龍狩りの金鎧 作:GP
時は400年前、人間は地上の王に君臨していた…しかし空にはより大きな脅威があった
その皮膚は岩より固い鱗に覆われ、その爪は鎧を易々と切り裂く、その背中には空を覆う程の翼が生えている、そしてその禍々しき口からは炎や雷を吐いたと言う
人々は空の王をこう呼んだ≪ドラゴン≫と
400年前…マリンフォード…
「コンコン!失礼します…元帥宜しかったでしょうか?」
ドアをノックする若い海兵が扉の前で中に居るであろう人物に許可をとる、その顔は暗く目にはうっすら涙を溜めていた
「あ、は~い大丈夫だよ~」
しかし部屋の中から聞こえてくるのは若い海兵とは真逆の雰囲気を持った声だった
「失礼します…」
そう言って部屋に入る
「お~、フラム君どうしたの~?」
海兵の前にある立派な椅子に腰を掛けているのはまだ20歳になるか成らないか程の少女だった
「本日明朝、イーストブルーの一つの町が例のドラゴン軍団に壊滅されました、今回も先頭はあの金角龍だったそうです」
するとさっきまでフワフワしていた元帥の顔つきが代わる
「そこに駐在していた海兵隊はどうなったの」
海兵は頬に涙を濡らしながら
「海兵隊1000名、最後まで一人も逃げずに戦い抜いたそうです、海兵隊は1000名全て殉死しました」
元帥と海兵は暫く下を向いていた
「わかった、殉死した海兵達の名前を一人残さず石碑に書き留めて、家族には私が直接謝罪しに行きます」
元帥は立ち上がり早速職務に移ろうとするとそれを海兵が止めた
「それともう一つ伝言を承っています、海軍元帥シャーナ・ステラ急ぎマリージョアに参集すべしと天竜人からです」
するとステラはため息を一つつき
「わかりました、では私が帰るまでに名前の確認をお願いしますね」
そう言って部屋を後にした
「何なのこの忙しい時に!!」
ステラはバルコニーにでた
「ハァッ…龍歩!!!」
その時、バルコニーから飛び降りる
しかしステラは落ちるのではなく逆に空へと舞い上がる
「さぁーてと、行きますか!」
ステラが使うのは大槌だが使える体術の中には6式と言うものがある
1、龍歩
2、鱗剃
3、鉤脚
4、鎧塊
5、死銃
6、龍王銃
今使ったのはそのうちの一つの龍歩、高速で飛び回るドラゴンに追い付く為にステラが生み出した体術の一つだ
ちなみにステラ直属の部隊≪滅龍隊≫は全員これらの体術を一つは保持している。
暫く飛び続けるとレッドラインが見えてきた
「さぁ、ついた」
ステラはマリージョアに降り立つと急いで応接室へと向かった
「海軍本部元帥…シャーナ・ステラお呼びと聞き参上しました」
すると応接室の扉が開き中から醜い男が手招きしている
「おそいえ!早く入るえ!」
ステラはお辞儀すると天竜人と思われる男の前へでた
「いつ見てもかわいいえ~、早くわちしの妻になるえ!」
天竜人からの誘いを受けるのも仕方がない
美しく艶やかな黒髪に怪しく光る黒い瞳、身長は150㎝程で大きくは無いが体は引き締まりスラッとした正に完璧な女性だった
「何度も申し上げていますが私は海軍本部元帥です、いくらあなた様の申し出でもお受けすることは出来ません」
いつものように断ると天竜人はフンッと鼻を鳴らし本題へ入った
「お前にドラゴン共の討伐を命令する、最近飛び回っているあの金色のドラゴンの軍団だ」
ステラはやはりかと言った表情をした
「ハッ!しかしドラゴン軍団の出現地点を予測するのは難しいかと」
ステラが言うと天竜人はまたフンッと鼻を鳴らし
「知らないえ、それはしもじもが考えることえ話は以上え帰るえ」
ステラは天竜人に頭を下げると部屋を後にして外へと出た
「やっぱりこの命令が出たか…早く帰らなくちゃ」
ステラは俯き何かを考えていた雰囲気だったが直ぐに前を向き空へと飛び上がった
暫く飛ぶとマリンフォードが見えてきた、何やらあわただしく人々が動き回ってる
「ねぇ何かあったの~?」
ステラは一人の海兵を捕まえると話を聞いた
「何ってお前……あ!これは元帥殿失礼しました、急ぎ作戦会議室へお向かいください!」
海兵にうながされるままステラは廊下を歩き作戦会議室へ向かった、先導している海兵の足取りはとても焦っているように見えた。
そして海兵が会議室の扉を開けると海軍の重役が揃い踏みしている
「あれー、皆こんなに集まってどうしたの~?」
ステラが訪ねると現海軍攻撃長が口を開いた
「報告します、今までのドラゴン軍団の攻撃進路を考えた結果、奴等の向かっている場所が見つかりました」
それはステラが頼んでおいた調査内容だった
