ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

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第119話「煉獄を裂く者達Ⅱ」

 

―――アバンステア帝国帝都エレム。

 

『一体何がが起ったぁ!!』

 

『わ、分かりません!! いきなり、空が薄緑色に染まって!?』

 

『ドラクーンは何と言っている!!』

 

『初報です!! ドラクーンより大山脈の恐らくはヴァーリ付近よりこの空の異常が起きているようだと!! 現在、ドラクーンの高高度偵察部隊が急行中!!』

 

 帝都は混乱に陥っていた。

 

 だが、その混乱もまた彼らの奉じる聖女の書いた緊急時マニュアルを実践する事により、少しずつ収まっていく。

 

 状況確認を行い始めたドラクーンは竜の国、ガラジオンの撤収作業を横目に次々に大陸各地に向かって情報の確認を行っていた。

 

『ドラクーンからの二次報です!! 現在、時刻12:12分。我が方の南部方面隊との間に時刻のズレを3時間確認!! 帝国本土外での活動時間と時刻を照らし合わせた結果。大山脈のヴァーリを中心として大規模な時間障害とも言うべき事象を確認!!』

 

『何だと!?』

 

 帝都の参謀本部には今や次々にドラクーンの確認した情報が数時間起きに怖ろしい出来事が世界に起こっている事を彼らに教えていた。

 

 特に問題となったのは時間のズレだ。

 

 ゼンマイ式の帝国の精密なる時計が数時間単位でズレるというのだ。

 

 未だ帝国でもドラクーンにしか貸与されていないソレがズレるのは時間がズレている以外には考えられない程の誤差を産んでいた。

 

『報告です!! 帝都内の研究所の一部倉庫が完全に封鎖されています!! 見えない障壁のようなものを確認!! 急いで人員を照会していますが、姫殿下のお付きの方々の殆どが内部に取り残されているようです!?』

 

『何ぃ!?』

 

『リージ様は難を逃れたようですが、どうやら倉庫にはリセル・フロスティーナの二番艦が置かれていたらしく。新型の防衛装置を積み込んでいた最中だったと!!』

 

『閉じ込められたのか!?』

 

 帝都はテンヤワンヤであった。

 

 殆ど被害らしい被害は無かった。

 

 だが、南部皇国に向かおうとしていた聖女と連絡は取れず。

 

 それどころか。

 

 帝都の研究所とニィトは球状の不透明な膜で覆われて侵入出来ず。

 

 同時にどんな攻撃を受け付けないというのである。

 

―――数日後。

 

『これより参謀本部の定例議会を始める。議題は昨日に引き続き、情報の精査と正確な確認だ。君』

 

『はッ!! ドラクーンによる各地での時間変動に関する観測を元にした最新の情報です。ヴァーリの機密区画たるニィトを中心にして誤差が大きくなるようで凡そですが、帝都とヴァーリ近辺では凡そ1か月程の差があるようです』

 

『一ヵ月……長いな』

 

『また、各地も数日から数時間、酷い所では数か月単位の誤差が起きていると』

 

『何と言う事だ……それでニィトと研究所に出来たあの白い球体は一体何なんだね? 何か研究所側からは?』

 

『はい。詳細な情報を取っている最中との事ですが、どうやらゼド機関と最新の防衛装置によって時間障壁のようなものが二つの地点に展開しているのではないかと』

 

『時間、障壁?』

 

『はい。研究所からの推測では我々の見ている薄緑色の空が時間を変動させている最大の要因でソレから守る為に防衛装置が作動させられ、我々の世界と障壁内部の時間が隔てられているのではないか? という話だそうで』

 

『つまり、問題のあるのは我々、外の方で中の方が正常だと?』

 

『はい。ちなみに生物の発育に必要な光は得られているようで、植物の発育や人間への影響は今のところは確認されておりません』

 

『何と言う事だ。つまり、我々と二つの地点の時間が切り離された? であるならば、あちらはどうなっている? 研究所の方は何も食事を摂れねば全滅の可能性も……』

 

