邪龍の力を宿した白兎   作:鬼塚虎吉

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皆さま、お久しぶりです。長らくお待たせして申し訳ありませんでした。

これからも楽しんで読んでもらえればいいなと思って書いていこうと思っています。

では、お楽しみください!!


第7話

【豊穣の女主人】を出た僕はまっすぐ本拠(ホーム)へ戻ると、荷物を持ってすぐにダンジョンにへと向かった。

 

理由はアイズさん達と話をしていて何かモヤモヤするものを感じるからだ。

 

この感情(きもち)が何なのかは分からないけど、今は思い切り暴れたい気分だ。

 

そう思いながら僕はダンジョンへと潜っていき、十階層までは立ち止まることなく突き進んでいく。

 

十階層まで来ると、僕は一度乱れた呼吸を整えながら拳を構えて戦闘態勢にへと切り替える。

 

すると、ダンジョンの広間の至る所からモンスターが生まれて来る。

 

これは確かエイナさんに教えてもらったモンスターの異常発生「怪物の宴(モンスター・パーティー)」と。

 

その数は百は超えていると思っていいと思う。

 

そんな事を考えている間に僕はモンスターの大群に取り囲まれてしまうが、この程度の数で僕の事を取り囲んだとは言えない。

 

襲い掛かって来るモンスターに対して拳と蹴りで応戦し、魔石にへと変えていく。

 

全てのモンスターを倒した後、魔石全部をバッグパックにへと入れ終わるとさらに下の階層に足を踏み入れていく。

 

そうして、モンスターを倒しながら辿り着いた階層が上層最終階層・十二階層にへとやってきたのだが、魔石とドロップアイテムでいっぱいになった為多少は気分が晴れた僕は換金を済ませて本拠にへと帰るのだった。

 

 

 

 

 

本拠に帰ってくると、神様が寝ずに僕の事を待っていたようだ。

 

「ずいぶん遅かったね、ベル君。」

 

そう言って来る神様は帰ってきた僕の格好を見てこう言って来る。

 

「もしかして、ダンジョンに行ってたのかい!?やっぱり、あのお金は大事だったんじゃないのかい!!」

 

慌てながらそう言って来る神様に対して僕はこう言った。

 

「いえ、あのお金は僕の意思で神様に渡したんですよ。それに、ダンジョンに行っていたのはもっと別な理由ですから気にしないでください。」

 

僕がそう言うと、神様はこう言って来る。

 

「それならそれでいいけど、あんまり心配させないでくれよ。君が死んでしまったら僕は悲しいんだ。」

 

そう言って来る神様の顔は悲しみに満ちていた。

 

「大丈夫ですよ、神様。僕は絶対に神様を悲しませたりはしません。」

 

「嘘はついていないみたいだから君を信じるけどさ・・・。」

 

ふてくされた顔でそう言って来る神様。

 

そんな神様に僕はこう言った。

 

「それじゃあ少し早いですけど、朝ごはん食べませんか?」

 

僕がそう言うと、神様がこう言って来る。

 

「そうだね、それじゃあ朝ごはんにしようか。」

 

その言葉に従って僕と神様は朝ごはんを食べて、【ステイタス】の更新を行うことにした。

 

「あれ、おかしいな?」

 

更新を終えると、神様が僕の【ステイタス】を見ながら驚きの声を上げる。

 

「どうしたんですか、神様?」

 

頭に疑問符を浮かべながら僕は自分のステイタスが書き写されている羊皮紙を見る。

 

そこに書かれていた事を見て僕も驚きしかなかった。

 

ベル・クラネル

Level1

力SSS9999 耐久SSS9969 器用SSS9773 敏捷SSS9872 魔力I0

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・ザ・エイツイビルドラゴン)

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力と特性を使役する。

・使役した邪龍の【ステイタス】(level以外)が自動的に書き写される。

 

そう、羊皮紙に書き写された僕の【ステイタス】の基本アビリティの数値が全く変動していなかった。

 

ダンジョンでモンスターを倒して来たのにだ。

 

「ベル君、昨日何があったんだい?」

 

そう聞いてくる神様の声音は真剣そのものだった。

 

僕は神様に昨日あった事を全て話した。

 

すると、神様がこう言って来る。

 

「これはボクの予想なんだけど、ベル君心して聞くんだよ。」

 

「'は、はい!!」

 

真剣な表情をしながら神様は話し始める。

 

「君の【ステイタス】に発現したこのアビリティ急上昇に共通しているのは君の身体の中にいる邪龍達だと思うんだ。」

 

