えっと、皆さんこんにちは。八神はやてです。今日はなんや、私の妹について報告してほしい言われてここに来たんですけど……。まあ要領とかあんまり分からんけど、とにかく始めさせて貰いますね。
えー、まず私の妹は『ターニャ・
「ほとんど
と、そんなよく分からん文句を言ってました。『存在X』って誰やろ?
まあでも、そんな風に鏡の前で百面相しとるターニャの後ろから近づいて頭を撫で回したると、すぐに真っ赤になってムッチャ可愛いんやけどな!一般的な日本人の容姿でしかない私に比べると、ホンマに西洋人形みたいなんや!
……ここまでで分かる人は分かると思うけど、私とターニャには血の繋がりはありません。ターニャはウチの前に捨てられとった捨て子なんやけど、私もターニャもそんなことは気にしとらん。お父さんもお母さんもターニャを私の本当の妹として育てとるし、私も本当の妹やと思っとる。
まあ、ターニャは小さい頃どこか遠慮しとったから、私が強引にでも連れ回したり撫でまわしたりしてたんやけどな!
そんな感じで毎日過ごしとったんやけど、私達家族にある日とんでもない不幸が訪れて……私らのお父さん、お母さんが交通事故で
そしてしばらくはそのまま二人で両親の遺した家で暮らしとったんやけど、またある日、今度は私の身体に異変が現れた。突然両脚が痺れて動かんようになったんや。あん時は突然倒れた私に驚いて、ターニャに要らん心配させてしもうたなぁ。
で、病院に入院して一通り検査してみた結果は、『原因不明』。どうしてこんな麻痺が出てるのか分からんらしく、しかも徐々に麻痺は足の先から上に上がって来てると言われた。……私も死んでしまうんかなぁ、とあの時はホントに絶望したわ。
ところが、そこから発展してターニャから驚きの告白をされることになったんや。退院して自宅療養に切り替わった私は、何故か入院中一週間ほど顔を見せてくれんかったターニャに再会した。初対面の栗色のお下げ髪をした女の子を連れて。
そして自宅に入った途端、ターニャから彼女の出自について告白されることになった。彼女はかつての大戦においてヨーロッパの各国に恐れられ『ライヒの悪魔』と呼ばれた魔導師、ターニャ・デグレチャフの完全なるクローンだと語られた。なんでもこの地球の外には『次元世界』と呼ばれる世界が無数にあるらしく、そこには故人の身体の一部から作った体細胞クローンに記憶と人格を焼き付ける技術が存在するらしく、彼女自身そうして造られた存在なんやと聞かされた。そのため、彼女はかつての自分の技術も経験も、何もかも再現することが出来るとも。実際ひい爺ちゃんか誰かが物置に仕舞ってた年代物の『演算宝珠』で空を飛ぶところも見せてもらったし、どっかから押収してきた『プロジェクトF』とか言う資料も見せて
……ただ、なぁ……。確かに話の筋は通るし、資料もターニャの技術も本物なんやろうけど……。実際ターニャが、私なんて比べ物にならんくらい賢かったのも事実なんやけど……。
正直、この話については、半分くらいターニャの嘘やと思っとる。話すとき、目が思いっ切り泳いどったし。本人は気づいとらんけど、長年姉妹として暮らしてたからそれ位は分かる。なのはちゃんは、信じきっとったみたいやけどな。
そんで、なんで今になってそんな話を告白されたんや?と疑問に思っとったら、その日のうちになんと外国のお医者さんがウチに大挙してやって来て、色々検査されることになってた。なんでもそのお医者さんの出身国は前世のターニャの出身国であるライヒで、未だに魔導師の疾患や傷病については世界一の医療大国からはるばる私一人を診断するために呼んだとかで……。
あん時は思わず言葉が出んで、気が付いたらターニャに掴みかかってたなぁ。いや、だって私一人のために、まさか外国からお医者さん呼ぶと思わんやん?と言うか、普通はそんなこと出来ん。一体どうやったんやと迫ったら、
「昔の知り合いは、根こそぎ軍からいなくなってはいたようだが……それでも退役した将官の影響力が、全て消えるわけではないのだよ。こういう時に、コネクションは使わなければな」
そういうことで、とりあえずの解決策として、黒い本から伸びてる魔力の
で、早速やってみた結果――――黒い本は、突然火を噴いて、爆発。魔力の吸収がピタリと止まりました。これには皆、大慌て。特にターニャの狼狽え方が一番酷く、「九五式から中継させたのがマズかったか?!」と大声で慌てとった。……原因に、心当たりがあるんか?
