第56話 意外な再会
セミの鳴き声がやかましく響く夏の真っ只中。
キンジたちは男子寮の部屋でダラダラと過ごしていた。
アリア「あ"〜…も〜……なんでこんな暑いのよ…」
怜二「年々暑さ増してる気がする……」
キンジ「夏はそういうもんだろ…」
理子「こんな日は冷房ガンガンにしてゲームするに限るぜぇ…」
アリア「いつもと変わらないじゃない」
理子「だって〜…ツッキーいないから娯楽研究部動かせなくて暇だもん。ジャンヌや夾竹桃はコミケ用の漫画で忙しそうだし」
怜二「剣ちゃんいないせいで全員のテンションだだ下がりだし」
キンジ「大体あいつと理子が盛り上げ担当だったからな……」
あかり「今頃何してるんでしょうか…剣護先輩…」
アリア「なんか情報ないの?」
理子「調べようがないんすけど」
アリア「そこをどうにかしなさいよ」
理子「いや流石に無理だよ⁉︎そもそもどこを何をどう調べろと⁉︎」
怜二「どうどう、おちけつおちけつ」
キンジ「唯一知ってるのは兄さんだが……連絡つかないしなぁ」
白雪「焦っても仕方ないよ。とにかくできることをしないと」
そこへ白雪と志乃が台所から切ったスイカと麦茶を持って出てくる。
理子「やほーい!スイカだー!」
怜二「キンッキンに冷えてやがる……!」
アリア「……今思うと怜二もだいぶ染まってきたわね…」
キンジ「そういうお前も既に手遅れよ」
アリア「そんなの百も承知よ……」
理子「ようこそ、こちらの世界へ……!」
怜二「ウェルカムトゥザジャパリパー……!」
ライカ「それ違いますよね」
アリア「あたしとあんたらを一緒にすな!」
スイカを齧り、麦茶を煽りながら駄弁るキンジたち。
ふと、志乃がポツリと呟いた。
志乃「ところで、皆さんはこの後はどうされるんです?」
金・理・怜『少なくとも外には出たくねえ』
即答である。
アリア「まあそうなるわよね……」
キンジ「といってもすることを無いんだがな…」
怜二「それな」
理子「理子はこれからオンゲーする約束あるから」
そう言って理子は奥の部屋に入っていった。
キンジ「………なあ」
怜二「んぇ?」
キンジ「………ここ、男子寮だよな…?」
怜二「そうだね」
キンジ「……こいつら普通に居座ってね?」
怜二「あー……まあ…最近は…だねぇ」
キンジ「……剣護早く帰ってこねえかな」
怜二「だねぇ……1年の子みたいに今は元気そうだけどまだ落ち込み気味の子たちがいるしねぇ」
アリア「何気に理子やレキがそれに当てはまってるわよね」
キンジ「あのあいつらがなぁ……」
理子「………………」
カチカチとディスプレイを見ながらコントローラーを弄る理子。
ボーッとした様子でフレンドとオンラインでプレイしていると、そのフレンドから声をかけられる。
『りこりんさん?どうかしましたか?』
理子「………んぇ⁉︎な、何かな?サナーさん」
サナー『いえ、なんだかボーッとしてる感じでしたので』
理子「あー………まあ、ちょっとねー……」
『何か悩みかしら?良ければ聞くわよ?』
理子「………………………」
理子は少し考えてから、あることを2人に聞いた。
理子「……1ついいかな…?」
『ええ、いいわよ』
サナー『どうぞ』
理子「友達が行方不明でさ……それでちょーっと落ち込み気味なんだよねー……」
『ふぅん………ちなみにどんな人?』
理子「…長い髪を縄でまとめてるヤツなんだけど……もしかしてってことは無いだろうけど……見たことある?」
『いえ、私は見たことないわ』
理子「そうだよねぇ………」
そりゃそうかと溜息をつく理子。そこにサナーさんが答えた。
サナー『あ、私会いましたよ』
理子「………………え?」
サナーさんの思わぬ返答に理子は思わずコントローラーを落とした。
理子「ちょっそれマジ⁉︎」
サナー『は、はい。長い髪を縄でまとめてて…もしかして刀持ってます?りこりんさんが言ってる人って』
理子「ドンピシャだよ‼︎そいつだよ!理子たちが探してるヤツ‼︎」
