ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

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第55話「出会い」

追加登場人物

 

 結城幸谷(64)♂

 

 ・細くてグラサンを掛けた何だかラスボスになりそうな初老の陸将。本土絶対防衛線と呼ばれる九州地方の海岸線で海流に乗って流れ着いたゾンビの水際掃討戦を断行し、外国のまだ死んでいない共に辿り着いた重症難民毎撃ち殺して国土の失陥を防いだ日本側の英雄である。が、国内の外国人勢力から理解は示されながらも非人道的な外国人の殺戮だと“皆殺しの結城”と呼ばれている。日本が九州を失陥しなかった理由は多くの先進国が行えなかった“ゾンビに重症を負わされた相手”を見捨てて“即刻処分”……要は撃ち殺した事が大きいと分析されている。人倫の観点から複雑な世論が形成され、国内の米国及びG7以外の国家の難民、国内人権団体、急進左派政治団体、野党政治家、市民団体などからは非難声明と同時に戦争犯罪者として裁くよう嘆願書が出された。国外からも非難の声は上がったがすぐに“非難する者もいなくなった”為、声は小さくなったとされる。その後、彼は政府から“問題はあるが、裁かれる必要はない”のお墨付きを受け、幾つかの勲章を辞退しつつも現役を貫き、今現在は陸上自衛隊への批判を一身に受ける人身御供となっている。ただ、一部の幹部自衛官達からは祖国を救った英雄、人々に石を投げられながらも戦い続ける聖人、というような括りでシンパが実はとても多い。

 

 朽木正孝(42)♂

 

 ・善導騎士団の監視を行うS班の班長。カマキリっぽい顔から物凄く初対面からは偏った見方をされる事が多いのだが、実際には良識派な人物。黙っていると大物の後ろに控えるやられ役の戦闘部隊の隊長に見えるという班員のジョークに実は結構ショックを受けて凹むお茶目な一面を持つ。二尉という地位に甘んじているが、実際には三佐くらいでもおかしくないくらいの功績と実績と能力がある。しかし、当人はあくまで現場で戦う人間でありたいと昇進を上司達に掛け合って拒否し続けており、そういったところも班員達には受けているらしい。

 

 

 

 前回までのあらすじ

 

 ようやく騎士団と合流(感涙)→魔導便利過ぎ→皆でエクソダス→主人公が真っ二つになっちゃった(重症を負う事に定評のある主人公並み感)→避難民も一緒に帰って来たよ→ゾンビの大襲撃が予告されちゃった→要塞造るっきゃねぇ!!→新しい騎士が攻めて来たヨ→いやぁ、そろそろホームに帰ろうかな(すっとぼけ)

 

 

 

第55話「出会い」

 

―――ロシェンジョロシェ~シスコ間。

 

 村升の命を受けた1個小隊45名は中央即応集団内に新設された特殊作戦群の対Zレンジャー部隊員から成る。

 

 広大な北米大陸の奥地まで行って、情報を収集する為に元々十数年前から装備及び複数の隊員がその日の為に訓練を積み重ねていたが、ようやく米軍の監視を掻い潜ってとはいえ、日の目を見た事は正しく彼らにしてみれば、初舞台。

 

 自衛隊員を運ぶのは73式大型トラックの改良版。

 

 走破性と燃費を国内自動車メーカーによってチューンされ、限界まで車体重量の軽減を図ったソレには武器弾薬人員代替部品と何でも詰め込まれている。

 

 9両編成で彼らが第一目的地とした巨大な電波塔跡。

 

 恐らくは騎士によって全損させられたと思しき場所に到達した時。

 

 しかし、其処には既に多くの轍が残っていた。

 

 米軍のスペシャル・ユニットが既に情報を取り終えて更に広範囲へと散らばった跡が見て取れた為、彼らは出遅れている感を感じざるを得なかったが、部隊の指揮官である八木は構わず。

 

 実質、部隊を掌握している神谷に対して、北上を告げた。

 その時の遣り取りはこうだ。

 

