ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

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第27話「北部大計Ⅶ」

 

「軍の方はどうだ?」

 

「何とか説得した。軍の者達もあの苛烈な王太子が婦女に暴行も働かず、略奪もせずにヴァドカに民を連れて行ったというところで安堵しているようだ」

 

「そうだろうな。実際、無理そうなら理由を付けて此処から追い出すところだった。本当にその意味だとそっちの信頼に頭が下がる」

 

「気持ちの悪い事を……それよりそちらの準備は?」

 

「ああ、もう出来た。平原東端の車列はこの2日で既に抜けたそうだ。森の連中はもう限界だな。そろそろ来るぞ。臭いの薄い場所を残しておいたからな」

 

「臭いで相手が来ているのが解るというのも嫌な話だ」

 

「野戦で不意打ちが不可能なんだから、褒めて欲しいくらいなんだがな」

 

「組み付かれたら悲劇だろう」

 

「現場の兵士にも頭の下がる思いだ」

 

 ユラウシャの市街地の波止場。

 

 その上でビダルと共に戻って来た船を確認していた。

 

 バンデシス隊が乗っていた船から大砲を降ろした後。

 

 街に残って貰った軍属の中から鍛冶などに沿岸部に砲台を設置する為の機材を作らせていたのだ。

 

 左程意味のあるモノではないのだが、相手に警戒させる為の目印くらいにはなる小道具だ。

 

「これからの段取りを確認しておくが、本当にあの策で行くのか?」

 

「皇国が此処に海上から砲撃して来た場合だけだ。上手く引き込む為には仕方ないな。一時的に生木を各所の大通りで燃やして煙りも出す」

 

「一応、民の内部にいた皇国軍らしい者は捕えてあるが、全てとは限らんぞ?」

 

「なら、それで構わない。要は連中が動くようにしてやればいい。どっちにしても相手は此処を確保する事が前提なんだ。合図は聞き出したんだろ?」

 

「ああ、だが、時間が早過ぎるだろう」

 

「だから、あのウチのバンデシス隊長に頑張って演技して貰ってるわけだ」

 

「……あの男が本当に信用に足ると?」

 

「自分の部下を見殺しに出来てるなら、とっくの昔にやってる」

 

「事態が変わる。心変わりする。どちらもありそうだが?」

 

「世の常ってのは常になる理由がある。そして、聞き出した情報から察するに外的要因じゃあいつは部隊の連中も裏切れない」

 

「抜かりないな……」

 

 船がようやく桟橋に戻って来ると中から大工道具を持った男達が次々に降りて来ていた。

 

「そっちこそ軍の説得、民の説得、事情の説明、ここ数日寝てるのか?」

 

「フン。そう思うなら、是非とも労って欲しいものだが」

 

「後でたっぷり労ろう」

 

「遠慮する以外無いな」

 

 ビダルが心底嫌そうな顔をしていた。

 

「ちなみに用意して貰った洞窟だが、あんなのはここらには沢山あるのか?」

 

「ユラウシャの領海内になら大小で20近くある」

 

「……まぁ、舞台の条件さえ満たしてれば、何処だろうが構わないんだが、これで全ての準備は終了だ。後は海賊旗でも掲げようか」

 

 言っている傍から余った布を適切に継ぎ接ぎする事で造った手作り感溢れるパッチワークな旗が帆船のマストへと掲げられていく。

 

「じゃあ、さっそく帝国公式(非公認)な海賊船の初仕事と行こう。ちなみに船長役やるか?」

 

「商人が船長をするのは商売よりも海での才覚がある者だけだ。それ以外は本物に任せておくのが習わしだ」

 

「なら、それに習おう。海賊船の初お披露目と行きますか……」

 

 背後からはノイテ、デュガ、アテオラが今度は一体何を始めたのだろうかとマストに挙げられていく粗末な竜の紋章入りな旗に嫌な予感を感じたように額へ汗を浮かべているのだった。

 

 *

 

「アルローゼン姫殿下ァ!! 見えて来ましたぁ!!」

 