「しかも、昨日君が【ロキ・ファミリア】からお礼がしたいと言われたんだよね。」

 

「はい、そうです。」

 

「恐らくだけど、邪龍達はそれが気に入らなかったんじゃないかな。」

 

「えっ、どういう事ですか?」

 

神様の言うことに疑問符を浮かべると、神様がこう言葉を続けて来る。

 

「ベル君、どんな生き物になって誇りが存在しているんだよ。」

 

「えっ、どうしたんですか?急に。」

 

いきなりそんな事を言ってくる神様に戸惑っていると、さらに言葉を続けて来る。

 

「その誇りを汚されれば誰だって怒るよね。」

 

「はい。」

 

その言葉に同意すると、神様はこう言って来る。

 

「恐らくなんだけど、邪龍達にとってなにかが癇に障ったみたいだね。」

 

「そうみたいですね。でも、いったい何が邪龍達の癇に障ったんでしょうか?」

 

「それはボクにも分からないよ。」

 

そう話した後、僕は少しだけ仮眠をとるためにソファにへと寝転んだ。

 

疲れていたのか、意外にもすんなりと眠る事が出来た。

 

 

 

 

そして、僕はあの時と同じ真っ黒な空間の中に立っていた。

 

「何か用なの、クロウ・クルワッハ。」

 

僕がそうやって名前を呼ぶと、現れたのは金と黒が入り乱れた髪に右が金と左が黒のヘテロクロミアの双眸を持つ黒いコートを着込んだ長身の男。

 

「クロウ・クルワッハだよね、人間に化ける事が出来たんだ。」

 

「構えろ。」

 

僕がそう言っていると、クロウ・クルワッハは端的にそう言って来る。

 

その言葉に従って構えると、その瞬間クロウ・クルワッハが襲い掛かってくる。

 

「なっ!?いきなり何するんだ!!」

 

僕はその攻撃をギリギリ避けてそう言うと、クロウ・クルワッハはこう言って来る。

 

「お前にドラゴンの闘争(たたかい)を教えてやる。」

 

その言葉を最後にクロウ・クルワッハとの闘争(たたかい)が始まった。

 

容赦なく放たれるクロウ・クルワッハの拳を僕は受け止めようとするが、それは出来ずに殴り飛ばされてしまう。

 

殴り飛ばされた僕は地面に転がると、そのまま頭に向かって踵落としを仕掛けてくる。

 

とっさに腕を交差させて防ぐも僕の寝ている地面には陥没し亀裂が走る。

 

その陥没した瞬間に身体を捩じりながら抜け出すもまた地面に叩きつけられる。

 

叩きつけられた後に左足首をつかまれてまるで棒切れの様に振り回されてしまう。

 

振り回された後に地面に叩きつけられ、頭を押さえつけられて引きずり回されたりもした。

 

これはもう闘争(たたかい)ではなく蹂躙と言う言葉が相応しいだろうと思えた。

 

だけど、僕の心の中では別の感情が湧き上がってきた。

 

その感情の名前は苛立ち。

 

初めての事だった、苛立ちなんて今まで抱いた事が無いからだ。

 

「{おじいちゃんと暮らしていた時もこんな気持ち(こと)思わなかった(なかった)のに・・・。}」

 

そう思いながら攻撃を受け続ける僕はクロウ・クルワッハの事を見ると、何かが爆発した。

 

「オラァ!!」

 

反撃の初手として拳を放つが、クロウ・クルワッハには響いてはいなかった。

 

「この程度か。」

 

そう言って来るクロウ・クルワッハに僕はこう言った。

 

「まだまだ、これからだ!!」

 

そう言ってクロウ・クルワッハの腹に膝蹴りを放ち、いったん距離をとる。

 

すると、クロウ・クルワッハが一気に距離を詰めて来るのに対して僕は拳を構えて真っ向から殴り合うことにした。

 

その理由はあんまり考えてはいない、それは僕にも分からない。

 

でも、ここで引いてしまったらもう邪龍達(かれら)の前に立つ事は出来ないと思ったからだ。

 

僕とクロウ・クルワッハが同時に拳を放つ。

 

その放たれた拳同士がぶつかり合い、爆音と衝撃波が発生する。

 

「ほう、攻撃に関しては少しはマシにはなったか。」

 

そう言いながらぶつけ合っていた拳の力を緩めるクロウ・クルワッハ、その急激な脱力についていけず僕は体勢を崩してしまう。

 

「この程度の事で体勢を崩すな。」

 

「ゲホッ!?」

 

