ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

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第171話「最後に食は勝つ」

 月兎皇国イナバ大公長子クト・イズミ・イナバ。

 10代と言っても通じそうな優男。

 今は甲冑の類は付けず。

 

 アウルの下で働く事になった投降兵がやってきたのは明け方から少し過ぎてからだった。

 

 前日の襲撃者達の処遇を協議した後。

 

 そのまま書類仕事を終えて、嗜好品(お茶)と書かれた缶詰から何の葉かも分からないソレをポットで煮出して三分後。

 

 何処かまだお坊ちゃんのようにも見える相手が畏まった様子でやってきた。

 

 これで都合4回目の再会。

 

 陣地端の執務用の道具しかない天幕内部で出迎えれば、あちらは恐縮したらしく。

 

 頭を下げつつ、対面にある椅子へと座った。

 

「昨日の夜は御疲れ様でした。セニカ殿」

 

 賢者殿と呼ばれ過ぎても疲れそうなのでそういう呼び名で落ち着いて数日。

 

 今日もやってきたイナバは嘆願書というか。

 報告書の束をこちらの執務机へと置いて、元の席へと戻る。

 

「此処での生活には慣れたか?」

 

「はい。皆さんには良くして頂いて……アウル神官にも……頭の下がる思いです」

 

「そうか。上手くいってるならいい。で、そっちの首尾は?」

「はい。もう父からは承諾がありました」

 

 パラパラと書類を捲れば、こちらの要求したものは一通り揃えたのが分かった。

 

「順調だな」

「ええ、おかげさまで」

 

 渡された書類の束はイナバの生家である大公家との裏取引に使う代物ばかりだ。

 

 あの無能との戦争というよりは蹂躙の後。

 

 見かけに寄らず積極的で微妙に世間とズレた感覚もある青年は大公との秘密裏の外交ルートの構築を願い出た。

 

 合同神殿の神官連中が負傷者と昏睡者と投降兵を収容する最中。

 

 野戦陣地で語られたのは月兎皇国の中でも皇帝の座に近い男。

 

 イナバ大公がウィンズ卿を密かに支援しようとしていた、という何とも有りそうな話であった。

 

 ウィンズとこちらの関係を何となく察していた彼がさっそくカイゼル髭との謁見に望んだのが一日後。

 

 そこからサカマツとの協議で大公側と接触。

 

 現在は魔術による通信でホットラインを確保しており、秘密協定の内容は順調に進められている。

 

 あちらがウィンズ相手に要求しようとしていたのは戦後処理のタイミングで皇家を筆頭に統治者層で未だ非主流派なハト派の身柄の安堵。

 

 そして、私有財産の拠出で月亀の戦後処理にこちらを関わらせて欲しいとの約束だった。

 

 どうやら、こちら以外にもウィンズの動きを読んでいた相手がいたらしい。

 

 だが、それはもはや過去。

 

 魔王と呼ばれる相手との共闘によって、変化したウィンズの反乱軍の目的とは基本的に合致しない。

 

 そこでカイゼル髭には頑張って大公を説得してもらった。

 

 無論、こちらの麒麟国の情報を切ったのであちらも今後の展開が読めたらしく。

 

 すぐ要望を修正。

 

 最終的には反乱軍が首都入場を果たした場合に戦後処理に加わる確約と引き換えに諸々の情報支援が始った。

 

 こちらにとっては国家の内情を丸裸にするには願ったり叶ったりであり、断る理由も無い。

 

 あちらもさすがに料理人な神官数千人や討伐軍をほぼ無傷で屠った手腕は評価しているらしく。

 

 書類上の遣り取りでも魔王からの要望が軽く見られる事は無かった。

 

 軍の動向と首都の政治状況はそれからすぐ様に入って来て。

 裏方の相棒が情報を逐一検証。

 

 まだ明らかに嘘や事実誤認を狙った情報操作も無い様子なので情報源としてはしばらく信用していいだろう。

 