 先日、大型の漁船でこちらを送ってくれていた船の船長と乗組員達が形ばかりな海賊用のわざとそれっぽく誂えた衣装を身に纏い。

 

 帆船を航行させて、ユラウシャの領海内部にある沿岸部の洞窟付近の海域へとやって来ていた。

 

 あの一件以来、縁から色々と海の話の参考にしたり、諸々の状況を作るのに協力して貰っている彼らは大型の漁船で沖合で昼夜無く魚を取っていただけあって、操船技術は十分なものだった。

 

「ここからは小舟で行こう。船を降ろすよう言ってくれ」

 

 船の甲板に用意されていた小舟を降ろす為の機材を見てもこの時代には最新の代物だと分かる。

 

 こんなのが10隻以上攻撃に来たら、幾らユラウシャでも対応出来ないだろう。

 

 乗り込むにも砲弾の雨を潜る必要があるし、乗り込める戦力で正規軍と甲板の上で白兵戦となれば、勝てるかどうかはともかく。

 

 かなりの被害が予想される。

 

 それどころか。

 

 遠方に逃がしていた他のユラウシャ所属の船の船員もある程度はもう買収されているかもしれない。

 

「ノイテ。デュガ。アテオラ。一応、ちゃんともしもの時の為に水着は着込んで来たな?」

 

「は、はぃ~~は、恥ずかしかったですけど何とか……」

 

「じゃ、行くぞ」

 

『今、降ろしますよぉ~~~!!!』

 

 船員達が縄で吊った船をゆっくりと展開した脱出艇を降ろすローラーの付いた機材で降ろしていく。

 

 船体は数百キログラムはあるだろうが、男十人掛かりなら左程揺れる事も無い。

 

 着水した船体の端の縄を解くと甲板からは胸に手を当てて挨拶する男達がお早いお戻りを、と声を合わせて送り出してくれた。

 

 ノイテとデュガが付属のオールで漕ぎ出し、数十m先の入り江と繋がる洞窟へと向かう。

 

 海上から入れる大型の洞窟ならば、何処でも良かったのだが、丁度良さそうな場所があったのは正しく僥倖だった。

 

 内部を見れば、既に簡易ではあるものの。

 

 真新しい桟橋と洞窟の奥に続く場所に幾つも陶製の器上となっている篝火を置く場所が備えられていて、油を大量に沁み込ませた布地が丸ごと置かれたソレの先端に火を灯すとすぐに周囲を照らし出してくれた。

 

「結構雰囲気あるな」

 

 海水に侵食された洞穴は天然自然のものだ。

 

 海側から入って浜辺付近の砂浜のある沿岸部に出る。

 

 浅瀬ではあるが、今の中型帆船でも操船さえ気を付ければ、出入りは可能な規模であるのもポイントが高い。

 

「行くぞ。持って来た煤で台の下は少し汚しとけよ」

 

「へーい」

 

「抜かりないですね……」

 

 海賊船になる前の船に乗せた軍の大工と各種の技能集団には細々とした舞台装置をこの洞窟内に置いて貰ったのだ。

 

 足を滑らせないように灰を撒いた道。

 

 誘導路となる篝火の設置場所。

 

 それっぽく作り。

 

 最も奥で神殿ならぬ祠を一つ。

 

 その最中には適当な海の生物を模した石像を一つ。

 

 禍々しくというご要望に応えて貰ったとの話だが、まだ実物は見ていない。

 

「此処が最奥部か」

 

 歩いて1分。

 

 背後の2人が壁際を煤で汚しながら歩いていくと。

 

 行き止まりはやってくる。

 

 地底湖というのは違うのだろう。

 

 潮の臭いのする海底湖と言うべきか。

 

 魚は居なさそうな場所は大きくは無く。

 

 精々が20m程であった。

 

 その前の祠は真新しい木製でこの北部諸国ではバルバロスを祀るところのスタンダードな代物らしい正方形のこじんまりとしたお地蔵さんの祠染みたものが置かれていた。

 