『どうして北だと?』

 

『あの都市にいなかった。ならば、最も近い次の都市にいる。何か不合理かな?』

 

『そんな単純なものでしょうかね?』

 

『ああ、そういう単純なものだ。彼は人間に見えた。まずは可能性で最も高い状況を虱潰しにしていく』

 

『了解です。八木一佐』

 

 北部シスコへの道は普通に走るならば一日以内に辿り着くはずの代物であったが、道は多くが途中で途切れ。

 

 また、道無き道以外の道路の周囲には確実に街や村などが点在していた為、街中を迂回しながらの移動という事になり、時には突っ切り、時には燃料と相談しつつ、彼らはゾンビへの警戒を怠らないよう低速での移動を余儀無くされた。

 

 昼夜問わず、周辺監視を強いられるせいでゆっくりとだが、疲労は蓄積していく。

 

 そして、任務中に北上するゾンビに出会う事が極めて多かった為に途中からはゾンビをやり過ごす為、街などを一次制圧して身を隠さねばならなかった。

 

 一体、何が起っているのか。

 北上するゾンビ達は何を目指しているのか。

 それが自分達と同じ場所を目指しているのだとすれば。

 

 そう目星を付けた八木だったが、1週間前後ゾンビの河をやり過ごしていた彼らの耳には衛星通信によってシスコの現在状況が告げられた。

 

 北部都市に数百万単位のゾンビの結集を確認。

 都市陥落は時間の問題。

 直ちに南部方面への撤退を検討されたし。

 その言葉に仕方なく撤退しようとした彼らだったが。

 想定外の事態が起きた。

 

 単純に言えば、北部に向かっていたゾンビの大半が何故か動きを止めて周囲を徘徊し始めたのだ。

 

 この瞬間に八木は部隊がゾンビの池に取り残された事を悟ったが、突破しようにも彼らの周囲を囲んでいた個体の大半がまるで見た事の無い新種だった事もあり、不用意に逃げ出した瞬間に餌食になる可能性があった。

 

 神谷などはあの新種倒せると思いますよ、と進言してはいたが、結局はゾンビの自然離散をある程度待たなければ、追撃された瞬間に捕捉されて全滅。

 

 その可能性があると八木は待機を厳命。

 

 食糧が持つギリギリまで南部への帰還を待つ事になり、部隊は陸の孤島でゾンビ達を街の家々の中からこっそり監視しつつ、日に日に減っていく食料を節約しながら、忍耐の時を過ごしていた。

 

 そうしてゾンビの移動停止から9日後。

 

 終に彼らは食料が後3日という状況で決断を迫られる。

 

 最初に屯していたゾンビの大半が離散していたが、それでも敵は数千単位。

 

 車両は静謐性も視野に入れて無音での電源だけでの走行も可能としていたが、それでも銃を撃たずに突破する事も不可能なのは彼らにも分かっていた。

 

 ゾンビ達は夜目が効く為、夜間に逃げる事が優位なわけでもない。

 

 視認性の低さは逆に彼らの徒になるかもしれない為、もう猶予は無かった。

 

「本日、南部への撤退を開始する」

 

 八木が決断したのと同時に何とか耐えていた部隊の人員達は臨戦態勢を取り、車両に乗車して追って来れるものならば来てみろとばかりに12.7mm重機関銃やM4カービン、M24狙撃銃、手榴弾などを握り締める。

 

 そんな時だった。

 

 北部を監視していた隊員の一人が車両が上げる土埃を確認。

 

 即座に八木と神谷が詳しい状況を確認する。

 

『どういう事だ……』

『米軍が助けにでも来たか?』

 

 2人が顔を見合わせる。

 

『いや、それは考えられない。我が国と米陸軍の情報は共有されていない。政府も我々の窮状は知っているが、自力での帰還は可能だと報告している』

 

『つまり、上が米軍に頭を下げたわけじゃない、と?』

『そのはずだが……まさか、バウンティーハンターか?』

 