 大公側には今後を見据えて、こちらの要望に応える現地の実務者組織を結成してもらい。

 

 諜報部隊と接触させ、合同で布石を打たせまくっている。

 

 その報告書の内容は概ね良好であり、一気にそちらの心配がほぼ解消されたので、各地に散らばせた補給部隊の方に現在はこちらも注力している。

 

「それにしても近衛だったという話ですが、昨日の夜半は大変でした。いきなり火柱があちこちで上がったと思ったら、突如として12人程が強襲を掛けて来まして。ウィンズ卿とサカマツ氏が表に出て何とか治めましたが、ループ・パラライズを広域化されて、危うく意識のあるまま寝違えるところでした」

 

 暢気そうに「あはは」と笑う神経はさすが天然そうな上級国民か。

 

 何処か抜けているのに余裕と気品を感じさせる。

 

「で、今は連中大人しくしてるか?」

 

「はい。アウル神官が先程も話し込んでいました。あちらは悔しそうな顔をしていましたが、近衛でも今の現状の酷さは理解しているようで、約束は守られるかと」

 

「ならいいんだ。その中に若い女の子が3人いたと思うんだが、そっちは見たか?」

 

「え? あ、ああ!! あの子達ですね。近衛で耳無しなんて凄い実力者なんでしょうが、アウル神官に何か同情的な目で見られてたような」

 

(まぁ、そりゃそうか。チート相手に一瞬で意識を飛ばされて捕縛。あれだけ実力に自信があったんだから、誇りも打ち砕かれまくり。経験者にしてみれば、こんな女の子相手に手を上げるとか魔王大人気無さ過ぎ、とか思われてそうだな)

 

「それでセニカ殿に一つ折り入って頼みがあるのですが……」

 

「何だ?」

 

「襲撃してきた彼ら近衛は戦力的には上級の神官にも匹敵します。アウル神官に彼らを預けてみては如何でしょうか? さすがに反乱軍そのものに組み入れるのは無理でも、人徳者であるあの方にならば従ってくれるのではないかと」

 

「……それは考えたんだが、昨日の今日だからな。頭が冷えるまでもう少し待とうかと思ってたんだ」

 

「そうでしたか。では、自分からも切にお願い致します」

「何かあいつらに対して思うところでもあるのか?」

「あ、はい……実は昔、近衛に所属してまして」

「何?」

 

「あ、いえ!? もう六年も前の事ですから……彼らは自分がいた部隊とは別でしたし」

 

「そうか。ちなみに尋ねるが、近衛の内実ってのはどんなもんなんだ?」

 

「お答えしたいのは山々ですが、自分のいた部署は閑職でして……いや、閑職というか。基本的には役職だけで殆どの人材がまぁその……働きもせずにお茶を啜って、必要な儀礼に出るのが仕事のようなところだったので……」

 

「ああ、つまり、殆どは貴族階級連中の箔を付ける為のお遊戯会みたいなところなのか?」

 

「ズ、ズバリ仰いますね。いえ、まったくその通りなので反論も出来ないのですが、昨日襲ってきたのは恐らく地方を検察する下級人員の方々だと思います」

 

「けんさつ? 地方の同業者の監視でもしてるのか?」

 

「ええ、近衛は各地方貴族の上澄み層の子弟が入るのが殆どなのですが、その手足というか。雑用というか。各地の貴族に睨みを利かせる為の力も必要なもので優秀な一般からの人材も幾らか入っているんです。皇族の直轄部隊もありますから、そちらの方ではないかと」

 

「そういう事か。分かった。つまり、連中は噂の皇女殿下の下働きなわけだな」

 

「はい。ですが、一つ誤解の無い様に言い添えておくと。彼らの上司が独断で皇女殿下の意思とは関係なく襲わせた可能性が高いと思われます」

 

「根拠は?」

 