体勢を崩した直後にクロウ・クルワッハの蹴りをまともに受けてしまい、地面に倒れる。

 

が、すぐに身体を起こして立ちあがる。

 

「まだだ・・・!!」

 

そう言って僕は立ちあがるも、今まで蓄積されていた傷で足が震えてしまっている。

 

だけど、眼ではしっかりとクロウ・クルワッハの姿を捉えている。

 

「・・・まだ俺達の望む姿には程遠いな。」

 

そう言いながら僕の所に近づいて来るクロウ・クルワッハに対して拳を放つ。

 

「そんな温い(モノ)が当たるものか。」

 

そう言って僕の拳を避けると同時に踵落としを放ってくるが、腕で防御しようとするけど間に合わず頭に直撃してしまう。

 

「どこまで失望させるつもりだ、ベル・クラネル。貴様は英雄になると言っていたがこの様では犬死が関の山だ。諦めた方が楽だと思わないか。」

 

そう言って来るクロウ・クルワッハに対して僕は身体を起こし立ちあがる。

 

クロウ・クルワッハを見据えながらこう言った。

 

「黙れよ、クロウ・クルワッハ。」

 

そう言いながらクロウ・クルワッハを睨みながら更に言葉を続ける。

 

「お前に言われなくても分かってるんだよ。だからこそ、僕は僕の道を進む。邪魔をするならお前も滅ぼすぞ。」

 

ハッキリと殺意と怒りを込めてそう言い切ると、クロウ・クルワッハがこう言って来る。

 

「そうだ、その眼だ。だが、まだ足りんな。だが、今回はまぁこんな所だろう。」

 

そう言ってクロウ・クルワッハはどこかへと消えていく。

 

その瞬間、僕は強い光にへと包まれ意識を失った。

 

 

 

 

 

眼を覚ますと、最初に映った光景は心配そうに僕の事を見て来る神様だった。

 

「ベル君、目が覚めたんだね!!」

 

そう言いながら抱き着いて来る神様。

 

「か、神様どうしたんですか!?」

 

僕が戸惑いながらそう言うと、神様の後ろの方から声がその事に答える。

 

「仮眠を取っていた君がいきなり呻き始めたらしいぞ。」

 

その声の主はいつも僕が回復薬(ポーション)などでお世話になっている【ミアハ・ファミリア】主神・ミアハ様だった。

 

「ミアハ様、どうして此処に?」

 

「ヘスティアが寝ていたベルが苦しみ呻き声を上げていると慌てて私の所に駆け込んできたんだ。」

 

僕が質問をするとミアハ様がこう返答してくれた。

 

「そうだったんですか、ご迷惑おかけしてすみません。」

 

僕がそう言って頭を下げると、ミアハ様はこう言って来る。

 

「何、気にすることは無い。私は仕事でも来ているから気にしなくてもいい。」

 

そう言ってくれる事に感謝しているとミアハ様がこう言って来る。

 

「ベルよ、かなり魘されていたが・・・、大丈夫なのか?それに、尋常じゃないほどの汗の掻いていたぞ。」

 

そう言って来るミアハ様に対して僕はこう言った。

 

「はい、大丈夫です。むしろ、最高に調子がいいんですよ。」

 

嘘は言っていない、身体は本当に調子が良いからだ。

 

「・・・そうか。それなら良いのだが・・・。」

 

そう言ってミアハ様は持ってきていた鞄からある物を取り出した。

 

「べル、これをやろう。」

 

そう言われて差し出されたものを受け取って確認すると、それは回復薬(ポーション)1ケースだった。

 

「ミアハ様、これって・・・!?」

 

「なに、遠慮することは無いぞ。これは言うなれば先行投資のようなものなのだからな。」

 

「・・・投資・・・ですか?」

 

僕がそう繰り返すと、ミアハ様は頷きながらこう言って来る。

 

「そうだ、これからも青の薬舗(ウチ)を贔屓してもらうためにもな。」

 

それを聞いた僕は納得をしてこう言った。

 

「分かりました、ミアハ様。そういうことでしたら有り難く頂戴いたします。」

 

その言葉を聞いたミアハ様は満足そうに頷くと、こう言って来る。

 

「では、ベルの様子も別段可笑しくないようだから私はお暇させてもらうよ。もし、身体への違和感を感じたらすぐに来るのだぞ。」

 

「はい、分かりました。」

 

「ごめんよ、ミアハ。忙しいのに来てもらって。」

 

「なに、気にすることはないさ。私とヘスティアの仲ではないか。では、またな。」

 