『あら、すごい偶然ね………ん?待てよ?もしかしたらその人、うちの人が治療したって言ってたヤツかも』
理子「マジっすか⁉︎ぐーやんさん⁉︎」
ぐーやん『ええ、たしかね』
理子「そ、それで……生きてる、の…?」
サナー『ええ、結構ボロボロでしたけど元気そうでしたよ』
理子「そっか………」
ぐーやん『あの子めちゃくちゃタフよねぇ」
サナー『あ、そうだ。りこりんさん』
理子「ん?」
サナー『明日時間があればビデオ通話しませんか?』
理子「え、いいの?」
サナー『はい。明日は家の人が用事でいないので。あと彼も呼んでおきましょうか?』
理子「う、うん!お願い!」
サナー『わかりました。いつ頃するかはまた連絡しますね。それじゃ』
ぐーやん『私も今日はここでログアウトするわね』
理子「うん、ぐーやんさんもありがとね。そんじゃ」
理子もログアウトをすると、勢いよく部屋を出てすぐさま皆のいる居間へと走っていった。
理子「うおおおおお‼︎みんなぁぁぁ‼︎大ニュース‼︎大ニュース‼︎」
アリア「うるさいわね!ちょっとは静かにしなさいよ‼︎」
翌日、居間にパソコンを配置してビデオ通話の準備をした理子たちはサナーさんからの連絡を待っていた。
キンジ「相手はゲームのフレンドだろ?信用できるのか?」
理子「でも他に方法ないでしょ」
アリア「この際分かるなら何でもいいわ」
怜二「ハズレじゃないことを祈るばかりだね…」
理子「……あ、メール来た」
話しているうちにサナーさんから準備完了のメールが来たので、理子は通話で確認してからスピーカーに切り替えてビデオをオンにする。
理子「さて…どうかな…っと」
サナー『あ、映った。映った』
パソコンの画面に映ったサナーさんは、緑の長い髪にカエルとヘビの髪飾りをつけた少女だった。
理子「うっわ、サナーさんめっちゃ可愛いじゃん!」
アリア「………………おっきいわね」
サナー『えへへ…どうもです…っと自己紹介しないとですね。初めまして。サナーこと東風谷早苗といいます。今回は本名でやらせていただきますね』
アリア「早速だけど本題に入らせてもらうわ。あなた、あたしたちが探してるヤツを知ってるのね?」
早苗『はい、私が見た方と皆さんが探してる方の特徴が合っていればですが……』
怜二「長い髪を縄でまとめてて刀を持ってて……えーと、それから…」
ライカ「たしか常世の神子ってやつ……ですかね?」
理子「あ、それか。髪解いた時に色が白くなったりとかは?」
早苗『あ!ありました!ありました!能力が爆上がりするやつですね!』
理子「そうそう、それそれ」
早苗『となると、大体一致しますね……………ん?』
理子「どったの?」
早苗『誰か来たみたいで……ちょっと席外しますね』
そう言って画面を点けたまま早苗は何処かへ行ってしまった。
誰かと話しているのか話し声がスピーカー越しに微かに聞こえる。
キンジ「なんだ?」
理子「誰か来たっぽいね。確か誰か呼ぶとか言ってたっけ」
少しして早苗が戻ってくる。
早苗『すいません。呼んでた人が来たみたいで…あ、入ってきてくださーい!』
早苗が呼ぶと赤い巫女服を着た少女と例の彼………キンジたちが今まで探していた男が部屋に入ってくる。
霊夢『邪魔するわよ』
剣護『邪魔すんなら帰って〜ってか?あれ通話してんn………』
全員『剣護(先輩)!!!』
剣護は画面を見るなり回れ右して部屋から出ようとし始めた。
理子「ちょ、コラーー‼︎」
剣護『す、スピードワゴンはく、くくくクールに去るぜぜぜ……』
早苗『ちょ、なんで帰ろうとするんですか⁉︎』
剣護『あいつらが相手って聞いてないんですが⁉︎』
アリア「早苗!そいつ抑えなさい!」
キンジ「洗いざらい全部吐いてもらうぞオラァ‼︎」
理子「やべぇキーくんが壊れた」
剣護『こんなとこにいられるか!俺は帰らせてもらう‼︎』
霊夢『結界張ったから逃げられないわよ』
早苗『グッジョブです!霊夢さん!』