 男達が声を潜めて話す間にも次々に情報が報告される。

 

 無線の先から聞こえて来る話はまるで現実的ではなかった。

 

『キャ、キャンピングカーです!! ミニガンを屋根に乗せて!! ど、どうやら年若い少女が!!』

 

 意味が分からない。

 言葉をそのまま捉えるにしても、現実味が無い。

 

(キャンピングカー? ミニガンだと……)

 

『報告は正確にしろ』

 

 八木が瞳を細めて思考する中、神谷が思わず混乱している偵察者に続きを促す。

 

『あ、あの乳白色の奴が群がって!! 何だ!? キャンピングカーの扉が開いて、こ、子供が3人!!! アレはサブマシンガンか!?』

 

 さすがにもう報告だけでは状況が分からないと男が乗車済みの車両から降りてそのガレージ内から家屋内部の二階へ駆け上がり、更に天窓の外へと乗り出して屋根の上に顔を突き出す。

 

 すると、猛烈な銃撃の音と共に近付いてくる土煙を確かに確認した。

 

「何だありゃぁ……」

 

 神谷が言葉を失う。

 

 ミニガンがグルングルンとキャンピングカーの屋根の上で少女と共に踊っていた。

 

 更に側面からの猛烈なマズル・フラッシュの先。

 

 次々に乳白色の新種も通常のゾンビもなく殆どが打ち倒されていく。

 

 だが、問題なのはそこではない。

 相手の銃弾が消費される毎に数百mどころか。

 1、2km先のゾンビまでも打ち倒されていた。

 

「どうなっている!? 【MU人材】だとしてもこんな事が有り得るのか!?」

 

 さすがの八木も己の目の前の状況を正確には把握し切れずにいた。

 

 だが、分かっている事もあった。

 

 その銃弾はばら撒かれているにも関わらず、相手の頭部を恐らくは1撃で全て破壊しているのだ。

 

「……八木一佐。コレは……“当たり”なのでは?」

「恐らく。目標もしくはそれに近しい実力の相手……」

 

 数千体のゾンビ達が蟻でも群がるかのようにキャンピングカーに押し寄せてはバタバタと倒れ伏していく。

 

 そうして、その圧倒的な火力が数分間、火を噴き続けた後。

 

 街の周囲はゾンビの死体のみで埋まる事になったのだった。

 

 その後、未だ警戒を解かないままに待機していた彼らだったが、すぐに街の外から英語が響く。

 

『貴方達が日本国の自衛隊の方々ですかー』

 

 その言葉に八木と神谷が顔を見合わせた後。

 すぐに使者を立てる事になった。

 

 出て行った隊員がキャンピングカーから降りた数名を連れて戻って来た時、ようやく八木と神谷も数人の護衛を連れて街の内部へと向かう。

 

 しかし、彼らの前にいたのは目標とした少年のみならず。

 

 同じ外套を着込んだ数名の少女達に褐色の耳がおかしな男。

 

 まるで、漫画かアニメにでも出て来そうな髪の色や容姿を備えた少女達を前にして二人はやっぱり顔を見合わせたのだった。

 

 *

 

 2つの勢力、というか。

 

 シスコとロシェンジョロシェの部隊に今は所属している、という体で接触したフィクシー御一行と八木の長距離偵察部隊の出会いは偶発的なものではなかった。

 

 そして、同時にそれは初めて彼らが近代国家の軍隊と遭遇するという状況に違いなく……緊張を以て慎重に行われるはずだった。

 

『君の名は?』

 

 褐色エルフの隻腕男がにこやかに女性レンジャー隊員に英語で話し掛ける。

 

 それに苦慮しながらも何とか英語で自分の名を告げる女性隊員の顔は微妙に引き攣っていた。

 

 ジェスチャーで君達の言葉を教えて欲しいと迫って来る積極的な寡夫を前に他の周辺警戒中の隊員達は呆れていた。

 

 こういうのは何処にでも生息しているんだなぁ、という顔である。

 