ともかく事故みたいやったけど、原因が爆発して機能停止したこともあって、魔力の欠乏は徐々に回復。原因となった黒い本は、ライヒ本国の研究機関に回されることになりました。
そして約一か月後、私がリハビリに励んでいたある日、ライヒから研究者とともに、あの黒い本が戻ってきました。なんでもあの黒い本の解析がある程度終了し、地球外の技術で作られた「演算宝珠」の一種である可能性が高いとのこと。ただその本の主が「八神はやて」に固定化されており、どうやっても書き換えができないとのこと。そんで書物の中に、主を守る『守護騎士』という人たちがいるらしく、さらに詳しい解析のために、是非召喚してみて欲しいということでした。
ターニャは当初反対するかもと思っとったけど、意外にも乗り気。なんでもすぐに使える戦力が手に入るのなら、それに越したことは無い、とか。物の道理も分からん新兵を一から育てる苦労を考えれば、その方がずっといいと言われました。……ホントに、何があったんや。
そうして召喚されたのが、私の第二の家族、『夜天の守護騎士』シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの四人でした。
召喚された皆とは、とりあえず新しい家族として接する方針を伝え、色々事情を聞いてみることになりました。そこで分かったのは……実に頭の痛くなる問題でした。
なんでも彼女らが入っていた『夜天の魔導書』は、何代にも渡って悪意ある主による改悪を受けてバグが蓄積。それによってシステムが暴走して、主を吸収して幾つもの世界を滅ぼした悪名高い『闇の書』と呼ばれていたそうです。今回はバグったシステムも丸ごと消し飛んだので、もう暴走の恐れはないものの、元の機能を完全に取り戻すことも不可能とのこと。
……ただ問題は、何度も次元世界で暴走して大暴れしたため、時空管理局に追われており、いずれはここにも来る可能性が非常に高いことでした。ちなみに管理局がいつも行う闇の書への対処法は、発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を反応消滅させる魔導砲で消し飛ばすことだそうで、確実に中心となる海鳴の街の消滅と、周辺環境への影響によりこの国が滅亡する事は免れないそうで……。洒落にならんやろ。
これを受けて、ターニャはすぐに動きました。ライヒ本国に連絡を取り、そこから合州国とウチの国の政府と交渉。ライヒ本国から特別編成部隊を海鳴に配置する許可を貰ってきました。
そして編成されたのが、今目の前にいる彼ら。即ち、『地球外圏ヨリノ次元航行魔導師ニ対スル即応戦力及ビミッドチルダ式・ベルカ式導入実験ニ伴ウ第二〇三編成航空魔導実験大隊』――――――通称、『第二〇三魔導大隊』。なんでもターニャが前に率いてた部隊に因んだそうです。今後はこの大隊を中心として、守護騎士の皆が使ってた『ベルカ式』となのはちゃんの『ミッドチルダ式』を解析して、今回協力した三か国の魔導部隊に技術提供していくそうです。
後、一応護衛対象である私たち夜天の騎士も、戦闘許可は貰っています。戦闘後に使った術式の解説やら、術式解析に協力することが条件なんやけど。
そんで、結果として。
「我々は、『時空管理局』! 多くの次元世界を崩壊へと導いた闇の書の守護騎士と、その主の身柄を渡してもらいたい!!」
海鳴に無断で侵入してきた管理局の人達と、ターニャ率いる第二〇三魔導大隊の皆さんが対峙する現状が生まれました。
「――遠路遥々ようこそ、管理局の諸君! ビザはお持ちですかぁ?」
メッチャいい笑顔で煽っとるなぁ、ターニャ。ああ、向こうも怒っとるで?
