ファンタジーな子守り   作:グランド・オブ・ミル

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5.クリストリア

 

 

 

 

 

 

 

ルルは現在さっきの少年達と一緒にレムの村へ向かっていた。その道中、この世界について二人から説明を受けていた。ルルがこの世界について何も知らないと知ったとき、二人が奇異な表情を浮かべたため、ルルはとっさに自分がド田舎の箱入り娘だったとウソをついた。

 

まず、少年達は茶髪で剣を持った活発そうな少年がライガ、黒髪で弓を持ったほうがアークというそうだ。

 

二人が言うには、ここは科学ではなく、魔法文明が発達した世界で、名を「クリストリア」というらしい。この名には"輝く世界"という意味が込められているそうだ。

 

「そのまんまだね。」

 

「ん?何か言った?」

 

「あ、いや!何でもない何でもない!続けて!」

 

ポツリと呟いた独り言をアークに聞かれ、ルルは慌てて話題を戻す。学生時代からドラえもんと一緒にいたせいで、彼女は思ったことをポツリとしゃべってしまう癖がついていた。ドラえもん曰く、これは"口が悪い"というらしい。

 

アークに変わって今度はライガが説明を続ける。ライガ達がやってきたのは、レムの村よりさらに進んだ所にある都市「ブランカ」。そこはこの辺の地域の冒険者が集まり、冒険者の戦利品で賑わう冒険都市なのだそうだ。

 

冒険者というのはあれだ。ファンタジー系のラノベを読む人にとってはお決まりの、魔物と戦い、人々を助け、お金をザクザク稼ぐあれだ。ライガ達はそんな冒険者に憧れて、1年前、古里の村から剣と弓を引っ提げてブランカにやって来たという。冒険者というのはランク付けがあって、下からE,D,C,B,A,S,とあるそうだ。世間一般ではSが最高位と言われているが、世の中上には上がいて、SS,SSS,とか化け物レベルの冒険者もいるそうだ。だが、そんな奇才は国が軍事力として使用するため、軒並み王城で贅沢な暮らしをしているため、表にはめったに出てこないそうだ。

 

ライガ達は、1年間の努力が身を結び、Dランクへランクアップを果たして、晴れてモンスターを狩れるようになったらしい。冒険者は新米の無謀行為防止のため、ランクによってやれる依頼を制限されていて、最低ランクのEランクはモンスターと戦うこともできないそうだ。やっとモンスターを狩れるようになった二人は早速遠出し、ゴブリンの群れ(ちなみにルル達を襲ってきたモンスターはこのゴブリンらしい)を討伐した所であのホワイトベアーに襲われたようだ。ホワイトベアーはCランクの冒険者のパーティが狩るモンスターらしい。

 

「こんな所だ。ルル、分かったか?」

 

「うん、大体は。あと分からないことがあったらその時に知っていく。」

 

「そう、良かった。じゃあ今度はルルのことを教えて。」

 

「へ?私?」

 

「そうだ。ホワイトベアーを手なづけるなんて、お前、あの時何をしたんだ?」

 

ルルは両隣から注がれる視線にたじろぐ。アークは期待の眼差しで、ライガはどこか疑うような視線をルルに向けていた。

 

「これを使ったんだ。桃太郎印のきび団子。この団子に含まれる特殊な成分が食べると同時に動物の脳髄に届いて………ってあれ?」

 

「「??」」

 

ルルはポケットから桃太郎印のきび団子を取りだし、自慢げに道具の説明をするが、ライガとアークは頭にはてなを浮かべ、何も分かっていないようだった。魔法文明の世の中で生きてきた彼らには今の説明でも難しかったらしい。そこでルルは理解しやすいように説明を変えた。

 

「ま、私の魔法さ。」

 

「すごいよ!ルル!そんな魔法使い聞いたことない!」

 

「あぁ、俺もそんな魔法は聞いたことない。っと、見えたぜ。あれがレムの村だ。」

 

アークがルルの誤魔化しに目を輝かせた所でライガが目の前を指差した。そこには草原の中でポツリと佇む決して大きくはないがのどかで静かな村が広がっていた。

 

「……いいところだね。」

 

「だろ?俺達も昨日ここに泊まったんだ。ブランカはこの村から延びてる一本道を進んだ所にある。」

 

ルルはライガの説明を受けながらレムの村に入った。村の中では桑を担いだ男が畑を耕したり、子供達が走り回ったりしていた。子守りロボットであるルルは子供達が元気な様子を見て思わず頬を緩める。

 

「ここはたまに襲撃するゴブリンさえ気をつけりゃ比較的平和な村だ。」

 

「…えぇ、それは見ればわかる。」

 

「?」

 

ライガの話も聞かず、ルルは子供達をじっと見つめていた。子供がこれだけ元気に楽しそうに遊んでるというのはここがいい村だという何よりの証拠だ。

 

「きゃっ!」

 

鬼ごっこをしていた子供達の内、小さい女の子がドテッと転んだ。女の子はひざを擦りむいたらしく、道の真ん中でえんえん泣いている。

 

「君、大丈夫?」

 

子守りロボットのルルはその女の子に駆け寄った。ルルはポケットから「お医者さんカバン」を取り出す。

 

「ちょっと染みるけど我慢してね。」

 

ルルはお医者さんカバンから取り出した消毒液をガーゼにつけて女の子の傷口にぽんぽんとつける。そしてその上からドラえもん印の絆創膏を貼って治療完了だ。

 

「お姉ちゃんありがとう!」

 

「クヒヒ、今度は気をつけてね。」

 

女の子はルルに手を振って走っていった。ルルがライガの元に戻ると、ライガはまたしても驚いていた。

 

「驚いたな。お前治療もできるのか?」

 

「少しだけね。これも私の魔法だよ。」

 

「どんだけ多才なんだお前は。」

 

ライガは呆れて溜め息をつく。ルルは今更科学技術の賜物ですなんて言えないなと思い、と苦笑していた。

 

「ね、ねぇ!ルル!!」

 

その時、後ろからルルを呼ぶ声がした。ルルが振り向くとアークががしっとルルの手をつかんでこう言った。

 

「僕達と冒険者やらないっ!?」

 

「……………はぁ?」

 

アークの誘いにルルは困惑した声を出した。

 

 


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