 それを窓越しで横目にしてフィクシーが八木に英語でウチの者がすいませんと頭を下げた。

 

『いえ、お気になさらず』

 

 神谷は八木が普通の英語で答えているのを見て、やはりこれくらいインテリじゃないと一佐に上り詰めるのは無理なのかもしれんな、という感想を抱く。

 

 そして、目の前にいる白と朱の髪を靡かせて歩いていた指揮官と横の目標。

 

 更に後ろの碧い少女と金糸の少女を見て。

 

 少年少女があの惨状を作り出したのだろうかと少しだけ溜息を吐きたくなった。

 

 彼らがもしもあれだけの敵を倒そうとするならば、死人を覚悟せねばならない。

 

 それも5倍の戦力と十分な武器弾薬、装甲車があれば、という但し書きが付く。

 

『我々はシスコ側から貴方達が危難に陥っていると連絡があった為、此処に駆け付けて来た都市側からの応援という事になります』

 

『応援、ですか?』

 

『貴方達が“貴方達の友人”とは別に我々を探していた事は知っています。だからこそ、我々は()()()()接触を持った。そうお考えを』

 

 その言葉に八木が内心で驚きつつも相手の諜報能力は侮れない域。

 

 殆ど、この件に関しては自分達の内実が筒抜けである事を理解する。

 

『それを何処で、等という無粋は申しません。まずは我々の危機を救ってくれた事に多大な感謝を。本当にありがとうございました』

 

 軽く八木が頭を下げる。

 

『いえ、同じ戦う者として当然の事をしたまでです。我々、善導騎士団はその為に活動していますから』

 

『善導騎士団?』

 

『我々の名です。そして、貴方達が探している人物……彼は我々の一員なのです』

 

『は、初めまして。ベルディクト・バーンと言います』

 

 少年が恐縮した様子で八木に頭を下げる。

 

『それもお見通しですか。我々の目的は筒抜けのようだ』

 

『貴方達の本国。そちらの意図は理解しています。騎士を殲滅する方法が欲しい、のですね?』

 

『……本当に全て見通しておられるらしい。ええ、隠し立てはしません。その通りです』

 

『一言で申し上げます。不可能です。理由はその殲滅可能な方法論を実践出来るのが我々、この世界の人間ではない存在にのみ可能だと。そう、今のところ断言出来るからです』

 

『この世界の人間ではない存在……つまり、貴方達は……』

 

『異世界人という事になるでしょうか』

 

 八木がさすがにどう何を表現すればいいのか困った顔になる。

 

『すみません。少し、部下と話させて頂いてもよろしいでしょうか?』

 

『構いませんよ』

 

 八木が神谷を連れ立って、部屋の端に向かう。

 

「どうしたんですか? 八木一佐」

 

「彼らは……アニメや漫画の世界の住人だと自ら公言した。異世界人だそうだ」

 

「そうですか。驚きですが……まぁ、【MU人材】の話から、今更の感はありますね。そもそも騎士も明らかにこの世界の技術体系から外れた存在だった。別世界や別宇宙からの来訪者とも呼ばれていたじゃありませんか」

 

「分かっている。だが、これは恐らく現代国家となって我が国に初めての異邦人(まれびと)とのファースト・コンタクトだ。彼らの言葉を聞く限り、あの力は彼らにしか不可能な方法論でのみ体現可能というニュアンスが漂っている。つまりだ」

 

「つまり?」

「恐らく。彼らは自分達を売り込みに来ている」

「売り込み?」

 

「彼らはかなり我々の事情に詳しい。ある程度は内実も知っているし、我々を敵視してはいない。が、恐らく米国を快く思っていない」

 

「……まさか、米国から逃れる為に我々と接触を?」

 

「恐らく、な。前々からゾンビのみならず騎士の発祥も米国だという話はあった。彼らが米国を警戒している以上、彼らを受け入れるという事はつまり……」

 

「米国相手に上が強気に出られますか?」

 

