お気に入り登録をチラチラ確認しながら書いている今日この頃。
意外と見てくれてる人は多いみたいだけど、お気に入り登録してくれたら投稿ペースが早くなるかもよ(チラチラ)
この作品は“スクフェス”のLP回復待ちに書いてます。
「「 くしゅんっ 」」
女の子らしいくしゃみが俺の後ろで2つ聞こえた。
ドラム缶に枯れ草を入れて、火を付けたポケットティッシュを放り込む。ふぅ、温まるね。
「うぅ……寒い」
「こら、あんまりくっつかないでよ。磯臭い」
「あ、女の子に臭いとか言っちゃダメなんだよ!」
「だって臭いし」
「むぅ……」
事実を言ったら千歌はむくれてしまった。しかし、すぐに体を震わせて自分の肩をさする。スカートってこともあって体温が逃げちゃうみたいだね。
「ハァ……ほら」
「うえっ!?」
さっき砂浜に脱ぎ捨てたブレザーを肩にかけてあげる。これで少しは寒さが和らぐと良いんだけど。
「あ、ありがとう……」
「ゆあうぇるかむ」
「下手っぴな英語」
クスクスと千歌は楽しそうに笑った。苦手なんだから仕方ないじゃん。使わなきゃ良かった。
「えへへ、シンちゃんの匂いだ〜……」
「いや、それクリーニング屋さんの匂いだと思うよ?昨日卸したし」
「ううん、シンちゃんの匂いもちゃんとするよ」
「男の匂いなんて良いもんじゃないでしょ」
「みかんの匂いがする」
それはつまり俺の体臭がみかんということだろうか。ちゃんと毎日体を洗ってるはずなんだけどなぁ。
まぁ、なんか千歌が幸せそうにくるまってるし良いか。ちょっと埋もれてる感じが可愛いし。
「くしゅんっ」
スク水の女子高生は俺たちよりも少し遠くに座っている。寒そうにまたくしゃみしてるし。自業自得だからなんとも思わないけどさ。
「ハァ……ほら、君も羽織ってなよ」
でも、千歌だけに上着を貸すって言うのもちょっと悪い気がするので、俺はブレザーのポケットならネクタイを取り出す。
そして女子高生のスク水の上からそれを着けてあげた。
スク水にネクタイ。これは新しい。
「……………………」
めっちゃ睨んでる。でも、海にまで落ちたんだからこのくらいは受け入れていただきたいね。
そんな益体のないことを考えながら、メンチを切り合いつつ千歌の隣に戻る。
すると、また千歌がくっついてきた。うざい。
「くしゅんっ!!」
俺が千歌を押し退け、千歌は懲りずにまたくっつく。その攻防を遮るように三度、女子高生がくしゃみをした。
「あなたもこっちにおいでよ?そんなに離れてたら温まらないよ?」
「いや、なんか入りにくいと言うか……」
「入りにくい?」
どういう意味かな?
「あの……とても仲良いみたいだけど2人は付き合ってるの?」
「はい?」
「だから、2人は恋人同士なのかなって」
恋人=恋しく思う相手。おもいびと。 by広辞苑
あり得ない。千歌と俺が恋人同士とか……信夏が俺を嫌いになるくらいあり得ないよ。
まったく……どうして女子って男女が仲良かっただけですぐくっつけたがるんだろう。
「あのね、そういうの下衆の勘繰りって言うんだよ。俺たちはただの幼馴染で、恋人とかありえ……痛っ!」
なんか千歌に太ももつねられた。地味に痛みが残るから嫌なんだよね、ここつねられるの。
「千歌、痛いんだけど」
「むぅ……シンちゃんのバカ」
何がそんなに気に入らないんだろう?しっかり否定したはずなんだけどなぁ。もっと強く否定しないとダメなのかな?
「俺と千歌が恋人になるのは金輪際絶対にあり得ないか……痛い痛いっ!?ストップ千歌!痛いから!めちゃくちゃ痛いから!!」
「……………………………」
「そして無言怖いから!!」
これだけ否定してもまだ足りないとは、千歌は欲張りさんだね。
ははは、お願いします許してください!?
それにしても、俺と千歌を恋人と勘違いしたということは俺を男と見てるってことだよね?いくら男子の制服着てるからって、初対面なら大体の人が俺を女と思うんだけどな。
うん、自分で考えてて悲しくなってきた。そして、そんな悲しいことを考えても太ももの痛みは収まらない。
むしろ心と体の両方が痛くなってきた。辛い。
「それで、どうして海に飛び込もうとしたの?」
え、そのまま聞いちゃうの?その前に俺の太ももから手を離してくれない?
「海の音が聴きたくて……」
「海の音?」
「あの、千歌さん?謝るからさ?信一謝るから許してくれませんかね?なんで怒ってるのか知らな……痛たたたっ!」
「シンちゃんうるさい」
(´・ω・`)
解せぬ……
「海の音って海中の音ってこと?」
「ちょっと違うかな。私ね、ピアノで曲を作ってるの。でも、どうしても海の曲のイメージが浮かばなくて……」
「へぇ、作曲できるんだ。すごいね!ここら辺の高校?」
「……東京」
「東京!?わざわざ?」
「わざわざって言うか……」
東京か。どうりで見慣れない制服だと思った。見覚えはあるけどね。
これも何かの縁かな?