『滅多な事を言うな!! とにかく、情報が足りん!! 世界各地のドラクーンの情報を集め、現状維持のまま更に問題を洗い出せ!!』

 

―――1年後。

 

『研究所よりの最終報告です。ゼド機関を用いた空間掘削は失敗。どうやら隔てられた時空間を捩じ切るには恐ろしく動力が必要なようで……その動力の推計値は現在存在するゼド機関の全電気エネルギーを数千年分は消費する前提だそうです』

 

『ダメか……』

 

『また、発見された南部皇国の爆心地にある時間障壁ですが、バイツネード本家周囲を完全に覆い尽している為、内部は確認出来ず。ただし、内部から外部への干渉も不可能であるとの事であり、第一次南部皇国侵攻戦以後に発見が遅れた原因はあちらの時間差が4か月以上だった為だと判明致しました』

 

『つまり、聖女殿下の敵もまた同じ技術を持っていたという事か』

 

『はい。現在、南部皇国の立て直しをしておりますが、旧首都は放棄。例の地区を更に封鎖し、要塞化する案がドラクーンより出されております』

 

『議会の方には?』

 

『既に出されております。議会側もバイツネードの復活までに時間があるならば、やっておくべきだろうとの事です』

 

『よろしい。参謀本部はこれを全面的に支持しようと思う。意見の在る者は……無いようだな。引き続き聖女殿下の御帰還までに態勢を整えておかねばならん。諸君!! 此処が踏ん張りどころだぞ!!』

 

―――10年後。

 

『師団長。ドラクーンの長たる君の意見を聞かせて欲しい』

 

『はい。解りました。どのような案件に付いてでしょうか?』

 

『現在、聖女殿下の囚われている時間障壁はどうしようもない事が研究からは解っている。ガラジオンからは相変わらず、時間が来たら教えてくれの一点張りだ。バイツネード本家を倒す算段は付いているが、いつコレが終わるのかは今のところ誰にも分からない』

 

『聞き及んでいます』

 

『現行、大陸における帝国の地位は揺るがず。各国の一斉蜂起による親帝国閥の勃興で南部の国々は全て陥落した。大陸の統一政体発足まで秒読みであり、経済的にも盤石だ。北部諸国の開発と進展は目を見張るものがあり、西部の宗教国家の同盟参加によって大陸の全宗教が帝国式原則世俗化を受け入れた』

 

『存じております』

 

『東部諸国もまた我が市場を捨てられず。もはや、我らの経済活動に異を唱える者は大陸にない。帝国本土の開発は臣民となった元奴隷、移民達によって進み。彼らの同化事業も十年目にして第二世代以降は完全に帝国民として目覚めている。だが……』

 

『バルバロス……ですか』

 

『そうだ。ドラクーンが報告しているように、君が現地で戦い、ガラジオンもまた苦慮しているように、バルバロスの活発化によって大陸はまた新たな危機に瀕している。特に報告されている薄緑色の光を零す【例外種】……君達が【アウトナンバー】と呼ぶソレは恐らくこの大陸の現状の為に現れた化け物だろう。強さは今や嘗てのバイツネードが送ってきた化け物達にも匹敵する以上、対応が必要だ』

 

『それは間違いありません』

 

『……二日前リバイツネードの局長から戦力の整備は完了したとの報告があった』

 

『ッ、それは……』

 

『蒼の欠片によって強化された彼ら【聖女の子供達】をドラクーンとは別に例外種の駆除に特化して投入をと我らは考えている』

 

『つまり、意見を聞きたいとは……』

 

『ドラクーンの拡充はこの10年で10万人まで増えた。だが、彼ら聖女の子供達はオリジナルと呼ばれる最初期の子供達の後にも続々と生まれている。大陸全土でリクルートしているが、それでも減る気配がない。今やリバイツネードが学園機関となって3年……総計で120万人近い』

 

『彼らには彼らの生活があるはずです』

 