ミアハ様はそう言って帰って行った。

 

それを見届けた僕と神様は隠し部屋に戻って話を始める。

 

「ベル君、さっき魘されていたのは邪龍が関わっているのかい?」

 

「はい、そうです。」

 

真剣な表情をしながらそう聞いてくる神様に対して僕は正直に答えた。

 

「やっぱりそうだったのかい、あの苦しみ方は普通じゃなかったと思っていたけど・・・。それで、何があったんだい?」

 

「実は、邪龍の一体と戦っていました。」

 

そう言い切ると、神様は大声を上げてこう言って来る。

 

「な、なんだって~~~!?ベル君、いったいどうしたそういう状況になるんだい!?」

 

そう捲し立てながら詰め寄ってくる神様に対して僕はこう言った。

 

「分かりませんけど、神様が言っていたじゃないですか。僕が邪龍達の癪に障る事をしたんじゃないかって。」

 

「確かに言ったけど、それで今回の事と繋がっているって言いたいのかい?」

 

「はい、少なくとも僕はそうなんじゃないかって思っています。」

 

そう言うと、神様は少し考え込み始める。

 

考えることを終えると、僕にこう言って来る。

 

「ベル君、【ステイタス】更新しようか。」

 

その言葉に従って僕は上着を脱いでうつ伏せにベッドにへと寝転ぶと、神様がその上にまたがって更新を始める。

 

「なんだい、これは・・・!?」

 

「今度はどうしたんですか、神様?」

 

更新を終えて羊皮紙に書き写された自分の【ステイタス】を見る。

 

ベル・クラネル

 

level1

 

力SSS9999 耐久SSS9998 器用SSS9836 敏捷SSS9927 魔法I0

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・ザ・エイツイビルドラゴン)

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力と特性を使役する

・使役した邪龍の【ステイタス】(level以外)が自動的に書き写される

 

龍の肉体(ドラゴン・ボディ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティ超高補正

・使役している邪龍の肉体と同じになる。

 

龍の誇り(ドラゴン・プライド)

・全アビリティ常時超高補正

邪龍(おもい)が続く限り効果持続

邪龍(おもい)の丈により効果向上

 

邪龍の狂気(イビルドラゴン・マッド)

損傷(ダメージ)を負うごとに力、敏捷のアビリティ超高補正

・瀕死時における力のアビリティ超高補正

・耐久、器用のアビリティ低下

 

龍の逆鱗(ドラゴン・ラース)

損傷(ダメージ)を負うたびに攻撃力上昇

憤怒(いかり)の丈により効果向上

憤怒(いかり)の丈により効果持続

 

書き写されていた【ステイタス(ソレ)】を見て動揺を隠せなかった。

 

さっきまでと打って変わって数値が急上昇し、スキルも四つも増えている。

 

「どうなってるの、これ?」

 

そう呟いた僕に対して神様がこう言って来る。

 

「原因は一つしかないよ、ベル君。」

 

「え?」

 

そう言って来る神様の方に顔を向けると、こう言って来る。

 

「君の言っていた邪龍の一体との戦いが今回のステイタス急上昇とスキル大量獲得の原因だ。」

 

「でも、それだけでこんな事になるんですか?」

 

神様の言葉に僕がそう問いかける。

 

すると、神様はこう言って来る。

 

「普通ならあり得ないけど、こうなってしまったらしょうがないよ。」

 

ハハッと乾いた笑みを浮かべながらそう言って来る神様は諦めの境地にいるようだ。

 

しかし、さっきとは打って変わって神様が真剣な表情でこう言って来る。

 

「いいかい、ベル君。改めて言わせてもらうけど、この事は絶対に誰にも知られてはいけない秘密だからね。」

 

そう言ってくぎを刺してくる神様に対して僕はこう言った。

 

「はい、それはわかってます。でも、念のために僕の専属アドバイザーのエイナさんにも知らせておいた方がいいじゃないですか?」

 

「確かにそうだけど、そのアドバイザー君は信用できるのかい?」

 

僕の言葉に理解しつつそう問いかけてくる神様に対してこう言った。

 

「はい、大丈夫です。」

 

僕がハッキリとそう言い切ると、神様はこう言って来る。

 

「分かったよ、ベル君の言葉を信じようじゃないか。」

 

そう言って神様が立ち上がり、言葉を続けて来る。

 

「ベル君、今日はゆっくり休まきゃだめだよ。」

 

「はい、分かりました。」

 

神様の言葉に従って僕はダンジョンに行かずに街にへと繰り出したのだった。




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