「じゃあじゃあ、誰かスクールアイドル知ってる?」
「スクールアイドル?」
「うん!東京だと有名なグループたくさんいるでしょ?」
「なんの話?」
「え?」
嘘だろ……。だってその制服を着てるんだったら普通知ってるはずでしょ。
待てよ、スクールアイドルを知らないのにその制服を着てたってことは、
「君さ、その制服もしかしてコスプレ?」
コスチューム・プレイに違いないね。
「……………………………」
また睨まれた。ていうか、この子さっきから俺とまともに会話しようとしないんだけど……なんかしたかな?
ネクタイが悪かったのか?
「ハァ……れっきとした本物よ」
「それなのに知らないの?」
「なによ、悪い?」
「いえ特には。……なんか俺に怒ってる?」
「当然でしょ。こんな格好で面白半分にネクタイ着けられて……」
なるほど。
「やっぱり紺色のスク水に赤系のネクタイは似合わないよね。ごめん」
東京から来たってだけにお洒落さんだね。配色のコーディネートにも厳しいみたいだ。
「そこじゃない!!ネクタイを着けられたことそのものよ!」
「あ、そっちか」
ならさっさと外せばいいのに。着けたままだからスク水ネクタイの格好自体は気に入ったのかと思ってた。女の子って難しいね。
「あなた、さっきからふざけてるの?」
いや、至って真面目そのものなんだけど。
でも、なんかそう答えたらまた怒られそうだからここは嘘をついておこう。
“嘘も方便”。昔の人は良いこと言うなぁ。
「ごめんごめん。せっかく東京から来てくれたんだから早く仲良くなりたくてさ」
「あなたが私にネクタイ着けたの、私が東京から来たって言う前なんだけど?」
誰だ、“嘘も方便”とかいう不誠実極まりない言葉を作った奴は。
「…………可愛い女の子と仲良くなりたい気持ちに、理由が必要ですか?」
「あなたに可愛いって言われても嫌味にしか聞こえないわね」
東京女子、俺の心をめった刺しにしていくな。もう黙ってよう。
「あはは、確かにシンちゃんのほうが可愛いもんね」
そして、千歌。その目の笑ってない笑顔でつねる力を強めないで?あと、なんで俺が傷付くこと言うかな。
さっきよりもさらに心と体が痛い。いと辛し。
「それで、本当にスクールアイドル知らないの?」
「えぇ。そんなに有名?」
「有名なんてもんじゃないよ!大会が開かれるくらい人気なの!」
「そうなんだ……。ごめんなさい、私ピアノばっかりやってたから」
「そっか。じゃあ、聴いてみる?」
「聴くって?」
「スクールアイドルの曲だよ。なんじゃこりゃ!ってなるよ」
「なんじゃこりゃ……?」
「なんじゃこりゃ♪」
そう言って千歌は鞄からスマホを取り出し、操作して女子高生に画面を見せる。
そう言えば俺のスマホどうしたっけ?確か海に落ちる前に女子高生に渡して……それで一緒に落ちたから………っ!?
「ねぇ君!俺のスマホ持ってない?さっき預けたやつ」
「えっと……………あ……」
「マジですか……」
海に落ちた拍子に手離しちゃった……よね?
うわぁ最悪。あの中に信夏の写真がたくさん入ってたのに……。
「ふっふっふ〜。シンちゃん、これな〜んだ?」
「え?」
ゴソゴソと千歌がスカートのポケットから取り出したのは……俺のスマホだ。マジか!!
「ありがとう千歌!愛してる!!」
「うわっぷっ!?」
感極まり俺は千歌に抱き着いた。
良かった。連絡先とか俺の個人情報とかは別にどうでもいいけど、信夏の写真が3000枚は入ってるからね。一応コピーは取ってあるけど、これにしか入ってないのがあったはずだし。
「シンちゃん、恥ずかしいよぉ……」
「あ、やっぱ無理。磯臭い」
「ふん!」
しおらしくなったのも一瞬、千歌は気合と共に俺の脇腹を思いっきりつねった。事実を述べただけなのに。
「でも、本当にありがとね。助かったよ」
久しぶりに千歌の頭を撫でる。昔は撫でろって催促されるほどだったけど最近は落ち着いてきたな。それでも気持ち良さそうに目を細めてるし、撫でられるのが嫌いになったわけじゃないみたいだね。
脇腹痛いから離して?