『だが、彼らは戦える。あの局長は絶対に自分の意見を曲げんだろう。もしも、ドラクーンが引き受けねば、勝手に軍事組織化すると言い放っている』

 

『解りました。ですが、いきなりは無理です。新規教導隊の結成の御裁可を頂きたい』

 

『解った。今のところは最初期の600人の投入から始めたいとあちらは言っている。順次一年ずつ増やして研究所の兵器開発にも咬ませろとな』

 

『……解りました。今の彼らと戦えるのは我が覇竜師団ドラクーンくらいでしょう。業務提携と同時にドラクーンとの交流を。10か年計画でどうでしょうか? 教導には時間が掛かります』

 

『解った。では、ドラクーンとリバイツネード。聖女の二剣たる君達に今後の対応は任せよう』

 

―――??年後。

 

『大公閣下の崩御によっていよいよ帝国は民主主義国家の道を歩み出すのか』

 

『もはや、時は満ちた。今こそ、姫殿下の悲願を為さしむる時』

 

『お姉ちゃん。行ってくるよ』

 

『あの坊や達が今じゃこんなに立派な……ふふ、あたしも齢取ったわね』

 

『姫殿下とお姉ちゃん達が返って来るまで、僕達が帝国を護るよ』

 

『行きなさい。次の世代はアンタ達よ』

 

『うん!!』

 

『言って来ます。必ず帝国を発展させてみせる。次に会う時までに失望させないように……』

 

『おーい!! 電気駆動車来てるよ~~お父さ~ん』

 

『ああ、息子が呼んでるや。行ってきます』

 

―――??年後。

 

【帝国臣民の皆さん。本日、来るべき日は来ました。遂に大陸全国家の参加によって本当の大陸統一政体。リセル・フロスティーナが発足したのです!!】

 

『これで大陸も平和になるかな。御父さん。ラジオ消すけど良い?』

 

『ああ、構わないよ。ようやく姫殿下の御心に我々は……』

 

『ねぇねぇ。御父さん!! 姫殿下ってどんな人だったの? 学校じゃスゴイスゴイスゴイ人~~くらいにしか教えてくれないんだけど』

 

『ものの本は読んだかい?』

 

『うん!! でも、お父さんは会った事があるんだよね?』

 

『はは、実は会ったというよりは見ただけなんだ。でも、お父さんが通ってた青空学校の先生……今の教育学会を牽引している方々は会ってたし、僕らに教えてくれたよ。色々とね』

 

『へ~~でも、嘘っぽくない?』

 

『嘘っぽい?』

 

『だって、何の歴史の本見ても、全部どんな分野を見ても『姫殿下及び家臣団の方達が最初に研究成果を発表した』って定型文みたいに書かれてあってさ。何でもかんでも姫殿下のおかげって……凄く盛ってない?』

 

『く、くく、あははは……そうか。そうかもな。確かにそう思えるよなぁ』

 

『?』

 

『いいか? 我が息子よ。この統一政体初代首相が嘘偽りなく言おう。それは全て真実だ。政府のプロバガンダも如何なる嘘もあらゆる欺瞞一つ無く。それが真実なんだ』

 

『―――え、あ、ぅ……ほ、本当に?』

 

『ああ、我が家の家督を掛けてもいい。それと昨日来た御老人がいただろう?』

 

『え? えっと、元南部皇国の軍人の人だよね?』

 

『ああ、明日スピーチをするに当たって、あの方に聞いたんだよ。どうして、あの方の船の名前を凍らぬ華と名付けたのかと』

 

『え? もしかして、あの人ってあのお話の……今は航空機械企業体を束ねてるって……』

 

『ああ、会長だよ。元軍人にして政治家。南部皇国の立て直しと同時に北部航空産業の全てを取り仕切る方だ。もう数年の余命しか無いと仰っていたが、最後の仕事が出来たと喜んで下さってね』

 

『……その、どうして、その名前にしたの?』

 

『姫殿下その人が正しくそうだったから、だそうだ』

 

『姫殿下が……凍らぬ華?』

 