「奴等の進路はここマリンフォードです、今までの破壊されてきた町はマリンフォードから一直線上にあるものでした」
その答えにステラは少し納得していた、ドラゴンの一番の宿敵は餌を狩るとき一番邪魔してくる海軍だった、ならその海軍のアジトを破壊すれば邪魔する奴等は居なくなる訳だから
「それともう一つ、奴等はもうグランドラインを抜けてこちらに向かっているそうです、ここから直線上にもう島は有りません」
回りの海兵達は震えたり涙を滲ませていた、しかし唯一落ち着いている人がいた
「あぁ、フラム君いつものちょーだい」
ステラだステラは部屋の番をしていたのは朝報告に来たフラムと言うまだ若い海兵に何かを頼む、するとフラムは何処かへ向かうと直ぐに帰ってきた
「こちらで宜しかったですか?」
フラムの手にはなにやら飲み物の様なものがあった
「これこれ~、ライム100%ジュース!」
ステラはグラスに添えてある筒に口を着けジュースを飲んだ
「あぁ~おいしいな~」
ステラは一息着くと話始めた
「あのさ~、外に全海兵集めて~大事なお話をしなきゃね」
ステラがそう言うと攻撃長は頷き直ぐに放送が入った
≪マリンフォード全海兵に次ぐ急ぎマリンフォード中央広場へ集合せよ繰り返す……≫
放送が止むと直ぐに海兵達は中央の広場へ集まって来た
「総員注目!!!これより海軍本部シャーナ・ステラ元帥よりお話がある!!!」
その声にステラは椅子を立ち上がりバルコニーへ出る、下にはマリンフォードの全海兵が集結している
「みんな~集まってくれてありがとう、みんな知っていると思うけど海軍本部元帥シャーナ・ステラです、みんな何で呼ばれたか薄々分かってるんじゃないかな~と思います」
ステラの言葉に少なからず広場はざわつく
「ここに今ドラゴンの大編隊が向かってきてます、その数1000匹を越えます」
元帥からの言葉に海兵達の不安は確信へと変わった
≪やっぱり本当だったんだ!≫
≪俺の町も焼かれたんだ!≫
≪無理だ…逃げよう!≫
様々な不安を表す言葉が飛び交う中一つの言葉が不安を断ち切った
「逃げてどうなる?」
ステラの言葉だった
「確かにドラゴンは怖い、仲間も何人も殺られた…けど私達が逃げたらどうなるの?ドラゴン達は帰ってくれる?違う
今度は今までの以上の虐殺が行われるわ、大切な家族を殺され自分だけが助かる未来を望むか?」
ステラの言葉に海兵達は下を向いた
「それで良いの?あなた達は何?偉大なる海グランドラインの守護者じゃないの?海兵がじゃないの!
私は命を賭けてこの戦いに望むわ、大切な家族を守るために…あなた達はどうする?無理強いはしない」
するとどこらかともなく声が聞こえてきた
≪守りたい…そう思って海兵になった≫
≪殺させない…海軍の誇りを見せてやる!≫
そんな言葉がそこかしこから飛び交う
「ドラゴンの軍団と戦う意思のあるもの達はこの紙に署名しなさい、あなた達が勇敢に戦った様を息子、娘、孫そして子孫に示しましょう!!!
ドラゴン共に見せてやれ!海軍の誇りを!人間の力を!」
≪海軍万歳!!!ステラ元帥万歳!!!海軍万歳!!!ステラ元帥万歳!!!≫
「奴等がここにたどり着くのは3日後、それまでに備えをしましょう!」
そしてステラが出した署名にはマリンフォード海兵5万8千300名全ての名前を確認した、その字の中に震えた文字は無く力強い海兵の文字があった
「さぁ、準備を始めましょう」
ステラはマリンフォードまでの海に一定の間隔で小型船を置いた、ドラゴンは船を見かけると構わず攻撃する習性が
あるため船に火薬と発色剤を混ぜて探索船にした、攻撃すると爆発と煙が上がるので来たら直ぐに分かる
湾内には大砲を用意した、しかし発射するのは弾では無く鉄で編んだ大きな網だ
ドラゴンの鱗は固い為に大砲ごときでは貫くことはできない、その為地面に落としてから体の柔い部分を攻撃するのだ
「両脇の塔には巨人族の巨大バリスタを配備して、これならドラゴンの鱗も貫くことが可能なはず」
着々と準備が整ったそして等々3日目勝負の時が来た
「報告します、只今正義の門前に用意していた探索船が爆発しました、奴等が来ました!」
回りに緊張が走る
「捕縛弾装填、バリスタ用意!!!」
1分後奴等が現れた
≪ゴアァァァーーーーー!!!≫
大地を震わせる咆哮と共に一体のドラゴンが突っ込んでくる
「来るぞーー!!!」
海兵達が身構えると一人の黒髪が空を舞いドラゴンの羽を切り落とした
「ハァーーーッ鉤脚!!!」