 内部の石像はどうやら蛸を禍々しく彫り込んだものらしい。

 

 すぐに出来を確認して戻し、周囲を見回してから、火の付いた篝火を陶製の蓋を置いて消していく。

 

「確認は終了だ。これで連中もさすがにそう怪しめないはずだ。船に戻ったら浜の後方で待機してる部隊と打ち合わせして、来た順番に襲っていく」

 

「一つ聞いても?」

 

「何だ?」

 

 ノイテがジト目になっていた。

 

「何度も乗り込んで相手を倒してという事を繰り返すのですか?」

 

「ああ、気にしてるのはそういう事か。心配するな。人死には殆ど出ないぞ」

 

「どういう事です?」

 

「つまりだよ。正規軍の勝利条件は何だと思う?」

 

「勝利条件?」

 

「やつらはバルバロスを欲してるわけだよな」

 

「ええ、そういう話だったはずですが」

 

「だから、ソレをくれてやるわけだ」

 

「バルバロスを?」

 

「さっきの石像。あれ、後20個は作らせたからな」

 

「―――また、お得意の嘘ですか?」

 

「石像はバルバロスを操る聖なる御神体!! 傷を負っても何とか辿り着いた味方が教えてくれた情報!! ついでに陸の連中とは連絡も取れない」

 

「悪魔ですね」

 

「さて、その上で船を取られて、海上戦力しか当てが無くなったバラバラな連中がバルバロスを特別な儀式をすれば操れる御神体が隠されている秘密洞窟の事を知ったら、どうすると思う?」

 

「そこを占領しようとするでしょうね」

 

「勿論そうだ。だが、陸から弓を持った騎兵隊が押し寄せて来たら?」

 

「逃げますね」

 

「何処に?」

 

「それは勿論船に……」

 

「その船からわざわざ砲撃して、この場所を死守するか?」

 

「それは……考え辛いかと。少なくとも騎兵や兵隊の数が明らかに上回っていれば、幾らか攻撃してから撤退するのでは?」

 

「じゃあ、すぐに兵隊達が護りを固めて陸地の奥に逃げたら?」

 

「仕方ないので本国へと石像を輸送し―――」

 

 ノイテが押し黙った。

 

「まぁ、そういう事だ。ちなみに最新の船の情報は仕入れてある。そして、海で活動するに当たってオレが船に対する備えをしてないと思うか?」

 

「どうやって止めるというのですか?」

 

「海賊船があるんだから、海賊するだろ?」

 

「……1対十数隻相手ではないとしても、数隻一緒に来た場合、勝てるとでも?」

 

「逆に聞くが、すぐにオレに今ここですぐに用意出来ないものって何だ? ちなみにあのトンネルを抜けた時に集めさせたものは途中の時間で少しずつ使わせて貰った……実験器具と揺れが少ない馬車様々だな」

 

 その言葉でノイテが疲れた顔になった。

 

「何やら妖しい事をしていると思っていましたが……そんなものを……ちなみに白兵戦は要らないと?」

 

「必要無い。ついでにウチの竜騎士様がいるから、実際船はゼンドを休ませる止まり木くらいの意味しかなくなった」

 

「空から? また、臭いを封じ込めた瓶でも使いますか?」

 

「いいや、それすら必要無い」

 

「必要無い?」

 

「先日の陸の兵隊を誘導する時に上からモノを投下した際の精度も殆ど正確だった。海辺の風はアテオラに読んで貰ってる。後は夜の備えをすれば完璧だな」

 

「相手が本当に理不尽に全滅する未来が見えますね」

 

 小舟に乗り直して再び海賊船の方へと戻っていく。

 

 すると、既に陸の方から騎馬が数名やって来ていた。

 

 すぐにあちらに小舟をあちらに向かわせると。

 

 現地部隊らしき男達が命令を受領した様子で予定の最終確認を行ってくる。

 

 取り敢えず、周辺地域にはバンデシス隊の面々が時間差で相手が到着するようにと言い置いているはずだ。

 

 裏切ったなら、裏切ったで構わない。

 