剣護『畜生めぇ‼︎』
それからヤダヤダと暴れる剣護をなんとか座らせて、キンジたちと対面させた。正座で。
剣護『………………………』
アリア「さて、まずあたしたちに何か言うことあるわよね?」
剣護『えー……あのー……連絡1つもしないで心配かけてすいませんでした………』
キンジ「………まあいいだろ。んでお前はどこで何してんだ?」
剣護『えーと、俺がいるのは幻想郷ってとこで…』
アリア「幻想郷……あれ、なんか聞いたことあるわね…」
霊夢『前にそっちにいた時に話したと思うわ。そっちの世界から結界で隔離した世界、幻想郷』
アリア「あ、それだわ」
白雪「それで剣ちゃんは何を…?」
剣護『えーと……これ話して大丈夫かな…色金に関することなんだけど』
キンジ「うーん……まあ大丈夫だろ」
剣護『なら話すか。俺の中に色金撃ち込まれてるだろ?そんでシャーロックと戦った時に死にかけて発現したアレ。アレを制御するための修行でこっちに留まってんだよ』
キンジ「アレの完全制御か……」
アリア「………できるの?それ」
剣護『そだなー……現状制御できてるのはざっと5分の4くらいかな』
アリア「大方できてるのね」
剣護『こっちからも聞いていい?』
キンジ「なんだ?」
剣護『単位どうなった?』
キンジ「あぁ、それか。大暴れしたせいで0.9単位に下げられた」
剣護『ファッ⁉︎0.1足りんやんけ⁉︎』
キンジ「俺は高天原先生に頼んで任務用意して貰って、それこなして単位貰った」
剣護『え、じゃあ俺はどうなんの……?』
怜二「蘭豹先生がなんか用意してるらしいよ」
剣護『うーわ蘭豹かよ……嫌な予感しかしねえわ…』
白雪「あとね剣ちゃん。SSRからも依頼が来てるみたいなの」
剣護『マジ?俺指名で?』
白雪「うん。詳細はこっちに帰ったら伝えるけど…あとどれくらいかかりそう?」
剣護『どれくらいつってもなー……そっち今何日?』
アリア「8月のー……18日ね」
霊夢『うーん……少なくてあと1週間くらいかしら』
理子「1週間………か………」
剣護『あん?どうかしたん?』
キンジ「お前が行方不明になったせいで1年や理子やレキとかがかなり参っちまってんだよ」
剣護『1年3人はわかるけど、理子とレキまで?』
怜二「というかほぼ全員が参ってます」
剣護『あー………マジかー………………………』
剣護はガリガリと頭を掻いてから、うーんと唸りながら俯く。
剣護『………………わかった。なんとかするわ』
キンジ「なんとかするって……何をだ?」
剣護『まー待ってな。なんとかすっからさ』
アリア「いやだからなんとかって……」
霊夢『……あ、もしかして…そういうことね』
早苗『え、霊夢さん、わかったんですか?』
霊夢『修行のスケジュール組んだのあいつだしね』
理子「………どゆこと?」
霊夢『まあ交渉よ交渉。もしかしたらもしかするかもね』
理子「?????」
早苗『結構時間経ちましたし、そろそろ終わりましょうか?』
理子「あ、うん。そうだね。良いよね?」
キンジ「ああ、後は帰ったら聞かせてもらうとするか」
早苗『それじゃあお疲れ様でした』
理子「ごめんねー無理言っちゃって」
早苗『いえいえ!また暇があればやりましょ』
理子「うん。そんじゃーねー」
通話を切ると一同はハァ〜…と大きく息を吐く。
キンジ「………………無事…っぽかったな」
アリア「そうね……なんか前よりボロボロだった気がするけど」
白雪「でも元気そうで良かったよ…」
怜二「なんとかするって言ってたけど何すんだろね」
レキ「交渉と言ってたので誰かと交渉するのでしょうか」
キンジ「お前………………居たのか」
レキ「居ましたが?」
アリア「いや、居たなら何か話しなさいよ。全然わかんなかったわよ」
レキ「すいません。剣護さんの顔見たら満足してしまいまして…」
ライカ「えぇ……」
ーーーーそれから2日目経過してーーーー
剣護「ただーいまー」
『ファッ⁉︎』