『そうだ。お前がいつも聞いていた姫殿下の御伽噺……一人で数十万の兵を引かせ。怖ろしき艦隊を薙ぎ払い、巨大なバルバロスさえも下した。その御方は……北部の凍える真冬の最中でも凛として立つ生ける華だった』

 

『………凍らぬ華』

 

『もしも、お前の時代に本物を見る事があれば、理解するだろう。この世には神より気高き人がいる。そして、神より美しく戦う者がいると』

 

『……お母さんに言い付けちゃお』

 

『止めてくれ。それは僕が死ぬ。息子よ……』

 

―――??年後。

 

『蒼の欠片が鳴いている……エジェット』

 

『はい。此処に』

 

『リニスを霊廟から起こせ。我が軍を再編成せよ。来るぞ』

 

『まさか? ようやくですか』

 

『ああ、あの姫殿下には言いたい事が山ほどある』

 

『確かに……今や人間を止めた手前、人前にもまともに出れませんしね』

 

『殆どの機能を封鎖しておきながら、これらの機能だけ開放してあった。その意味が此処で生きて来る……何処まで見通していたものか』

 

『来世までも付き合いますよ』

 

『ふふ、今やガラジオンが地名の時代だ。あのドゥリンガムの姫は人を止めてお付きを1人伴っているが、それもこの時代まで事情を知る人間を残しておきたかったからだろう』

 

『ようやく決着が付くのですか? 我が王』

 

『ああ、ようやくだ。そして、それはたぶん始りだ。嘗ての時代よりも技術も知識も格段に進歩した。これはかなりあちらとしても大きいはずだ』

 

『それはこちらとしても同意出来ます』

 

『今ならば四つの力に挑戦する事すら可能かもしれん』

 

『我が国の懸案を何とか引き伸ばして来ましたが、限界を超えて此処に辿り着いた。国という概念さえ薄れさせれば、もはや懸案は懸案とは成り得ない……嫌な話です』

 

『逃げ切られたという事だ。さぁ、あの外面に我らの長き年月の答えをぶつけに行くぞ』

 

『はい。お供します。我が夫よ……』

 

―――ヴァーリ機密区画ニィト。

 

「う……起きれたか」

 

 立ち上がって被りを降る。

 

 いつの間にか。

 

 ニィトの医療棟にいるようだった。

 

 立ち上がってようやく頭のスイッチが入った途端。

 

 まるで、耳元で大声で叫ばれたような莫大な反応が感知されて、思わず探索系能力の効果範囲を猛烈に縮小して事なきを得る。

 

「何だ今の!? どんだけ電波飛んでるんだよ!? しかも、ニィトのじゃない?」

 

 慌てて、傍にあった着替え。

 

 女物のワンピースをイヤイヤながらも着替えて医療棟から連絡通路を通って正面玄関付近に出られる本棟に向かうと。

 

 何やら慌てた少年少女と大人達がこちらを見て、すぐに来て欲しいと言ってくる。

 

「ああ、目覚めたのかい。こっちは大忙しだよ」

 

「教授。何が?」

 

「いきなり付近を飛んでる電波が数万倍まで倍増して、この通りだ』

 

 教授がスマホを見せてくれる。

 

 その中では次々に光点がニィトへ大量に押し掛けて来ていた。

 

「レーダー? 何だこの数!?」

 

「はは、空飛ぶ移動物体が正しく数千単位なんだが……」

 

「それで第一波は?」

 

「来る前に何とか迎撃態勢を整えてる最中だとも」

 

「司令部の方へ行ってください。オレが出ます」

 

「大丈夫かね? 例のアレを倒してからまだ2時間だぞ? 空間の歪みらしきものは途絶えたが、まだ少し歪みが残っていたのが消えた途端にコレだ。体が持たないかもしれないが」

 

「持たせますよ。完全武装には程遠いですが、電力はまだ少しストックがあります。エーカとセーカは?」

 

「2人にはシェルター区画に子供達を避難させて貰っている。空爆でも潰されない特別製だ。実質的には退避勧告だが」

 