「分からん。だが、もし彼らに手を出して来るとすれば、恐らくは……この()()()()だけだろう。神谷一尉……正直に答えてくれ。米国の部隊と利害が対立し、やり合う事になった場合、君の部隊は戦えるかね?」

 

 八木が今訊ねている事を正確に理解した神谷が数秒の沈黙の後。

 

「現在の装備ならば、120人規模の部隊を相手に出来ます。ただし、ロスへの帰還後に市街地戦となった場合、ほぼ負け戦です。装備面も人員も限りなく不足してます。全面戦争にしたい以外はどうにもなりません」

 

「素直でよろしい。そうか……帰還までの護衛は可能か?」

 

「はい。今から散開してる米陸軍の全ユニットから追いかけ回される可能性さえなければ……」

 

「分かった。では、彼らを受け入れ、撤退を開始する。目標は達成した。ロスで村升事務次官とも協議せねばならない」

 

「了解です」

 

 2人が話し合いを終えて、再び席を見ると。テーブルの上に何やら大量の缶詰が置かれており、それを持ってヒューリとハルティーナが出ていくところを見た。

 

『その缶詰はどうなされたのですか?』

 

 八木が訊ねる。

 

『あ、皆さんお腹が空いているかと思いまして……ええと、ダメでしたか?』

 

 少年の善意1000%な少しだけ上目遣いで相手の言葉を待つ様子に神谷が八木を見つめた。

 

『構いません。我々を助けてくれたあなた方のご厚意です。受け取るよう言いましょう』

 

『あ、はい!! ありがとうございます』

 

 少年が缶詰を持って、護衛の相手などにも配っていく。

 

 それを横目にして苦笑しつつ、フィクシーが再び席に着いた二人に視線を向けた。

 

『差し出がましい事をしました』

 

『いえ、我々の食料が底を付きつつある事も、そちらは御存じだったと。それだけの事でしょう。貴重な食料の供出、感謝します』

 

 八木の言葉にフィクシーが苦笑した。

 

『数十人程度の食料なら水と土と陽射しが有れば、幾らでも作れますので。取り敢えず、お答えを聞かせて頂きたい。指揮官……貴方達は我々を()()()()()()()がお有りですか?』

 

『誠心誠意。ロスまでの護衛をお約束します。その後の事は更に上の者との会談で話し合って頂く、という事では如何でしょうか?』

 

 フィクシーが八木の瞳を見て数秒後。

 フッと笑みを浮かべた。

 

『では、御厄介になりましょう。共に行動中は武器弾薬が不足したならば、言って下されば、こちらから武器毎供出させて頂きます』

 

『そこまで……いや、本当に助かります』

 

 フィクシーと八木の手がしっかりと握られた。

 

 そんな遣り取りを挟みつつ、死者達をいつものようにゴーレムで埋葬して碑を立て、隊員達から目を丸くされた彼らはすぐに南部へ出立する事となった。

 

 片道数百km。

 

 だが、全員が車両に乗れるという状況下において、何一つ彼らが心配する事などありはしない。

 

 それが証明されるのは屋根の上に登ったクローディオの指示に従って蛇行しながらも確実に南部へ近付き。

 

 複数のゾンビ集団がクローディオの矢のみで駆逐された事からも間違いなかった。

 

 あのナンパ野郎ヤバイの報は隊員達の誰もが知る事になる。

 

 いや、それはそうだろう。

 銃弾ではなく。

 

 単なる弓と矢を移動中の車両から次々に射掛けて、頭部を貫通させながら進んでいたのだから。

 

 レンジャーの女性隊員が素敵と呟いた事を他の隊員達は聞かなかった事にした。

 

 午前8時から8時間32分後。

 数百kmの旅程は走破され、彼らはロスに帰還する事となる。

 

 そして、今や市長を横に置いて実質的に市庁舎の最高責任者となったバージニアが市庁舎前でキャンピングカーから出てきた彼らを温かく迎えたところを見て。

 

 村升、八木、神谷の三人は自分達が誰の掌の上で踊っていたのかを理解したような気がしていた。


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