ファンタジーな子守り   作:グランド・オブ・ミル

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3.夜の森

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ちょっと、待って…。」

 

私が息切れしながら前を走る探シマリスに声をかけるとリスはその場に立ち止まって私を振り返る。私は膝に手をついてはぁはぁと息を整えた。探シマリスで人を探し始めてかれこれ数時間、ぶっ通しで歩き続けた私の体力はもう限界だ。見れば辺りはもう薄暗くなってきた。今日はこの辺で寝るとしよう。

 

「ねぇ、本当に人がいる場所に向かってる?」

 

「(コクコク!)」

 

「そう、ご苦労様、明日もお願いね。」

 

私の質問にリスは自信たっぷりに頷き、私のポケットに入ってくる。リスは自信満々なようだが、歩いても歩いても見えるのは木と草ばかり。正直進んでいるのかすら怪しくなる。

 

「え~と、確かこの辺に……あ、あったあった!"キャンピングカプセル"!」

 

探シマリスをしまった私はポケットからテニスボールにピンをつけたような道具を取り出す。キャンピングカプセルを地面に挿すとむくむく大きくなり、やがて眺めのいいキャンプハウスになった。私がハウスの柱をトンと叩くと上からエレベーターが降りてくる。

 

このキャンピングカプセルは山などにキャンプに行った時に使う22世紀のテントだ。柱一本でハウスを支える高床式住居になっているので獣の心配もいらないし、テントでありながらベッドに浴室、トイレまで完備されている。

 

カプセルの中へ入り、トイレの水を流したり、浴室の蛇口をひねってみると問題なく機能を発揮した。しばらく使ってなかったからちょっと不安だったが、ちゃんと使えるようだ。

 

ぐぅ~……

 

「うっ……次はご飯か。"グルメテーブルかけ"を使うのもいいけど、この世界の食べ物にも慣れておかなきゃいけないな。」

 

グルメテーブルかけは注文した料理が何でも現れる便利な道具だ。それを使えば食べ物には困らないが、私は余程の奇跡が起きない限りこの世界で一生を過ごさなければならない。この世界の食べ物も知っておく必要があるだろう。

 

私はエレベーターに乗ってハウスから再び森へ降りた。辺りはもう薄暗い。東の空はほとんど真っ暗、西の空の少しオレンジかかっている程度だ。食べ物を見つけるならさっさとしなければ。

 

「おーい、出ておいで!」

 

「ドーララ♪」

 

私がポケットに声をかけると中から小さな赤いドラえもんが元気よく飛び出してきた。"ミニドラえもん"、通称"ミニドラ"だ。ドラえもんの小型版で私達子守り用ロボットのお助けロボットだ。体が小さく、「ドララ」とものの頭文字しかしゃべれないが、結構頼りになるやつで、私達が故障した時に体の中に入れれば修理もしてくれる。

 

「ミニドラ、見ての通りもう日が暮れそうなの。急いで何か食べられそうな物を見つけてきて。」

 

「マーマー!」

 

「あまり遠くに行っちゃダメだよ。迷子になるからね。」

 

「ワーワー!」

 

「分かってる」と胸をドンと叩いたミニドラは早速森の中へ消えていく。私もミニドラと反対の方向を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しいたけによく似たキノコが6つに赤い木の実が4つ。まあ、急いでたしこんなものかな。ご苦労様ミニドラ。」

 

「ドーララ♪」

 

私が頭を撫でるとミニドラは気持ち良さそうに身じろぎした。私は早速焚き火を焚いて二人で見つけたキノコを焼き始める。色々調べてみたがどちらも毒素反応はなかったので食べても問題ないはずだ。万が一あったとしても体内の抗体ロボットが大概は何とかしてくれる。

 

「いっただきま~す!」

 

「ドララッタ!」

 

私とミニドラはホカホカに焼けたキノコを同時にパクっと食べた。うんうん、味はそれほど悪くない。野生だからかいつも食べていたスーパーのキノコより味が濃い気がする。おいしい。キノコを食べ終えた私達はデザートに木の実を口に放り込む。ラズベリーに少し酸味を強くしたような甘酸っぱい味が口に広がってこれまた美味なものだった。

 

「ド~ララ……。」

 

少々物足りない夕食を終えるとミニドラが体を伸ばしながら大きなあくびをした。

 

「キヒヒッ、眠くなっちゃった?じゃあ早いけどもう寝ようか。」

 

「ドラ……。」

 

私は力なく返事をするミニドラを抱っこしてキャンピングカプセルに向かう。そしてエレベーターを下ろそうとしたその時だった。

 

ガサッ…

 

「ピクッ)……何かいる。」

 

「ドラ?」

 

遠くの草むらが揺れる音がした。神経を研ぎ澄ませば1体だけではなく、他にも2、3体の生き物の気配を感じる。私は辺りを警戒しながらミニドラをエレベーターに乗せて安全なハウスに入れた。そして次の瞬間……

 

「ギギィ!!」

 

「ギシャア!!」

 

草むらから緑色の肌で耳は尖っていて、わらでできたパンツを履き、錆びた槍や木の棒を持った小柄な化け物が3匹飛び出してきた。彼らはあまり知能が発達していないのか涎をだらだら滴ながらこちらに歩みよってくる。この化け物は何なんだ?くそっ!某携帯獣ゲームの図鑑が欲しい所だぜ。

 

「「ギャア!!」」

 

「ふっ!」

 

「「ギィッ!!」」

 

化け物達が一斉に飛びかかってきたので私は冷静に戦闘用の尻尾を振って彼らを蹴散らした。彼らは私のパワーが強かったために木や地面に強く叩きつけられひるんだようだ。ドラミちゃん程ではないが私はこれでも5000馬力発揮することができる。化け物とはいえこんなチビ共にやられてたまるか。

 

「"空気砲"!ドッカーン!」

 

化け物達がひるんだ隙に私はポケットから空気砲を取り出し、一発お見舞いしてやった。すると化け物達は一目散に森の奥へ消えていった。

 

空気砲はドラえもんの武器系ひみつ道具の一つで、黒い大砲の砲口のような形をしている。手にはめて「ドカン!」と言うと空気の塊を発射して相手を攻撃することができるのだ。

 

「どうやらこの世界は危険がいっぱいみたいだな。気をつけよう。」

 

私はハウスの中に入るとミニドラを抱き締めてベッドで眠りについた。

 

 

 

 

 




一応戦艦レ級なのでルルの笑い方は「キヒヒッ」です。この笑い方はルル本人も気にしていて、指摘したりいじったりすると5000馬力でボコボコにされます。

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