「皇女殿下は少なくとも人の命をとても大切に思っていらっしゃいます。何度かお会いした事もありますが、反乱軍の陣地を襲って無力化しろ、なんて犠牲の出そうな命令をするとは思えません」

 

「こっちの情報とも合致するな……個人的な皇女殿下の性格は分かるか?」

 

「今言ったように命を大切にしておられます。この戦争にも胸を痛めている事は確実かと」

 

「分かった。あっちからの報告がまたあったら、持って来てくれ」

「了解しました。では、これで」

 

 頭を下げてイナバ天幕の外に消えていく。

 

(ふぅ。大体、情報が集まってきたな。あちらの戦力と皇女殿下の思想や思考も見えてきた。問題は側近系の連中……さすが皇族筋の情報だけあって、大公側からも詳しいのが出てこない。戦中という事を考えても、開戦までに抜くのは難しいかもな)

 

 次々に押し寄せてくる問題を薙ぎ倒し続けて尚まだまだ山済みの課題は多い。

 

 だが、そればかりに感けて体調管理を疎かにするのもアレなので食事しに行こうと幕屋の外に出た。

 

 陣地のあちこちに何やら昨夜の戦闘跡らしき焦げた地面や膾切りにされた雑木林、地割れのように切り裂かれた地面等々が朝の明るさの中に映し出される。

 

 あちこちで兵達が地面の修繕と壊れた備品や幕屋の搬出。

 

 練兵場に向かいつつ、ジャンクフードを齧るような様子が見受けられた。

 

(やっぱり、レーションや糧食の改善は効果があったな。時間短縮にも為るし)

 

 忙しい者はそういう簡単に摘めるものを。

 

 そして、まだ時間に余裕がある者は先日立ち上げた補給大隊下に新設した料理人部隊の作るキッチン前のカウンターに列となっている。

 

 兵農混合軍が主流の中。

 

 それでもウィンズの軍はほぼ常備軍レベルの規律が叩き込まれていたので教える事が少なくて助かったのは記憶に新しい。

 

 サカマツの部隊も同じくよく統制が行き届いていた為、最低限の近代的な常識を覚えさせるのに苦労は無かった。

 

 神官連中は言うに及ばず。

 

 なので、それらの人材を監督役に投降した元討伐軍の兵隊稼業を続ける事を選択した連中を教練させている。

 

 最初の二日程はゴタゴタもあったが、現在は此処の陣地の規律はすっかりと覚えた様子で傭兵崩れだった連中も大人しく規則には従っていた。

 

 その最たる理由こそが料理の上手さだと言うのだから、如何に人間にとって食が偉大である事か。

 

 今の今まで極端な味付けで極マズ料理の最底辺を食ってきた柄の悪い連中が、この料理を食う為ならば、面倒な規律も守りますという心地になっているのだ。

 

 衛生面も現在はかなり改善されており、1日に1回は風呂に入れているので此処は神々の御許かと極楽気分な兵すらいるらしい。

 

 文化は偉大なり。

 切実にそう思うのも無理は無かった。

 自分も並ぼうと列の最後尾を確認しようとした時。

 何やら陣地の端で悲鳴が上がった。

 

 そちらを見やると何やら料理人部隊の一部らしき白いエプロン姿の男達が捕虜収容所という名の単なる宿泊施設の前で魔術の封印用の護符と手械を付けられ、テーブルに座らせられた十数人の人物達を前に何やらしている。

 

『ほーら、おじさん御手製のぶっといのを食べようねぇ』

 

『い、いややぁああ!!? 何なん!!? そのぶっとくてブルンブルンしてるの何なん!!?』

 

『ほーら、どろーり美味しいソースもあるよぉ』

 

『そ、その白いの何なんですか!? や、止めて下さい!? は、離してぇ!!?』

 

『ほーら、美味しい美味しい完全食を食べようねぇ』

 

『ルア!!? ソミュア!? くッ、離して!? そんなイカガワシイ色のものを近づけないで下さい!?』

 