ステラだ、ステラが放った強力な衝撃波は刃となってドラゴンの羽を切り落とした
「落ちろトカゲが!」
ヒュルヒュルと落ちていく片方の羽を無くしたドラゴンは地面に呆気なく落ちた、しかし空の王の強さは羽だけではない、地に落ちたドラゴンは体を持ち上げ大きく息を吸った
「させるかーー!!!」
空から急降下してくるステラは持っている大槌を振りかぶりドラゴンの頭へ降り下ろした
「ゴシャッ!」
鈍い音を立て崩れ落ちるドラゴンには最早頭は無かった
「一歩も引くな、先陣は滅龍隊がうけおった!ここで引いたらマリンフォードは壊滅だ!」
ステラの言葉に海兵達は大声で答えた、すると空の上で待機していたドラゴン達も怒号を響かせる
「仲間が殺されて悲しいか、今度はお前達の番だ!捕縛弾、バリスタ打てーーー!!!」
ステラの言葉と同じくしてドラゴンの中心に陣取っていた金色のドラゴンも吼える
「ゴアァァァーーーーー!!!!!!!!」
第一陣のドラゴン部隊と捕縛弾、バリスタが衝突する次々に地面に落とされるドラゴン、それを蟻のように群がり殺しに掛かる滅龍隊と海兵達
そして第一陣の砲を逃れたドラゴン部隊は空から炎や雷を雨のように降らしてくる
こうして後世に語り継がれる≪マリンフォード防衛戦争≫が始まった
「さぁ、殺りましょうドラゴン部隊の長≪金角龍・ゴーノ≫」
戦いは4日続いた…ステラはドラゴンの長、金角龍・ゴーノと3日間戦い続けた、左足と右腕を噛み千切られながらも何とか首を切り落とし勝利した、しかし後ろにはまだ戦い続けている仲間達がいる
「行かなくちゃ…」
ステラは大槌を左足の代わりにしながら戦いの渦へと身を投げた、そこからは本当に総力戦だった…身を焼かれる海兵、地に落とされ体をボロボロにしながらも抵抗を続けるドラゴン
そして4日後とうとう最後のドラゴンが仕留められた
「ハァッ!」
「ゴシャッ!」
ドラゴンの頭を潰す感覚、やっと終わった…仲間は何人残ったのだろうか、辺りにはところ狭しと横たわる海兵とドラゴンの死体……最早生きている人がいることは考えられない、マリンフォードの城の壁面に描かれている≪正義≫の文字は血に染まりところどころにドラゴンが張り付いたまま絶命している
「誰か…いないの?」
ステラが囁くように呟く、ふと足元を見る…攻撃長の骸が横たわっていた
「ス…ステラ…元帥ですか?」
声のする方を見ると全身焼けただれた男がこちらを向いている
「あなた…フラム君?」
そこには3日前とは姿形が変わったフラムの姿があった
「はい、生き残った者達は本部の地下へ今集結しています、元帥も来てください」
ステラはフラムに肩を借りながら本部へとたどり着いた、そこには皆体の一部を失ったもの達が多くいた
「みんな、私が…私のせいで!」
ステラは海兵達の前で崩れ落ち、涙を流した
「元帥、我々は我々の未来の為に戦ったのです、これから生まれてくる子供達の為にその子孫の為に、誰もあなたのせいだとは思っていません…逆にあなたのお陰で救われたありがとうございますステラ元帥!」
その言葉はステラの心を軽くした
≪ありがとうございますステラ元帥≫
≪ありがとうございます!≫
≪海軍万歳!!!ステラ元帥万歳!!!…≫
それから一カ月後
「ステラ元帥、ご要望の品が完成しました金角龍・ゴーノの鱗で作った鎧≪ガルム≫と骨と牙そして鉤爪で作った新しい大槌≪龍槌≫です、朽ちず錆びず壊れない最強の鎧と矛です」
グランドライン一の刀匠に作って貰った武具を身に付ける、金色に輝く鎧、頭にはドラゴンの角を施してある、大槌≪龍槌≫は持ち手と柄にはゴーノの骨が使われておりけして折れず曲がらない、上にはゴーノの鉤爪が付いており叩き潰すことも切り裂くこともできる下には牙が付いておりどんな岩だろうが貫きそうだ
「ありがとう、大切にするね」
ステラは店を出ると本部へ向かった本部の地下にドラゴンの死体を運んでいるのだ二度と人の目に届かないように恐怖の象徴を正義の象徴で逃がさないように
「入り口はここだけにしましょう、他の入り口は閉じてこれを知るのは元帥の宿命よ…」
ステラはゴーノの鎧≪ガルム≫とゴーノの大槌≪龍槌≫を一緒にドラゴンの墓場へ供えた、二度とこの鎧と武器を手にする人が出ないことを祈って
それから3日後シャーナ・ステラ傷の影響で死去
≪マリンフォード防衛戦争≫
参戦兵…5万8千300名
死傷者…5万5千800名
生存者…2千500名
民間死傷者…0名
指揮官…シャーナ・ステラ元帥≪龍狩りの姫≫戦死
次期元帥…シャーナ・フラム
こんな感じで書いていきます、次回から本編