ファンタジーな子守り   作:グランド・オブ・ミル

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4.少年達

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン……ドォン……

 

「うぅ……ん……。何の音?」

 

バキバキバキ……!

 

「へ?わぁぁぁ!!」

 

次の日の朝、私は大きな音と共に揺れるキャンピングカプセルで目を覚ました。私が目を擦りながらむくっと起き上がるとキャンピングカプセルは音を立てて倒れた。

 

「ドラ!!ドラドラ!!」

 

「どうしたの!?わっ!!」

 

ミニドラに急かされてカプセルの窓から外を見ると昨日の化け物が私達を取り囲んでいた。今度は一匹や二匹じゃない。昨日の化け物は群れを引き連れて私達を襲いに戻ってきたらしい。

 

「あはは……これはこれは、団体様のお越しで……。」

 

「ドラララ……。」

 

化け物達は斧やら錆びた剣やら槍やらを構えて私達にじりじりとにじり寄ってくる。私とミニドラは互いの顔を見合って苦笑いを浮かべた。そして……

 

「逃げろ~~っ!!」

 

「ドラ~~!!」

 

「「「キシャアッ!!!」」」

 

二人揃ってタケコプターで一目散に逃げた。化け物達は奇声を上げながら後を追いかけてくる。さすがにあんな集団の化け物と戦う勇気は私にはない。私とミニドラは化け物共を振り切るまで全速力で逃げ続けた。

 

 

 

 

「あ~、ひどい目にあった…。ミニドラ、もう戻って良いよ。」

 

「ドラ~…。」

 

ミニドラは肩で息をしながらポケットの中に戻っていった。

 

「さて、また今日も探シマリスで……ってあれ?」

 

ポケットから探シマリスを取りだそうとした時、私は周りの景色がだいぶ変わっていることに気がついた。昨日までどこまで進んでも森、森、森だったが、今いる所は森ではあるものの、ある程度整備されている。長い間ほったらかしなのか雑草が生え放題であったりと荒れているが、それでも人の手が加えられた跡がある。

 

「もしかしてこの近くに人間が……お?」

 

私は道の端に立てられた看板に気づいた。近くの木のつるが絡み付いている古い矢印の形の看板だ。私はつるをはらって看板に書いてある文字を読んでみた。案の定、看板には丸やら四角やら三角やらの訳が分からない文字が書いてあり、読むことなどとてもできなかった。

 

「"ほんやくこんにゃく"!」

 

私はすかさずポケットからプルンとやわらかいこんにゃく型の道具を出した。このほんやくこんにゃくは食べると外国語や宇宙人語、古代語などあらゆる文字や言葉をほんやくできるようになる道具である。

私はほんやくこんにゃくを一口食べて改めて看板を読んでみた。看板には『この先"レムの村"』と書いてあった。看板を読んで私は喜びに打ち震えた。ようやく、ようやく、人が住んでいる所を見つけることができた。これを喜ばずして何とする。

 

「走れーー!!」

 

「ん?」

 

私が内心で狂喜乱舞していると、レムの村の反対の方の道に、森から二人組の少年が飛び出してきた。一人は赤みがかった茶髪の少年で、腰に剣をぶら下げ、いかにもRPGゲームの主人公の初期装備ですと言わんばかりの服を来ている。もう一人はお前日本人かと聞きたくなるような見事な黒髪で、茶髪少年と似たり寄ったりの服を来て、背中に矢を数本入れた筒を背負い、手には弓を握りしめている。二人とも必死の形相で全速疾走してこっちに向かってくる。

 

「そこの人も早く逃げてーー!!!」

 

「グォォォーーー!!!」

 

黒髪の少年が私に向かってそう叫んだ。と、次の瞬間、森からおよそ5メートルはある巨大な白い熊が雄叫びを上げながら飛び出してきた。見た目だけ見ればホッキョクグマにそっくりなその熊だが、とにかくデカイ。ホッキョクグマの大きさは最大でも3.4メートル程だ。だが目の前の熊はそれを遥かに上回る。加えて目を赤く光らせよだれを垂らしながらドスドスと駆けてくるその様子は尋常ではない恐怖を感じさせる。

 

「何やってんだ!!早く逃げろ!!」

 

茶髪の少年が私にそう叫びながらすれ違った。二人はそのままレムの村の方へ走っていく。二人の言う通りここは逃げるべき場面なのだが、ここで逃げると私達はこの熊を村に連れていくことになる。せっかく見つけた人里を熊に襲わせるわけにいかない。私は素早くポケットから道具を出した。

 

「"桃太郎印のきび団子"!それっ!」

 

桃の絵がプリントされた網から団子をひとつ取って熊の口目掛けて投げた。その団子は熊の口に一直線にとび、見事入った。団子を食べた熊は血走っていた目がとたんに黒くなり、私の前で止まると甘える猫のように私の顔をなめてきた。私はその熊の頭をよしよしと撫で、森に帰るように言った。熊は頷くとのしのしと森に帰っていった。このように桃太郎印のきび団子を食べた動物は食べさせた人になついてどんな命令もしたがってくれるようになるのだ。私はふぅーっと息をついて改めて村に行こうと振り返った。

 

「う、嘘………。」

 

「ホワイトベアーを……手なづけた……。」

 

そこにはさっきの少年達が顎が外れる程口を開けて驚いていた。

 

 

 


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