「………」

 

 何やら見た事のある少女達が料理人達の心底善意なオ・モ・テ・ナ・シを前に悲壮な様子で顔を限界まで背けていた。

 

 いや、この世界には無かったソーセージとホワイトシチューとカレーが振舞われているだけなのだが。

 

『そんな事言わずに絶対美味しいからさ☆』

 

『う、嘘やぁ!? そんなブルンブルンした長い食べ物なんて見た事ないよウチ!!? きっと、魔王の作った自白用の魔術や薬でも盛られてるんやぁ!!?』

 

『大丈夫だって。僕らも毎日食べてるからさ☆』

 

『うぅ!? そ、そんなにどうして濁って白いんですか!? な、何か変なものを入れてるんじゃ!? た、食べませんから!! た、食べませんから近づけないで下さいぃ!?』

 

『ほら、早く食べないと冷めちゃうからさ☆』

 

『ぜ、絶対そんな色のものを食べたりしません!? しませんから!!? ルア!! ソミュア!! が、頑張って!!』

 

 半泣きな少女達は何とか抵抗していたが、しょうがないと肩を竦めた料理人達が背後をチラリと見やる。

 

 其処には全身鎧姿の神官が数名存在しており、物凄い複雑そうな表情をしながらも、ブツブツと呪文を呟いた。

 

 そして、魔術が発動したのか。

 

 同じように顔を背けていた近衛達が顔を真正面に向かされ、容赦なく口を開かせられる。

 

『『『?!!』』』

 

『だいじょーぶ、だいじょーぶ、食べればもう君達は僕達の料理の虜さ♪』

 

『そうそう。僕達も魔王様の料理の虜だからさ♪』

 

『きっと、神の御許にいるような気分となるに違いないさ♪』

 

 後の神官達は料理人達の鬼気迫る食わせようという熱気と笑顔に若干引き気味だ。

 

 しかし、捕虜を丁重に持て成すという理由から朝から豪勢な食事を振舞っている、というシチュエーションは理解しているからか。

 

 仕方無さそうにソーセージやスプーンが口に突っ込まれたのと同時に口を閉じさせた。

 

『むぐぅうううぅぅぅぅぅうううぅぅううう―――むぐ?』

『ふぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううぅぅぅううう―――ふぐ?』

『もぐぅぅうううぅぅぅうううぅぅうううう―――もぐ?』

 

 阿鼻叫喚。

 

 涙目だった少女達を筆頭に近衛達の大半が一瞬一噛みした後、少し考えるような素振りをしてから、椅子に座らせられたままバターンと後に仰け反って気を失った。

 

 残る者達の中には何とか意識を保っていた少女達がいる。

 その額はダラダラと油汗を浮かべていた。

 

 だが、やがてソーセージやスプーンが口から引き抜かれると咀嚼を繰り返し、ゴクリと嚥下した後……呆然と呟きが零される。

 

『う、嘘……やろ……うまいで?』

『ほ、本当……コクがあって、まろやかで、凄く濃厚で……』

『こ、こっちは凄く香りが良くて……こ、好みかもしれない……』

 

『だから、言ったろ(キラ)』

『ふふ、魔王様と僕達の自信作さ(キラ)』

『色は悪いけど、最高の料理だぜ(キラ)』

 

『う、認めたくないけど……ウチが今まで食べてきた料理の中でも最上級や……これが魔王の策略やとしたら、ウチ負けてまう!?』

 

 笑顔で差し出されたソーセージがムッシャーされた。

 

『ルアちゃん!? か、懐柔されちゃうのはダメなんだよ!? こ、これはあくまでえ、栄養ホキューの為、だから……』

 

 スプーンが大人しく咥えられる。

 

『ふ、二人とも?! う、確かにこの料理、凄い……こ、こんなに良い匂いだなんてッ……魔王はまさか最上級の料理人だったの? はむ……』

 