 勿論、仲間の命の保証はしない。

 

 そう言われなくても解るだろう事実を前にして役者になった彼らの成果はすぐに解る事だろう。

 

 まず最初に昼時やって来た哀れなカモは恐ろしい演目を見る事になる。

 

 何事も準備の賜物であった。

 

 *

 

『隊長。これが例の洞窟、ですか?』

 

『ああ、そうらしい。どうやら定期的に儀式を行っているという情報は本当のようだな』

 

『それにしても何故、この場所に20人も連れて?』

 

『それは後で説明してやる。それよりもおお……これが祠か?』

 

『あれがバルバロスを操る御神体の入った?』

 

『何でも一定の儀式をしなければ、効果は無いらしい』

 

『そうなのですか?』

 

『ああ、あのバンデシス隊の生き残りが言うには一番近くの港にいた連中はどうやらコレのせいで全滅させられそうになったらしい』

 

『どういう?』

 

『傭兵共を全滅させたのは本国の指示だったが、それを今度はあの邦がやろうとしていたって事らしい』

 

『何の話ですか?』

 

『数は20人必要なんだ』

 

『20人?』

 

『まぁ、とにかくだ。この場所で20人が一斉に儀式をして初めてこの祠内部のご神体は使い物になるらしい。お前ら、服を脱いで剣をその湖に投げ入れろ』

 

『よ、よいのですか!?』

 

『構わんだろう。これが手に入れば、こんな辺鄙なところに用事など無い。ユラウシャが内乱状態になっているという話の今、陸とも連絡が取れん。ならば、予てから言われていたバルバロスの奪取に等しい御神体の確保を行い帰還すれば、それだけで大手柄だ!!』

 

『わ、分かりました。ですが、何故に剣を湖に入れるのですか?』

 

『バルバロスに敵意が無い事を示す為だそうだ』

 

『それならば分かりますが、何故服を?』

 

『全裸の男でなければならんのだそうだ』

 

『はい?』

 

『とにかく、湖にまず入って今から教える聖句を唱えろ。一刻程唱えた後に船まで戻って来い。儀式が完了した後、祖国に出発するぞ』

 

『わ、分かりました!!』

 

『オレは先に御神体と共に戻っている』

 

―――30分後。

 

『さ、寒い。オイ。もういいんじゃないのか?』

 

『ダメだ!! 隊長殿は一刻と仰られたのだぞ!!』

 

―――1時間後。

 

『も、もう限界だ!!』

 

『オ、オレも!?』

 

『オレもだ!?』

 

『あ、オイ!?』

 

 ノコノコと湖から上がって洞窟の外に出て来た全裸の兵隊達に弓兵の弓矢と剣先が突き付けられた。

 

「な!!?」

 

「掛かれぇえええ!! 取り押さえろ!! 相手は水で躰を冷やして鈍っているぞ!!」

 

「どういう事だ!? 何でユラウシャの兵が!!?」

 

 紅茶を嗜みつつ。

 

 さっき沿岸部で捕まえた船を横目に2隻目の海賊船にニヤリしておく。

 

 砂浜の奥にある雑木林からも海岸線での様子は見えた。

 

 丁寧に気絶させるなり、縛り上げるなりしたら、すぐに炎を消して退却しろとの命令を忠実に実行してくれるユラウシャ軍の兵達は捕まえた皇国兵を連れてダッシュで海岸線沿いの後方へと戻っていく。

 

 無論、足跡は最後尾がモップのような急遽作らせた道具で消しながら、だ。

 

「なぁなぁ、フィー。何であんな事してたんだ? あの船の隊長」

 

 横のノイテが菓子をボリボリしながら訪ねて来る。

 

「ああ、単純だ。バルバロスが普通に従属するわけないだろ。だから、敵意が無い無垢な男の生贄の儀式が必要なんだと嘘を吹き込んだのさ。あのバンデシス隊にもな」

 

「嘘?」

 

「裏切ったところで嘘の情報しか知らないんだ。だから、これからコレを相手に吹き込んで来いとしか言われて無い奴らにはその真偽が分からない」

 

