー大佐より上の地位じゃないですか!」
ステラの言葉はその通りだ訓練生からいきなり准将とは昇格にも程がある
「君の困惑も勿論分かる、しかし君は訓練生の目の前で倒してしまったんだ、これを払拭するには≪あの訓練所に実は訓練を視察するため本部の准将が参加していた≫とするしか無いんだ、何とか納得してくれ」
ステラは暫く考えた後、自分がしたことだから責任は取らせて貰いますと言って了承した
「さぁ、では准将殿には早速任務を言い渡す」
それはそうだ准将ともなったら任務を遂行しなければいけない
「君にはドラム王国に行って貰う、先日から通信が途絶えているのだ、何かあったのかも知れない」
ステラは敬礼の体制を取り部屋を出ようとした
「あぁ、ステラ准将君には部隊を預けなければいけない、本部の武器管理庫そこに君の部隊がある」
ステラは分かりましたとだけ言って部屋を後にした、マリンフォードに出るとステラはマリンフォードの裏の海岸に向かった、そこには大きな岩で閉ざされた洞窟があった
「おぉ~、フラム君ちゃんと約束通り塞いで置いてくれたんだ」
ステラは洞窟へと続く道の大岩を粉砕した、そして暗く光の入らない漆黒の道を手に持っている松明のみで照らして歩く、暫く歩き続けると道が開けて広大な地下空間が現れた、その場所は薄明かりが灯っているどうやら天井に張り付いた光苔が鈍い明かりを放ち少ない光をこの空間に灯している
「はぁ、ここはいつ来ても気持ちが高ぶる」
ステラの目の前に広がるのは400年前の悪の象徴そして正義の為に戦った兵士たちの武器の数々まさにここは≪ドラゴンの墓場≫
「やっぱりあれが要るな…」
ステラはドラゴンの骨を踏みつけながら中心の石で出来た神殿の様なところへ向かった
「久し振り、金角龍・ゴーノそして金鎧≪ガルム≫金武≪龍鎚≫」
そこにはステラ自身が倒したゴーノの死体とそれから作り出した最強の武具が封印してあった、ゴーノの死体は未だ朽ちずその二つの金角は輝き続けている
「また…戦い合いたいねゴーノ」
ステラはゴーノにそう言うと鎧と武器を身につけた
「私はまた戦うよ、今回はドラゴンじゃないけどね」
そう言うと墓場を後にした、金色の少女はセンゴクに言われた通り武器管理庫に向かった、その扉には武器管理庫・第一遊撃隊の文字があった、ステラは深呼吸すると勢いよく扉を開けて入っていった
「今日から第一遊撃隊の隊長になったステラ准将ですよろしくお願いします!」
次回こそ、次回こそは原作に入ります!