 また、パックーともされた。

 

 背後の神官達が「オレ達と同じ末路を……ぅ、済まない」とか「これでオレ達は良かったんだろうか……」とか「魔王の犠牲者をまた増やしてしまった……おお、神よ!!」とか諸々、懺悔でもしそうな顔でトボトボとカウンターの列へ並びに行く。

 

 アウルが起こした神官の説得を始めて少し。

 現在3割程を取り込んでいた。

 

 だが、どうやらアウルが脳筋系の連中に憧れられていたせいか。

 

 文官適性のある者はまだ一人も送られてきていない。

 

 その上、直轄になるだろう人材の説得は難航しているらしく。

 

 しばらくは書類仕事も一人でこなさねばならないだろう。

 

 という事で自分も並ぼうかと踵を返した時だった。

 不意打ちに近い。

 世界のあらゆる活動が静止していた。

 風が已み。

 人は動かず。

 料理人達のいるキッチンでは炎も消えていた。

 しかし、周辺の音は聞こえる。

 心音や内臓の音は響いている。

 だが、意識を何らかの手段で干渉されているのか。

 動く気配は無い。

 世界が黒く染まる。

 いきなり夜になったと言えば、妥当な光量の中。

 

 周辺に見えざる触手を高速で地表を這わせる形で放ってみる。

 

 すると、20秒程で何か見えざる境界に弾かれる感触がした。

 

 その間にも異変は侵攻し、虚空から何かが30m程先へと降りてきた。

 

 瞳は既にあらゆる波を観測している。

 分かっている事は4つ。

 相手の内包する熱量は高く。

 

 また、電磁波も何かの機械並みに出ており、肉体は高密度のようだ。

 

 そうして一番の問題は恐らく敵の数だろう。

 

 7人。

 

 少なくともソレは数で攻めてくる程度には知能があるらしい。

 

 周辺を巻き込まない為にもと無人の中間地点まで自分から歩き出す。

 

(こっちの魔術の防護が途切れた? 相殺されたか、もしくは結界とやらか? 一定領域の光を遮る半径で2km弱の領域。もし、これがシステム側からの即時介入なら、ようやくか!?)

 

 感じたのは恐怖でも無ければ、困惑でもない。

 それは正しく喜び。

 口角が思わず緩みそうになるのを押さえて。

 見えてくる間違いないだろう敵を視認する。

 

 陣地と接する丘の方面から来た七人はこちらを確認して10mの距離を保って対峙する。

 

 誰にも共通するのは黒紫色をした鉱物製の装甲。

 

 いや、有機的なフォルムの無機物な肌と肉体、人間には思えない仮面のような顔を持つ事か。

 

 まぁ、ラノベやアニメ、漫画や特撮にありがちなスタイリッシュ敵幹部みたいな感じと言えば、適当に違いない。

 

 身体の細い奴、腹が太い奴、背が高い奴、肉体が大きい奴、背が低い奴。

 

 五人はまだいい。

 問題は残りの二人だ。

 背後に巨大な翅。

 

 限りなくファンタジーにも思える骨格状のクリスタルを背負う褐色の肌に人間の顔を持つ男。

 

 そして、一人。

 

 そう一人だけ、他の六人とは根本的に異なる巨大な紅の燐光をその中に無数揺らがせる水晶の光輪を7重に背負う女。

 

「………初めまして。ラスト・バイオレットを継ぐ方。私はコード・ジュデッカ。この【SRW《サルヴ》/15《フィフティーン》】のデフラグ及び簡易フォーマット用の執行機《エクスキューショナー・ユニット》です」

 

 どうやら大当たり。

 

 相手側からの接触を今か今かと手薬煉引いて待っていたのである。

 

 それが自分の求めていた相手なのかは分からないが、それに近しい存在である事はその異様な風体からも間違いないだろう。

 

(さぁ、此処からだッ)

 

 此処まで苦労した甲斐は確かにあるようだった。


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