「あの……それでスクールアイドルの曲を……」
完全に蚊帳の外になってしまった女子高生が声を上げた。そういえばそんな流れだったね。
「あぁ、ごめんね。それで、これがスクールアイドルの曲だよ」
千歌の画面に動画が流れ始め、歌声がスピーカーから聴こえる。
まずは落ち着いたピアノのイントロ。そして、女の子達の揃った綺麗な声。
あれ、これって……
「“START:DASH‼︎”だよね?」
さっき千歌に邪魔されて聴けなかった歌だ。彼女達の
「そうだけど……シンちゃん知ってるの?」
「まぁね」
なるほどね。千歌が言ってたu'sってμ'sのことだったんだ。
てか、スクールアイドルやるなら名前くらい覚えておこうよ。
曲が終わり、千歌のスマホが沈黙する。
女子高生は呆けたようにまだ画面を見ていた。
「どう?」
「どうって……普通?」
「…………」
「あ、別に悪い意味じゃなくて……アイドルって言うからもっと芸能人みたいなのかなって」
「……だよね」
スマホをしまい、海のほうを向く。そして深呼吸を1つ。千歌は打ち明けるように言葉を紡いでいく。
「私ね、普通なの」
「普通?」
「そう、普通。あなたみたいにピアノに夢中になってたとか、シンちゃんみたいに格闘技に熱中するとか、将来何かしたいとか、そんなのまったく無くて。それでもいつか、待ってれば普通から脱却できるって。そう思ってたらいつの間にか高2になってた」
「「 ………… 」」
俺と女子高生は黙って話の続きを促す。聞いてくれてる、と受け取った千歌は一度笑いかけてから続けた。
「このままじゃダメだって思っても、何も見つからなくて。誰か助けてって思っても、誰も普通な私に見向きなんてしなくて。ちょっと落ち込んでたらシンちゃんが東京に遊びに行かないかって誘ってくれたんだ」
確かに春休み、千歌が少し元気をなくしてたから曜も連れて3人で東京に遊びに行った。帰ってきてから元気になったから安心してたけど、その時に東京で見つけたのが……
「そこであの人達に出会ったの」
μ'sってわけね。
「普通の私たちと同じ女子高生がキラキラ輝いてた!だから私思ったの!どこにでもいる普通な私でも、一生懸命頑張れば輝けるんだって!」
そっか。千歌にとって普通であるってことはコンプレックスだったんだね。だからスクールアイドルに惹かれたわけか。
「私も仲間と力を合わせて、
千歌の演説みたいになってたけど、理解した。
よし!もうちょっと真剣に付き合ってあげよう。最初は千歌のお遊び程度、スマホのカメラで充分って思ってたけど、今の聞いてたらそんなもんじゃダメだね。
何がダメなのかは具体的にわからないけど、とにかく形から入ろう。
アイドルの記録係がスマホのカメラを使ってるなんて格好悪いしね。
「……そっか」
女子高生も千歌の熱意が伝わったみたいだ。どこか眩しいものを見るように千歌を見てる。
「あ、自己紹介してなかったね。私、高海千歌。あの丘の上にある『浦の星女学院』ってところの2年生」
「同い年ね」
「「 え? 」」
女子高生の言葉に俺と千歌が揃って間抜けな声を上げる。スク水着てるから高校生なのは分かってたけど、まさかこんなに大人っぽい人が同い年だったなんて。
「私は
女子高生改め、桜内梨子さんは立ち上がり優しく微笑んで、長いワインレッドの髪と俺のネクタイを揺らしながら自己紹介をしてくれた。
あのμ'sの学校、音ノ木坂学院高校の生徒さんとこんな場所で会うなんてね。本当になにかの縁かな?
「俺は朝比奈し……」
「別に聞いてないわ」
(´・ω・`)
その日、帰宅して確認したらスマホが水没していた。
デジカメのついでに明日買い替えよう。
ちくしょう…………
オリキャラ紹介
名前: 朝比奈信夏
趣味: 兄の膝の上で読書 チアのダンス動画鑑賞 球技全般
特技: チアリーディング おねだり 人と仲良くなること
好物: 兄の作るもの(特にみかんを使ったお菓子)
概要: 朝比奈信一の妹。兄の言うことならなんでも聞くお兄ちゃん大好きっ子。いわゆるブラコン。中学3年生。
ブラコンになったきっかけは、両親共に忙しかった為、基本的に信一とずっと一緒だったこと。
普通ならグレてしまいそうな環境だが、その辺りの教育は信一がしっかりした。兄がいれば甘えにいく。
だが、甘えてるだけでなく、しっかりと信一のことも考えて行動できる子。信一の異変ならすぐに気付く。
行動力があり、思いついたらすぐ行動。加えて物覚えが良く、兄と似て比較的になんでもできる。しかし、兄にやってもらいたい。
配達先は網元の黒澤家。その家の子供は2人とも年上だが仲が良い。というか、あちら側が信夏の可愛さにアテられた。
自覚はないが、兄と似て絶世の美少女。性格も明るく元気で誰からも好かれる良い子。
残念ながら勉強が苦手なところも兄に似てしまった。しかし、そこがまた可愛いと評判。
イーストサンでは、観光客相手にチアダンスを披露している。
得意科目は体育。
苦手科目は筆記全般。