「解りました。では、大人連中と一緒に下がって下さい。やれる限りはやります。先に地下の方に上の施設の制御を移しといてください」

 

「済まないな。解った。先に避難させて貰う」

 

「ええ、また後で」

 

「ああ」

 

 こうして教授が大人達にも避難を呼び掛け。

 

 こちらが先に外に出る。

 

 要塞周囲は山肌から何から真っ新の地面になっていた。

 

 先程倒したヤバイ何かのせいで要塞自体も複数の区画が崩壊しており、残念ながら要塞の外にいた反帝国連合軍は1人残らず土に還ったようだが、まだ捕虜達は残っているようだ。

 

 外に出ると次々に空を飛ぶ何かがこちらに向かってくるのが解った。

 

 しかし、最初に来た船を見上げて驚くしかない。

 

「二代目のリセル・フロスティーナ? この短期間でとか。どうなってるんだか」

 

 それは帝都の研究所で未だ建造中のはずの船だった。

 

「いや……アレじゃない? 細部が違う。コレは……」

 

 言っている合間にも船の後部ハッチが開いて竜騎兵が1人やってくる。

 

 黒い鎧に黒い竜のドラクーン・スタイルな誰かさんだ。

 

 だが、その装甲はまるで別物と言っていいだろう。

 

 今まで自分達が作っていたドラクーンの鎧よりも更に洗練されたような。

 

 あるいはロボット的な外殻に近いような。

 

 大きさも肥大化しており、2m以上だった。

 

 ドラクーンが降りて来た。

 

 鎧がプシュリという音と共に中央から開かれ、1人の壮年の男が内部から飛び降りる。

 

「………」

 

「?」

 

 何だか偉く動揺したような顔をされた。

 

 きっと若い頃ならば、イケメンだっただろう顔には皺が刻まれているが、瞳は綺麗な……。

 

「ちょっと待て。一つ聞いていいか?」

 

「何だい? フィティシラ」

 

「お前、北部の鉱山街に姉とかいるか?」

 

「いたよ。数年前に亡くなったけどね。帝国製じゃない万能薬で無理やり治したせいで他の人達よりは寿命が短かったらしい。でも、子供達に囲まれて大往生だったんだ」

 

「………お前、ドラクーンの一番上で頑張ってたりするか?」

 

「38年間現役だよ」

 

「空の色って久しぶりに見るか?」

 

「ああ、久しぶりだ。蒼い空を知らなかった子供達がはしゃいでたよ。さっき帝都で吃驚して見上げて泣いてる若者に空は蒼いものだと教えて来たばかりだ。部下も含めてね」

 

「………お前、フォーエか?」

 

「それ以外の何かに見えるなら、僕は君にもう一度顔を覚えて貰う為に昔語りでもしなきゃね」

 

「はぁぁぁぁ……」

 

 思いっ切り深い溜息が出た。

 

 だが、すぐに血の気が引く。

 

「いや、待て!? あいつらは!?」

 

「大丈夫。リセル・フロスティーナの二番艦は研究所内で此処と同じようになってた。さっき移動中に時間障壁が解けたって連絡があったよ。僕とリージ中尉、イゼリアさんとその兄弟以外は全員があの場に集まってた」

 

 相手をマジマジと見る。

 

「何年経った?」

 

 そこでようやく少年だったはずの壮年はこう微笑んだ。

 

「我が主フィティシラ・アルローゼン……五十年後の世界にようこそ」

 

 どうやら、また厄介な事になっているらしかった。

 

 次々に船がやってくる。

 

 それはリセル・フロスティーナの二番艦を模したものが多く。

 

 周囲は黒き鎧に黒き竜に埋め尽くされていく。

 

「そう言えば、ウチの剣が1人オレの所にいないな。ウィシャスはどうなってる?」

 

「それはこっちで話そう。案内するよ。最新鋭艦アルクタラース。僕の家なんだ」

 

 南部皇国行きは一時中断となったのだった。


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