「いいから、闇の書の主をこっちによこしな、ガキんちょ! さもなきゃ痛い目じゃすまないよ!」
「そうだよ! アンタ等なんかに父様の気持ちが分かるのかい!」
「ロッテ! アリア!」
「――お持ちではない? これは困りましたなぁ。宜しければ、早々に捕虜となられてゆっくり観光などいかがでしょう? 我らが地球の名所である、合計三か国の軍事裁判所巡りツアーがお薦めですよぉ!」
その言葉に怒ったのか、三々五々杖の先から魔力の玉を飛ばしてくる管理局の人達。これで反撃という口実をターニャに与えてしもたな。しかし、ホントに非殺傷設定なんてモン使っとるんやな。なのはちゃんも最初はあんなの使ってたけど、今では……。
「えーい!」
轟ッ!ととんでもない音を立てて、桃色の極太光線が管理局の軍勢を薙ぎ払う。ちなみに現在のなのはちゃん、ターニャにスカウトされて、第二〇三魔導大隊の副官をしています。元々はミッドチルダ式の研究の為やったんやけど、第二〇三魔導大隊の先輩方から、先の大戦で軍事用に使われてた術式を提供されて、その超効率主義の術式に感化され、自分の使っていた速度の遅い誘導弾の弱点を理解。最終的に、『直進のみでも弾丸並みの弾速で大規模破壊可能な砲撃を形成出来れば、集団の防御無視して吹き飛ばせるから一番効率が良い』というエキセントリックな結論を出してました……。しかも、それを大剣のように振り回す始末……。ターニャは顔が引きつってたで?
「――時間の無駄だな。各自の判断で撃ってよし! 術式は『試作型非殺傷術式』! 奴らの流儀に合わせてやれ!!」
そうして次々と撃たれ、墜落していく管理局の魔導師たち。まあ、死ぬことは無いやろ。『試作型非殺傷術式』言うんは、シグナムやなのはちゃんから向こうの流儀を聞いたターニャが開発したオリジナル術式。どんな術式かと言うと、小銃に搭載したゴム弾やゴム製の銃剣に仕込むタイプの術式で、相手のバリアジャケットや生身に当たった時点で強制的に精神干渉して、無理矢理意識を落とすとか。具体的には、神経に誤認させて身体を強制麻痺、その後ドーパミン?とかいう物質を過剰に分泌させて意識混濁を招いて失神させてるそうです。この説明聞いてた時、シグナムやヴィータは滅茶苦茶ターニャに引いてたけど……なんでやろ?
そうこう思ってると、突然通信が来た。
『――――主はやて』
『お、シグナム? そっちはどうや?』
『はい、衛星軌道上の次元で停泊していた次元航行艦をシャマルが捕捉。その後一気に艦橋を制圧し、内部の局員を捕虜に致しました。そちらの戦闘が終わり次第、ターニャに引き渡しの段取りを伺いたいのですが』
『んー、ちょっと待ってな。今最後の一人が――――あ、落ちた』
最後まで生き残っとった黒いレオタードを着た同い年位の女の子が、たった今なのはちゃんの振り回してた桃色の光線に飲み込まれた。
……これで、戦闘は終わり。後は向こうの政府と地球の政府の話し合いになるから、私らはお役御免やな。さて、そうと決まれば!
「帰って来る皆のためにも、美味しいご飯を作らんといけんな! 『ターニャ? なんか食べたいものあるか?』」
『……卵かけご飯』
『栄養偏るから、それだけやったら駄目やよ? そんなら、納豆とネギも入れたるわ』
『なあああああああああっ?!』
ターニャの半泣きの声が聞こえてくるけど、そんなのは知らん。いつまでも好き嫌いばかりやと大きくなれんで。
「そんなら予備兵の皆さん。帰って来る皆のためにご飯作りますから、手伝ってもらえますか?」
「「「アイアイ、マム!!」」」
……それにしても。なんでこの大隊の人達は、私に最敬礼なんてするんやろな?
存在Xの祝福(呪い)により、夜天の書、死亡。描写された中では、初の原作死亡者ですね。
A's編は管理局との抗争へと発展しました。そしてこの世界特有の非殺傷設定も、ターニャは率先して導入。一発で意識を飛ばして苦しませない術式なんて、デグさん優しいな!(白目)
なのは本編の描写に従えば、当人の意識があろうがなかろうが、例え高空から墜落してもバリアジャケット着てれば死にはしないみたいなんですよね。さすがに墜落速度の自動減衰くらい安全装置としてストレージデバイスにも入っているだろうし。
ちなみにターニャさんを家族として手玉に取るはやてさんを見て、第二〇三魔導大隊の皆さんは本能的にはやてに逆らえません。
はやて>ターニャ>>>越えられない壁>>>第二〇三魔導大隊の皆さん
こういう事です(笑)