「ああ、そーいう事か。でも、何ですぐにあの海賊船で船を拿捕出来たんだ?」

 

「難しい言葉知ってるな。単純だぞ。超射程の火砲が海賊船には積んでありまーすって嘘を信じ込ませただけだ」

 

「ちょーしゃてい?」

 

「海洋に落ちた瞬間に爆発する程度の薬品を海上の相手が見えないくらいの上空にいるフォーエに落とさせた」

 

「それをどうやって船からのものだと思わせたんだ?」

 

 タイミングが取れないと言いたいのだろう。

 

「簡単だ。馬車の後ろに積んでただろ? 大きい鏡」

 

「あ、お化粧道具か? もしかして……上空に?」

 

「そうだ。鏡をキラキラさせたら、船の周囲に薬入りの瓶を落とす。火薬の煙は灰の入った袋を小さな火薬で爆発させて捏造。瓶は海面で割れてドッカーン。『馬鹿なぁああ!! あんな遠方からぁ!!? これでは逃げられん!!』 ってな?」

 

「よく時間合わせられるな。きょーこーとっぱするんじゃないか?」

 

「そこで海賊船に気を取られてる連中に真上からフォーエが急降下して連中に叫ぶわけだ」

 

「あ、嫌な予感……」

 

「『諦められよ!! 皇国の方!! 我が名はフォーエ・ドラクリス!! アバンステア帝国!! 大公家の姫君より【覇竜師団ドラクーン】を賜りしもの!! 貴君らは見えざる我が師団に完全包囲されている!! 我が軍団のバルバロスと船は貴君らの船をいつでも見えざる遠方から破壊出来る!!』」

 

「うわぁぁ……(´Д`)」

 

「そして、上空から落とした薬品がまた時間差で船の周囲で起爆。それも一斉に敵の船の方角からじゃない攻撃だ。どうする?」

 

「どうって……そんなの本当にいると思うぞ?」

 

「そうだ。砲撃で混乱中の敵だ。まともな思考が出来ると思うか?」

 

「嘘に嘘の重ね塗りだぞ……後、絶対本当の事知ったら、相手が怒るやつ」

 

「だが、相手からすれば、本当にいるかもしれないんだ。どうにもならないだろ?」

 

「うぅ……逆にもう相手の方が可哀そうになってきたぞ?」

 

「それでな。『此処で貴君らを沈める事を我が姫君は良しとせず!! もし、降伏するのならば、命までは取らず。奴隷にもしないと約束しよう!! 返答を求める!!』と来るわけだ」

 

「あ、悪魔だな。ふぃー」

 

「単なる情報戦だ。一隻目ゲット。ちゃんと次善策も考えてある。これで後、何人釣れるか試そうか」

 

「嘘に騙されないヤツがいたらどうするんだ?」

 

「その時は本命の爆薬を海面スレスレからあいつに船底へ当てさせる」

 

「それ海の上からじゃ絶対防げないだろ……」

 

「船の後ろから追い縋って、ポイッと投げて逃げるだけだからな」

 

「確かに昔部隊と一緒に戦ってた時とか、動きの鈍い戦力はスゴイ火矢とか油とか効果的だったけど」

 

「ちなみに時間差と言っても2隻や3席同時に来たら通用しないかもしれない。その時も船自体は諦めて沈没させる方向にする」

 

「それ死人出ないか?」

 

「船の船底に穴を開けるだけだ。泳げないって事はないだろう。勿論、海難救助をしてくれる海賊船もいるわけだ。完璧だな」

 

「うわぁ……」

 

 こうして二隻目の船はユラウシャ軍に任せて南部との航路上へと向かわせ、その夜になるまでに約8隻が釣れた。

 

 誰も彼も部下を犠牲にしようとするクズが隊長だったおかげでスムーズに意見の統一が可能な人数しかいない船というカモになった。

 

 まったく、他人の意見を聞かないクズが多くて助かるというのはバンデシスには聞かせられない話に違いなかった。


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