ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

358 / 631
間章「宵の金砂の黄昏に」

 

―――???

 

 この世界が闇に包まれてから、一体どれだけの時間が経ったのだろう。

 

 砕けた星々。

 消えゆく魂の残響。

 暗く暗く衰えていく漆黒の中の灯。

 終焉と誰かは言った。

 何もかもが消えてしまう。

 

(寒い……寒い……寒い……)

 

 嘗て冷えゆく宙に多くが言った。

 これは運命だと。

 変えられない出来事なのだと。

 諦めずに旅立った者がいた。

 嘆かずに花を育てる者もいた。

 苦しまぬ為に死んだ者すらいた。

 でも、何も変わらない。

 まだ子供は残っているだろうか?

 

 昔ならば向かえた場所にある暖かな家と家族はいるだろうか?

 

 昨日のようにも感じられる想い出達。

 もう傍にいたはずの最愛の人すら見えない。

 もう先に旅立ってしまったのか。

 彷徨わせる手は何も掴まない。

 何も感じない。

 虚ろに自分が融けていく。

 世界は冷えて、止まって、永遠となる。

 無限に誰とも触れ合えない孤独と決して取り戻せない温もり。

 あの日の空を見上げて、色褪せていく全てがただ懐かしく。

 手を伸ばして、伸ばして……気付く。

 そこには誰もいない事に。

 

―――死。

 

 どうすれば良かったのか。

 思い出せない。

 何をすれば良かったのか。

 思い出せない。

 結末が寂しくて。

 泣き出そうとしても。

 凍り付いたモノは動き出さない。

 そのまま………全て………終わる。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ふと。

 

「?」

 

 天に輝きを見た。

 そんな事は在り得ない。

 きっと、それは想い出だ、幻だ。

 いつかのどこかの幸せだった時の。

 けれども、その輝きは。

 宵の金砂の黄昏に。

 

 手を伸ばす。

 手を伸ばす。

 涙が溢れる。

 手を伸ばす。

 届かない。

 届かせたい。

 届きたい。

 届け。

 手を―――取られた。

 

「一つ、お願いがあるの」

 

 涙で何も見えない。

 手を取ってくれた誰かは見えない。

 グシャグシャになった顔では見えない。

 滲んだ世界にそれでも美しい長い長い綺麗な髪の色。

 

「忘れないで。これを……」

 

 小さな欠片。

 何かの欠片。

 

 それを穏やかな声の誰かはそっと握らせて、くれて―――私は―――。

 

→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。